SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
グングニルとシルフィードが離陸してから10分程後、聞きなれない甲高いエンジン音が一体に響き渡る。
管制塔の指示を受け、まず着陸進入して来たのは8機のF-15C……それにヨルジア空軍向けの改良を施したF-15CJだ。
この機体はフライハイトにも配備されている為、見慣れているしエンジン音も聞き慣れている。だが聞き慣れないエンジン音はこの機体では無い。
F-15CJが全機駐機位置に着くと、次に降りてきたのは青の濃淡の迷彩の機体。本来フライハイトに配備されているはずもない機体だ。
その名はF-2A"バイパー・ゼロ"。
F-16Cをヨルジア空軍が再設計を施し、"パッと見た目以外、全てが違う"というレベルにまで魔改造してしまった世界最強の対艦番長である。
その機体にはASM-2B空対艦ミサイルを4発搭載出来、その状態で空中機動を軽々とこなし、
更に近年近代化改修を施し、レーザー誘導爆弾やJDAM、空対地ミサイルによる対地攻撃能力も付与された。
ヨルジア空軍の誇る
F-2Aも駐機位置に着くと、いよいよ聴き慣れない音が強くなる。
あらゆる箇所に同角の角度がつけられ、表面に凹凸の無いのっぺりとした機体。
灰色の制空迷彩、軽くスモークのかかったキャノピー。
その翼の下には、増槽以外何も見当たらない。
全ての戦闘機の頂点に立つ空の王者の猛禽類。
F-22A"ラプター"が、アルメリア空軍基地へと降りたのだ。
それに加えて、C-17ERが2機、滑走路に入る。
このC-17には戦闘機の活動に必要な物資や人員が乗っている。
「おっ、来た来た」
整備士のリゲルが駐機場の空きスペースに並んでいくヨルジア空軍機を眺める。
エアショーで無ければ見る事も出来ないであろうF-22Aが基地に一時的にでも配備されるという事で、一目見ようと人だかりが出来る。
F-22Aは最新鋭機で機密も多いが故、駐機場の最奥への駐機となる。
「あら、来たのね」
「あ、メアリィさん」
チーム・ヴァルキリーの1人、メアリィ・ローレンツもエンジン音を聞きつけてか格納庫へと姿を見せた。
いつものように柔らかく微笑んでいる。
「アルメリアだけでもこんなに沢山……豪勢ね」
「ゲオルギアが宣戦布告……ですからね、無理もないんじゃ……」
「そうね」
メアリィがそう言ってふふっと笑みを浮かべる。
「まぁ、問題が起きなければ___」
「おい!それ以上近づくな!」
リゲルがそう言った瞬間、ヨルジア空軍の駐機スペースから怒号が上がる。
何事かと思い声のする方へ向かうと、尻餅を着く1人のパイロットと小銃を持った兵士が揉めている様だ。
どうやらF-22Aに近づいたパイロットへの警告らしい。
F-22Aは最新鋭機故、機密も多い。その為エアショーや海外展開では必ずと言って良いほど、空軍基地警備隊の警備が着く。
部隊では無く"機体に"、だ。
現在F-22Aの周辺には見えるだけで30人超、実に1個小隊規模の警備兵が展開しているのだ。
「まぁまぁ、ミランダ、彼も悪気がある訳では無いんだし」
「い、いえしかし……」
ラプターから降りてきたパイロットが怒号を上げた警備兵を宥める様に声をかける。
身長は170cm位、黒髪がよく似合う青年だ。
その青年はソエル達に気がつくと、スタスタと歩いてくる。
「君達がチーム・ヴァルキリーかな?」
少し早口な口調でソエルとメアリィに話しかける。
質問にソエルは「はい」と頷いた。
すると青年はぴしりと綺麗な敬礼を決める。
「自分はヨルジア空軍第202戦闘飛行隊第2飛行班班長、ヒロキ・カザカミ中尉です。口下手で上手く言えないけど……その、これから暫くお世話になる。よろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「よろしく、カッコいいじゃない?」
「あ、いえ、からかわないで下さいよ」
メアリィがヒロキ中尉をからかうと、彼の背後から新しい声が降ってくる。
「フリーダム!集合だって!」
「あぁ!わかった!失礼、また後で正式に自己紹介がある様なので」
そう言って彼は集合場所へ向かう。
その間にも次々とC-17ERが着陸していく。
アルメリア空軍基地は3個飛行隊の展開する基地で、敷地はかなり広い。
そして、地理的にも"中央海防空の要"と言われる程重要度が高い。
ここに展開する部隊は……とソエルは展開予定表を思い出す。
第3レンジャー連隊第1大隊B中隊と、陸軍特殊航空支援大隊"コールド・スチール"……かな。
1年前、ヨルジア連邦共和国は多国籍軍と共にテロ組織"ドラグーン帝国"へ宣戦布告。
クーデターに便乗して数カ国を乗っ取ったテロ組織との開戦を
その際に組織されたのが第3レンジャー大隊だが、その後に後方攪乱作戦や遊撃戦の重要度が増し、QRFの強化を目的に特殊戦と通常戦の切り替えが可能な第3レンジャー連隊へと昇格させ、部隊規模も3倍程大きくなった。
無事、対テロ戦争は終結、現在はその国は反クーデター派を主導とした予備国軍が国防を担当しているらしい。
先述した通り、アルメリア空軍基地は広大な為、その分部隊展開の余裕がある。
そこで
C-17ERは全部で6機程、うち4機は隊員を下すと直ぐに離陸して行った。
どうやらここに配備されるのは2機だけらしい。
そして最後に進入して来たのが、ヨルジア統合特殊作戦群隷下、陸軍特殊航空支援大隊"コールド・スチール"のヘリコプターだ。
MH-60Mブラックホーク8機、MH-6Mリトルバード6機、MH-47Gチヌーク4機。
最後にSAR任務に投入されるパラレスキュー・ジャンパー1個分隊。
以上がこのアルメリア空軍基地に展開する"戦力"だ。
「聞いては居たけど、随分沢山来たわね……」
「ですね……」
メアリィが展開していく部隊を眺めていると、ソエルが何かに気づいた。
かなり奥まった場所だが、ちらりと見えた。
装備を抱えて輸送機から降りてきた隊員の中に、異なる形のヘルメットを持っている隊員がいる。
「……?」
その隊員達を目で追いかけたが、直ぐに配備直後の喧騒に飲まれて見えなくなった。
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「私はディック・ハドソン少将です。第2任務陸軍の指揮官として、この基地に派遣されました。失礼ですがエリオット少佐はいらっしゃいますでしょうか?」
ハドソン、と名乗った指揮官が陸軍の代表らしい。
鋭い目に一瞬怯んだソエルだが、気を持ち直して少将と対峙する。
「あ、いえ、エリオット隊長は今、将軍の娘さんの誕生日パーティーに招待されてて……」
「……そうですか。わかりました、帰りを待ちましょう」
と言って、ハドソン少将は、ヨルジア軍に充てがわれた格納庫隅の即席作戦司令室へと戻って行った。
次回更新は7/16 12:00です。