東風乃扇です!
暑くなってきましたが、体調崩さないように注意してくださいね~。
では第62話、始動。
長い事情聴取を終え、俺─天野星夜─は廊下を歩く。
楯無先輩がまだ検査入院中なので、お見舞い行く為だ。
「失礼しま~す。」
「あら、星夜くん。いらっしゃい。」
ノックして部屋に入るとベットの上には、けん玉を片手に持った楯無先輩が居た。
「入院って聞いたから心配しましたよ。」
「やぁねぇ、皆大袈裟なんだから、おねーさんはこの程度へっちゃらよ。」
そう言いながら片手に持ったけん玉を、素早く動かしていた。
俺はけん玉に詳しく無いけど、とりあえずこの人が得意なのはわかった。
「けん玉、上手ですね。」
「えぇ、昔から得意なの!」
にこやかに笑いながらけん玉を続ける楯無先輩。
俺は視線をけん玉から別の物に移す。
「じゃあ、こっちの編み物セットは?」
「けん玉と一緒に一夏くんが持ってきたのよ。『楯無先輩も折角ですから苦手を克服してください』って、にこやかにね!」
あ~前に簪さんが楯無先輩は編み物が苦手…と言うか下手だって言ってたな。
「日頃から弄りまくってたんだし、この位の反抗は当然じゃないですか?」
「あ、星夜くんもそんなこと言うのね!」
「騒ぐと傷に触りますよ。」
「むぅ…。まぁいいわ。一夏くんに伝えておきなさい。次の特訓は泣かせてあげるって!」
「はい。伝えておきますよ。」
そんな感じでしばらく話をして、部屋をあとにした。
──
数日後。
一部アリーナに立ち入り禁止区域がある以外、普段の生活に戻りつつあった。
「おはよう天野、少しいいか?」
「おはようございます。どうかされましたか?」
朝、教室に向かう途中で織斑先生に声を掛けられた。
「お前にはやってもらう事がある。これから応接室の方へ行ってくれ。」
「わかりました。」
応接室?GEARから誰か来たのだろうか?
「あぁ、授業は気にしなくていいぞ。」
「はい、で、何をするんですか?」
「あぁ、行けばわかる。」
織斑先生からの話を聞き、俺は驚きを隠せなかった。
──
朝のHRが終わり、グラウンドにて訓練機の準備をする生徒達。
そこから少し離れた場所で、星夜を除く1年生専用機持ちが千冬の前に並んで居た。
「本日は学年合同実習だが、お前達の機体は先日のダメージで当分の間、使用が禁止されている。」
「はい!」
千冬の言葉に全員が頷く。
自分の機体ダメージ等を把握し、自己修復が終わるまで待つか、星夜の様に専用の設備で修理を行わなければいけないのは全員理解している。
「さて、そこでだが。山田先生!」
「はい!皆さん、こちらに注目です!」
千冬に呼ばれ、真耶が並んだコンテナの前で手を振っていた。
グラウンドに最初から置いてあり、目を引く物の為、全員がなんなのか気になって居たものだ。
「なんだろ?」
「もしかして…新しいIS!?」
「それならISハンガー使わない?」
「まさか……新作おかし!?」
遠巻きに見ていた生徒達もおしゃべりを始める。
こんなときでも平常運転の本音の言葉を聞いて、少し笑ってしまう簪達だった。
「静かに!……お前達はもう少し静かに出来ないのか……。山田先生、開けてください。」
「はい!それでは、オープン・セサミ!」
元気よく叫ぶ真耶に対して、理解出来ない学生達はぽかんとする。
「うぅ…世代差って残酷…。」
泣きながら真耶がリモコンのスイッチを押すと、コンテナがモーター音を轟かせながら開く。
「こ…これはっ……!?」
一夏が驚き声を上げる。
「何ですか?」
\スパーンッ!/
千冬の出席簿が一夏の頭に振り下ろされた。
「い、痛ぇ…。」
「無駄に騒ぐからだ…馬鹿者。」
一夏は痛む頭を押さえながら、コンテナの中を見る。
そこにあったのは金属製のアーマーのようなものだった。
「教官、これは─」
「ボーデヴィッヒ、教官ではなく先生だ。」
何度も注意されているが、未だにラウラからの教官呼びは矯正されない。
千冬に軽く睨まれ、ラウラは怯んでしまう。
「これは国連が開発している外骨格攻性機動装甲『EOS』だ。」
「イオス……。」
