SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
その後、ソエルがフライトまでの暇潰しの為基地を歩いていると、意外なものを拾ってきた。
整備士、リゲル・フォーマルハウトの兄、シェダル・フォーマルハウトだ。
シェダルはゲオルギアで反政府レジスタンスのリーダーをやっているらしく、リゲルやヴァルキリーにいろいろな事を話した。
もちろんその場にはハドソン少将も。
ハドソン少将が腕を組んで唸る。
「なるほど……貴重な情報をありがとうシェダル。もし我々に協力出来る事があれば何でも言ってくれ」
「ありがとうございます、ハドソン少将。では……」
シェダルはそう言ってメインゲートまで歩き出そうとすると、遠方から黒い煙を引いてこちらに向かってくる飛行機がある。
気付いた隊員がざわざわと騒ぎ出す。
「お、おい!衛生兵!ドク・シュライク!PJ!」
「誰か!消火器持ってこい!」
格納庫の騒ぎが大きくなった頃、基地の整備士も気付いた。
煙を吹いて飛んできた飛行機___セスナはそのまま滑走路へ前のめりに不時着した。
炎を上げるセスナに群がったレンジャー隊員や基地の整備士が機体が白い泡に覆われるまで消火器を吹きかける。
PJの手によって救出された顔に、見覚えのある隊員も少なくなかった。
「貴様……っ!」
後方で誰かが激昂する声が聴こえたが、おそらくレンジャー隊員の中に解放作戦に参加した隊員が居たのだろう。
そう、セスナを操縦して来たのは___オペラ・グランツだったからだ。
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衛生兵の治療によって早くに意識を取り戻したオペラは、いろいろな事を話した。
曰く、傍受した無線から聞こえた「2人のエイルを捕らえた」から、アッシュとアレックスが捕らえられた可能性があるという事。
確かに、離陸から2時間以上、そろそろ戻っていてもおかしく無いはずなのに、一向にエンジン音は聴こえて来ない。
つまり___撃墜された可能性が高い。
その2人がアークと呼ばれる機密施設に連れて行かれた可能性が高い事。
アークはゲオルギアとフライハイト両国が資金を提供して運用している事。
その計画を聞いてオペラは恐ろしくなって、計画書を盗んで逃げ出した事。
その計画書が機体と共に燃えてしまった事。
ハドソン少将は再び腕を組み、唸る。
「……作戦の立案が必要なようだな」
そう低く呟く、その声色は、部屋にいる者を震え上がらせるような迫力があった。
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その日の夜、メインゲート付近に3人の人影があった。
エドワーズ・スコット、デリック・ハートマン、エイミー・ハングの3人だ。
夜風に当たるついでに、この基地を散策しようとデリックが言い出したのだ。
「気付かれてないみたいだなぁ」
「気付かれない方が良いんだけどな……」
そう、この3人はこの基地に来た事が1度だけある。
アルメリア空軍基地解放作戦。
空軍上層部の兵士がこの基地を襲撃し、エイルであるアッシュとアレックスを捕らえようとした事件。
エドワーズとデリック、エイミーは"シルバー・アローズ"として参加していた。
エドワーズはデリックとエイミーの後ろ姿を見ながら、胸元からペンダントを取り出す。
蓋を開けると、写真が埋め込まれていた。
1年前、とある作戦で戦死した、自分がその瞬間、恋をした1人の女性。
赤髪で快活そうに笑う彼女の印象は、今でも劣化していない。
笑い声、泣いた顔、戦死する瞬間、少しだけのプライベート。全てを鮮明に覚えている。
切り揃えられた彼の銀髪が夜風に吹かれて揺れる。
「?エドワーズ?どうした?」
「……っ、何でもない」
「もしかして……エメリアの事ですか?」
「……」
エドワーズの黙秘権行使、3人は沈黙に包まれる。
「……?あれ?あの人……」
空気を察したエイミーが目を反らすと、メインゲートに3人の人影が見える。
「あぁ……あの時の嬢ちゃんだな。あとはあの整備士と……あの女か……」
3人はメインゲートに近づき、エドワーズが声をかける。
「おーい、嬢ちゃん達、何やってる?」
ビクッとゲートの所に居た3人の肩が揺れる。
整備士と共に基地の外に出るのは……ソエル・ステュアート、そして、整備士リゲル・フォーマルハウト。
1年前と印象が変わっていない。
「カケオチかい?」
「ちっ、違います!」
デリックがからかうと、ソエルが顔を赤くして否定する。
「まぁ、だいたいは分かってる。アークに行くんでしょ?2人共」
エイミーの問いかけに対する2人からの反応はない、無言の肯定をしている様だった。
オペラはいつの間にか居なくなっている。
「行くなら、気をつけろよ」
「……え?」
止めない事を不思議に思ったのか、ソエルが声を上げる。
「司令官殿を待った方が良いとは思うが行く事自体は止めない、俺達もアークの情報を調べる……いや、今頃調べてる所だからな」
おそらく、ソエルとリゲルは何を言っているのか分からなくて頭の中は疑問符で一杯だろう。
だって彼らはその作戦を知らないのだから。
「ま、行くなら怒られない様にな」
エドワーズがそれだけ言うと、ソエルとリゲルは夜の闇に溶け込んでいった。
「NVGでも渡すべきでしたかね?」
「大丈夫だろ」
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夜の海を割って進む1つの黒い影があった。
原付の様なエンジン音を鳴らして海を進むのは、7mの
それに乗っているのは、合計6人の戦闘員。
全員がマルチカム・トロピックのコンバットシャツとコンバットパンツに身を包み、手には黒光りする小銃が握られている。
ボートが浜に乗り上げると素早く6人が降り、ボートは再び海へと消える。
ヨルジア海軍海兵隊第1海兵師団第1武装偵察中隊、通称"フォース・リーコン"より、選りすぐりの精鋭がこのボートには乗っている。
フォース・リーコンは特殊部隊に近いが、特殊部隊ではない。
あくまで任務である偵察を行った後の強襲は陸軍特殊部隊や、海軍特殊部隊"オルカ"に任せる事になっているからだ。
しかし、特殊部隊を投入するまでもない偵察戦闘などは行う事がある。
海兵隊特殊部隊
6人の内2人の手には、試験的に導入されているH&K SL-9SDが握られている。
このライフルはスポーツライフルから発展した軍用消音狙撃銃で、7.62×37mm亜音速弾を使用する為、驚く程音がしない。
「銃声」は、銃口から出る火薬の爆発音と弾丸が音速を超えた際の衝撃波による音だ。
そして、亜音速弾と
後の4人はM4A1BlockⅣにナイツサプレッサを取り付け、弾薬は5.56×45mm亜音速弾だ。
こちらも消音カスタムが施されている。
搭載している光学照準器は