SKY VALKYRIE & Silver Arrows   作:中井 修平

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威力偵察

「……行ったみたい」

 

「そうですね、仕掛けますか」

 

「ええ」

 

ソエル達がMV-22Bに乗り、離陸を確認。

ブリーチングツールの1つであるボルトカッターを取り出し、隊員の1人が金網へ近づく。

クリスタは金網に電流を流している電線を狙い、数発発砲。

7.62×37mm亜音速弾は命中すると小さく火花を散らす。

 

隊員が木の棒で軽く突き、通電がカットされているのを確認すると、ボルトカッターを使って金網を切断していく。

 

人が2人くらい通れる大きさにフェンスをカットすると、カットしたフェンスを外して放り投げる。

 

そしてリーコン隊員はワザとフェンスの外側から____内部を歩く兵士に向かって発砲した。

 

パスッ!パスパスッ!パパスッ!

 

7.62×37mm亜音速弾や5.56×45mm亜音速(サブソニック)弾が兵士数人の内臓を食い破り、頭に穴を開けて脳を掻き回す。

 

目の前で倒れた兵士が驚いて声を上げるが、上げた瞬間に頭部に亜音速弾がめり込んで倒れる。

 

叫んでから1分と14秒、施設全体に警報が鳴り響く。

それを合図にリーコン隊員の4人が突入、クリスタともう1人の狙撃兵は外で見張る。

突入した隊員達は敵の兵士や、時たま施設の壁などを撃っていく。

 

「カーム、後ろを」

 

「はいっ!」

 

カームと呼ばれた狙撃兵はクリスタが施設内を狙う間、後方を警戒する。

クリスタは突入した仲間に銃口を向けている敵を素早く発見し、消音ライフルで正確に弾丸を送り込む。

敵陣にはクリスタが撃った人数の死体が転がる。

10発撃った、弾切れだ。

 

「ローディング」

 

「カバー」

 

立ち位置を交換、クリスタが後ろに回り、カームがSL-9SDを施設に向け、発砲していく。

カームが撃っている間リロード。

空のマガジンを外してダンプポーチへ、新しいマガジンをポーチから取り出して装填、コッキングレバーを引いてボルトを戻して初弾を薬室に送り込む。

そして今度はクリスタが後方を警戒する。

 

「ローディング」

 

「OK、カバー」

 

カームがリロード、立ち位置交代。

丁度突入した隊員達がMK3A2攻撃手榴弾を投げ、最後の挑発、猛ダッシュで戻って来る。撤退準備だ。

 

偵察には2種類が存在する。

1つ目は、敵に発見されぬように敵の状況を観察して情報を集める「隠密偵察」

2つ目は、敵に挑発として小規模攻撃を仕掛け、ワザと反撃される事によって敵の戦力規模や配置を探る「威力偵察」だ。

今回の偵察は後者に当たる。

しかし、威力偵察は相手の反撃を甘んじて受ける事を前提としている為、撃破される前に撤退しなければならない。

 

敵の兵士が集まって来る前に森へと入る。

 

「クレイモア!」

 

「了解!」

 

隊員の1人がバックパックから大きめの弁当箱程もある箱を取り出す。

位置を決めて備え付けの脚を地面に突き刺し、リールからワイヤーをガジェットに繋げる。

 

「完了!」

 

「よし、次!」

 

そしてその場にM18スモークグレネードを投げ、白い煙幕を張って視界を遮る。

海岸に向かって走る。

クリスタが後ろに向けて数発発砲、煙の向こうから複数の悲鳴が上がる。

 

再び隊員の2人程が分散、同じ弁当箱の様な物を仕掛けてスモークグレネードを投げる。

狙撃兵含め全員分のスモークグレネードを使い切った、後は走るだけだ。

 

走りながら時折後ろに向けて発砲、こちらに注意を惹きつける。

そして____

 

「やれ!」

 

隊員が持つホチキスを数倍に大きくしたようなガジェットを2度握る。

 

バォン!

 

後ろから盛大な爆発音が響く。

仕掛けた弁当箱は、M18指向性対人散弾地雷。

爆発すると700個もの鉄球が扇状に散らばる、通称"クレイモア地雷"と呼ばれるものだ。

 

尚、ワイヤートラップ等を使用して人の手を介さずに罠として仕掛ければ対人地雷禁止条約の制限対象となるが、コードを用いて兵士の手によって起爆させれば無差別殺傷では無くなるため対象外となる。

 

バォン!

バォン!

