SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
「コンタクト!真正面!」
司令部の廊下で銃撃戦が勃発する。
素早く遮蔽物を見つけ、隠れる4人。
パパパと軽い音から、相手の武装は9×19mm弾を使うサブマシンガンの様だった。
エドワーズは遮蔽物から身を乗り出し、
この間、0.3秒。
セミオートマチックで発砲された5.56×45mmNATO弾は音速の3倍に達し、敵の肩を貫くと薬莢が落ちる金属音が鳴る。
壁の向こうから悲鳴が上がる、1名ダウン。
エドワーズはライフルを構えたまま
こうする事で、狭い通路でも火力を上げる事ができる。
エドワーズはデリックとエイミーにハンドサイン、2人はその場で銃を構えつつ待機、エドワーズとロイが前へ出る。
通路奥には更に3人、走りながらセミオート射撃。1発も外さずに眉間を撃ち抜いた。
相手が見た最期の光景は、4つ目をした異形の怪物らしき人物だった。
最初に撃った相手にもトドメを刺し、確実に仕留める。
銃声を聞きつけやってきた相手もまるでカモだ。
シルバー・アローズ、銀の矢。
その戦闘を見たものはこう言うだろう。
「キルマシーン」「走る銃座」
厳しすぎる訓練を突破した隊員は、何の躊躇いも無く相手を射殺していく。
そうでなければ、仲間が殺られる、国が殺られる。
そういった感情が、彼らから迷いや躊躇いを消しているのだ。
部屋の一つへ突入、1部屋の制圧に掛ける時間は長くて4秒だ。
5人の敵兵士を確認、セミオートマチックで発砲する。
暗闇で相手より早く引き金を引く。
暗視装置を通して
ライフル弾は寸分の違いも無く相手の頭部を撃ち抜き、脳幹を破壊して2度と動かぬ屍へと変えていく。
「クリア!」
「クリア!」
掃除完了、もうその部屋に用はない。
階段へ出る、こちら側は明るい為暗視装置は要らない。
マウントをスイングさせて4つ目の暗視装置を上に跳ね上げる。
階段で再び交戦、敵は3名。
4発発砲、ワザと壁を撃ち、敵を足止めする。
丁度エドワーズのSCARが弾切れを起こす。
「リロード」
「カバー」
ロイとデリックがカバーに出る。
マガジンキャッチを押して弾の切れた弾倉を抜き、ダンプポーチへ入れる。
ベルト左側の5.56/7.62ポーチから1本予備弾倉を抜き、再装填。
ボルトストップを押し、ボルトが前進すれば薬室に初弾が送り込まれ、再装填完了だ。
「OK」
「ローディング」
「カバー、フラッシュバンを使う」
今度はデリックが再装填、エドワーズはデリックが再装填を終わるのを待って背中のフラッシュバンを取ってもらい、ピンを抜いて投げる。
弾体は1度壁にぶつかり、床へ転がる。
敵は175デシベルの爆音と240万カンデラの閃光を浴び、目と耳が使用不能に。
その隙に階段を飛び降り、敵の銃を蹴り飛ばす。
武器を奪い、鳩尾に一発拳を入れる。
オークリー社のパイロットグローブのナックルガードが威力を発揮し、敵を一撃で沈めた。
残りの奴も仲間が沈める。
蹴り飛ばした銃はH&K社製のMP5A4だった。
「卑怯者が使うには、贅沢過ぎるオモチャだな」
エドワーズはそう低く呟く。
縛った相手をその場に残し、先へと進む。
階段を下り、執務室へと向かう。
執務室前で警護に立っていたボディーガードと思しきスーツの人物を3人発見、執務室からは人の気配。
ハンドサイン、ボディーガードはこちらに気づいていない。
エドワーズはロイに自身の首を2本の指で指し首の前で両手首をクロスさせる。
ロイは頷き、銃から手を離す。
暗闇に紛れ、音を立てずにゆっくり接近する。
間合いに入った。
ロイとデリックが2人の男に飛びつき、後ろから本気で首を絞める。
首の骨が折れるくらいに力を入れ、音も無く相手を殺す。
抵抗して暴れるが、ヘルメットで頭突きを喰らわして衝撃を与えると、段々と抵抗が収まり、力無く腕が垂れた。
エイミーは構えていたナイフをボディーガードの耳に突き立てる。
ただのナイフであれば重大な後遺症はあれど生き残れたかもしれなが、このナイフもただのナイフではない。
スイッチオン。
グリップ内の炭酸ガスがナイフの刃先に空いた小さな切り欠き状の穴から噴出し、ガスが送り込まれる。
瞬間、ボディーガードの頭が弾け飛んだ。
このナイフは"ワスプナイフ"という特殊なナイフで、元々水中でサメと戦う用のナイフで、現在は熊狩りのハンターと航空機パイロットにしか販売されていない。
スイッチを押すと、刃先から炭酸ガスが噴出し、体内にガスを送り込んで臓物を傷つけるという恐ろしいナイフだ。
有名な動画サイトでは、西瓜に刺したワスプナイフのスイッチを入れると西瓜にが粉々に弾ける動画がアップされている。
