SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
一方、こちらバトラー64から降下した
格納庫上部へと降り立った8人、先頭を行くのはハンナ・オークス軍曹だ。
外階段を使い、格納庫のキャットウォークへと進入を図る。
外階段で接敵、素早く5.56mm弾を叩き込む。
敵兵が階段を転げ落ち、キャットウォークまでの道が開ける。
階段を下りてドアを開け、キャットウォークの敵を一掃する。
「戦闘機は決して傷つけるな!敵だけを狙え!」
「了解!」
ヴァルキリーの女性パイロットと思われる人や整備士が人質に取られている。
人質の数3に対し、敵の数は8。
ハンナはキャットウォークから飛び降り、整備士に銃を突きつける敵に蹴りを入れる。
「はぁぁぁっ!」
ハンナの足が敵の胸を捉え、敵が床に転がる。
転がった敵兵を素早く腹這いにし、腕を縛り上げる。
その場で発砲、戦闘機を盾にする敵の隠れられていない場所を正確に撃ち抜く。
ハンナから隠れようとすればキャットウォークから、キャットウォークから隠れようとすればハンナから丸見えだ。
戦闘機を傷つけない丁寧な射撃。
格納庫内の制圧は5分とかからなかった。
頭を撃たれた奴は即死、格納庫に眉間や側頭部から血を流す死体が転がっている。
死んでない敵は3人、5人を射殺した。
全員がMP5A4サブマシンガンを持っていた。
頭から血を流す整備士がいる、多分突入前に殴られたのだろうか。
ハンナは無線のスイッチを入れる。
「6-4、こちらK1-1、負傷者が居る。衛生兵を寄越して下さい」
『了解こちら6-4、衛生兵を派遣する』
衛生兵の要請が終わり、改めて格納庫を見渡す。
人質にされていた女性が2人、ハンナはその2人に歩み寄る。
「大丈夫、安心して。もうすぐ終わるから。彼も衛生兵に治して貰えるわ」
2人はその言葉を聞いて力が抜ける。
ハンナはそう声に出さず呟いた。
「く……くそ……」
「あら、大人しく寝てれば良いのに。頭吹き飛ばしちゃうわよ?」
最初にハンナが蹴りを入れた兵士が意識を取り戻す。
「こんな事をして……こんな事をしてタダで済むと思うな……!」
「タダで済むとなんて思ってないわ、だからこうして目出し帽までして来たんじゃない」
「ぐふっ!」
ハンナの爪先が鳩尾にめり込み、兵士は呻き声を上げて転がる。
「フライハイト空軍上層部の腐敗はよーーく分かっているのよ、貴方達が作戦を実行に移して居なければ、私達もここには来なかったのよ」
「き、貴様……!」
「この件で貴方達に何らかの処分が下される事は間違い無いわね、どこで間違えたかゆっくり考えなさい」
そう言ってハンナは兵士の顎を蹴り抜き、意識を奪った。
そこへ丁度衛生兵のマルクス・フレットが到着、殴られた整備士の治療を始める。
マルクスは空軍特殊救難コマンド"
弾丸が飛び交う戦地へ降り、必要ならばその場で手術さえ施す"空飛ぶ戦う医師"だ。
手際良く整備士を治療し、応急処置を済ませる。
そこへK1-3と1-4が合流。
白衣を来た女と兵士3人を拘束し、捕虜として連れて来た。
そこに明らかに捕虜でない男女が居る。
作戦前に確認したチーム・ヴァルキリーのメンバーだ。
「メアリィさん!」
「ソエル、大丈夫だった?」
「何とか……メアリィさんは?」
「こっちも何とかね……」
エドワーズはハンナに目配せ、ハンナは無線機のスイッチを入れ。
「K6-4、グリーンライト。搬出準備完了、どうぞ」
『了解、K1-1、確認した。
『了解、出発する』
待機していた車輌部隊が動き出す。
と、格納庫に1人の人影が現れた。
