SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
「私は第2任務飛行隊隊長、アヤナ・イセガワ大佐です。今回派遣された空軍の指揮官として、出来る限りの事をやっていきます。フライハイトへの協力は惜しみません。どうぞ宜しくお願い致します」
チーム・ヴァルキリーの飛行隊室の中で、今回派遣されたヨルジア軍の挨拶が行われていた。
「ヨルジア軍の指揮官は女性か……」
アレックスがそう呟くと、アッシュがそれを拾う。
「ヨルジアは女性隊員の進出も盛んだからな。しかし指揮官、ましてや女性の大佐がいるなんて驚きだぜ」
アヤナ大佐が壇から降り、今度はハドソン少将が壇上に上がり挨拶をする。
ハドソン少将の挨拶が終わると、隊員同士の交流に入った。
「昨日挨拶させていただきました、ヒロキ・カザカミ中尉です。TACネームはフリーダム、コールサインは
「ミーティア隊は4人派遣されてます。ウィングマンのこちらはタケル・ニノミヤ中尉、TACネームはライダー。そちらは3番機を務めるケン・クリサワ中尉、TACネームはブラン。4番機のナルミ・ツバサ少尉、TACネームはフェネック。以上がミーティア隊です」
呼ばれた隊員が次々と会釈し、紹介する。
ソエルがヒロキに質問を投げた。
「あの、もう4人は……」
「あ、あぁ。えーっと……ぐぇっ」
ヒロキが潰れたカエルの様な声を出したのは突然ヘッドロックを決められたからだ。
「おいおいおーい、俺達を忘れられちゃ困るなぁ」
金髪のパイロットがヒロキの背後から襲い掛かる。
「は、ハルトマン大尉……忘れてませんよ」
ハルトマン、と呼ばれた金髪パイロットが自己紹介に入った。
「俺はエルヴィン・ハルトマン大尉、TACネームはライガー。コールサインは
「よろしく」
2人は手を差し出し、ヴァルキリーのメンバーと握手する。
残り2人も紹介された、TACネームでバロンとスカイだ。
この2人がブルームーン隊で、ラプター・パイロットは以上8名だ。
他にもF-2Aのバイパー隊編隊長のリョウ・ヒロサキ大尉や、F-15CJのパイロット、ユニス・フレミング中尉も紹介される。
それぞれのパイロットはこの基地の中で、既に交流を作り始めていたのだった。
===========================
エドワーズ達3人は隊員食堂で昼食を摂る事にしていた。
展開したレンジャー部隊も自前で給食チームを持っていたが、装備搬入に遅れが生じていた為、各自で食事を摂る様に通達があったのだ。
「チキンソテーか……旨そうだな」
「レグに派遣されてた時は猪の丸焼きとか出たからな……アルメリアの飯は旨そうだ」
トレーに載った昼食を受け取り、席に着く。
いつも様に食べ始めると、食堂内のテレビのニュースが流れてきた。
ゲオルギアの大統領が、フライハイトに戦線布告した映像は、ニュースによって繰り返し流されている。
画面は切り替わり、識者達の討論に入る。
「良いよな奴らは、安全な場所で持論をくっちゃべってりゃ金が貰えるし、のうのうと平和ボケした頭で生きられんだから」
「お前、今日は一段と皮肉が冴えてるな」
皮肉屋のデリックがテレビを観てそうボヤく。
「緊急事態だっていうのに、エリオット少佐は何をしているんだ?」
デリックの後ろで食事をしていたパイロットが不満を溢す。
CAPでも何でも出撃したいらしい。
この死にたがりめ……と思いながらエドワーズはフォークで鶏肉を口に運ぶ。
「怖気づいたんじゃないのか?エリートは挫折に弱いっていうしな。飛ぶ事の出来無い偉大な英雄様は実は弱虫野郎だったんだよ」
別の隊員がそう言って嘲笑し、周囲からは賛同の声が上がり、侮蔑の嵐は更に大きさを増していく。
ふとエドワーズが視線を上げると、1人のパイロットが憤りに震えていた。
今にも爆発しそうな感情を抱えた彼女は、この前基地を脱走していたソエルだ。
舌打ちをした、奴らは明らかに狙って言っている。
とうとう彼女の抱えるTNTが爆発した。
バンと言う音と共に机を叩いて立ち上がり、パイロット達が視線を浴びせた。
「違うわ!エリオット隊長はそんな人なんかじゃない!何も知らない癖に、知ったような事を言わないで!」
ソエルの金切り声が空気を斬り裂く。
彼女は手早く食器を片し、足早に食堂を去ろうとしたが、彼女が威嚇を飛ばした2人のパイロットが腕を掴んでいた。