「Extended Operation Seeker。略してEOSだ。その目的は災害救助や平和維持活動など、様々な運用を想定している。」
「あの、織斑先生。これをどうすれば…?」
「もしかして…。」
箒と簪が恐る恐る訪ねる。
「乗れ。」
「えっ!?」
一夏は声を上げて驚く。
「二度は言わん。こいつの運用データ及びレポートの提出をIS委員会に言われていてな。機体が使えないお前達には丁度良い任務だろ?」
「は、はぁ。」
「さぁ、わかったら始めろ。」
「皆さ~ん準備は出来ましたか~?」
真耶は後ろに居た生徒達に訓練機の準備状況を確認しに行く。
千冬はEOSを眺める専用機持ち7人を軽く叩く。
「早くしろ、時間は有限だ。それともお前達はこれをいきなり使いこなせるのか?」
「準備に入りますっ!」
全員がマニュアルを軽く確認し、機体を装着する。
「ぐっ!このっ…。」
「こっこれは…。」
「お、重い……ですわ…。」
「う…動きにくい…。」
乗り込み、試しに腕を上げるがそれだけでも多大な疲労感。
ISと違い各種補助装置がほぼ無い為、機体の重さをダイレクトに感じているからだ。
また、積んである補助装置も無いよりマシ、と言った程度でISの物と比較にならない。
背中には巨大なバッテリーがあるが、それを使っても30分も稼働できない。
一夏達はISがいかに優れた物なのか身をもって知ることとなった。
「ふむ…あの頃に比べればマシにはなったか……だが、あれには遠く及ばないな。」
1人黙々と機体の感触を確かめたラウラは、一度目にした事のあるGEOSとの違いを口にしていた。
「あ~確かに……。」
「なぜ……あちらを採用しなかったのでしょうか……。」
ラウラの言葉に同じ様に見たことのあるシャルロットとセシリアが答える。
「あれってなんだ?」
「一夏くんはもう少しIS関連の事を調べた方が良いと思う。」
「全くね。まぁあたしも実物見たこと無いけど。」
「噂しか知らないがそんなに凄いのか…?」
実際にGEOSを見たことの無い一夏、簪、鈴、箒が話していた。
「無駄口を叩く余裕があるようだな。ならばこれより模擬戦を開始する!防御に関しては装甲のみのため、基本的に生身に攻撃するな。武器はペイント弾だが、当たるとそれなりに痛いぞ。」
千冬が手を叩き、全員の注意を促す。
全員がそれぞれ距離を取ったところで千冬から開始の合図が下される。
「まずは……一夏だな。」
ラウラは一番近くで動かす事に四苦八苦している一夏に狙いを定めて、脚部にあるランドローラーを使い間合いを詰める。
「げっ!?」
「遅いっ!」
一夏は何とか右腕を動かし、パンチを放つがラウラは余裕をもって避ける。
そのまま腰を落とし、足払いを放つ。
「ぐぇっ!」
「終わりだ。」
一夏に素早くサブマシンガンでペイント弾を撃ち込み離脱。
そのままセシリアの元へ向かう。
「もらうぞ。」
「そう簡単にはやらせません!」
セシリアは両手でしっかりと構えたサブマシンガンをフルオートで放つ。
しかし、照準は合わず弾はかするだけだ。
「くっ!反動が……。」
「日頃からISの機能に頼りすぎたな!」
ラウラの指摘通り、ISならばPICで反動を自動で消す事ができる。
さらにセシリアが普段使っているレーザー兵器は反動が火薬式の武器に比べて少ない事もあり、照準がうまくいかずにいる。
「くっ!火薬式と言うだけでも使いなれないのに!」
セシリアがサブマシンガンの弾切れを起こし、弾倉を入れ替える隙を逃さず、ラウラは接近する。
「もらった!」
「きゃあっ!!」
接近時の速度を保ち、盾を前に突き出して突進する。
重量のあるEOSは鈍い音をたてながら後ろに倒れる。
セシリアは当然、立ち上がるため、背部の起立ユニットを使うが余りにも遅い。
その間にペイント弾を撃ち込まれる。
「あとは─」
「喰らえっ!」
次の目標を定める前にラウラに対して鈴が横から強襲をかける。
右腕を振りかぶり、加速に合わせて全力で振り抜く。
「良いパンチだ…だがっ!」
「うわっととと!」
ラウラは冷静に後ろに下がり、突き出された右腕を掴み引っ張る。
