日本人、ホグワーツでフラグを立てる   作:府七尾

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先生の、黒い目を見つめたまま、口を開く。

 

「スネイプ先生、ご指名ありがとうございます。…各質問に対する答えですが、まずは一つ目。『アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じた物を加えると何になるか』の答えは『生ける屍の水薬』です。これは、眠り薬ですが、あまりにも強力なため、そう呼ばれています。材料のアスフォデルは地中海沿岸部原産のユリ科の植物、ニガヨモギはキク科の植物です」

 

ここで、息継ぎも兼ねて区切る。

周りを見ると目を見開く者、感心している者、目をキラキラさせている者などがいる。とくに最後のはハーマイオニーだ。

 

スネイプ先生は……、何かを試すような顔をしている。相変わらず眉間の皺は健在だけど。

でも、口元は………笑ってる…?いや、気のせいか。

 

「次に二つ目の質問」

 

沢山の注目を浴びながら、話を続ける。

 

「『べアゾール石を見つけて来いと言われたら何処を探すか』ですが、答えは『山羊を探す』です。大抵の毒に対する解毒剤となるべアゾール石は石といっても本物の石ではなく、山羊の胃でできる結石です。ですから、山羊を探します。最後に三つ目の質問の『モンクスフードとウルフスベーンとの違い』について。これは別名アコナイトとも言われ、それらは全てキンポウゲ科のトリカブトです。なので答えは『同じ』です。……これで質問への答えは以上です」

 

最後に、もう一度先生の目を見て言う。

 

「それと、僕が夜中に出歩いていたのはダンブルドア校長に呼ばれたからです。お疑いなのであれば、直接お聞きになられてはどうでしょう?」

 

その時の先生の顔は、忘れる事は出来ないであろう。

 

 

まるで、面白いおもちゃを見つけた子供のような、しかし目が笑っていない笑顔のスネイプ先生を。

 

 

そのまま、音も立てずに椅子に座った。

 

きっと、外から僕の顔を見た人は、無表情に見えているだろう。しかし、その内側は

 

(あ゛ぁーーーーー!!!プリーズ!カメラプリーズ!!どうして今僕の手にカメラが無いんだぁ!!レアだよレア!先生の笑顔だよ!?(ただし目が笑ってない)うわぁぁぁ!!ちょ、まじでカメラが欲しい!)

 

切実にカメラを求めていた。

 

そんな心の内が誰かに伝わることは無く、ただただ奇妙な時間が流れた。

 

普段でさえ肌寒い地下室は更に凍りつくように寒くなり、再び沈黙が訪れた。

 

その沈黙をやぶったのは、スネイプ先生だった。

 

一回……二回…と鳴る音は段々と数と速さを増していく。先生が拍手をしているのだ。それに伴ない、生徒達も(とくにスリザリン側から)拍手をしていく。

 

その拍手の波は、一礼することで静まった。

 

「…ふっ。良いだろう、スリザリンに10点加点。……諸君、今のハセガワの解答はノートに書き留めたのかね」

 

その先生の言葉に、皆一斉に羽ペンと羊皮紙を取り出す。

 

とまぁ、こんな感じで『魔法薬学』の授業はスタートした。

 

 

 

ーーーーー数十分後

 

僕は鍋の前でフォイとおできを治す薬を作っていた。

 

正確に言うと、フォイが量った干しイラクサと砕いた蛇の牙を本人に気づかれないようにやり直していた。

 

 

いや、一年生の最初の授業にしてはきちんとやれてんだよね。

だけど、とにかく惜しいんだよ。干しイラクサは少し多いからこのままだと薬の粘度が変わってくるし、蛇の牙は砕き方にムラがあって薬の効き目が悪くなる。

 

確かに、ただ個人的に使う薬であれば、合格ラインだろう。でも、今僕らが受けている授業はスネイプ先生の授業。なのに、ごくごく普通の薬を作って良いのだろうか!?

