SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
「いや、待て、この穴……奥まで続いているんじゃないか?」
エドワーズ、エイミー、デリック、ハンナは、その穴に駆け寄る。
穴は1.5m程で縦に長い楕円形、奥は暗くて見えない。
穴の中に小銃を向け、バーティカルフォアグリップに取り付けている
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どうやら穴は緩やかな傾斜を描き、途中で曲がっている為その奥は不明だ。
「……行くしかない」
ハンナがそう言うと、3人は無言で頷く。
エイミーが先頭を、デリック、ハンナ、エドワーズと続いて穴に入った。
エドワーズは、穴に入った直後、無線で本部と交信する。
「1-1より0-0、ユグドラシル内部に潜入、捜索に向かう。念の為狙撃隊を内部に急行させて下さい」
『了解、狙撃隊を向かわせ______ザザッ』
ノイズが入る。地下に入ったから電波状態が良くないみたいだ。
足を滑らせない様に注意し、MERRELL MOAB-MID XCRトレッキングブーツのソールを木の根に食い込ませながら慎重に奥へと下る。
恐らく最も下であろう場所に到着した。
声は……木の根が音を吸収・撹乱させる為、わからない。
ユグドラシルが水を吸い上げる音なのか、ヴァルキリーの話し声なのか……
『ファック!どれだけ広いんだよ!』
「……!」
声が、確かに聞こえた。
聞き覚えがある……確かアルメリアで聞いた……チーム・ヴァルキリーのアッシュ・ブルーの声だ。
「(ちっ……暗視装置持って来ればよかったな……)」
エドワーズは声に出さずに呟く。
ライトで照らしながらゆっくりと前進していく。
すると、前方に光が。どうやら出口か、あそこがユグドラシル中枢に繋がっているらしい。
先頭を行くエイミーがハンドサイン。
「(壁に寄れ、敵兵、歩哨2名)」だ。
ハンナはハンドサインで返す。
「(静かに殺せ)」
逆光で見えにくいが、確実に敵は2人、銃______H&K HK33を持っている。
あの光の向こうにいるヴァルキリーを捕縛、もしくは暗殺しようとしている奴だろう。
エイミーは
1本は"コンバット・カランビット"。全体的に湾曲しているシルエットが特徴のナイフだ。
もう1本は彼女の自作スローイングナイフ______名付けるとしたら、"クナイ"だろう。
東洋の"忍者"が使っていたというスローイングナイフだ。
エイミーは左手にカランビットを持ち、右手でクナイを構える。
タイミングを見計らってクナイを投擲、同時に走り出す。
側頭部にクナイが突き刺さった敵兵がその場に倒れる。
そして左手に逆手持ちで構えたカランビットナイフを振り抜いて素早く首を切り裂く。
1回目で動脈、2回目で声帯を切られた敵兵は、声をあげる事も無く絶命した。
出口にへばりつき、様子を伺う。
コロッセオを思わせる空間には、アッシュ・ブルーを始め4人のヴァルキリーメンバー、そして今回の戦争の引き起こさせた張本人とも言える存在……パスカル・フォン・アルジャーノンが居る。……が、彼らだけではない。
武装した兵士が、木の根に隠れているのがチラチラと見えるのだ。
「(……木の根に隠れてる奴らがいるな……パスカルの私兵か?)」
「(戦闘のプロでもただドンパチやるだけの素人の隠れ方だな、バレバレだぜ)」
「……君達!」
無音声でエドワーズ達に声がかけられる。
条件反射的に銃を向けると、一緒に降下して来たクラッド・エリオット大佐がそこにいた。
「何故ついて来た……!」
「パスカルを止める為だ、彼を止めるには私が出るしかない」
と言って飛び出そうとするのをハンナが止める。
そんな5人を知ってか知らずか、ヴァルキリーの4人とパスカルは構わず話を続けている。
いつの間にか、パスカルの手には注射器が握られていた。
「人類の始祖であるアダムとイヴが、エデンの園を追い出された話を君たちも知っているだろう? 愚かな行為だと嘆く者も多いが私は大いに感謝している。原罪を背負った代わりに人類は『知恵』というものを得た。世界中に存在する生物の中で優れた頭脳を持つ者は人間だからね。私の目的は永遠に枯れないユグドラシルを生み出すことだよ」
「訳が分からないことを言って誤魔化すつもりですか⁉︎永遠に枯れないユグドラシルなんて、創れるわけないわ!」