引っ張られた事でバランスを崩した鈴はベッドスライディングの様に転ぶ。
「ふむ……。」
転んだ鈴にペイント弾を撃ちながら周りを見ると、残った箒、シャルロット、簪が共闘をするため、陣形を組んでいた。
「1対1では敵わないと悟ったか。」
「ただやられる訳にはいかんのでな!」
「これも戦術!悪く思わないでね!」
「行くよ!」
簪の掛け声に合わせて、箒が前に出る。
シャルロットと簪は箒の後ろからそれぞれ、射撃を行う。
「足止めからの攻撃か、基本だな。」
ラウラは箒に軸を合わせて、突進する。
「簡単にはやらせん!」
対する箒も盾を構え進む。
「残念ながら、練度が違う。」
箒の横にすり抜ける様に移動し、体当たりするラウラ。
急に横からの衝撃を受けて箒は体勢を崩し倒れる。
ラウラはそのまま後方の2人向かって進む。
「この弾幕なら!」
「押しきれる!」
「そうはさせんさ。」
ラウラはシャルロットに向かって進みながら、盾を投げつけ、そのまま速度を落とすことなく、簪を狙い撃つ。
「うわぁっ!?」
「きゃあっ!?」
「足を止めたのが敗因だっ!」
盾によって、体勢を崩しかけたシャルロットをタックルで押し込み、倒す。
「よし!そこまで!」
千冬の声が響く。
模擬戦が終わり、EOSをグラウンドの隅に並べ、千冬の元に集合する。
「ふむ、流石だな。ボーデヴィッヒ。」
「これもドイツ軍で教官にご指導─\バシンッ!/
「織斑先生だ。いつになったら覚えるのか…。」
いつものように、手に持ったファイルで頭を叩く千冬。
頭を押さえるラウラに一夏が問いかける。
「なぁラウラはこのEOSって、使ったことあるのか?」
「いや、これではないが、似たような物ならドイツ軍にあってな。主にIS用装備の試験運用などに用いられていた。」
「なるほどね。そりゃあんなに上手く使えたのね。」
「上手いと言うほどでも無いし、あれに比べればオモチャの様な物だろ。」
鈴に答えるラウラ、そこに一夏が再び質問する。
「なぁ、模擬戦前にも言ってたけど、あれってなんだ?」
「ん?あぁ、そうか。一夏は知らないのか。」
「一夏、ラウラの言うあれって言うのは─\バシンッ/
シャルロットが一夏に説明をしようとすると、シャルロットの頭にファイルが落とされた。
「お前達、無駄話もそこまでにしろ、午後も本機を使用する。異常等が無いか今のうちに確認しておけ。終わり次第、昼休みだ。」
「わ、わかりました!」
涙目のシャルロットが答える。
一夏達はすぐ、自分の使ったEOSを点検し、昼食に向かった。
──
「ねぇ、そういえば星夜はどうしたのよ。」
「午前中、居なかったけど。」
食堂で、それぞれ料理の乗ったトレーをテーブルに置きながら鈴と簪が問いかける。
「えぇ、GEARの方で用事だとか…。」
「朝、織斑先生が言っていた。」
セシリアと箒が答える。
「なに?もしかしてあれを持ってくるつもり?」
「実物が見れるなら、それは気になるかな。」
「う~ん、午前中の内容を考えるとその可能性は高いね…。」
鈴の一言で、簪とシャルロットが反応する。
「何回か聞いたけど、あれって何なんだ?星夜が居ないのと関係あるのか?」
「恐らく…な。」
一夏の問いにラウラが短く答える。
「ふ~ん。ラウラはなんで難しそうな顔してるんだ?」
「む、そう見えたか?」
「あれ、違ったか?てっきり悩んでるのかと。」
「何を悩むと言うのだ。一夏、お前は他人を気にする余裕があるのか?さっきの模擬戦では一番最初にやられてるのだぞ。」
「うぐっ!それを言われるとキツい…。」
ラウラの指摘に一夏がダメージを受ける。
結局、一夏はみんなの言うあれが、何物なのか知らずに午後の授業を迎えるのだった。
──
「よし。全員揃っているな。」
午前と同じように、千冬の前に並ぶ専用機持ち。
午前との違いは周りの生徒達が見学の体勢を整えている位か。
「 織斑先生、午後はどのような内容で?」
セシリアが手を上げ、質問する。
「あぁ、午後は比較試験だ。」
千冬が質問に答える。
「比較?ISなんかと比べるまでもないんじゃ…。」
比較と言われ、ISとの比較だと思った一夏が口を開く。
