さぁさぁやって来ました!
ロンドン!
今日はなんとスネイプ先生とデート、
では無く。
僕と婆様が住んでいた島まで箒を取りに行きます。
昨日は色々と噂が流れて大変だったが、週末である今日と明日は誰も邪魔することがない。
本当はささっと、自分一人で島に行くつもりでダンブルドアに掛け合ったが、そうはいかず、スネイプ先生と同伴ならと、外出許可を出してくださった。
「早く行くぞ」
「はい」
流石に週末のロンドンは人が多く、先生は顔をしかめていた。
一度学校の敷地を出てから先生の姿現しでロンドンへとやって来た。この後は入学準備でお世話になった『漏れ鍋』まで行って煙突ネットワークで島へと行く。
まぁ、それも大変なわけだが。
ーー漏れ鍋
「先生、先程行ったように…」
「分かっている」
通常、煙突ネットワークで目的地へと向かうときには、その目的地の名称を言うか、住所を言うかなのだが、あの島へと行くのはそう簡単にはいかない。
『合言葉』
が必要なのだ。
そう、ダンブルドアの校長室と同じように。
このシステムは、ダンブルドアが島に呪文をかけたときに最初から備わっていた。
だが、そこからが違う。僕が任意に変えられるようにしたのだ。
ほら、一ヶ月に一回しか変わらなかったらバレたときに不法侵入にあうからね。
僕が先にブルーパウダーを掴み、言う。
「ナオ・ハセガワの島。べアゾール!」
合言葉は『べアゾール』。今回に限りスネイプ先生用に変えてみた。
因みに本当は詳しくどこどこの家、とか言わなきゃだけど、あの島に暖炉は一つしかない。
ボフンッ
煤と埃の舞う中、身体がしっかりと暖炉に着いたことを確認する。
そして、匂い。
「ただいま」
たった2週間足らずでも、育った所の匂いは、どうしても懐かしく感じてしまう。
薬草の匂い、これは最早この小屋に染み付き消える事は無いのだろう。優しく、そして僅かにツンとする爽やかな香り。
これは、婆様といた頃から使っていたお気に入りの薬草。
そんな事を考えながら、暖炉の横に引っ掛けてあるブラシで簡単にローブの汚れを払っていると、また煤が舞った。
「先生、ようこそ我が家へ」
「…邪魔をする」
先生にブラシを手渡し、僕は暖炉に触れる。(合言葉、今変えないと漏れ鍋で聞いてた人に来られても困る)
「おい、煤を払う魔法を我輩が知らないとでも?」
「あぁ、そうでした。先生、此処では僕が認めた魔法以外、使えないんです」
「…それは何故かね」
「それは…」
キャャウウウゥゥゥ……!
僕が答えようと口を開いたとき、その声は聞こえた。それは苛立ちにも、哀しさにも、寂しさにも聞こえるような。そんな鳴き声だ。
「…そうですね、見ていただいたほうがよろしいかと…」
本当はお茶を出したりした方が良いのかもしれないけれど、先生も気になるようだし…。
先生を連れて僕は小屋の外へと出た。
そして唇へと指を滑らせる。
そして喉には杖を向け『ソノーラス』を無言で唱える。
すぅ…
《皆!2週間ぶりに主人が帰ったぞ!!》
「ッ!?」
《いやナオ。正確には12日ぶりだぜ》
僕の声に答えるように、林の中から現れたのは、青紫色のうぶ毛を身に纏う手のひらサイズのピクシー達だった。
《そうだっけ。…にしても君らが最初だなんて思わなかったよ。いつも皆にイタズラしてるから遅いと思った》
約20体程いるピクシー達に語りかける。
皆羽をパタパタと動かして僕の周りを囲む。
「ハセガワ、これは一体…」
《あー》「んっん゛…まだまだ来ますよ。先生」
ドドドドドドド!!
今度は地響きがした。砂埃とともに。
《ちょ、山羊ちゃん!タックルは駄目!》
こちらへと向かって走ってくるのはおよそ100頭もの山羊だった。
《ナオだ!ナオだよ!》
《ホントにナオだ!》
《帰ってきた!帰ってきた!》
《遊ぼ!遊ぼ!》
うわっ、皆いっぺんに喋るからうるっさいのなんの。
これ、『同時翻訳』なかったら只のなき声にしか聞こえないんだよな…
「……」
ちらりと先生の方を見れば、もう何も言わん、といった風に閉口していた。
眉間の皺は深くなる一方だが。
ま、二度あることは三度あるので。
《ナオ様!!お帰りになられたのですね!》
頭上から舞い降りてきたのは巨大な鷲…の上半身を持つ下半身が獅子の魔法生物。
グリフォンだ。
《やあ、ぐっちゃん。…あれ、今日は天ちゃん居ないんだ。セス君も》
ドシン、と地面に降り、堂々かつ美しく僕らの方へと歩み寄るグリフォン。
あれだけ騒いでいた山羊も、ピクシーでさえも静まり、道を開く。
「ハセガワ…此処は禁じられた森か?」
「いえ、正真正銘僕の家のある島です」
スネイプ先生も少しばかり動揺している。
(なんと珍しいお顔!ふっ、まだありますよ!僕に先生の驚く顔をもっと見せてください!!)
《天もセスも居ませんが、ヨムは居ます。ナオ様》
ぐるる…と喉を鳴らし僕の身体に擦り寄る。
《よっちゃんは知ってるよ。さっき凄い声が聞こえたから…ピクシーちゃん、よっちゃんの餌、ストックある?》
«いんや、そんなの3日も前にとっくに無くなっちまったぜ»
《代わりに》
《僕らの》
《分けてるんだ!》
へー、山羊ちゃんのを…それでもいけないことは無いけれど…やっぱり物足りないよね…
だからあんな声だったのか。
《うん、僕よっちゃんの所行ってくるよ》
《行ってらっしゃいませ、ナオ様》
ピクシーの何体かに肩に乗られたスネイプ先生は、もう何にも驚かないぞ、と言う様な風で腕を組んでいた。
めっさ髪いじられてますが。
「先生、僕少し行く所があります。…暖炉横の階段を降りたところに書庫があります。よろしければどうぞ」
「ふんっ」
返事…しましょう?会話成立しなかったら僕悲しぃな。
「アクシオ!『ヤナギ君』!」
ヒュュューーーッ!!
パシッ!
《やあ、ヤナギ君》
《けっ、何が『やあ』だよ》
アクシオで呼び寄せたはいいものの、手の中でジタバタと暴れる箒。
《まぁ、まぁ。よっちゃんの所に行きたいんだよ。頼む》
《はぁ?何で俺様が―》
《ん?なんか言った?またアレされたいの?》
《乗せりゃーイイんだろ、乗せりゃー》
『アレ』という単語を出した途端従順になるヤナギ君。それでいいんだよ。
「一時間ほどで戻ります!」
「ああ」
あ、何これ。何だか新婚の様な感じが…キャッ。
ヤナギ君に乗り、強く握る。
《さあ、ヤナギ君。僕を導いてちょうだい》
《わーったよ》
ギュンッ
途端に高スピードで発進するヤナギ君。
やはり学校の『流れ星』とは、天と地の差ほどある。
ヤナギ君に乗り、僕は島の中央部から沿岸へと向かった。
やべ、25話もあるのにまだ新学期始まって12日しか経ってない…