SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
ゲオルギア陸軍の精鋭、トライスター機甲師団。
T-80U約80輌を始め、BMP-2やBTR-90、2K22ツングースカ自走高射機関砲、SA-8オサー地対空ミサイル等の装甲車約120輌で構成されている機械化部隊だ。
国境となっている河川の付近、河口から10km。だだっ広い平原に、このトライスター機甲師団が集結していた。
その戦力をまざまざと見せつけられたフライハイト陸軍の偵察兵が、双眼鏡を覗きながら唸りを上げる。
「うぅわスッゲェ……アレが攻めてくるんですか……」
「そうだな……でも俺らも負けてはいられねーぞ」
「そこの2人、ごちゃごちゃ喋ってないで本部に通信入れろ!」
「了解、こちらレコンズ01、敵が河川に集結中、もう直ぐ越境の可能性アリ、オーバー」
『了解、直ちに帰還せよ、オーバー』
「了解、帰還します、アウト」
3人のフライハイト偵察兵は、乗ってきた偵察車輌に乗り込み、その場を去っていった。
===12:00===
フライハイトの無人偵察機が、トライスター機甲師団の越境を確認後、撃墜された。
それを受けて、防衛線に配備されたフライハイト軍は戦闘準備を開始する。
国境付近の防衛線に配備されているのはフライハイト陸軍の戦車、レオパルト2A4と2A5。歩兵戦闘車のM2A3ブラッドレー。
各1個中隊、14両が戦線に整列している。
後方からは増援も向かっており、合流する手筈だ。
後方10km地点には、フライハイトの砲兵部隊が集結、M109パラディン自走砲や、M270MLRSが待機。
更に後方の野戦ヘリパッドからは、フライハイト陸軍航空隊のAH-64Dアパッチ・ロングボウが4機離陸した。
「全部隊へ、攻撃開始、繰り返す、攻撃開始」
防衛隊本部からそう通信が入り、戦端が開かれる。
そして戦車砲の射程に入る前に、フライハイト砲兵部隊が火を噴いた。
2個中隊12門のM109A6パラディンから、155mm砲弾が次々と撃ち出されていく。
同時に、8両のM270 MLRSからロケット弾が発射された。
M26ロケット弾は空中を飛翔した後、適当な高度で炸裂。内部に詰まったM77子弾644個をばら撒いて周辺を制圧する。
それらの砲弾や子弾が、一斉にトライスター機甲師団に襲い掛かったのだ。
M77子弾は装甲の厚い戦車には効果が薄かったが、装甲の薄い対空ミサイルや装甲車には効果があった。
更に降り注ぐ155mm砲弾の雨は、戦車に直撃弾があれば1発でT-80Uが潰れ、至近弾でも履帯が切れる・車体が横倒しになる等の威力を見せた。
続いては、フライハイト陸軍航空隊や空軍の近接航空支援だ。
4機のAH-64Dアパッチが空域に到着、AGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルで戦車やBMPを刈り取っていく。
「来るぞ!引きつけろ!」
フライハイト陸軍、レオパルト2A4の戦車長がそう指示を出す。
装填手が
操縦手は戦車のバイクのハンドルの様なハンドルを握り、指示がある場所に戦車を走らせられる様にスタンバイ。
射程に捉えた瞬間、車長が叫んだ。
「撃てェ」
ズドン!
