SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
そしてその日。
アルメリアには、珍しく銃声が響いていた。
ここは、基地警備隊や展開した陸上部隊が射撃訓練を実施する基地の端の射撃場。
ヴァルキリーのパイロットが集められ、銃のレクチャーを受けている。
あの後、ノワリー少佐は無事退院、2週間程空から離れていた。
旅行で心と体を休め、癒し、英気を養って再び戻って来たのだ。
そして変わった事といえば、オペラ・グランツがアルメリア基地司令となった事、ノエル・ステュアートが新たなヴァルキリーになった事だ。
教官として立つのは、ニコラ・ウィルキンス中佐だ。
「現在フライハイト軍で正式採用されている拳銃は、このベレッタM92Fだ。至ってスタンダードな拳銃だが扱う際に注意すべき点は、バレルがスライドに覆われていないから、強度不足の心配がある点だ」
ウィルキンス中佐は弾倉、弾薬が入っていない拳銃で説明をする。
「
一通りの説明を聞くと射撃場のレーンに並ぶ。
ソエルが並んだレーンには、エドワーズが居た。
「あの、よろしくお願いします」
「おう、よろしく。じゃあまず拳銃の持ち方だがー」
エドワーズはソエルに拳銃を持たせる、もちろん弾倉は装填されていない。
「よく刑事ドラマである、左手を下に添えるカップアンドソーサーグリップは反動を受けきれない。グリップを握った右手に重ねるように左手を添えるんだ」
ソエルは言われた通りに拳銃のグリップを握り、構える。
構え方は両腕が二等辺三角形の辺になる様に構える"アソセレス・スタンス"だ。
「力はさほど入れなくて良い、ただ反動が来るから反動は受け流す様にするんだ」
「は、はい」
「狙いのつけ方はフロントサイトとリアサイトが一直線になる様にして、均一になる様に……片目は瞑るな、目標は最後まで見るんだ。それから引き金は"引く"じゃなく"絞る"感じに」
瞑りかけた目を開き、目標は最後まで見る、引き金は絞る……と声に出さず反芻する。
そしてソエルは引き金に指をかけ、ゆっくりと絞った。
パン!
ベレッタM92Fの銃口から弾丸が飛び出し、銃声を奏でる。
同時に強い反動がかかり、手が跳ね上げられそうになった。
「……最初にしては上出来だ。2点圏、上に逸れてる」
20m先のペーパーターゲットの上部に1つの弾痕が穿たれている。
ソエルはホッと息を吐いた。
レクチャーを受けた通り、引き金から指を離す。
「じゃあもう1発撃ってみようか」
「はい……」
狙いを調整、反動が来る事に備え、引き金に指をかけてゆっくりと絞った。
銃声、反動。空薬莢が宙を舞う。
「……お見事、4点圏だ。続いて2発3発と撃ってみようか」
言われてソエルは再びアソセレス・スタンスで拳銃を構える、発砲していく。
弾丸はペーパーターゲットを容易く引き裂き、見る間にボロボロにしていった。
ソエルの持つM92Fはスライドが後退したまま止まった。
安全対策の為にソエルは
「あ、あの、これはどうすれば……」
「あぁ、これはホールドオープンと言って、撃ち切ったらこうなるんだ。そう言う時の対処法は……」
エドワーズは言いながら2本目の
「グリップの右側、中指あたりにあるボタンはマガジンリリース・ボタンだ。それを押すとマガジンが外せる。外したマガジンは自重で落下するから気を付けて」
言われたソエルは頷きながらマガジンリリース・ボタンを押し、出て来たマガジンを手で受け止める。
「そしたら新しいマガジンをグリップの下の挿入口から差し込んで、スライドストップを押すんだ。スライドストップはここ」
エドワーズから差し出された新しい
「う、撃ちます」
そう言ってソエルはM92Fを構える。
再び銃声と共に発砲、弾丸は見事に標的の中心を捉える。
「お見事」
再びソエルはホッとした表情を浮かべる。それを今度は的に的確に命中するまで練習させた。
