SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
ワールドエンドでの戦闘が終結してから1ヶ月と少し。
アルメリアに駐留しているヨルジア軍の部隊は、その後も小規模な戦闘に駆り出された。
やはり、懸念していた継戦派のメンバーがフライハイトやゲオルギアでクーデター未遂を企てていた。
その中で特に大きかったのはオズワルド准将の派閥が企てたクーデター未遂事件だろう。
彼は軍需産業と癒着し、戦争を継続させる代わりに利益の一部を受けていたのだという。
何しろ、オズワルド准将は他の継戦派と結託し、戦闘機まで保有していたと言うのだから驚きだ。
もっとも正規軍は殆ど居なかったので(F-16Cか4機程)、スクラップヤードから引っ張り出したF-4EやF-5E、そしてあろう事かゲオルギアの部隊の一部を引き抜いてMiG-29まで装備していた。
ヨルジア軍は素早く反応、本国から2機のB-2爆撃機を投入した。
黒いハンペンが空を飛び、その護衛にはF-22Aが着いた。
先行するF-35Aの部隊が空軍特殊部隊"CCT"の爆撃誘導により、2000ポンドのLJDAMを投下、対空兵器を沈黙させる。
スクランブルに上がってきたオズワルド派の戦闘機は、F-22Aが遠距離からAMRAAMで叩き落とし、それでも尚接近する敵機はドッグファイトで撃墜した。
B-2、F-22A、F-35Aのステルス機のみで構成されたステルス・ストライク・パッケージは、1機も損害を出す事無くオズワルド派のシェルター上空に到達。
B-2機体下部のウェポン・ベイの扉を開ける。
爆撃誘導のCCT隊員がGPSの座標を転送して誘導を開始。
兵装庫から投下されたのは______GBU-57、MOPと呼ばれる
空気を裂いて滑空したMOPは誘導翼によって誘導位置まで正確に移動、重力に従って落下し、地面に激突した。
突き刺さった弾頭は山腹の地下70mまでめり込み、そこで爆発。地下司令部を丸ごと吹き飛ばしたのだ。
続いて2発、3発と2機のB-2から合計4発ものMOPが投下され、オズワルド派の継戦勢力は准将含めほぼ全員が空爆によって殺害された。
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基地が慌しい。
さっきから隊員達がバタバタと走り回っている。
その隊員達は口々に目覚めただの何だのと言っているが、要領を得ない。
ヒロキ中尉は間借りしている宿舎の廊下を走るアレックスを呼び止めた。
「アレックス、一体何の騒ぎだ?」
「あっ、ヒロキ中尉。た、隊長が……!ノワリー隊長が……!」
ヒロキは最初、死んだかと思い、顔面蒼白となったが、逆だった。
「ノワリー少佐が、目を覚ましたんです!」
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詳しい話は後にヴァルキリーのパイロットから聞いた。
目を覚ましてから最初の一言は「心配をかけてすまなかった」だったと言う。
仲間を思いやる気持ちの強いノワリー少佐らしい一言で皆を安心させたらしい。
その後はアッシュと軽口を叩き合い、いつもの調子に戻ったと言う。
今日は、ヨルジア軍のメンバーが見舞いに行く日だ。
ヴァルキリーのパイロットは日替わりで毎日見舞いに来ている、今日も午前中は来ていたと言う。
今日はハルトマン大尉とバルクホルン大尉、ヒロキ中尉の3人がノワリー少佐を見舞う日だ。
3人が病室のドアを開ける。
目が覚めてからチューブを全部外す事が出来たノワリー少佐は、バスローブの様な白い病院着を着てベッドで上体を起こしていた。
「少佐」
「あぁ、ハルトマン大尉か。すまないな、迷惑をかけた」
「いえ、ヴァルキリーと一緒に飛べるのも光栄ですし、楽しいですから」
現在、ノワリー少佐が入院中の文、駐留しているヨルジア空軍が一部の任務を肩代わりしている。
現在撤兵が進んでいるヨルジア統合派遣軍。他の部隊では規模はまちまちだが、少しずつ撤兵が始まっている。
その中でもまだ撤兵が始まっていないのが、アルメリアに駐留している第2任務飛行隊だ。