ラインメタル製120mm滑腔砲から音速の3倍程のスピードで飛び出したダーツの矢の様な砲弾が、途中で
高性能FCSの補助によって命中したAPFSDSはT-80Uの装甲でマッシュルーム状に潰れ、最も厚い正面装甲をブチ抜いた。
T-80Uの車内では破片が飛び回り乗員を殺傷し、弾体は砲塔後部の弾薬庫に達して砲塔を丸ごと吹っ飛ばした。
「よし!命中!次弾装填!」
「了解!」
装填手が次弾のAPFSDSを取り出し、装填、閉鎖機を作動させる。
「装填完了!」
「撃て!」
重い衝撃と共に、再び120mm砲弾を撃つ。
APFSDSは少し逸れ、T-80Uの履帯に命中、行動不能にした。
「くそッ!もう1発!次弾
「Yes sir!」
「砲手は奴の砲塔と車体の隙間を狙え!」
「了解!」
敵戦車との距離は2000mを切る、ここまで来ると、T-80Uの砲弾でもこちらの正面装甲を貫通させられる可能性があるため注意だ。
バスル式弾薬庫から装填手が先端の平たいHEAT-FS弾を取り出し、装填。
砲手は狙いを定め、引き金に手をかける。
「撃て!」
120mmを撃つ。
初速900m/sで飛翔するHEAT-FS弾は見事敵戦車の砲塔と車体の隙間に命中。
命中するとHEAT弾の成形炸薬弾頭の信管に点火、進行方向に向かって凹んでいる成形炸薬が爆発する。
凹みに仕込まれた金属製ライナーが爆圧によって
「2両撃破!」
「でもこのまま突破されそうですよ!」
操縦手が車長にそう進言する。
その瞬間、隣のレオパルト2A4が被弾した。
『ぐっ!こ、こちらランナー1-3、正面装甲に被弾!しかし戦闘継続可能!このまま______」
隣のレオパルト2A4から通信、しかしそれ以上話す事は無かった。
2発、3発と集中砲火を受けた戦車は、耐え切れず爆散した。
『ランナー1-3が殺られた!』
『中隊本部より全車へ!兵力が違い過ぎる!敵車両群が
「了解!後退しろ!」
操縦手にそう命じると、操縦手は重さ59.7tのレオパルト2A4を動かし、後退を始めた。
「攻撃の手は緩めるな!撃て!」
「ッ!」
後退しつつ、砲弾を吐き出すレオパルト2A4や2A5。
近くにいるIFVのM2A3ブラッドレーも、TOW対戦車ミサイルで攻撃していく。
「⁉︎了解!本部からの通信だ!空軍からのCASが来るぞ!30秒後だ!」
『おおおおおおおっ!』
本部から空軍の近接航空支援が来るとの情報が入り、士気が高まる陸軍兵。
だがCASが来るまでの30秒は、耐えねばならない。
『こちらレイピア・リード、到着まで25秒、備えろ』
そう空軍機から通信だ、その間戦車部隊は後退全速だ。
「戦車はノロい」と思われがちだが、第3世代
それに近い速度で、全力で後退する。
『レイピア・リード、攻撃する、頭引っ込めろ!』
「了解!空軍機が来るぞォォォ!」
その瞬間、目の前の敵機甲師団が爆ぜた。
空中で何度も小爆発が起きその小爆発の下にいた戦車が次々と撃破されていく。
更に数発のミサイルが次々に敵機甲師団へ飛び込んで行き、周辺に展開していた2K22ツングースカ自走高射砲やSA-8オサー対空ミサイルが吹き飛んでいく。
ツングースカ自走高射砲など、機関砲を撃った直後だったが、関係なく粉砕された。
その爆発の上を、F-16Cが通過していく。その機体に描かれていた国籍マークはフライハイトの物だ。
そしてF-16Cが投下した爆弾は______CBU-97クラスター爆弾、通称
このSFWは弾体の中に10本のキャニスターが格納されており、投下後設定高度で弾体の外殻が割れ、中からキャニスターが飛び出す。
パラシュートで降下したキャニスターは、今度はロケットモーターに点火して回転しつつ、キャニスター1本から4つの"スキート"と呼ばれる子弾を射出さる。