「ソエルの意見に賛成するぜ!いい歳をした大人がガキみたいな夢物語を語ってるんじゃねぇよ!」
どうやら、パスカルの言う「プロジェクト・エデン」は、あの"
だが、その為には膨大な養分が必要、70億を超える人類の大半を犠牲に、パスカルは新たな創造主になろうとしているのだ。
「私が……パスカルを止めねば!」
「あ、おい!」
ハンナの手を振り払い、飛び出して行ってしまったクラッド大佐。
「……〜ぁあ、クッソ!各員攻撃態勢!」
「「「了解」」」
エドワーズは隠れた私兵にライフルを向け
エイミーは死んだ敵兵から引き抜いたクナイを再び投擲態勢に入り
デリックもM249paraからSCARに持ち替えて狙いを定め
ハンナは見える範囲の敵を銃を構えながら索敵する。
パスカルはその間に、注射器のカバーを外す。
「さあ、楽園が復活する時だ。君たちと70億の命を取り込んだユグドラシルは生まれ変わり進化する。そして永久にマナを生み出し続けるだろう。新しい世界の創造に貢献できることを光栄に思いたまえ」
「――そんなことはさせんぞ、パスカル」
飛び出したクラッド大佐は、ホルスターに入っている拳銃______ベレッタM92Fに手をかけて、いつでも引き抜けるように脱力している。
そのままヴァルキリーの4人を通り過ぎ、パスカルと向き合う。
「これはこれは……エリオット大佐ではありませんか。こんな辺境の地においでになるとは、いったいどうやって?」
「答える義理はないが質問に答えるのが礼儀だろう。パラシュートで降下した。それだけだ」
「ほう、勇気があるお方だ。それでご用件はなんですかな?」
「決まっている」
クラッド・エリオット大佐はホルスターから拳銃を抜き、ワンハンドで構えた拳銃の銃口をパスカルの白衣の胸に突き付けた。
その瞬間、木の根に隠れていたパスカルの私兵がぞろぞろと出てきた。
ここで突入は愚策だ。敵はHK33自動小銃で全員武装、ノコノコ出て行けば蜂の巣にされる。
だからこそ、クラッド大佐が出ていったのに4人は苛立っていた。
奇襲のタイミングをずらされたからだ。
「息子を取り戻しに来た、ユグドラシルの餌にはさせんぞ」
ノワリー少佐はそれに驚き、クラッドは薄気味悪くニヤリと笑う。
「おや、大佐はノワリー君を毛嫌いしていたはず。どういう風の吹き回しですか?」
「……貴様には関係ない。私が間違っていた、それだけだ」
「親の愛に目覚めたというわけですか。そんな物騒な物を突きつけても無駄ですよ。古典的な脅しには屈しませんからね」
パスカルは、物々しい拳銃を目の前にしてもピクリとも怯えず、しかし一歩ずつ後退る。
それを追うように、クラッド大佐は一歩ずつ距離を詰める。
「私を殺したら誰がニーズホッグを止めるんですか?この子の扱い方は私しか知らないんですよ?」
「その時はその時だ。今は貴様を止めるのが先決だ」
「――愚かな人だ」
パスカルが注射器をユグドラシルの中枢である木の根に突き刺す___________
事は出来なかった。
1発の銃声と同時に、注射器がバリンと音を立てて砕ける。
そしてパスカルの指に、プラ製の注射器の小さな破片が幾つか突き刺さった。
件の"ニーズホッグ"は、注入される事なく、根に掛かるだけに留まった。
「ぐっ……⁉︎」
パスカルが手を押さえてしゃがみこむ。
「⁉︎撃て!」
私兵の銃口はエドワーズ達ではない、反対側の上へと向けられた。
上は、光が漏れている。
その光の1つ、木の根に寄りかかり、ライフルを構えている。
アーロン・ヘイへ少尉率いる、狙撃チームだ。
隣に腰をかける
「兄貴、命中、注射器は喪失」
「目標
私兵はようやくアーロン少尉とクリスタ曹長を見つけて銃撃を開始するが、最初の弾丸が木に当たる時には既に2人はそこには居ない。
しかも、フルオートマチックで闇雲に撃っているだけだ。あれでは特殊戦訓練を受けた彼らには当たらない。
それをチャンスと見たのか、クラッド大佐、ノワリー少佐、アッシュ、アレックスの4人でパスカルを取り押さえようとするが、対人戦の訓練を積んだ私兵の前に、パイロットは無力であった。あっという間に反撃、捕獲される。私兵の1人が銃声に怯んでいたソエルに銃を突きつけ、4人に並ばせようとする。
その瞬間、特殊部隊の4人は行動を開始した。
次回の更新は、9/11 12:00です。