SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
「お前に何がわかるんだ!」
エプロンから怒号が聞こえてくる。
昼食を終え、格納庫でアルメリアの戦闘機を見学していたブルームーン隊の1番機___TACネーム:ライガーこと、エルヴィン・ハルトマン大尉は、その怒号を聞きつけてそちらを振り向く。
どうやら、ヴァルキリーのパイロット、アッシュと隊長ノワリーが喧嘩をしているらしい。
ハルトマンは相棒のレオンハルト・バルクホルンと共にそちらに向かってみる。
駆け寄った時、アッシュがノワリーを組み伏せ、馬乗りになっているところだった。
「ファック‼︎できるとかできないとかの話じゃねぇんだよ‼︎あんたがキメラだろうがなんだろうがオレにはそんなもの関係ないんだよ‼︎動物だって空を飛んでいるんだ‼︎だから誰だって空を飛べる‼︎あんたは自分がキメラだっていうことを言い訳にして空から逃げているんだよ‼︎」
どうやらノワリーがキメラだから飛べない云々を口にして、アッシュにはそれが我慢ならなかったらしい。
「生きていくのが嫌なら今すぐ俺が墜としてやる、あんたみたいな弱虫野郎はヴァルキリーには必要無いからな!おい!グングニルとブリューナクを運んで来い!」
「ちょっとちょっとちょっと!」
割り込んで来たのはアヤナ・イセガワ大佐だ。
「2人とも何してるの⁉︎」
「うるせぇ!これはヴァルキリーの問題だ!余所者は引っ込んでろババァ!」
アッシュはアヤナ大佐にそう啖呵を切る。
するとアヤナはアッシュにつかつかと詰め寄り、アッシュの胸倉を掴む。
「余所者だから余計に気になるのよ!ヴァルキリーは個人主義集団なの⁉︎違うでしょ⁉︎現代戦にチームワークは必要不可欠よ!貴方はそれを学びなさい!」
アッシュの先程の発言は、明らかにチームワークを軽視した発言とも取れる。
アヤナはアッシュの胸倉から手を離し、溜息を吐く。
「でも、貴方達の誇りを賭けて決闘と言うのは面白いわね、私のチームにレフェリーをさせましょ」
それから、と一息置く。
「私は30にもなってないから、ババァにはまだ早いわ。覚えといて、次言ったらタダじゃおかない」
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レフェリーを任されたリョウ・ヒロサキ大尉はF-2のエンジンを始動していた。
F-2ならば、搭載しているスナイパーXR目標指示ポッドで機の動向を追える。
ヨルジアはマナの技術を持たない為、燃料しか気にする必要が無い。
600ガロン増槽を2本装備したF-2の計器チェックを終えたリョウは決闘を行う機を見る。
JAS-39EグリペンにF/A-18Eスーパーホーネット……グングニルとブリューナクと言ったか……
流石はフライハイトのマナの技術、脳波融合制御システムを作動させると、
本来、戦闘機は視認性の高い目立つ塗装はNG、ワックスがけなど以ての外で、この様な発色はされないが、ヴァルキリーの戦闘機はそれを補って余りある技量を持つ上、状況によってこれが光学迷彩の様な機能になりロービジになる為、問題は無いとされている。
『こちらアルメリア・タワー、バイパー
『
『パイロットとしての誇りをオレに見せつけてみろ。翼は誰の背中にもあるんだ。飾りが重すぎて飛べないのなら、そんな下らない物なんか捨てちまいな』
無線を繋ぎ、アッシュがそう挑発する。
リョウはスロットルのフラップを確認、10位置に下げ、揚力を得る様になっている。
『バイパー
発進コール、スロットル解放、フットブレーキを解除。
徐々に機体が加速し、その分Gも増加していく。
8秒程の滑走で離陸、大空へと舞い上がった。
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『バイパー
『
『
高度22000ft、戦いの火蓋は切って落とされる。
リョウはアフターバーナー点火、凄まじいパワーのエンジンが比較的軽い機体に推力を与え、グングン加速。
『Go』