「まぁ、こんなものだろ。初めてにしては良いんじゃないか?」
エドワーズがソエルを褒め、ソエルはその言葉を素直に受け取る。
向こうではアッシュも訓練している、ソエルはそちらに視線をチラリと向け、エドワーズに再び向きなおる。
「ありがとうございました、ところで、その……」
ソエルは最後に気になった事をエドワーズに問い掛ける、喉に刺さった小骨のように、ずっと引っかかっていた疑問。
「……門のところ以外で、何処かでお会いしましたか?」
エドワーズは少し驚いた表情を浮かべるがすぐに取り繕い、微笑み返す。
「……さぁ?会ったかな?」
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「お見事だ」
「……ふん」
目の前の標的には、3点圏に2つ、真ん中に1つ命中痕があった。
別のレーン、デリックがアッシュに対して拳銃の射撃指導を行っていた。
アッシュは何度かの射撃を行い、真ん中に当てる。
「ただ……」
デリックは難しい表情を浮かべる。
理由はアッシュの射撃姿勢だ。
身体を斜めに向け、片手で構える拳銃の撃ち方は"ワンハッデット・スタンス"と呼ばれるが、これは違う。
「これだと前方投影面積が大きくなるから撃たれた時の被弾面積が増える、それから片手で撃つと銃がぶれて命中率は下がる。しっかり構えて撃て」
「……当たってるから良いだろ……」
アッシュは不機嫌な声を上げるが、銃を使って戦うデリックはやはり首を横に振った。
「当てれば良いと言うのは正しいが、当たるまで撃てば弾が無駄になる。弾も無限にある訳じゃ無いからな」
「……チッ……」
軽く舌打ちをするアッシュに苦笑いを返すデリック。
「んで、どう構えんだ?」
「おう、まずスタンダードなアソセレス・スタンスだ。2本の腕が拳銃を頂点に二等辺三角形を描く様に構えろ」
アッシュは言われた通りに構え、拳銃を頂点に腕で二等辺三角形を作る。
「視界が広く取れるし、安定するだろ?」
「……上下にブレる、どっちの目で照準して良いか分からん……」
「利き目でいい、あ、片目を瞑るなよ?」
「……分かった、撃つぞ?」
「ああ、良いぞ」
デリックはアッシュが撃つと言うと標的に目を向ける。
フロントサイトとリアサイトにある白い点を横一列に並ぶ様に構え、引き金を絞る様に引いた。
パァン!
拳銃弾特有の甲高い銃声、スライドが
コンクリートの地面に空薬莢が落ち、澄んだ金属音を奏でる。
弾丸はほぼ音速で飛んで行き、標的の4点圏、つまり真ん中より少し外れた場所に当たって砕ける。
「上手いな、安定するだろ?」
「もっと安定した構えは無いのか?」
「現状ではその構え方が視野角と安定性の最小公倍数だ、安定する構えを取るのだとすれば……」
デリックはそう言ってもう1つの構え"ウィーバー・スタンス"で拳銃を構える。
拳銃を持つ手を真っ直ぐ伸ばして突っ張り、もう1つ手をグリップに添えて引き寄せる。こちらの方は見た事あると言う方も多いだろう。
「視野角は捨てる事になるが、これが1番安定する」
「ふむ……」
アッシュは見様見真似でウィーバー・スタンスを取り、拳銃を構える。
「左手はここだ」
「ここか?」
細かな修正を入れられ、銃が安定する。
再び甲高い銃声と共に弾丸が射出、スライドはブローバック、空薬莢排出と一連の流れを拳銃は流れる様に行い、0.5秒後には既に射撃前の状態に戻っている。
「ナイスショット、どうだ?
「寝言は寝て言え」
デリックは第3レンジャー連隊として現地入りしている、レンジャー連隊も
それを一蹴するアッシュにデリックは苦笑した。
その後、
「そう言えば……」
「ん?」
訓練集合後、アッシュは唐突にデリックに問い掛ける。
「どっかで会った事、あるか?」
デリックはいつもの笑顔を貼り付けたまま微笑んで返す。
「さぁな」
久し振りの投稿……遅れて申し訳ない……