SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
ぜひお試し下さいませ。
輸送機の中でエドワーズ軍曹は、何時ものように作戦前の儀式として、目を閉じて呼吸を整える。
デリックとエイミーはいつも通りだ。
ヨルジア陸軍特殊部隊"シルバー・アローズ"、本来なら存在しない"D中隊"の部隊章をつけていた。
指揮をとるのは、ニコラ・ウィルキンス中佐だ。
ウィルキンス中佐率いる1個小隊30人、内1つの分隊にエドワーズ軍曹は参加している。
エドワーズ軍曹の分隊は、分隊長のハンナ・オークス曹長とデリック、エイミーの4人だ。
因みに向かい側のシートに座っているのは、アーロン・ヘイへ少尉。狙撃兵だ。
アーロン少尉率いる狙撃チームは、妹のクリスタ曹長、そして"レギュラスの悪夢"を生き残った、タクマ・ハシモト伍長と、バズ・フルート伍長だ。
『ダッシュ01、降下ポイントまで6分』
パイロットからの声を聞き、30人の隊員は装備の最終確認を行う。
ヘルメット、酸素マスク、
「立て!」
隊員の足元には、一緒に降下するが個人では持ち込めない様な降下装備コンテナが3つほど並んでいた。
「……で、何でクラッド大佐がここに……」
「仕方ないでしょう、ハドソン少将の指示で突然乗せることになったんだから」
エドワーズ軍曹はそうボヤくと、ハンナ曹長に咎められる。
そう、この輸送機には、フライハイト空軍のクラッド・エリオット大佐も搭乗していた。
クラッド大佐も、他の隊員と同じ様に空挺降下用の装備を身につけている。
まぁいい、訓練通り、作戦を遂行するだけだ。
この作戦は、公式記録には残らない。
"シルバー・アローズ D中隊"は、政府も群上層部も存在を否定している、存在しない部隊、都市伝説なのだから。
「降下降下降下!」
その合図と共に、30人全員はワールドエンドの空へと、コンテナごと飛び出した。
高度計の数値が狂った様に下を目指す。
まだ、パラシュートは開かない。
この降下は
『総員聞け!ヴァルキリーの戦闘機が4機、こちらに向かっている様だ!』
エドワーズ軍曹はギョッとする、となるとどこへ降りるかの再検討が必要になるかもしれない。
『こちらグローバルホーク、ヴァルキリーの2機が先行して着陸、4機ももう直ぐ到着する』
『こちらウィルキンス、作戦に変更無し、速やかに降下地点を確保し、敵を撃滅せよ』
中佐からの連絡、一切の容赦は不要というお達しだ。
もうそろそろパラシュートの開傘高度に到達する。
2000………1500………1000……800。
バサッ!と
他の隊員達もパラシュートを開いた様で、そこら中にパラシュートが咲いている。
降下速度が落ちる、このまま地上に降りられれば成功だ。
下を見ると、ゲオルギア連邦が国際仲裁裁判所の命令を無視して建設した滑走路が見える。降下ポイントはそこだ。
ゆっくりゆっくりと降りていき______着地。
5点着地で身体への負担を減らす。
着地後は素早く空挺降下用装備を身から外し、戦闘体制に移行する。
体に括り付けて固定していたタンカラーの自動小銃、FN SCAR-L Mk16を外して手に取り、コッキングレバーを引いて初弾を装填。
情報通り、既にヴァルキリーの戦闘機が2機______JAS-39Eグリペンと、F-15Eストライクイーグルが駐機してあった。
「1-2は橋を確保しろ!1-4、コンテナを!」
「了解!」
エドワーズ軍曹のいる分隊のコールサインは1-1だ。
1-2と1-4の2個分隊8人が、コンテナを持って滑走路と陸地を繋ぐ橋へと走り始める。
ワールドエンド、古来から、この地を求めて旅をする人、到達しようとする人は数多くいた。
しかし、その人々は例外なくワールドエンドを覆う霧に飲み込まれ、2度と戻らなかった。
しかし、霧が晴れた今、何人たりとも寄せ付けなかったワールドエンドが姿を現した。
ゲオルギアの埋め立てにより、すこし形が変わってしまっているものの、中心部に聳え立つ天まで届きそうな高い木。
「これが世界樹……」
「あぁ、ユグドラシルだ」
見上げたエドワーズ軍曹は思わずそう呟く。
その時、敵襲!と誰かが叫んだ。
考えるより早く身体が動く、身近なコンテナの陰に身を隠し、陰から様子を伺う。
橋に向かった1-2と1-4に、激しい銃撃を浴びせるのは、おそらくゲオルギアの兵士だろう。
エドワーズ軍曹はコンテナから身を乗り出し、レイルに搭載しているEOTech553ホロサイトで狙いを定め、引き金を引こうとした。
ダァーン!