そう言ってリョウは右手に握る操縦桿を引き、機首を天に向ける。
それと同時に、JAS-39EグリペンとF/A-18Eが左右に旋回、距離をとってヘッドオンで開始。
リョウは上空で左旋回しつつ、スナイパーXRポッドで観察する。
デルタ・カナードにより鋭い機動性を発揮する
強力なエンジンを2基備え、大きな機体を振り回す
巴戦から先に離脱したのはノワリーのブリューナク、アッシュのグングニルもそれを追うが、速度が出すぎている為このままではオーバーシュートする。
それに気付いたグングニルは
しかしまだグングニルの方が速い、グングニルはロールを打って更に速度を落とす。背後を取ろうとした瞬間、ブリューナクが右ロールを打ち減速。
驚いたブリューナクは急上昇でオーバーシュートを防いだ。
ハイGバレルロール。
敵が後方から高速接近してきた時の回避軌道で、ブレイク後に反対方向にロールする事で急減速し、相手を前方に押し出すことが出来るが、使いどころが難しく、下手をすればこちらが窮地に追い込まれる。
今度は逃げるグングニルをブリューナクが追う形になる。上昇し続けているせいか機速は落ちブリューナクとの相対速度は縮まっていく。
グングニルは操縦桿を戻し、ロールとピッチアップを繰り返す。が、ブリューナクはそれに追いすがる。
上昇して高度を取り、急降下してブリューナクを狙うグングニル。
その時、視界から突如ブリューナクが消えた。アッシュは冷静になって周りを見回すと、真下に急激な横滑りで急降下していくブリューナク___
しかし、グングニルはさらに
かけ返されたブリューナクはシザーズに入り、グングニルもオーバーシュートに気をつけながら旋回を繰り返す。
『すげぇな……』
リョウはスナイパーXRポッド、そして肉眼で空中戦を見ながらそう呟く。
ブリューナクが螺旋軌道を維持したまま急降下、グングニルはそれに追従する。
『マニューバ・キルのつもりか⁉︎地表に激突するぞ!』
グングニルは上昇離脱、しかしブリューナクは引き起こさない。
アルメリアの滑走路が迫る中、ブリューナクが不意に回線を開く。
『……お前の言うとおりだ。私は今まで空から逃げてきた、過去を言い訳にして飛ぶことを躊躇っていた。翼は誰の背中にもある。飾りを捨ててもパイロットとしての誇りは失わない。名誉も栄光もいらない。翼さえあればそれでいいんだ。もう一度この翼で――ブリューナクで空を飛んでみせる!』
その時、ブリューナクのアメジストパープルの光の輝きが増す。
2基のエンジンが噴火する、アフターバーナーに点火したのだ。
そのまま滑走路右手上空でハーフロールを打ち、主翼を垂直に立てて僅かな機首上げ。
超低空でナイフエッジをかまし、そのまま上昇していく。
地上で観戦していたパイロットが感嘆の声を漏らし、視線でブリューナクわ追う。
「凄い……」
「ナイフエッジのまま上昇するなんて……俺には出来ないよ」
ソエルとアレックスがそう呟く。
横で見ていたハルトマンとバルクホルンも声を漏らす。
「おぉ、あれをやるのが俺以外にいたとはな……」
「確かに」
ノワリーの操縦技術は本物だ。
もし彼がヨルジア空軍と模擬戦をやったとしても、勝てる者は僅かだろう。
エンジンから青い炎を吐き、ハイレートクライムで一気に高度を上げる。
グングニルとの距離を猛然と詰めるブリューナクを躱す様にエレベータ・アップ。
機体が背面になるのを待ち、インメルマン・ターン。しかし、ブリューナクも同じ機動を取る。
グングニルは上昇の頂点に達し、反転、離脱、旋回。
しかしブリューナクは完璧に追いすがり……
『おい、スプラッシュする必要は無いぜ、俺の負けだ』
『――いや、それは違う。私の負けだ』
『は?何を言ってるんだよ』
『ブルー、お前が私に空を飛ぶ勇気を与えてくれたんだ。だから礼を言わせてくれ』
『その勇気は最初からあんたの中にあったものだ。……俺は何もしちゃいない』
ブリューナクとグングニルが横に並ぶのを見て、リョウも機体を操り降下させる。
『ゲームセット、勝者ブリューナク』
リョウはそう通信を入れ、決闘は終了した。
次回更新は8/8 12:00です