日本人、ホグワーツでフラグを立てる   作:府七尾

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皆さん、夏バテには気をつけて。


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時折、生徒のレポートに“D”や、稀に“P”を書いて採点しているスネイプ先生。

 

僕が丁度先生の後ろに来た頃、採点していたレポートはフォイの物だった。大きく“A”と書かれていた。お気に入り加減が伺える。

後ろに誰か居るのをスネイプ先生が気付かないはずもなく、顔も上げずに先生は声を出した。

 

「あれは…何だったのかね」

 

『あれ』というのは、さっきのパニック状態の事だろう。

 

また、あの場面がフラッシュバックしてきて思わず身体が震える。血の味から薬草の味に変わったから、まだ幻聴が聞こえないだけマシだ。

 

それでも、うっすらと額に汗が滲む。

 

そこに居るのに一向に答えない僕に、不思議に思ったのかスネイプ先生が羽ペンを置き、振り返る。

 

僕は、俯いてしまっていて先生の顔を見ることができなかった。先生の前でこんな姿を見せるなんてカッコ悪いと思って必死に震える身体を落ち着けようと自分で自分の身体をさする。

 

先生がハッとするのが分かった。

 

僕は青い顔して震えているのに、それに気づいたことで

 

(え?何それ…ハッとする先生のお顔拝見したかったです!口半開き?ねぇ、眉間のシワは?)

 

といつもの調子を、戻すことができ、少しだけ落ち着けた。

さすが、僕の大好きな先生。

 

「…ハセガワ」

 

「もう、大丈夫です…」

 

落ち着いたところで僕は前に先生に座らされた黒い皮張りのソファに座った。

 

スネイプ先生も執務机からこちらに来て向かい側にドカッと座る。それと同時に先生は杖を振ってティーセットとマグカップを出す。

 

「飲むといい。心を落ち着ける作用があるハーブを加えてある」

 

そう言ってマグカップの方を渡される。中を覗くとホットミルクが入っていた。

 

(…このマグカップ、普段先生が使ってるやつかな?新しい物だとしても、マグカップを買ってる先生って…可愛い!!)

 

微かな優しいハーブの香りとカップの暖かさから(一部妄想しながら)、大分落ち着くことができた。

 

それを見計らってか、先生は口を開いた。

 

「ハセガワは、ハナとユーイチローの子なのだな」

 

その言葉に、カップを見つめていた目を先生に向ける。

 

(ユーイチローって、先生が言うと可愛いな。伸ばしちゃうんだ)

 

「そう…みたいですね。僕も始めて知りました」

 

そうだ、校長室でダンブルドアの話を聞いて気を失ったんだった。

 

「失望したかね。二人が死喰人だったという事に」

 

先生は自分の事を聞いているかのようにして聞いた。

 

「いいえ。…驚いてはいますが、失望はしていません。そもそも、今の今まで知らなかった人たちですから。…でも、誇らしく思います」

 

「何故だ…?」

 

何故って、言われても。死喰人は確かに悪い人たちだけど、

 

「花さんと裕一郎さんが死喰人であったことは事実ですが、それから逃亡してきて2年半?でしたっけ?日本で生きられたんですから、それだけ凄い魔女と魔法使いなんだなーって、思ったので」

 

あれ?てことは僕純血?少なくとも、死喰人になれたっていうことは、マグル生まれでは無いよね?じゃ、混血か純血か。へー、始めて知った。あんまり興味無いけど。

 

「確かにハナとユーイチローは素晴らしい魔女と魔法使いであった。死喰人の中でも『例のあの人』に近い人物で、その力は認められていた」

 

おやおや、先生自分が元死喰人だって言ってるようなもんじゃん。

 

「先生、それでは先生も死喰人だと言っている様な物です」

 

「あぁ、そう言っている。我輩は元死喰人だ」

 

え?え?ばらしちゃうの?いいの?

