日本人、ホグワーツでフラグを立てる   作:府七尾

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暖炉の前に立ち、脇にあるフルーパウダーを掴む。

 

正直、『姿くらまし』がつかえるから、暖炉を通らなくてもいいが、誰に見られるかも分からないので、無難に暖炉で行くことにする。

 

 

夏だと言うのに、分厚そうなローブを着ている人達が所狭しと居る。

所々に見えるローブを着ていない者は、今年からの新入生か、マグルだろうか。

数歩歩くと、何かしらにぶつかりそうなダイアゴン横丁を進む。

が、やはり日本人の薄い顔やマグルの服を着ているからか、少し……いや、かなり痛い。

日本人の魔女や魔法使いも勿論存在する。しかし、それ等の人々は大概日本の魔法魔術学校、『マホウトコロ』に入学する。だから尚更のこの視線だろう。

確か婆様も『マホウトコロ』出身の筈だが、何故僕はホグワーツなのだろうかと、疑問に思う所もあるが、スネイプ先生にもお会いすることができるし、今は良しとしよう。

 

 

数々の視線を受けながらも、ローブやら教科書やらを購入し(金貨で払ったら一瞬驚かれた)、オリバンダーの店へとやって来た。そう、杖を購入するのだ。

 

 

年季の入った店の扉を押し開けて入る。すると直ぐにこの店主、オリバンダー氏が出てきた。

 

「いらっしゃいませ……、おや、ジャパニーズとは久しぶりですなぁ」

 

その言葉に片方の眉を微かに上げた。

 

「ほう。久しぶり…とは、以前にも来店したジャパニーズが居ると……?」

 

先程も言ったとおり、日本人は殆ど『マホウトコロ』に入学する。よって、備品もそちらで揃えるのだ。いくら杖といえばオリバンダーの店、と言っても日本人の利用者は必然的に少ないのだ。

 

「ええ……、あれは確か、7,80年前だった様な……」

 

どんだけ長生きしてんだよ、オリバンダー。

 

「そうですか。その方はホグワーツに?」

 

「いえ、ジャパンの魔法魔術学校に入学されると聞きました。……失敬、これ以上は個人情報ですな……」

 

今のでわかった。この店で杖を購入した日本人……それは、婆様だ。

 

「うおっほん。改めて、此の店の店主をしております、オリバンダーと申します。失礼ですが、名前をお伺いしても……?」

 

「ああ、ナオ・ハセガワだ」

 

オリバンダー氏は話を変えて改めて自己紹介をしてきた。

 

「では、Ms.ハセガワ……、此方などはどうでしょう……」

 

と言って、オリバンダー氏が持ってきた臙脂色の長方形の箱を受け取る。

箱を開けてみると、中には根本の方が白色で、先端に行くにつれ黒くなっている美しい杖が入っていた。

 

「ヒノキの枝に、ユニコーンの角を芯にした物でございます。さぁさぁ、振ってみなされ」

 

「分かった」

 

箱から取り出し、握ってみる。

確かに、只の木から作った食事用の箸よりも魔法の出力と制御共にやりやすいが、精々僕の力の7割位しか引き出せないだろう。

 

オリバンダー氏の早く振ってくれというキラキラした目が先程からチラチラと視界に入るので、とりあえず軽く振る。

 

ッブン ……ドッシャーン!

 

軽く、ほんの軽く振っただけだ。

それだけなのに、店中の窓ガラスが割れ、背の高い大きな棚がドミノ倒しの様に倒れている。もちろん、その中にしまっていたのであろう杖の箱等も散らばっている。

 

「その……すまない」

 

これは流石に申し訳ないと思い謝罪すると、

 

「いやはや…素晴しい。これ程までとは……。Mr.ポッターよりももしかしたら……」

 

Mr.ポッター、ハリー・ポッターか。

ハリー・ポッターと比べられているのか、僕は…。

 

奴は僕にとって最大のライバルだ。

何せ、あいつはスネイプ先生の想いびとの子供なのだから。

いくら、スネイプ先生が奴に冷たく接しているとは言え、それらは母親と同じ色の瞳を持っているハリーに時に優しい目をしていた。

 

あの目を、僕に向けさせるのだ。僕だけを、見るように。

 

「……あの、Ms.ハセガワ?どうかされましたか」

 

知らず知らずの内に、自分の世界に入っていたようだ。

オリバンダー氏が次に持って来た杖を掴む。

 

「それは、楠の枝にサラマンダーの鱗を芯にした物でございます。」

 

今持っている杖は、サラマンダーが使用されているだけあって、赤い線が走っている。

 

ッブン ボォォォォッ!!

