SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
HH-60Gペイブホーク機内。
「リンゲル液注射、加圧パンツ装備させろ」
「了解」
ヒビキ曹長の指揮の下、PJ隊員が手際よく応急処置を行う。
HH-60Gペイブホークは、元々こう言った医療の装備が整っている機だ。
その為、こうしてヨルジア空軍の特殊救難コマンドに配備されている他、他国でも救難部隊に配備される事が多い。
今マルクス軍曹が装備させたショック・パンツという加圧パンツは、多量の出血でショック状態になった負傷者に使用し、血圧を維持するものだ。
空気注入を必要としない簡易型で、下半身圧迫によって約1000mlの輸血と同じ効果がある。
ただし使用時間は1時間程度と決められている。
そしてリンゲル液によって細胞外液の補給を行い、胸の銃創にチェスト・シールを貼る。
このチェスト・シールで胸部の銃創により破損した肺が潰れて呼吸困難になるのを防ぐのだ。
そしてドレッシングと言われるガーゼ類で傷口を覆い、体内への細菌の侵入を防ぐ。
更にエアウェイによる気道を確保する。
これだけやれば、
心電図が異様な反応を見せる。
「拙い……心肺停止だ!電気ショック!」
ヒビキ曹長はそう言うとマルクス軍曹が電気ショックキットを取り出し、胸に押し当てる。
「離れて!」
マルクス軍曹がそう叫び、皆が触れていない事を確認すると、スイッチを入れる。
バシッ!と音と共にノワリーの身体が跳る。
ヒビキ曹長が胸骨圧迫を開始。胸の中心を、肋骨が折れそうな位______最低でも5cm以上沈み込む様に両腕に体重を乗せて、1点を圧迫する。
30回繰り返すと、ノワリー少佐の口に人工呼吸用の器具を装着し、人工呼吸を行う。
肺に充分な空気が行き渡る様に人工呼吸を2回ほど繰り返し、胸骨圧迫を再開。
3セットほど繰り返し、ようやく心電図が正常な反応をキャッチした。
「……血液型がわかんねぇと輸血が出来んな……」
「ええ、ドッグタグがあれば分かるんですけどね……リンゲル液とショック・パンツでは限度がありますし……」
空軍のパイロットは基本的に、ドッグタグを付けない。
陸軍兵や海兵隊員等、地上で戦う兵士は、被弾等で後方に送る際の輸血がスムーズに行く様にドッグタグを下げる決まりがある。
それがないノワリーの治療は難航しそうだ……と誰もが再び緊張感を高めた。
HH-60Gペイブホークは、整った医療機材のある輸送艦、LSD-401"しんとう"に着艦する。
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フライハイトとゲオルギアの国境で、陸続きになっているのは3箇所。
内1つは、大規模な戦車戦が行われた平原で、残りは2つ。
ゼルサットの街は、アルメリアからも程近い。
更に既にゲオルギアの手が入り、占領下に置かれていると言う。
その為、この街はアルメリアを拠点にしていた第3レンジャー連隊第1大隊が強襲、奪還する事になっている。
アルメリアのB中隊と、その他の基地に展開していたA、Cの中隊と合流する。
もう1つは地峡にある砦だ。
この地峡は2度の大戦に渡ってゲオルギアとアルメリアが激しい攻防戦を繰り広げて来た場所で、海側と内陸に2つの要塞がある。
この要塞でも戦闘が勃発し、越境してきたゲオルギア軍とフライハイト陸軍の守備隊との攻防戦が続いていると言う。
この地峡が取られれば、ゲオルギア軍の補給線となり、攻撃し難い地形から危なげなく侵攻出来てしまう。
ヨルジア緊急即応部隊の1つ第1空挺旅団と第2空挺旅団が、この要塞を確保することになった。
近隣のフライハイト陸軍駐屯地からは、大規模な機械化部隊が送られてくる為、それまで持ちこたえられれば良いのだ。
先行していたフライハイト・ヨルジア連合の戦闘機部隊が、敵の防空施設や対空兵装、飛行場を爆撃し、空挺部隊の脅威を潰していく。
フライハイトに展開中だった第1空挺旅団第1大隊・3個中隊が3機のMC-130Hコンバット・タロンⅡに乗って、第2空挺旅団第1大隊2個中隊がヘリで、フライハイト陸軍特殊部隊と共にその要塞へと向かっていった。
『降下5分前!』
『ゴルーグ1番機、コース良し、コース良し!用意……降下!降下!降下!』
号令と共にパラシュートを背負った空挺隊員が空へと飛び出していく。
機外に飛び出た瞬間、パラシュートが開く。
高度500m以下、時速300km以下で飛行するMC-130Hから、スタティック・ライン降下によって600人の空挺隊員が大空へパラシュートの花を咲かせた。
着陸後は、速やかに戦闘態勢に入り、第1空挺旅団はその日の夕方までには要塞を全て制圧した。
第1空挺旅団が降下したのと同時刻、第2空挺旅団は海側の要塞へとヘリで向かっていた。
ヨルジアのCH-47が6機、フライハイトのUH-60Mが6機。
そしてその支援に回るのは、ヨルジア陸軍のAOH-1"アサシン"軽攻撃ヘリコプター4機と、8機のフライハイト陸軍のAH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプター。
この戦争はフライハイトの戦争、ヨルジアばかりが矢面に立っては示しがつかない。
主役はUH-60Mブラックホークに搭乗するフライハイト陸軍特殊部隊、CH-47に搭乗するヨルジア陸軍第2空挺旅団の隊員達の任務は、要塞の周辺にヘリボーン降下し、敵の増援と逃亡をシャットアウトする事だ。
フライハイト空軍の戦闘機から、対空兵装の掃討は終わったとの通信が入る。
見ると、F-16Cが翼を振って合図して来るではないか、これほど頼もしいものは無い。
要塞の上空へと到達すると、対空兵装を潰されたゲオルギア兵士がKord重機関銃やDShk重機関銃によって対空砲火を上げるが、アパッチのAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルやM230 30mmチェーンガンがそれを沈黙させる。
原型のOH-1"ニンジャ"譲りの、軽々と器用な機動で飛ぶAOH-1"アサシン"も、GAU-19/A 12.7mmガトリング機関銃を掃射して機関銃陣地や対戦車砲などを刈り取って行く。
お陰で全ヘリコプターは降下位置につくことが出来た。
ヨルジア陸軍第2空挺旅団はCH-47Fの後部ハッチと下部ハッチから合計3本のロープを落とし、ファストロープ降下で40人の小隊を降下させていく。
要塞の門を制圧し、その上をUH-60Mが通過、内部の屋上にロープを下ろし、隊員を降下、制圧していく。
ヨルジア陸軍の空挺旅団が装備する小銃はFN SCAR-L Mk16だ。
タンカラーのライフルを発砲し、門に殺到する敵を射殺していく。
更に分隊の支援火器手が持つM249MINIMI PIPで掃射、そこへ中隊機関銃手のM240E6の重い銃声が加わる。
ゲオルギアの陸軍兵を掃討し終えたのはその日の午後。
夕方には、後方から来たフライハイト陸軍機械化部隊と合流した。
そしてもう1ヶ所、攻略すべき場所がある。ゼルサットの市街地だ。
こちらに向かっているのは、アルメリアに駐屯していた部隊______ヨルジア陸軍第3レンジャー連隊である。
次回、9/20 12:00の更新です。
次回活躍するのは、レンジャー部隊です。