「馬鹿者、そんなものは小学生でもわかる。」
一夏を睨みながら答える。
「じゃあ、やっぱり…。」
「そうだ。山田先生。」
「は~い。皆さん!お願いしま~す!」
真耶が声を上げると、グラウンドに2台のトレーラーが入って来た。
その側面にはGEARのロゴが入っている。
「えっ!?GEARっ!?」
全く状況の読めない一夏は驚きの声を上げる。
そのままトレーラーが止まると、背部のハッチが開き、中から2体ずつ、計4体のGEOSが出てきて並ぶ。
4体の色は、白を基調とし、各所に赤、青、緑、黒のラインが入っている。
外見的特徴としては、電童や初期型GEOSの両腕、両脚に付いていたドライブユニットが無い事だ。
「お前達には、このGEOSと模擬戦を行ってもらう。」
「えぇっ!?色が違う電童!?」
千冬が一夏の頭にファイルを叩きつける。
バシンッと良い音が響き渡る。
「電童ではなく、GEOSだ。しっかりとニュースを見ていれば知ってるはずだぞ。」
千冬の言葉を聞き、一夏はゆっくりと他の専用機持ちの方を見る。
すると全員が頷いていた。
「私達、ヨーロッパ組は合同演習の際に実物を見ておりますし。」
「前々から噂は流れてたしね。」
「ネットニュースにものってたよ。」
セシリア、鈴、簪が一夏に答える。
「ま、マジでか…。」
「お前達、いつまであっちを待たせるつもりだ?」
千冬が準備を促し、全員がEOSに向かう。
「あれのどれか1体は星夜って訳よね。」
「恐らくね…。」
EOSを着けながら、鈴と簪が呟く。
「なぁ、なんだよあれ?量産型の電童か?」
「あれはGEOS、GEARで作ったEOSだよ。」
「じゃあ、あれもコイツ位重いのか?」
「それを知るための比較試験だろう。」
一夏、シャルロット、箒も話ながら準備をする。
「数はこちらが有利ですが…。」
「全員、油断するなよ。」
セシリアとラウラが注意をしながら、並び準備が整う。
「では!これより比較試験とし、EOS対GEOSの模擬戦を始める!」
千冬の合図に合わせ、全員が同時に動き出す。
「確実に数を減らすっ!」
一番最初に動いたのはラウラだった。
盾を構え、GEOSに向かってサブマシンガンを乱射する。
「かすりもしないか!」
しかし、GEOSは即座に散開、回避する。
「は、早ぇ!?」
一夏も同じように撃とうとするが、動きが追えず、狙いがつけられない。
「判断が遅い!」
赤のラインが入ったGEOSが手に持ったサブマシンガンで一夏をあっという間にペイントまみれにする。
「先ずはひとつ…。」
「そこですわ!」
一夏を撃った隙を狙い、セシリアはサブマシンガンを放つが、後ろに飛び回避される。
「くっ!あんなに軽く動けるとは!」
「狙いは悪くない、だが…。」
冷静に狙いをつけたGEOSはセシリアを撃つ。
「まだですわっ!」
セシリアは盾を使い、ペイント弾を防ぐ。
その間にGEOSは急接近し、盾を弾く。
「なっ!?」
「終わりだな。」
盾を弾かれ、無防備になったセシリアにペイント弾が放たれた。
──
緑のラインが入ったGEOSを狙う鈴と箒。
「行くわよっ!箒!」
「良いだろう、鈴!行くぞ!」
2人はサブマシンガンで弾幕を張りながら距離をつめる。
相手のGEOSは銃を持ってないらしく避けるだけだ。
敵の目の前で左右に別れる。
「このっ!!」
「喰らえっ!」
GEOSを挟みうちの形で格闘戦を仕掛ける2人。
鈴の放つパンチをくぐり、背後に回るGEOS。
そのまま思いっきり蹴りを入れ、鈴は箒に向かって倒れる。
「えっ!?ちょっ!?まっ!?」
「何だとっ!?」
何とか鈴を支える箒。
当然、その隙を逃すGEOSではなかった。
足払いでまとめて倒されるのであった。
「よし、一丁上がり!」
GEOSはその言葉と共に、左の拳を右の手に打ち付けるような動きをする。
それは星夜が試合後によくやる締めの動きと同じだった。
──
青のラインが入ったGEOSは簪、シャルロットの2人と向き合う。
「狙いは…」
「つけさせない!」
シャルロットと簪はそれぞれ、左右に別れてサブマシンガンを乱射する。
