SKY VALKYRIE & Silver Arrows 作:中井 修平
「……あの部隊は……」
謎の部隊が去っていったアルメリア空軍基地の格納庫には、先程の惨状が嘘の様に静まり返っていた。
リゲルを病院へ運ぶ為救急車を呼び終えたアレックスが戻る。
格納庫の床にはライフル弾と拳銃弾の空薬莢が散らばり、生々しい血痕がへばりついていた。
幸い血痕は先程の部隊から貰った特殊な薬剤がある。
空薬莢は箒で掃けばどうにかなる。
死体は彼らが片付けて持って行った。
それより、チーム・ヴァルキリーは先程の部隊がまるで実在しない夢のように思えた。
射撃テクニックは、間違いなくフライハイト陸軍の一般部隊より高い。
ではフライハイトの特殊部隊か?それであればなぜオペラを連れて行ったのか。
他国の軍か?確かに今日まではヨルジア軍が合同演習で来ていたが、こんな作戦の情報は聞いていない。
「エリオット隊長……」
ソエルはエリオットを呼び止める。
「あの人……銀の矢の徽章を付けていました……」
静まり返った格納庫にソエルの声が響く。
皆の頭の中で何かが繋がった。
今日、合同演習に来ていたヨルジア軍には、"銀の矢"の名を冠した特殊部隊が存在する。
「……シルバー・アローズ……か……何故……」
救急車のサイレンと、ヘリのローター音が遠くから聞こえてきた。
到着したヘリは、ヨルジア空軍特殊航空救難団のHH-60Gペイブホーク。
着陸したヘリから下りてきたのは、ヒビキ・イイダ曹長だ。
「これから墜落したアッシュ機の捜索救難に向かいます!どなたかご同行を願います!」
メイン・ローターが発する爆音を飛び越えてヒビキが問いかける。
「わ、私が行きます!」
ソエルが挙手、ノワリーの方を向くと、無言で頷く。
許可をした合図だ。
「ではこちらへ!」
ヒビキの案内でHH-60Gへと乗り込む。
ヒビキとソエルが乗り込むと、HH-60Gはゆっくりと離陸した。
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燃料とマナの最低保有量になったところで襲いかかってきた謎のF-16C。
ソエルのアストライアかと思ったが、細部が違う。
まずカラーリング、アストライアは燃える様な純色の赤だが、あの機体は清らかなアイスブルーに発光している。
そして機体に書かれている名前が"ヴァルハラ"だったのだ。
ヴァルハラに追われ、木の葉落としをかけた。
右後方を占位し、マウザー27mm機関砲を発砲。
しかし敵機はそれが見えていたかのように躱す。
「やるじゃねぇか」
アッシュは再び操縦桿を倒す。
ヴァルハラを見失わない様に追跡、追い越さない様に推力を調整し、再び射線を確保しようとする。
暴れるヴァルハラと、機関砲の射線が重なった時、目の前を曳光弾が突き抜けた。
目の前をもう3機のF-16Cが通り過ぎたのだ。
「ファック⁉︎まだ居たのか⁉︎」
同色に染まったF-16Cはそのままグングニルの背後を取ろうとする。
1vs1なら勝てる。
1vs2でも、何とか相手出来た。
実際、ソエルと飛んだ時はそうだったからだ。
しかし、1vs4となるとかなりキツイものがある。
機関砲を撃ってくる、操縦桿を左に倒し、旋回して回避。
そこから滑らかに上昇、右へロールし、背面で降下、目の前に"ヴァルハラ"の無防備な背中が見える。
アッシュは操縦桿のトリガーに指をかけ、機関砲を撃った。
27mm機関砲弾がヴァルハラを貫き、主翼が火を噴いた。
1機をキル、しかし、被弾したヴァルハラもタダでは死ななかった。
突如反撃、右翼付け根の機関砲が火を噴き、20mmバルカン砲弾がグリペンの主翼を叩いた。
凄まじい衝撃が機体を揺さぶり、小爆発、失速していく
「……ファック。オレを墜とすなんて、大した野郎だぜ」
ふと痛みを感じ、脇腹を見ると、コックピットの破片が腹部に突き刺さり、出血している。
真上では、4機のF-16Cが旋回している。
今まで落として来た敵機のパイロットも、こんな景色を見たのだろうかと思う。
やっと、空で死ねる。
目を閉じようとしたその時、4機のF-16Cの内2機が爆散した。
「……は?」
目の前を横切る2機の灰色の機影。
凹凸のないのっぺりとした表面、鈍い灰色の制空迷彩。
フライハイトには本来配備されていない機体だが、アッシュには死を司る天使に見えた。
ああ、オレにも迎えが来たか……
そう思いながら、アッシュは目を閉じた。
次回投稿は、6月/24日 12:00です。