 

続いて2発、3発と爆発が100m以上後方で立て続けに起こる。

仕掛けたクレイモアはすべて起爆した様だった。

隊員がガジェットを捨て、走り抜けて森を出ると、森の側を走る道に回収のMH-60S汎用ヘリが迎えに来ていた。

素早く乗り込み、ヘリは離陸する。

森から飛び出てフォース・リーコンに追いついたと思われる隊員が離陸したヘリに向かって発砲するが、ドアガンに搭載されていたM134D 7.62mmガトリング機関銃によって薙ぎ払われて血飛沫を上げる。

上昇するヘリのドアを閉める。

このまま撤退出来れば任務完了だが、そうは問屋が卸さない。

 

ゲオルギア側も追跡を出してきた。

機内にミサイル・アラートが鳴り響く。

 

「左旋回!」

 

とパイロットが叫びつつ、外ではフレアが放出される。

白い煙がフレアに惑わされてあらぬ方向へ逸れたが、発射元を見て驚愕。

東側最新鋭戦闘ヘリコプター、Mi-28ハヴォックだったからだ。

主力戦車を狩れる程強力な武装を持った戦闘ヘリコプター。

こちらは兵員輸送が主な目的の汎用ヘリコプター。

反撃しようにも、口径7.62mmのM134Dでどうにかなる相手ではない。

戦車を屠る事も出来る30mm機関砲が火を噴くが、ブラックホークのパイロットの腕も高く、機体を振り回して躱す。キャビンは掻き回されるが、ドアを閉めておいて良かった。

開け放っていれば、今頃みんな転落しているだろう。

 

ふとクリスタは、床を転げまわる荷物の中に、自分の頼んでおいたものがあったのを思い出す。

キョロキョロと見回すとそれはすぐに見つかった。

カバーを開けてそれを取り出す。

 

取り出したのは、バレットM82A3アンチマテリアル(対物)ライフル。

12.7×99mmNATO弾をセミオートマチックで発砲出来る狙撃銃だ。

マガジンに10発弾薬を入れ、銃に装填、コッキングレバーを引く。

それを見たリーコン隊員が目を見開く。

 

「曹長⁉︎12.7mmじゃどうにもなりませんよ⁉︎」

 

「ならなくない!やるの!」

 

「やるって……相手は空飛ぶ戦車です!前面風防でも機関砲弾に耐えます!コックピットのパイロットを狙撃しても……!」

 

「誰がコックピット狙うって?」

 

そう、クリスタはコックピットを狙い、パイロットを射殺するとは一言も言っていない。

 

「私が狙うのは、ATMよ!右側キャビンドアを奴に向けて!」

 

そうコックピットに叫び右側のキャビンドアを開ける。

開けたドアからM82A3の140cm以上というクリスタの身長に匹敵するほど長い銃身を突き出す。

ヘルメットに取り付けたAN/PVS-31双眼型暗視装置の左側だけを下ろし、右目でスコープを覗く。

呼吸を整え、神経を集中させる。

銃床(ストック)に頬付けし、ブレないように構える。

 

右側のキャビンドアから開けた視界にMi-28が大きく映る。

クリスタのスコープでは、既に捉えていた。

狙うのはスタブウイングに取り付けられた対戦車ミサイル。

 

未来位置予測、掌握。スコープのレティクルをそこに合わせる。

 

息を吸い、少し吐いて止める。

 

引き金に指をかけ、ゆっくりと力を入れる。

 

ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン!

 

セミオートマチックの対物ライフルは引き金を絞るたびに夜空に銃口炎(マズル・フラッシュ)が煌めき、クリスタの小さな身体が50口径の凄まじい反動に震える。

しかし、反動は完全に制御出来ている。

クリスタの親指より太い空薬莢がヘリの床に当たり金属音を奏で、開いたドアから海へと落ちる。

 

セミオートマチックで連射し、10発のマガジンを空にするまで撃った弾丸は、1発も狂う事なく初速853m/sで銃口を飛び出してミサイルの弾頭に喰らいつく。

 

400m離れた場所を飛んでいたMi-28の右側面が爆発、ミサイルの弾頭に使われていたTNT火薬が誘爆して破片がエンジンに突き刺さる。

 

コントロール不能に陥ったMi-28は黒煙を吹き出しながらぐるぐると回転し、海面へ叩きつけられて高く水飛沫を上げた。

 

「……よしっ」

 

追っ手は始末した、対物ライフルでこんな事を出来るのはヨルジア軍では彼女位しか居ない。

安心したクリスタ以下6名のフォースリーコンは安堵で顔を歪めたのだった。




次回更新は8/1の12:00です。
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