日本人、ホグワーツでフラグを立てる   作:府七尾

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前半シリアス(?)注意


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薄暗い部屋。荒い息遣い。男の声。

 

 

引いてあるカーテンの隙間から漏れる光から、恐らく昼間だと思われる。

しかし、それを考える気力さえも少女には無い。

 

少女は泣くのも諦め、その掠れた声で男に懇願する。

 

『殺して』

 

と。

 

男はそれを無視し、何度目になるかもわからない程してきた事をするべく、少女に覆いかぶさる。己の欲を満たすために。

 

『こ…殺し……て』

 

『はぁ…**っ!**!』

 

『やぁっ!…殺して』

 

 

 

そして、再び部屋に響く男の声。少女の荒い息遣いと悲鳴。

 

 

助けて欲しい。解放してくれ。

 

 

始めの内はそんなことを思ったが、ただただ少女は殺してもらいたかった。

 

 

この男ーーー***に。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「ぅわあああっ!!!!」

 

ガバッ

 

「あれは……っ!」

 

汗だくの状態で、寝着も汗で濡れている。

しばらく、さっきの夢がまるで現実かのように思えて、その場から動くことができなかった。

 

 

 

そう、あれは、夢だ。夢なんだから。

 

現実なんかじゃ…

 

「ぅぅ……」

 

何で、今ごろ……。ここのところ、見ていなかったのに。

 

あの夢は、前世を思い出して直ぐのころ、よく見ていた。

それも成長するに連れて、見なくなったと思ったのに…。

 

 

3歳の時、前世を思い出した。だが、それは完全では無い。

 

自分が何という名前で、どんな人だったか、なんて全く覚えていなかった。その中で覚えていたのは、『ハリー・ポッター』に関する事とうっすらと学校の知識だけ。

 

多分、だから始めの頃、余計に情緒不安定だったんだろう。

 

 

大きく深呼吸をして、どうにかして落ち着く。

 

「はー。あ、今何時……」

 

そこで夕食後に呼び出しをくらった事を思い出し、時間を確認する。

 

そして…

 

「あっちゃーー寝過ごした」

 

時計の針は、大広間があと数分で閉まる時間を指している。ベッドのサイドテーブルには羊皮紙の切れ端に、フォイの字で先に大広間に行くと書いてあった。

 

 

今更、夕食を食べに行ってもしょうがないので、汗を流すために部屋に付いているシャワーを包帯に防水魔法を掛けてから浴びて制服に着替える。

 

今日はそれ程遅い時間の呼び出しでは無いので、透明マントを使わずに堂々と歩く。

丁度夕食を食べて来たのであろう生徒たちとすれ違う。

 

 

流石に二回目ともなると、地図もいらない。

人の波をするするとすり抜けて、今週二度目の校長室の前にたどり着く。

 

ガーゴイル像の前に立った所で

 

「合言葉知らない…」

 

今回は合言葉を教えてもらっていない事を思い出す。

 

どうしようかと考えあぐねていると…

 

スッと隣に育ちすぎた蝙蝠のように黒くて大きな人がやって来た。

 

「…スネイプ先生」

 

「我輩も呼ばれたのでね。…ストロベリー・キャンディ!」

 

先生が合言葉を言うと前回のようにガーゴイル像が動き、螺旋階段が現れる。

 

先生とその階段を上る途中

 

「大広間に居なかったようだが、どこにいたのかね」

 

と尋ねてきた。

 

「寮の部屋です。あれから昼寝してたら、寝過ごしてしまいました」

 

隠す必要も無いのでありのままを話す。

 

さほど距離があるわけでもない階段なので直ぐに校長室の扉に着く。

 

スネイプ先生がノックをすると、しばらくして独りでに扉は開いた。ダンブルドアが中から魔法で開けたんだろう。

 

室内に入り、ダンブルドアが適当に椅子とティーセットを出したところで、本題が始まる。

 

ティーセットが出てきたとき、カップに入っている紅茶を思わず見つめてしまった。

 

いや、前科あるからね…この人。

また真実薬が入っているのではと。

 

それを見てかダンブルドアが

 

「今日の茶は正真正銘のストレートじゃぞ?」

 

と言った。

正直信用していいのか思うところがあったが、喉が乾いていたし前のように、香りを嗅いでも普通のようだから、素直に一口飲む。

 

その様子を確認したあと、ダンブルドアは口を開いた。

 

「さて、ナオよ。今日呼んだのは前回言い忘れておったことがあってのぉ……セブルスにも聞いてもらいたいんじゃ」

 

それにスネイプ先生が反応する。

 

「我輩にもですか…」

 

「そうじゃ。…ナオ、分かるかの?」

 

いや、分かるかの?って聞かれても僕そんな察し良くないんでわからないっす。とは言えず。

 

頭に浮かんでいたいくつかの候補のうち1番当てはまる物を出す。

 

「前回の事ですか?」

 

恐らく、性別の事だろう。いくらなんでも寮監のスネイプ先生に教えない訳にはいかなかったのだろうと考えたのだ。

 

「正解じゃ、ナオよ」

 

「前回の事とは何ですかな?校長」

 

スネイプ先生の質問に、言ってもいいかとダンブルドアが目配せしてきた。

僕は最後まで隠し通せるとは思っていないから、小さく頷く。

 

「ですが、その前に僕の方からお伺いしたいことがあります」

 

「ほぅ……なんじゃ?」

 

聞きたいこと、それは婆様についてだ。

 

婆様が島の小屋を出て行ってから6年、生きているのか死んでいるのかさえ、はっきりしていない。

 

ダンブルドアに関係しているのは分かっている。

 

真正面から聞いて教えてもらえなかったら、何か後ろめたい事がある証拠だ。

 

ダンブルドアの半月型の眼鏡の奥のキラキラとした目を見つめ、一呼吸をして、

 

「校長先生は、ユリコ・マエカワをご存知ですか?」

 

ガタッ

 

「貴様!その名をどこで!」

 

急に荒々しく立ち上がったスネイプ先生が、眉間の皺を増やして僕に素早く抜いた杖を向けていた。

 

「これ、セブルス。相手は生徒じゃ」

 

「しかし、こやつはマエカワの名を…!」

 

 

ダンブルドアだけではなく、スネイプ先生も婆様について知っている様だ。

だが、その反応を見るにいい方向ではなさそうなのを感じる。

スネイプ先生は杖を降ろそうとしなかった。ダンブルドアはそれを止め、僕の顔を近くまで来て覗き込む。

 

「校長!何を…!」

 

未だに僕の顔を数センチの距離で見つめてくる。

その行動に、スネイプ先生は驚いている。

 

一体…婆様は何を…

 

「ナオ、君の姿を見せてくれるかの?」

 

僕の姿、女の姿だろう。しかし、何故このタイミングで…。

この場をおさめる為には必要な事なのだろうと思い、ダンブルドアに離れるよう言う。 

 

スネイプ先生がまだ何か言いたそうだけど、押しとどまる。

 

(大丈夫!その姿もお美しいです!)

 

 

顔の横に腕を持ち上げて、指をパチンと鳴らす。

 

これのために、始めの方殆ど指パッチンの練習しかしてなかったなぁ。

 

どこからともなく、僕の頭上から青白い光の粒子が振って来る。徐々にスピードを増した粒子はやがて桃色へと変わり、再び頭上へと消える。

 

そうして現れた僕の元の性別の姿は、男の時よりも背は縮み、丸みを帯び、顔つきには幼さが残る物がある。

 

11歳の少女のそれだった。

 

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