GEOSは細かく動き回り、ペイント弾を避ける。
「くっ、よく動く!」
「本当に電童を相手にしてるみたい!」
2人とも普段から射撃を得意としてるだけに、中々当たらない事に驚く。
「そろそろ…こっちから仕掛けるよ!」
GEOSのパイロットがそう言い放つと同時に、少しの助走で上に跳ぶ。
「「えっ!?」」
いくらパワーアシストがあるとは言え、GEOSは軽々と5m程の高さに舞い上がる。
「そこ!」
「きゃあぁっ!?」
「うわぁっ!?」
そのまま2人に上からサブマシンガンを放つ。
跳びながらの為、狙いがついてないが牽制としては十分だった。
着地したGEOSは、マガジンに残った弾を簪に向かって放つ。
簪は防ぐことが出来ず、ペイント弾を浴びた。
「こっこのぉっ!」
「ふっ!」
シャルロットは脚部のランドローラーを使い後退しながらサブマシンガンを放つ。
GEOSはペイント弾を避けながら追跡する。
流石に純粋な走りとランドローラーの速度差では追い付く事が出来ない。
GEOSはサブマシンガンのマガジンを取り替え、構えるが、撃つことなくしまう。
相手の行動に違和感を感じながらも、シャルロットは次の手を考える。
「おいっ!デュノア!止まれ!」
「えっ!?」
突然の千冬の言葉に驚くシャルロット。
驚きながらもしっかりと止まることが出来たのは日頃の訓練の賜物だろう。
「相手と距離を取るのは良いが、しっかりと周りを把握しろ。背後が壁ならお前は衝突していたぞ。」
千冬にそう言われ振り向くシャルロット。
背後には見学の生徒達が居た。
「じゃあ、さっきGEOSが撃たなかったのは…。」
「他の生徒に当たる可能性があったからだ。デュノア、以後気をつけるように。」
「はい…。」
シャルロットはそのまま撃墜扱いとなった。
──
ラウラは黒のラインが入ったGEOSに狙いを絞る。
「その動き…星夜だな!」
「よくわかったな。」
散開する瞬間の動きでパイロットを見切ったラウラ。
相手の足元を狙い、トリガーを引く。
「行くぞ!」
「来い!」
ラウラはトリガーを引きつつ、足のランドローラーを使い、ジグザグ走行でGEOSに接近する。
対するGEOSはペイント弾を避けつつ、ラウラに接近する。
「はぁっ!」
ラウラは残り3mを切ったところで、弾倉が空になったサブマシンガンを投げつけ、そのまま殴りかかる。
「ふっ!」
GEOSは顔に向かって来るサブマシンガンをギリギリで避け、突き出された腕を受け流す。
懐に入ったGEOSは下段の蹴りを繰りだし、ラウラの体勢を崩させる。
「ぐはっ!」
「よし!そこまで!」
ラウラが倒れると同時に千冬の声が響き渡る。
──
模擬戦の後、各性能差を調べる名目で色々な試験をやった。
綱引き、徒競走、腕相撲等の簡単な物だ。
授業中はGEOSとEOSを対面させる形で立ってたから一夏達と話はほぼしてない。
そもそも織斑先生の授業で私語なんて話したら、GEOS越しでもダメージが残りそうだ。
「今日の授業はここまで、実習レポートの提出期限は3日だ。しっかりとやるように。」
織斑先生が全体に声をかけ、授業は終了。
一夏達がEOSを片付けるなか、俺達GEAR関係者はGEOSの片付けを始める。
「よし、GEOSはトレーラーに載せておいて。」
「了解です。」
スタッフの指示に従い、トレーラー内のある専用ハンガーにGEOSを固定し、解除する。
「ふぅ、スバルもお疲れさん。」
「あぁ、お疲れ。」
同じトレーラー内のスバルに声をかける。
因みに、残りのGEOSは銀河と北斗が使っていた。
「この後は、会議室でミーティングか。」
「そうだな。」
トレーラーはグラウンドから移動し、駐車場へ。
そこでトレーラーから降りて、俺、スバル、銀河、北斗の4人は会議室に向かう。
「よし、そろったな。ミーティングを始める。」
俺達が会議室にきて、少ししたら織斑先生が入ってきて直ぐにミーティングが始まる。
今日の内容に対する、それぞれの感想などを述べていく。
「ふむ、こんなところか。」
一通り聞き終えた織斑先生。
手元のノートを閉じる。
「さて、本題に移ろうか。」
ん?本題?