不運にもエイミーがナイフマニアであった為、ボディーガードの1人はこのような最期を迎える事になった。
エドワーズとエイミーは聞き耳を立てる。
JFIAの情報にあった"チーム・ヴァルキリー"のメンバー、それから高圧的な女の声もする。
執務室の鍵の位置を確認、デリックがショットガンを持ち出す。
エドワーズはSCARを構え、指でカウントをとる。
3……2……1……
ブリーチャー・ショットガンで鍵を吹き飛ばし、エドワーズがドアを蹴破った。
構図としては、かなり荒らされている執務室に両手を挙げて座らされている3人のチーム・ヴァルキリー。
そして、その3人に拳銃を向ける女。
エドワーズは小数点以下の速さで銃を構え、女が構えている拳銃の銃口付近を狙って発砲。バキン!という金属音と共に女の手から拳銃が弾かれる。
「動くな!」
エドワーズの怒声にヴァルキリーのメンバーがビクリと震える。
尚も拳銃に手を伸ばす女から拳銃を蹴って遠ざけ、手が出ないようにする。
エイミーが女を殴り倒し、拘束する。
「名と所属を名乗れ!」
馬乗りになったエイミーが女の後頭部に拳銃を突きつけながら言う。
「お……オペラ・グランツ、フライハイト空軍、技術研究本部の科学者……貴方達……何者……」
「お前に答える義務は無い、やはり空軍上層部の者か……」
エイミーがオペラ・グランツと名乗った女のボディーチェックをする。
男が触ればこいつはセクハラだと喚くだろう、しかし同性のエイミーならその心配は無い。
ポケットに危険物や爆弾のスイッチが無いか確認、全てを調べてから拘束する。
エドワーズが弾かれた拳銃を拾う。
弾丸を受け、銃口付近は大きく形が変わってしまっているが、特徴的なロータリーバレルと手にしっくり馴染むグリップから銃を特定する。
「ベレッタ社製のPx4か……女性が持つにはぴったりの銃だ……」
だが、と言ってエドワーズは振り向く。
その双眸に鋭い光を灯して。
「お前の様な、自国を護る誇りある軍人に簡単に矛先を向ける様な奴が持っていて良い代物じゃ無い」
エドワーズはグリップからマガジンを抜き、大きく変形したスライドを分解して薬室から弾丸を抜き取る。
「あの……」
人質となっていた"チーム・ヴァルキリー"のメンバーの中の女性が口を開く。
「貴方達は……」
エドワーズ達の素性を聞く質問だった。
「我々の素性を明かす事は出来ません、貴方方を救出に来た者、としか」
エドワーズはそう答えると、無線を入れる。
「フライハイト空軍の科学者を拘束、チーム・ヴァルキリー3人を救出した」
『ナイスだ
「了解」
司令部内の掃討を続けているK1-4へと無線を繋ぎ、捕虜を回収しつつ格納庫へ向かう様に指示。
「では、我々は格納庫へ向かいます。仲間が撤収作業を行うと思いますので……」
「俺も行きます」
「わ、私も行きます!」
チーム・ヴァルキリー3人の内2人が付いて来るという。
格納庫で拉致されている仲間の身を案じての事だろうか。
「エリオット隊長は?」
「私はここに残る、後から行くよ」
エリオットと呼ばれた隊長らしき人物はここに残るらしい。
正直、3人ともここに残って欲しかった。
何故なら合流までに接敵する可能性があるからだ。
チーム・ヴァルキリーを危険な目に会わせる訳にはいかなかったが、ヴァルキリーの少女の瞳には何か断りきれないものが宿っていた。
「……わかりました、そこまで言うのなら……しかし接敵する可能性があります、それは覚悟して下さい」
2人は頷く。
拘束を終え、両腕を後ろに縛られたグランツをエイミーが立ち上がらせる。
「では、遺体の処理と捕虜の回収は我々が行いますので」
隊長が頭を下げ、エドワーズ達は執務室を出た。
菱形に展開し、先頭はエドワーズ、後方はデリック、左右はロイとエイミー、その中心にヴァルキリーの2人とグランツ。
エドワーズ、エイミー、ロイは正面に銃を向け、デリックは後方に銃を向ける。
廊下前方からドヤドヤと複数人の足音が接近。
「伏せろ!」
エイミーが3人を伏せさせる。
エドワーズとロイが前方に発砲、弾丸は壁を抉る。
目の前に何かが転がって来た。
レモンの様な形をした_____M26手榴弾だ。
ロイはこれに素早く反応、セミオートを手榴弾に当てて弾く。
弾かれた手榴弾は廊下の奥へ消え、爆発、破片に当たる事は無かった。
代わりにこちらが手榴弾_____M67"アップル"を投げる。
ドカンという大きな音と共に悲鳴が上がる。
一気に走り、次々と止めを刺す。
「す……すご……」
後ろからそんな呟きが聞こえた。
合流まであと少し。
次回の更新は6/18 12:00です。