アヤナ大佐が統合派遣軍の将軍に事情を話し、認可を貰って駐留期限を延ばしている。ヨルジア・フライハイト両軍の参謀本部も認めている。
撤兵開始期限は「ノワリー少佐がヴァルキリーに復帰するまで」だ。
「あ、お土産です。基地の近くに美味しい洋菓子屋見つけたんで買って来ました」
「ありがとう、一応食器類は一通り揃ってるからな。お茶を淹れて一緒に食べないか?」
「おっ、それは嬉しいお誘いですね。ではありがたく……中尉、お茶淹れて!」
バルクホルン大尉がそう言いながらパチンと指を鳴らす。
「またですか?まぁ良いですけど」
バルクホルン大尉に文句を垂れつつも紅茶を入れ始めるヒロキ中尉。
ヒロキ中尉の紅茶の腕は並より少し上くらいだが、どう頑張っても苦味しか出ないバルクホルン大尉よりは遥かにマシだ。
ノワリー少佐はアップルパイ、ハルトマン大尉はチーズケーキ、バルクホルン大尉はフルーツタルト、ヒロキ中尉はチョコレートケーキを選んだ。
「ノワリー少佐はアップルパイがお好きだったんですね」
ハルトマン大尉の質問にノワリー少佐が答える。
「あぁ……実は、亡くなったシルヴィが、よく作ってくれてな……手放しで美味いと言える物では無かったが、私の中では最高のアップルパイだった」
「……すみません」
ヒロキ中尉が悪い事を聞いたと言った感じで謝ったが、ノワリー少佐に気にした様子は無かった。
「6年も前の事だ、君達が謝る必要は無い。……それに、私が撃たれて意識不明だった時、夢とは言えシルヴィに会えた……伝えたい事は伝えられたんだ、『まだ
「ほう……つまり撃たれて意識不明の中だったけど、恋人に会えて嬉しかったと?」
「……そう言い換える事も、出来なくは無いかな?ははは」
ノワリー少佐の言葉にハルトマン大尉はニコリとしながら茶化したようにそう言い、少佐も乗っかって笑う。
「良いですね、例え離れていても、そうやってそうやって心が通じ合える。現界と冥界となんて、最も距離の離れた遠距離恋愛ですからね」
「その分、会うのが楽しみになるんじゃ無いか?次会うのは自分が旅立つ時だけど」
ヒロキ中尉とバルクホルン大尉もそう言い、場を和ませる。
ノワリー少佐はアップルパイをフォークで一口大に切り、味わいながらシルヴィの作ってくれたアップルパイを思い出す。
下手ながらも、一生懸命作ってくれたアップルパイ。
ノワリー少佐はそれを思い出して涙ぐむが、堪えた。
「時に少佐、撤兵する時の件ですが……」
そう唐突に切り出すハルトマン大尉。
ノワリー少佐はその言葉を予想していなかったらしく、少しだけ驚いた表情を浮かべるが、落ち着きを払った声で答える。
「そうだな……近日中には退院出来るだろうから、でももう少し待って頂け無いだろうか?」
「ええ、それは良いのですが……提案がありまして」
ハルトマン大尉は咳払いをし、改まって話を切り出した。
「……ハドソン少将から"パイロットへの自衛火器のレクチャー"、そしてアヤナ大佐から"模擬空中戦"の申し出がありました。もし少佐がよろしければですが、撤兵時にこれらを行いたいと」
「なるほど……」
ノワリー少佐は手を顎に当てて考え込む。
実際、ヴァルキリーのパイロットがユグドラシルで銃を使った時の______実際に使ったのはクラッド大佐とアレックスだけだったが______
今後緊急脱出したパイロット達が敵地で銃器を使い、自衛戦闘を行う可能性もある。
そういった観点から、パイロットにもガン・ハンドリングを教え込もう、という訳だ。
実際にヨルジア空軍では、パイロットも拳銃の実弾射撃訓練を1ヶ月に1回行う事を義務付けられている。
パイロットでも、「狙って撃てる」まで出来るようにならなければ、戦場では生き残れない。
「……よぅし分かった、ヨルジア軍の銃器レクチャーと模擬戦、やろう」
「ありがとうございます、大佐と少将には伝えておきます」
「私も君たちとの模擬戦、楽しみにしているよ」
ハルトマン大尉はノワリー少佐からの許可を取り付け、安堵した様に微笑む。
その後、ケーキを食べながら様々な話をし、食器を片付けて病室を後にした。