日本人、ホグワーツでフラグを立てる   作:府七尾

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「…今日はもう遅い、続きは後日としよう」

 

スネイプ先生が杖をひと振りして僕の手の中にあったマグカップとテーブルの上のティーセットを消して強制的に話を切った。

 

そのあとも、聞きたいことがあるにはあったけど有無を言わせない先生の表情に反抗することは出来ず、寮に戻ることになった。

 

「スネイプ先生。また、此処に来ても良いですか?」

 

ここで断られても、何度も挑むのみ。仲良くなるためには必要不可欠だ。

 

「よかろう。ただし我輩が忙しくない時にな」

 

…それは、一生ないのではないでしょうか…等とも言えず、大人しく同じ地下に位置するスリザリン寮に帰っ…グゥゥゥゥゥぎゅるるるるるぎゅろろろろろろぉぉぉーー

 

屋敷しもべ妖精達、まだ起きてるかな?ちょっと厨房寄ってから帰ろう。

この腹の化け物を退治せねば。

 

ぎゅるるるるるるるぅぅぅぅぅ!

 

スネイプ先生の部屋から離れてばれない位置に来てから『空間拡張呪文』のかかった巾着をローブのポケットから取りだし、その中から大量生産しといた『透明マント』を出す。

 

いやー、便利だな、これ。

 

静か過ぎて不気味な程の廊下を歩き、厨房への入り口を目指す。確か何かに描かれてる梨を擽ったらいいんだったっけ?

 

僕が厨房に顔を出すと、屋敷しもべ妖精は眠そうな顔ながらも現れて、サンドウィッチを作ってくれた。

 

それをつまみながら寮に帰り、ベッドに入ったのが多分午前2時過ぎ。そっから2時間寝て4時に起きた。

 

このくらいの時間に起きないと、トレーニング出来ない。

 

いつも通り、アラゴグJr.と追いかけっこ(ノーマルバージョン)をして、左手が使えないから色々工夫した練習をしている。腕立ては控えて、腹筋背筋などのトレーニングを中心にした。

 

お日様も大分顔を出した頃に、寮へと帰り、檜風呂に入ってスッキリする。

 

あれから、フォイのナイト・キャップを弄ったことはない。だから朝から髪を直すことなく、ぐっすりとベッドで眠っている。

 

今日は何もなく過ごせそうだ。

 

部屋に居るのも何なので、まだ誰も居ない談話室に行く。

 

何気なく掲示板を見ていくと、数多く紙が発付けられている中で、埋もれずに最近張られたのであろう物を発見した。

 

こんな朝早くからご苦労様です。

…なになに?

 

“お知らせ 飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です”

 

あー、面倒臭そうな気配…

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

さあ、やって来ました木曜日。

 

月曜日に二回目の魔法薬学の授業があったけれど、特別何かあるわけでもなく、ネビルが少し煙りを浴びたり、ハリーが1点減点されただけだ。

僕とフォイのペアは、一回目同様僕がフォイのフォローをして、スネイプ先生から「完璧だ」と、10点貰った。

左手がまだ包帯が巻かれていて、少し動かしずらかったが、先生に褒められる事が出来てとても嬉しかった。

 

今日はいよいよ飛行訓練の授業ということで、寮関係なく一年生は皆ソワソワしていた。フォイは、自分の箒にまつわる自慢話をぺらぺらと話しており、早く授業の時間にならないか、と待ち遠しくしていた。そんなところも、何だか幼いなぁと思いつつ、適当にいつもあしらっていた。

 

「はぁ、今日の飛行訓練が待ち遠しいよ!」

 

フォイが、家から梟便で送られてきたお菓子をテーブルに広げながら言った。

 

「はいはい、そ~ですね」

 

そのうちから、蛙チョコレートの箱を見つける。

 

「フォイ、これ貰うぞ」

 

「ああ、ナオはそれが好きなのか?」

 

好きというよりも、カード目当てなんだけどね。だって口の中で溶けていく動く蛙って、考えただけでも気持ち悪いし。

 

だから僕の食べ方は、一本一本足をちぎりながら苦しむ蛙を見ながら、と決まっている。

 

いや、これが結構イケるんだよ?最後口の中に頭を入れるときの、恐怖に歪んだ顔とか、さ。

 

そういう意味では

 

「まぁ、好きかな」

 

「ヒッ!…じ、じゃあ母上に今度から増やして頂くよう頼んでみるよ」

 

答える僕の顔を見て一瞬怯えたような悲鳴を上げたフォイ。

そんなに怖い顔してたか?