「ちょっと待てよ、お前調子に乗ってるんじゃないか?」
「そうだな。エリオット少佐に可愛がられているからって浮かれてるんじゃねぇよ。夜のほうも可愛がられているんだろ?どんな声を出して喘ぐんだ?教えてくれよ」
この言葉にエドワーズ達の不快感は最高潮に達した。
エイミーが聞こえよがしに舌打ちをし、2人の注意を引く。
そして再び聞こえよがしにこう言い放った。
「下衆は下衆な勘繰りしか出来無いって本当ねぇ……」
「おいおい、止めてやれよ。所詮その程度の人間性だなんて周りに分かっちゃったら可哀想だろ?」
「そうね、ごめんなさい。自分が一流のパイロットだと思い込んでる奴の人間性がその程度だなんて、思わなかったから」
デリックがエイミーの独り言(っぽい皮肉)をフォロー(のつもり)し、エイミーが"デリックに"謝罪"する。
2人で皮肉も2倍だ、放っておけばバルカン砲並みの連射で皮肉が飛んでくる。
もともとエイミーはそこまで皮肉屋では無かったが、デリックと付き合ってからクールさに磨きがかかっている。
「何だとっ!」
「こいつ!」
その皮肉にわざわざ突っ掛かり、エイミーに後ろから殴りかかる2人のパイロット。
エイミーはそれを既に察知しており、手元にある食事用ナイフを床に投げる。
床板の隙間に綺麗に立って刺さったナイフはビィィン……と震える。
男のパワーが生み出す右ストレート、しかし特殊部隊の一員であるエイミーにはヘロヘロパンチに過ぎない。
席から立ち上がって左手で肘の部分を掴んで逆に接近し、密着。
脇の下から肩へ右腕を掴み、立ち位置を変える。
そこから一息で一本背負を極めた。
ドン!と床が跳ね、倒れたパイロットを直ぐさま腹這いにさせる。
背中の中心に膝を乗せて重心を押さえ、立てなくなる。
「痛っ……ゲホッ!」
「横見てみな」
パイロットが仰向けのまま恐る恐る首を右側へ回すと、首の頸動脈付近に先程投げたナイフが床に刺さっており、刃が首元に向いている。
それを見たパイロットは全身から変な汗をブワッと出す。
一方、デリックに殴りかかったパイロットは後頭部を狙ったらしいが、デリックは後ろを振り返らず、口笛を吹きながら首を振って躱す。
デリックの右肩から前方に突き抜けた腕は勢いのままだ、後ろから迫るパイロットの顔面に後頭部アタックを喰らわせて速攻で無力化する。
後頭部打ちも痛くない打ち方があり、その方法だ。
見事に鼻っ柱に命中した後頭部アタックによってパイロットが鼻血を流す。
「おいおいおい、何俺の女に手ェ出してんの?しかもお前鼻血って……俺の金髪が血で汚れたらどうすんのさ?」
「ぐっ……き、貴様ぁ!」
鼻血を流しながらパイロットがデリックの挑発に激昂する。
2人のパイロットが床に倒れるまで、エイミーがナイフを投げてから僅か3秒。
特殊部隊シルバー・アローズ、特に室内戦に秀でるA中隊を経験している彼らにとって、赤子の手をひねるような物だ。
と、そこに。
「何をしているか!」
食堂にハドソン少将、並びにレンジャー中隊の"鬼隊長"こと、ロバーツ・サレスティ大尉が入ってくる。
エドワーズ、デリック、エイミーは立ち上がって姿勢を正し、綺麗な敬礼をする。
サレスティ大尉がまずエイミーに問いかけ、彼女は答えた。
「サー、敵の急襲に遭遇し、止むを得ず自衛権を行使した次第であります!サー!」
次にデリックに向き直り、問いかける。
「デリック!貴様は⁉︎」
「何もしていません。ただ食事をしていたらパイロットが殴りかかってきたので、避けたらこうなりました」
デリックはそう答える。
エイミーは兎も角、デリックはほぼ何もしていない。
ハドソン少将は腕を組んで状況を把握し、低い声で話し出す。
「……我々はアルメリアを間借りしている身だ、3人共、騒ぎは起こすな。後で私の所に来い」
そして少将は倒れたパイロットに手を差し伸べる。
「君達も、私の部下が何か失礼な事をしたら遠慮無く言ってくれ」
「……う、は、はい……」
パイロット達はエイミーとデリックの皮肉を言わない。
それを言うと突き詰めて自分達に返って来ることを知っているからだ。
ハドソン少将が去ろうとしたその時、今度は警備兵が血相を変えて飛び込んでくる。
「た、大変だ!ブルーとエリオット少佐がエプロンで喧嘩してるぞ!」
風紀に煩いサレスティ大尉はなぜか頭を抱える。
食堂にいた大勢の隊員がエプロンに殺到していった。
次回更新は8/4 12:00です