SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
中へ通されたソエル達は、衝撃の事実を次々と知っていく。
ソエルは死んだと思っていた兄と敵として再会、そしてエイルを生み出した天才科学者はアレックスの父だった事、その父__アルメリアを襲撃したもう1人、パスカル・フォン・アルジャーノンが、世界樹ユグドラシルを枯らそうとしている事。
フライハイトとゲオルギアが、裏で何年も前から手を組んでいた事。
そして___世界樹ユグドラシルの根付く大陸、ワールドエンドの霧が晴れてしまった事。
「世界樹を枯らすなど聞いていないのだが」
「当然です、私は一言も言っていませんよ」
捕縛された後、買収した上層部のツテを頼りにここに戻ってきたパスカルはフライハイト空軍の准将___オズワルドの問いにそう答えてから白衣からアンプルを取り出す。
アンプルの中では濁った緑色の液体が揺れている。
「これは"ニーズホッグ"という細菌です」
マナを養分として増殖するその細菌は間違いなく世界を崩壊に導く代物だった。
世界樹ユグドラシルは自らのマナをエネルギーに生きている、つまり、ユグドラシルにニーズホッグが吸収されれば、ユグドラシルは枯れる。
ユグドラシルが枯れるという事はマナの放出が止まる。
マナをエネルギーとして動くものは機能を停止し、現代社会は崩壊の一途を辿る。
マナの技術を持っている国は、車や家電製品にすら万能なマナの技術を取り入れ、その技術は数多くの発展途上国も手にしている。逆にマナの技術が無いのは片手で数えられる程の国位だ。
「ふざけるな!ユグドラシルを枯らすなんてことは許さんぞ!我々は手を組んだ!吾輩が橋渡しをしてやったんだぞ⁉︎」
「手を組んだ?寝言は寝てから言っていただきたいですね。我々はフライハイトと手を組んだ覚えはありませんよ。ゲオルギアが宣戦布告したことを貴方は知らないのですか?ヨルジアが共闘しているとは言え、これで勝ち目がありますか?」
リモコンを操作してパスカルはモニターに映る映像を切り替える。
映されたのはゲオルギアの空軍基地だった。
MiG-29
2K22ツングースカ対空機関砲や
これがゲオルギア、圧倒的な軍事力を見せつけられたオズワルド准将が青ざめ、怒りか恐怖か、震え始める。
そして更に、ノワリーが戦死したパイロットの亡骸を部品として、負傷した箇所に取り込む"キメラ"だという事を知らされる。
ヴァルキリーには衝撃の真実が連続で明かされ、もう何が何だかわからない状態だ。
ソエルは生き別れの兄と感動の無い再会。
アッシュとアレックスは"エイル"。
ノワリーはキメラ。
そしてあろうことか、パスカルはノワリーの遺伝子欲しさに、ノワリーの婚約者であり、メアリィの姉であるシルヴィのクローンを作ろうと言い放ち、衝撃の矛先はメアリィにも向いた。
ブチ切れたソエルがクラッドに掴みかかり、クラッドがソエルを殴り飛ばそうとした腕をノワリーが止めた。
そこへパスカルが仲裁に入る。
「親子喧嘩はここでは無く、家でやって頂きたいですな」
騒ぎを起こした張本人が止めに入る程バカな事は無い。
頭のおかしい天才は、状況を引っ掻き回すだけ引っ掻き回す。
そして頭がいいだけ厄介だ。
パスカルはヴァルキリーを基地に送り届け、殺さない事だけを指示すると、部屋から出て行く。
その表情は不気味な笑みに歪んでいた。
「次に会った時は、僕と君は敵同士だ」
ソエルの兄、ノエルがそう宣言する。
「待てよ、ノエル」
アッシュがノエルを呼び止め、呼び止められたノエルが振り向く。
「あの時俺を墜としたのはお前か?」
「そうだよ」
「いい腕をしているな、敵同士なのが残念だぜ」
「僕もそう思うよ」
短い会話は終わり、数人の兵士に案内されてヴァルキリーは飛行場へ。
MV-22Bオスプレイに乗せられ、基地へと返される。
しかし、皆が去ったモニターの中で、異変が起きていた。
映し出されていた空軍基地の対空兵器が、一斉に爆発したのだ。
対空ミサイル、対空機関砲の全てが、だ。
一斉に沈黙した対空兵器を尻目に、降り注ぐミサイルが
管制塔も爆破され、航空機の離発着が不可能になる。
アラート・ハンガーが開いていき、中からMiG-29が2機、スクランブル発進していく。
滑走を始めた、中程まで進んでノーズ・ギアが浮き上がった瞬間にそのMiG-29が炎に包まれる。
航空機の残骸となったMiG-29が滑走路を滑っていく。
そして、駐機場に停まっている航空機に、見境無く爆弾が降り注いだ。
MiG-29が、MiG-31が、Tu-95が、Mi-28が、次々と爆散する。
最後にノイズを残し、映像は途切れた。
===========================
『ラフライダー2-4、
『了解、そのまま空域に留まってレーザーを照射し、弾着を確認しろ』
『了解、リン、行けるか?』
『大丈夫、問題無い』
前部座席に座ったカンタ・タカハシ中尉が操縦桿を操り、機を左旋回させる。
後部座席でスナイパーXRポッドに寄ってレーザーを照射し続けているのは、スズネ・シンガイ中尉だ。
ヨルジア海軍第1空母打撃群、旗艦である原子力空母CVN-21"しょうかく"より発艦した第1空母航空団第102空母戦闘飛行隊に所属するF/A-18F8機がペイブウェイレーザー誘導爆弾やMk82 500ポンド通常爆弾によって飛行場を爆撃したのだ。
ヨルジアよりゲオルギアへの挨拶代わり、と言えるだろう。
作戦は、まず海軍特殊部隊"オルカ"B中隊250人の兵士がゲオルギアの空軍基地を包囲し、対空兵器にC4爆薬を仕掛けて爆破、対空兵器を停止させる。
次に第1空母電子戦飛行隊のEA-18Gグラウラー4機が電子妨害を掛けつつレーダーシステムに対しAGM-88E
そして仕上げにF/A-18F 8機がGBU-16レーザー誘導爆弾によって飛行場に駐機されている航空機を爆撃、これから脅威になりうる存在を排除する。
そして今、レーザーを照射しているのは、遥か離れた海中に存在する潜水艦からのミサイル攻撃を誘導するためだ。
300km以上離れた海面を破り、BGM-109タクティカルトマホーク潜水艦発射型巡航ミサイルが12発、続いて8発が放たれた。
洋上でロケットブースターを切り離し、
まずは12発、兵舎や司令部、掩体に弾頭重量400kg以上の巡航ミサイルが突き刺さり、全てを消し飛ばす。
『ふん、喰らえ、ヨルジア海軍より愛を込めて、だ』
『愛、と言うより、怒り、かな?』
カンタの呟きをスズネがそう補足し、続いて侵入して来た第2波のミサイルを空軍基地は受け入れた。
愛と怒りの籠った海軍からの
『良し、任務完了だ。しょうかくCDCへ。ラフライダー隊、
『了解』
これから、厳しい戦いが始まるだろう。
そう腹を括った2人は、「制御された墜落」「洋上の落ち葉に降りる感覚」とも言われる空母の着艦を行う為、敵索敵レーダーを避けて低空を飛行して海へと戻って行った。
次回は7/28 12:00です。