 

 

そんな会話をしていると、視界の端にメンフクロウがグリフィンドールのネビルの所に小さい荷物を落として行くのが見えた。

 

「ナオ、ネビルの所に荷物が来たぞ…あれは、『思い出し玉』だな」

 

ネビルの荷物が『思い出し玉』という、中の煙が赤色になったらなにか忘れているという、便利なのか不便なのか分からない中途半端な道具だと知ると、フォイは「ちょっと、からかってくるよ」と言って、グリフィンドールのテーブルに向かって行った。

 

僕は関わるのが面倒臭いから、蛙チョコレートの箱を開けて、逃げる茶色い蛙の足を掴んで顔の前でぶら下げていた。

 

「何処から食べてほしい?」

 

そんな事を言いながら。

はす向かいのノットが顔を青くしていたが、無視して前足をちぎった所で、マクゴナガル先生がフォイを注意していた。

 

未遂に終わったな、フォイ。

 

喧嘩する口実をやっと見つけたハリーとロンは、少しやりきれないような表情をしていた。

 

それから午後までは、魔法歴と変身術の授業をこなし、やっと飛行訓練の時間となった。

 

芝生がサワサワと波立つくらいの風が吹く、いい天気だ。

 

少し坂になっているのを越えて、授業が行われる場所まで歩いているときに、ふとあることを思い出した。

 

ハリーや、ロン、双子と昼食後にフォイには先に行っててもらって、グリフィンドール生の中に一人だけスリザリン生、という中々見ない組み合わせでそれなりに会話を楽しんでた。

特に双子、フレッドとジョージの話は面白い。フィルチの部屋に『糞爆弾』を仕掛けたやら、廊下に『蛙チョコレート(粘着型改良盤)』をばらまいたやら、悪戯が殆どだった。

意気投合した僕達は、今度の悪戯は一緒にやろう、と約束した。

 

その中で、飛行訓練の話が出たときに、フレッドが言った。

 

「お前ら気をつけろよ?学校の箒はくせ者だ」

「ああ、文字通りのくせ者だ」

 

「どういうこと?」

 

ハリーが二人に質問する。

 

「どうって、なぁ?兄弟」

「そりゃ酷いもんさ」

 

双子が顔を見合わせて、同時に肩を上げる。これを何ともなしにしているのだから、流石双子といった所だろう。

 

「ひ、酷いって?」

 

少し怯えた様子のロンも双子に質問する。

 

「右に行きたいのに左に行ったり」

「上に行きたいのに下に行ったり」

 

手や腕を使いジェスチャーしながら教えて来る。

 

「ぼ、僕自信なくなってきた。ただでさえ箒に乗ったことないのに」

 

「大丈夫さ、ハリー。君は初めてだから、もしかしたら箒に乗るのがうまいかもしれない。でも、僕は」

 

「ロニー坊やはすぐに怯んでフラフラするのさ」

「あら、ロニー坊や怖いの?」

 

双子がからかっている。毎度毎度楽しそうで…。

 

「怖くは無い。怖くは無いさ、でも落ちたときを考えたらびくびくしちゃって」

 

「ロン、それを怖いって言うんだよ」

 

「じゃ、ナオは怖くないのかい?」

 

ロンが強がっていたので突いてみたら、僕に話が回ってきた。

 

「えー、それは何とも」

 

「ナオ、怖いだろう?」

「箒の上で震えるんだろう?」

 

双子がロンをからかうのと同じ調子で僕のこともおちょくってくる。

 

「ただ…」

 

「「「「ただ?」」」」

 

四人が同時に聞いてくる。

 

「学校の箒は、しつけのしがいがありそうだなぁ、とね」

 

たぶん、この時ハリー、ロン、双子の心の声は一致したことだろう。

 

「「「「(ああ、こいつスリザリンだったな)」」」」

 

と。

 

 

そんな事が昼にあった訳だが、学校の箒がどんなにじゃじゃ馬か確かめてやろうではないか。

 

 

指定されていた平坦な開けた所に行くと、既に約20本の箒が向かい合って2列で並んでいた。

 

きっちりとグリフィンドールとスリザリンで分かれたところで、マダム・フーチがやってきた。

 

まぁ、鷹の目…のように見えなくもないかな…。

 

「さぁ、飛行訓練を始めます。皆さん箒の側に立って!」

 

このガミガミ声は苦手だ。聞こえてますよー。もう少し声抑えてくださーい。

 

ハリーの方をちらっと見ると、不安のそうに小枝がピョンピョン飛び出ている古い箒を見下ろしていた。

 

「右手を箒の上に突き出して!」

 

「そして、上がれ!」

 

みんな一斉に声が上がる。

ハリーの箒は磁石の様に手に飛び込んでいた。それに周りは勿論、ハリー自身も少し驚いていた。

 

僕も所々の枝が飛び出た箒の上に手を突き出す。

 

「上がれ」

 

決して震えることなく、どちらかというと、お腹から声を出すように。

 

すると、ハリーと同じ様に吸い取る様に僕の手に箒は収まっていた。

 

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