チーム・ヴァルキリーのリーダー、ノワリー・エリオットだ。
ハンナはノワリーに敬礼すると、綺麗な敬礼で返された。
「負傷した整備士は……」
「我々が病院へ連れて行く、ありがとう」
「いえ、我々は……」
そんな、と言いかけた時、オペラと同じ白衣を着た男が現れた。
「オペラ君⁉︎」
エドワーズやハンナ始め、その場にいたシルバー・アローズ全員が銃を向ける。
男は40代前半位で、まるで博物館の学芸員の様な外貌をしていた。
「も、申し訳ありません……捕らえられてしまいました」
「そいつが最重要人物だ、拘束する」
ハンナの部下が駆け寄って拘束。
オペラとこの男が拘束出来たというのは大きな収穫だ。
ボディーチェックを素早く済ませる。
男は鍛え上げられ過ぎたシルバー・アローズから逃げる事も叶わなかった。
「この兵士達は研修本部から来たこいつらの私兵か……それとも特殊作戦軍から派遣された奴らか……どちらにしろまだまだだな」
「あ……なた達……」
口から血を流していたオペラが喋り出す。
「こんな事して……良いとでも思ってるの……?私にかかればこんなちっぽけな基地、幾らでも潰せるのよ……?」
エドワーズはその言葉に、感情を消した声で答える。
「そうか、なら、俺が所属している軍が、チーム・ヴァルキリーと共にフライハイトを滅ぼすだろうな」
「⁉︎」
「このままお前達が行動すれば、お前達の首が飛ぶか、この国が滅びるか……どちらも嫌なら、これ以上手出しし無いで大人しく兵器の研究開発をしている事だな」
そうエドワーズが言うと、オペラの表情は絶望に染まった。
もちろんハッタリだ。
基地正門を入ってきた車輌部隊が格納庫前に到着、73式大型トラック6台と
HMMWVの銃座には、50口径のマシンガン、ブローニングM2重機関銃が鈍く光る。
「連れて行け!」
シルバー・アローズは捕虜と共にトラックへと歩く。
飛行場に展開していたレンジャーは基地の司令部などに転がる敵兵士の死体を片付け、撤収作業に入る。
MH-47Gが2機、飛行場へ着陸すると、周辺を固めていたレンジャー隊員が集結し、乗り込んでいく。
最後まで残っていたのは、エドワーズ達の班とハンナの班だった。
トラックからハンナが箱を持って戻り、ノワリーに手渡す。
「これは血痕を消す特殊な薬剤です、使い方は中の紙に書いてあります。では、我々はこれにて」
「軍曹!」
何者かがエドワーズを呼び止める。
バックパック式の無線機AN/PRC-117Gを背負った覆面をしていない兵士だ。
「どうした、サム」
「実は……」
サム、と呼ばれた兵士がエドワーズに耳打ちする。
エドワーズはそれ聞き、ノワリーに向き直る。
「ヴァルキリーのアッシュ・ブルー君が撃墜されたようです」
チーム・ヴァルキリーに緊張が走る。
「ここへ1度PJが到着し、救出活動を行います。ご武運を」
「あ、あの!」
ソエル・ステュアートがエドワーズを呼び止める。
彼らが帰る前に、聞きたい事があった。
「や、やっぱり貴方達は……どちらの方なのでしょうか……⁉︎」
「……我々の所属を明かす事は出来ません、それと、飛行場を血で汚してしまい申し訳ない。では」
エドワーズはそう素っ気なく返す。
しかし、ソエルは戦闘機パイロットに選抜されるほどの視力と動体視力で、隠れ気味な徽章を見た。
格納庫のライトを鈍く反射するそれは……
「……銀の……矢……?」
エドワーズ達シルバー・アローズ、ソエルやアレックス始めチーム・ヴァルキリーから見れば謎の部隊は、そのままトラックに乗り込んで去っていく。
アルメリア空軍基地の、嵐の様な45分が終わった。
次回投稿は、6/21 12:00です。