「織斑先生、本題とは?」
「天野には知らされてない事で、そこの3人に関係する物だ。」
織斑先生がスバル、銀河、北斗を見ながら続ける。
「GEOSやEOSをIS学園で運用するに当り、入学時から整備技術科の生徒募集、そしてその中には男子生徒の募集も検討されている。」
「まさか…!」
「そうだ、その試験生として彼らを1組に入れる。」
俺が横に座る3人を見ると、頷いた。
「なかなか出来る体験じゃないよな。」
「今すぐって訳じゃないけど、近いうちにね。」
「僕はGEOSの初期開発から関わっているから、役に立てるだろうしな。」
銀河、北斗、スバルがそれぞれ口にする。
「今日はいないが、あとエリス・ウィラメットを含む4名が来月から本格的に入ってくる予定だ。」
「エリスまで…。」
自分の知らないところで色々と進んでいたようだ。
「最近は女性権利団体が幅をきかせ、男性を見下した女性が多くなってる。このIS学園の卒業生は特にそれが顕著だからな。それを早期に修正するため、学園を共学にする目的もある。」
「な、なるほど…。」
「しかし、試験生と言うのは表向きだ。」
「表向き…?と言うことは…。」
織斑先生の目が鋭くなる。
「そう。ここ最近頻発している亡国機業などの対応策の1つだ。非公式ではあるが、この3名は専用のGEOSを所持し、その即応性は専用機持ちに近い。」
「戦闘能力もデータウェポンを使えば第二世代機に勝てなくはないですしね。」
「そう言う事だ。今後、何かあれば天野、お前が中心になって動け。」
「なるほど、わかりました。」
「正式な発表は明日になる。あまり騒ぎ立てないようにな。」
「「「「はい。」」」」
「よろしい。今日はここまでだ。各々、準備はしっかりしておけよ。」
このまま軽く今後の予定を確認して、解散となった。
──
翌日、急遽全校集会が開かれ、織斑先生から共学化等に関して発表された。
いきなりの事で皆驚いていたが、1組のみんなは意外と受け入れてる感じだった。
「なぁ、星夜が昨日1日居なかったのは…。」
「GEOSはGEARの物だからな。そうもなるさ。」
「ねぇ、星夜はどんな人が来るか知ってるの?」
「シャル、悪いがそれは俺からは言えないんだよ。」
「まぁ、そうだよねぇ。」
そんな発表がされれば知っている俺に質問が集中するのも無理はない。
専用機持ちだけではなく、クラス全員が俺を囲んでいた。
「とりあえず、今回の件に関しては俺も少し聞いただけだし、答えられないから席に戻ってくれ。」
とは言え、流石に答える訳にもいかないので、こうしか言えないが。
「ちっ!やっぱり無理か~。」
「どんな人が来るんだろ…。」
「かっこいい人だといいなぁ~。」
クラスの皆が色々と言いながら席に戻って行く。
「皆さ~ん、おはようございます。」
タイミング良く山田先生が教室に入ってくる。
「朝から驚いてると思いますが、授業を始めますよー。」
今日もいつも通り授業が始まった。
今回はここまで。
さて、これで原作要素が薄くなって行くぞ~。
一応念のための補足ですが、銀河達が持つGコマンダーのGEOSと今回のGEOSは別物です。
スペックは全然低いです。電子格納も出来ません。
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