 

「…何故ですか?何故教えてくださるんですか?」

 

先生から言われたばかりの言葉を返す。

 

先生は組んでいた腕を解き、膝に乗せる。(安定の萌え袖!!)

 

「それは、我輩が保護者となったからだ」

 

・・・?え、誰の?きちんと『誰の』の部分を言ってくれないとナオ君ワッカンナイナー?

 

先生は、もう一度、繰り返す。

 

「我輩がハセガワの保護者になったからだ」

 

「マジかよ…」

 

『同時翻訳』を一瞬で日本語に切り替えて呟いた。というか動揺しすぎて自然に変わった。

 

「ウソー!じゃあ僕のお気に入り作戦は!?どうなるの?保護者って何だよ!普通ここは校長が『ワシの孫にしてやろう』とか言って権力得るやつだろ!え、これ終わった?先生と恋人ライフ終わった?始まってもないけど!」

 

スネイプ先生が日本語が分からないのを良いことに、いつもは心の中で言っているはずの本音をしゃべる。

 

落ち着いた筈の動悸は、先生の重大発言によって再び荒くなっていた。

 

これではいかんと、マグカップの少し冷めたミルクを一気に煽る。

 

「ケホッ…ケホケホッ」

 

むせた。カッコ悪い。

 

「あー。ハセガワ…『オキニイリ』や『コーチョー』とは何かね?」

 

「ケホッ気にしないで続けてください」

 

眉間のシワが増えた先生に先を促す。

 

「…我輩が保護者になったのは、ダンブルドア校長に頼まれたからでもあるが、我輩の意思で決めたのだ」

 

「でも、僕には保護者はきちんといます。…今はどこにいるかわからないですけど」

 

先生は再び腕を組み、眉間のシワを深くする。

 

「我輩が保護者であることが不満なのですかな?」

 

「不満なんて…とんでもない!ただ、婆様は…僕に僕を取り戻してくださったんです」

 

「婆様…とは?」

 

言っても良いものか…校長室で名前を言ったときに、先生は凄く動揺していた。

 

「早く言いたまえ」

 

「……ユリコ・マエカワです」

 

恐る恐る先生の方を見る。眉間に指を持ってきて揉んでいるところだった。

 

「マエカワは…、今死喰人となり、ヴォルデモートのすぐ側で動いている」

 

その言葉で、魔法で再び注がれたミルクを飲もうとしていた身体が硬直した。

 

「…そうですか」

 

薄々気づいていた。校長室でのあの様子から、婆様があまり良く思われていない事から。

 

「マエカワは恐らく、今後ヴォルデモートの指示により、貴様をさらいに来るだろう」

 

「それは無い」

 

僕は断言した。だって、それなら何故今頃なのだ。婆様なら小さい時、それこそイギリスのあの小島に移り住む時にダンブルドアを欺き僕を闇の陣営へ連れていくことは可能だったはずだ。

だから、それは絶対に無い。

 

「貴様は特殊なのだ。その身に宿る魔法力は成長するに連れ、増えているはずだ」

 

確かに、僕の魔法力…魔力はホグワーツに入学するまでで大分、いやかなり増えた。それこそ体調に関わるくらいに。

だから毎朝超人級のトレーニングをしなければならなくなって来ている。

 

「それは向こう側でも同じなのでは?」

 

幼いときに闇の陣営についても同じなのではと思うが。

 

「いや、貴様の魔力は此処、ホグワーツとダンブルドアの呪文が施してある島でしか成長しない、とダンブルドアが言っていた」

 

「へーそうですか」

 

何だか面倒臭くなってきた。

要するに、僕の魔法力はホグワーツと島でしか成長しなくて、その力を欲するヴォルデモートが狙ってるから気をつけろ、てことでしょ。

 

何これ。ご都合主義ばんざーい的な?

でも僕からしたら将来面倒な事になるの確定ジャン。

 

 

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