"スキート"は射出された後、赤外線センサーとレーザーセンサーで敵を補足し、自己鍛造弾となって戦車の装甲の薄い部分へと突入する。
理論上は、1発で機甲師団を全滅させる事が出来る兵器だが、現実にはそうは行かない。
しかしそれを差し引いても2機のF-16から4発投下されたSFWで、T-80Uを32両、BMPを19両撃破した。
その後侵入してきた4機のF-16Cに搭載されていたAGM-114ブリムストーン空対地ミサイルにより、対空車輌は優先的に破壊された。
『こちらアヴェンジャー・リーダー、続いて攻撃進入する!』
再び通信だ、後方を見ると______進入してきた航空機が突然煙に包まれる。
そして、前方に視線を移すと、数両のT-80Uが真っ二つに引き裂かれていた。
そして後からバリバリバリ!と耳を劈く凄まじい音が。
独特のエンジン音を響かせて飛翔して来たのは、A-10CサンダーボルトⅡ。
国籍マークはヨルジア空軍の物だ。
対機甲戦力として、これ以上無い"戦車の天敵"だ。
アヴェンジャー隊1番機に搭乗しているのは、ヴェルナー・ルーデル中佐。
"ハンス・ウルリッヒ・ルーデル"の血を引く、ヨルジア空軍随一のタンクキラーである。
鬼に金棒、水を得た魚だ。
「機甲部隊が遭遇すると涙目になる組み合わせ」に遭遇したトライスター機甲師団は、後退を開始。
その勢いに乗ってフライハイト陸軍も前進を開始する。
と、トライスター機甲師団の横腹を突くように進撃して来た部隊がいる。
フライハイト陸軍の主力戦車、レオパルト2A4に良く似たシルエット______ヨルジア陸軍の主力戦車、90式戦車である。
『こちらヘヴィーハンマー1-1!支援する』
「こちらランナー1-1、助かったよ!」
トライスター機甲師団の横合いから突撃して来たヨルジア陸軍の戦力は、90式戦車14輌、89式装甲戦闘車14輌の各1個中隊。
進行間射撃で3000m先の目標に初弾命中させるFCSと、改良によりトレーを水平にする事なく再装填が可能となった自動装填装置により、正確に敵戦車を貫いていく。
『ヘヴィーハンマー・リードから各車へ!仕上げにかかるぞ。ヘヴィーハンマー1から1-4はフライハイト陸軍と挟撃!2-1から3-4までは反対側へトライスター機甲師団を追いやれ!』
『『『Yes sir!!』』』
そう言うと、中隊本部の2輌と第1小隊の4輌の90式戦車、同数の89式装甲戦闘車はフライハイト側へと進行、トライスター機甲師団を追い詰め、分断する。
一方、第2、第3小隊の8輌はゲオルギア側へ逃げる機甲師団の車輌を追跡、追い立てていく。
しかし、そちらは海側からの攻撃があった。
突然T-80Uが爆散、トライスター機甲師団の残党の車輌の注目がそちらに向く。
浜辺から平原に進撃して来る戦車隊______ヨルジア海軍海兵隊、第1海兵師団第1機甲大隊第1中隊だ。
洋上の強襲揚陸艦や輸送揚陸艦からエアクッション揚陸艇LCACにより陸揚げされていたのだ。
M1A2SEP V2 エイブラムス戦車14輌で構成された中隊で、ストーンヘンジ1-1のコールサインを持つ戦車長、マークス・ヴィットマン大尉は吼えた。
「さァ、教育してやるぞ!
「アイサァ!吶喊!」
操縦手のジャイコブがハンドルを捻ると、60t以上の車体が加速する。
トライスター機甲師団にとっては悪夢でしか無いだろう。
何せ2つに分断された上、前後から敵が襲い掛かって来るのだから。
引くも地獄進むも地獄である。
フライハイト陸軍、空軍。ヨルジア陸軍、空軍、海兵隊の活躍により、無傷だったトライスター機甲師団は開戦から2時間以内に1輌も残さず全滅させられた。
次回投稿は、9/2 12:00です。
お待たせしました、次回はいよいよ、部隊がワールドエンドの世界樹へと向かいます!