1発の銃声、しかし撃ったのはエドワーズ軍曹では無い。
後方100m、狙撃チームのアーロン・ヘイへ少尉だ。
アーロン少尉は自慢のM24SWSから次々と.338
他の狙撃兵も見ているだけでは無い。
クリスタ・ヘイへ曹長は、手に持つFN SCAR Mk20に搭載しているスコープで狙いを定め、セミオートマチックながらアーロン少尉に次ぐ正確さで敵兵を撃ち抜く。
1-2も迎撃を開始、陸軍精鋭の名前は伊達ではなく、5倍程度の数なら余裕で切り抜けられる。
と、その時、通信が入る。
『ヴァルキリーの戦闘機が着陸体制に入る!備えろ!』
ウィルキンス中佐からだ。
次に聞こえてきたのはジェット機の轟音、2機の戦闘機がこちらに向かって来ているのだ。
そして見えた、アメジストパープルに発光するF/A-18Eと、ルビーレッドに発光するF-16Cの2機だ。
あの発光は間違いない、ヴァルキリーだ。
「着陸まで守れ!」
「了解!」
ハンナ曹長がそう叫ぶ。
ジェット音は更に近づき、着陸。
2機は既に降りていた2機に並ぶ様に駐機した。
ユニット1-1は戦闘機に最も近いところに居たため、すぐさまパイロットの安全を確保する。
パイロットがヘルメットを脱ぎ、飛び降りる。
「隊長!お怪我はありませんか⁉︎」
降り立った女性パイロットが、もう1人のパイロットに駆け寄る。
「あぁ、大丈夫だ、お前は?」
「大丈夫です!」
聞き覚えのある声……確認するまでもない、ヴァルキリーのパイロットの、ソエル・ステュアートと、ノワリー・エリオット少佐だ。
エドワーズ軍曹はその2人に駆け寄る。
「ご無事ですか」
ノワリー少佐にそう声をかけると、ノワリー少佐は少しだけ身構える。
しかし、彼は部隊名を言わないエドワーズ軍曹達に覚えがあったらしい、すぐに警戒心を解く。
そして、ソエル・ステュアートは、エドワーズ軍曹に縋った。
「アッシュ君とアレックス君の姿がどこにも見えないんです!お願いします!探して!」
エドワーズ軍曹はソエルを宥める。
「……わかりました、小隊長に進言致しましょう。許可が下りれば、同行します」
言うや否や、エドワーズ軍曹は無線を入れてウィルキンス中佐と連絡を取る。
「1-1より0-0へ。中佐、ヴァルキリーが、行方不明のパイロットの捜索に向かいたいと申し出ています。同行の許可を」
『こちら0-0、1-1へ、同行を許可する。俺達はこの飛行場を死守する。ただし回収時間までには戻れ、置いてけぼりになるぞ』
「了解」
エドワーズ軍曹は、改めてソエルに向き直る。
「許可は下りました、では、行きましょう」
ソエルは力強く頷き、ノワリー少佐も同意する。
ハンナ曹長、デリック、エイミーにも目配せすると、彼女達も頷いた。
コンテナの陰から飛び出すと、4人でヴァルキリーの2人を囲みながら移動を開始。
先頭のハンナ曹長と左側面に展開するエドワーズ軍曹は、こちらに銃を向けている敵だけを正確に射撃する。
橋へと到着、コンクリートの地面に薬莢が落ちる音がよく響いていた。
一旦停止で全方位警戒。
橋では、ユニット1-2と1-4が銃撃戦を展開している。
「ジェンキンス!頼んだぞ!」
「了解!行って下さい!」
元海軍特殊部隊"オルカ"の水中工作隊で、シルバー・アローズC中隊に引き抜かれたジェンキンス准尉に声をかけ、全長270mの橋を渡る。
橋を渡ると、ワールドエンドの大陸だ。
コンクリート製のブロックの陰から、AK47自動小銃を出して銃撃している敵兵が、見える範囲で7人程。
3人程が纏まってバリケードから銃撃している。
エイミーとデリックがそのバリケードに牽制射撃、頭を引っ込めさせる。
ハンナ曹長は、ベルトのポーチからM67
よくフィクションではピンを口で抜く描写があるが、実際にやれば歯が全部消え去るのは間違いない。
レバーが飛び、敵に投げ返されないタイミングを見計らって投擲、丁度バリケードの裏側で爆発した。
「前進」
「了解」
身を隠していたバリケードから1-1が前進、既に倒れている敵から武器を遠ざけ、虫の息の敵には胸に2発頭に1発の5.56mmNATO弾を叩き込んで確実にトドメを刺す。
「おっ、発見発見」
デリック軍曹が倒れた敵兵から何かを拾う。
何と、彼らはM249MINIMI paraを装備していたのだ。
「どっから手に入れたんだ?こいつら……」
ベルトリンクが捻じ切れていないか確認。
デリック軍曹はM249MINIMIを取った。彼は元々、こう言ったマシンガン系の重火器担当だ。
「デリック!早くしろ!」
「了解!」
早速拾ったM249の
SAW______分隊支援火器の強みを生かし、バリバリと制圧射撃を行っていく。
エドワーズ軍曹やハンナ曹長も、FN SCAR-L Mk16の狙いをつけ、セミオートマチックで射撃、敵兵士を射殺していく。
「クリア!」
「クリア!」
「クリア!」
「オールクリア!」
橋の大陸側の敵兵は一掃した。
後はヴァルキリーの逸れた2人を探すだけだ。
「デリック、エイミーと共に奥を捜索してくれ、俺とハンナは______」
「きゃああぁぁっ!」
捜索の為に分隊を2つに分けようとしたが、悲鳴に遮られる。
特殊部隊員の物ではない、ヴァルキリーのパイロット、ソエルの悲鳴だ。
振り向くと、ソエルが触手のように蠢めく木の根に巻きつかれている。
「ステュアート!」
ノワリー少佐がその根に飛びついて、ソエルに巻きつく木の根を引き剥がそうとしている。
反射的に根に銃を向けるが、下手に撃つとソエル達に弾丸が当たるから撃てない。
そうしている間にも、木の根は蠢き続け______
ついには、ソエルとノワリー少佐は飲み込まれてしまった。
「……マジかよ……」
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