 

と言う訳で、フォイの自尊心を傷つけないよう隠れてやり直し中です。

 

そろそろ角ナメクジが茹で上がる頃(これも茹で方が甘かったから火力を強めておいた)、先生は僕らのペアの前へとやって来た。

 

そして、先生が僕等ペアが完璧に角ナメクジを茹でてあると皆に見せようとした時僕は見てしまった。

 

先生越しに、調合をしている生徒を。先生越しという事は、あっちはグリフィンドール側、そう、ネビルが今まさに山嵐の針を火から降ろしていない鍋に入れようとしているところだ。

 

 

「……っ!ネビル!!駄目だっ!!」

 

 

自分の調合机を飛び越えて、最短距離でネビルとシェーマスの机に向かう。シェーマスは次の手順を教科書で確認しており、隣の机のハリーとロンは自分達の調合で精一杯の様子で気づいていない。肝心のネビルはというと、突然大声で名前を呼ばれた事で、驚いた顔で此方を見ている。

そして、その手から山嵐の針が鍋の中に落ちていった。

 

(間に合わないっ!!)

 

この時、僕は冷静さを失っていた。よくよく考えてみると、気づいた時点で自分の所から魔法で山嵐の針を取り上げるなり、もしくは原作のようにネビルが失敗するのを傍観していればよかったのだ。

でも、何故か頭よりも先に身体が動いていた。

 

シューシュー シューシュー

 

大鍋を溶かす大きな音が聞こえる

 

 

「退けっ!!」

 

ドンッ

 

体当たりの容量で、ネビルを突き飛ばす。ネビルはそのまま尻餅をついてしまった。

 

シュー…バリンッ!!

 

目の前で未完成の薬の入った大鍋が割れる。しかし、その中身は鍋から離れたネビルにはかからず、僕も『異性モドキ』の盾の呪文で防ぐ。

 

だが、この『異性モドキ』の盾の呪文には欠点がある。常時発動せねばならない魔法が二つある故に削ってしまっていたのだ。魔法に関係のない攻撃は防がない、つまり物理攻撃は弾かないようにしてしまっていた。

 

よって、薬は弾いた特殊な劣化版盾の呪文だが、直前まで火にかかっていた熱を持った大鍋の破片までは弾かなかった。

 

「クッ……ぅ…!」

 

毎朝のトレーニングで鍛えた瞬発力で大半の破片は避けることが出来たが、如何せん狭い地下室。全てを避けきれなかった。

 

左腕に感じる熱さ。流れる紅い血。

 

初めは掠っただけかと思っていたが、思った以上に傷は大きい。

だが、このくらいであればすぐに寮に置いてある薬のストックで治るだろう。

 

その前にやることがある。

腰のホルダーから、無事な杖腕で杖を取り出し、床にこぼれた薬と散らばった破片を一箇所に集める。

そして杖を持ったまま、転がっているネビルに近づく。

 

「ネビル、突き飛ばしてすまなかった。だが、山嵐の針は鍋を火から降ろしてから入れないとこの様になる。気を付けるように」

 

そう言って一度杖をかろうじて指先は動く左腕に持ち変えてネビルに向かって右手を差し出す。

 

「あ……あ…、僕……その、その、ごめんよう。ナオ、痛いかい?」

 

今にも泣きそうな顔で僕の怪我の心配をするネビル。

 

「これかい?ああ、大丈夫さ。痛くもなんともないね」

 

 

嘘。本当は今までこんな血が出る怪我した事ないから、かなり痛い。でも、ここでそれを言ってしまえば、ネビルは罪悪感に埋もれてしまう。悪いのは調合の手順を間違えたネビルだが、勝手に被害者になったのは僕だ。

 

僕は彼に、『魔法薬学』に苦手意識を持ってもらいたくない。スネイプ先生の授業を嫌いになってもらいたくない。ただそれだけだ。

 

 

ネビルを引っ張り上げ、杖を腰にしまったところで、左腕に激痛が走った。

 

「ぐぅ……!な、何を」

 

誰かが僕の左腕を強く掴んでいた。怪我している丁度その部分を。

 

誰かとは

 

「我輩に付いて来い。貴様らは後片付けをして薬を提出したら授業は終りだ。マルフォイ君、後は任せた」

 

「は、はいっ!」

 

フォイが大きな声で返事する。

 

て、付いて来い?何処に?いや、嬉しいけど……スネイプ先生と二人で授業を抜け出すとか妄想が広がりまくりだけど。

 

先生は、私の腕を掴んだままツカツカと廊下を歩く。

 

さっき地上に上がる階段の横を通ったので医務室では無さそうだ。

 

そして、先生が止まった目の前にあるドアに買いてあった文字は

 

 

“セブルス・スネイプ”

 

 

先生の部屋って事っすか…?

 

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