 

今度はオリバンダー氏の後ろの壁に穴を空けてしまった。

 

「ふむ、……ではこれでどうですかな?」

 

自分の店が結構な大惨事になっているのにも関わらず、冷静に次の杖を差し出してくる。職人魂を感じさせられる。

 

目の前に出されたそれは、何処か懐かしい気分にさせてくれる先程の2つとは、違いシンプルな装飾だ。

 

「これは、桜の枝にガーゴイルの骨を芯にしております……どうぞ」

 

『桜』という言葉に、この世界では数年、前世では生涯過ごした日本を思い出した。オリバンダー氏から直接杖を渡される。

 

「ッ!!……これは……」

 

手にした瞬間、身体中を駆け巡る暖かい魔力。杖からは強い忠誠心が伝わってくる。

 

ッブン

 

試しに振ってみても、オリバンダー氏の頭が吹っ飛ぶわけでも、ダイアゴン横丁から老舗の杖屋が消滅するわけでもない。杖の先端から淡い発光体が出ただけだ。

 

間違いないこの杖だ。

 

「どうやら、見つかったようですな」

「……ああ」

 

杖の料金を払い、オリバンダーの店を後にした僕が次に向かった場所は、「魔法動物ペットショップ」だ。

もちろん、「フクロウ百貨店」などの各種動物が専門的に扱われている店もあるが僕がペットに持ちたいのは少々特殊だ。

 

カラン、コロン

 

扉を開けると、頭上のベルが鳴った。それと同時に店内のあらゆる動物が反応して鳴き声を上げる。それだけで、低能さが伺われる。

 

今回、僕が探しているのは、羽音が煩いフクロウでも、気儘な性格で飼い慣らすのには大変なネコでも、魔法薬の材料にもなるカエルでもない。

 

 

チューッ

 

「ふんっ、お前がちょうどいいだろう」

 

ちょこまかと動き、それこそ赤子の手をひねる様に直ぐに死ぬ、薄汚いネズミだ。

 

ゲージの中に入れられている数匹の中から、目当ての一匹を見つけた。

 

低能と言われるネズミでも、賢く、威厳があり、尚かつ目立たない配色のネズミだ。

 

 

 

 

ペットと一緒に買ったゲージごと、『空間拡張呪文』を施してある巾着の中に入れる。

 

「さて、後は彼処か……」

 

学校で使う物を一通り買い終えた僕が向かった場所は、『ノクターン横丁』

 

そう、あの怪しい通りだ。

 

『ノクターン横丁』

 

ハリーポッターが2作目、ウィーズリー家の暖炉から『漏れ鍋』へ行く時に失敗し、辿り着いた怪しい通りだ。

 

今日は、その通りの『ボージン・アンド・バークス』に用がある。

魔法薬の材料を購入するためだ。婆様が残していった書物の中には、魔法薬のレシピがあった。

入学するまでにまだ1月ある。それ迄にいくつかの薬を調合しておこうと考えたのだ。

 

作り置きしておきたいのは、

 

『生ける屍の水薬』

『真実薬』

『ハナハッカ・エキス』

 

この3つは必ず必要になる事だろう。

その他にも、試してみたい物もあるので、あるにこしたことはないだろうから、随分買いだめしておく。

 

道行くどこか影がある魔法使いや店主にじろじろと、それは穴が開きそうなほど見られたが、ハリーポッターの様に迷子だとは思われていないらしく誰も声を掛けてくることはなかった。

 

 

やはり、正規の店で買うよりも割高な商品を惜しみもなく購入した。

 

そしてノクターン横丁の更に暗く、見通しが悪い場所へ行き、予め『臭い消しの呪文』の掛かっているマントを頭から被り、『姿くらまし』を使う。

 

改良に改良を重ね、完璧に魔法省の目を欺くことの出来るであろうマントと、本来ならばバチッと音が鳴るはずの『姿くらまし』を消音にした事で、誰も僕に気づくことはないだろう。

 

 

 

 

 

この日から数日間、未成年の子供が考えられない程の大金を支払い店中の商品を買っていき、ノクターン横丁を利用する客等の噂になっていた。

 

《キングズ・クロス駅》

 

僕は駅にいた。それはもちろん、ホグワーツ行きの汽車に乗るためだ。

『姿くらまし』や、つい先日完成した『飛行術』を使っても行けるには行けるが、僕はこの汽車でやらなければいけないことがある。

 

ハリー・ポッター、ロナルド・ウィーズリー、それにハーマイオニー・グレンジャーと接触するのだ。

 

 

『軽量化呪文』を使いたいと思いつつ、重いカートを押してマグルの中を歩いて行く。まぁ、血筋は僕もマグルなんだけれどね。ある柱の前で立ち止まる。

 

9番線と10番線の間の柱だ。

一見普通の柱だが、ここを通れば9と3/4番線へ行くことができる。

 

すると、

「でも変だよ、ハグリッド。おかしいよ、これ。9と3/4番線なんて何処に……ハグリッド?」

 

後ろの方で大きな独り言を言っている少年がいた。壊れた眼鏡にサイズの合っていない服……。ハリー・ポッターだ。

 

きっとこれから、駅員にマグルが知るはずも無い9と3/4番線について聞き、鼻で笑われる事だろう。

その前に、辺りをキョロキョロと見回し、ハグリッドを探している垢抜けない少年に近づく。

 

「やあ、Mr.ポッター。こんな所でお会いできるとは」

 

片手を挙げ、声を掛けたところでポッターはようやく気づいた。

 

 

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