日本人、ホグワーツでフラグを立てる   作:府七尾

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フォイをさんざんからかった後、僕は大広間を出てある所へと向かっていた。

 

校長室だ。

 

このまま自室へ帰るにしても、その部屋自体がどこに存在するか分からない。

 

そもそも出来上がっているのかさえ怪しい。大広間を出る際にちら、と教員席を見たが既にダンブルドアは退室していた。

 

僕としては昨日徹夜だったので早くベッドに入りたくてしょうがない。

まだ夕食の時間のため、人の少ない廊下をツカツカと歩き、もはや見慣れてしまったガーゴイル像の前に立つ。

 

すると独りでに螺旋階段が現れた。

 

最近校長室の常連と化している気がしてならない。

僕は狸ジジイの部屋よりもスネイプ先生の部屋の常連となりたいものだが...。

 

 

「ダンブルドア先生、ハセガワです」

 

「おおう、ナオよ。待っとったぞ」

 

ダンブルドアはいつも道りの読めない笑みを浮かべてソファに腰掛けていた。

 

「ダンブルドア先生、僕の部屋の件ですが...」

 

「ふぉっふぉっふぉっ、そう焦るでない、既に出来ておる」

 

その白い髭を撫でながら言う狸ジジイ。

そのウザイ髭をちょん切ってやろうか、と思っていたが、部屋が出来たとあらば、早く行くに越したことは無い。

 

「では、頼んであった場所にあるのですね?」

 

「ああ、しかし良かったのかのぉ、あの場所で。セブルスの隣も開けておいたのじゃが...」

 

僕の頼んだ場所は、スネイプ先生の隣でも近くでもない。むしろ一番かけ離れた場所、ホグワーツの南側にある塔の最上階にしてもらった。

 

これは位置的にはグリフィンドールの塔とレイブンクローの塔の丁度真ん中辺りにある。

 

天文台程ではないが、それなりの高さがあり、ホグワーツ周辺を見渡すのには丁度いい。

 

勿論、スネイプ先生の隣も捨てがたかったが、僕は7年目のホグワーツでの決戦の時、見渡せる場所が良かった。

 

「僕は、あの塔にすると決めました。…これ以上お話が無ければ、僕は自室に…」

 

「ちょいと待っとくれ、…ほれ、これを持っていきなさい」

 

“これ”言ってダンブルドアが取り出したのは、三つの小さな宝石が装飾してある細身のバングルだった。

 

ゴールドのシンプルな本体に、宝石は中央に黒色・琥珀色・乳白色、と並んでいる。これらの色が何を示すのかは定かでは無いが、絶対にこのバングルには何かしらの魔法が施されている…。

 

「…失礼」

 

ダンブルドアにひとこと断ってから僕は右腕を頭の上に挙げ、身体の横でふりおとした。

 

パシッ

 

すると僕の手に現れたのは、今日取りに行ったばかりの箒、ヤナギ君だ。

 

「ほぅ、それはどうやって?」

 

「先生ならお分かりでしょう」

 

これは僕の『空間拡張呪文』を施した巾着の中に入れてあるヤナギ君を『アクシオ』と『姿現し』の原理を利用しただけた。

 

サッと唇に指を這わせる。

 

《ヤナギ君、頼みがあるんだ》

 

《んだよ!俺をこんな暗い中に閉じ込めやがって!》

 

傍から見れば無言で口をパクパク言わせている。そんな図だ。

 

《暗いのは申し訳ないけど閉じ込めてはないはずだよ。ある程度の広さは確保していたはずだ。ヤナギ君が飛び回れるくらいにはね》

 

僕は暴れる箒の柄をしっかりと掴む。

 

《っち、…んで?何したらいいんだよ》

 

《 なに、簡単な事だよ。このバングルに嫌な感じがしないかを調べてほしいんだ》

 

《……》

 

更に強く掴む。ヤナギ君の動きがまた荒くなった。

 

《高級箒ワックス…》

《やる!やります!》

 

だが自ら削り出した箒の扱いには慣れているので、こうして物で釣るか脅したら彼はきちんと僕に従う。

 

急に大人しくなった箒の穂先をテーブルに置かれているバングルに近づける。

少し穂の部分が震えたかと思えば、また動きを止める。

 

《どうだい?》

 

《ん、やな感じはしねーけど…魔法は掛かってんな。でも、そう簡単に解呪出来るモンでもねーぞ》

 

《危険性は無いってことだね》

 

《ああ。……ワックス、忘れんなよ!》

 

《オーケーオーケー》

 

ボグワーツでの初めての仕事を終えたヤナギ君はブツブツ言いながらも巾着袋に入った。

 

 

…………危険性は無い。しかしダンブルドアが取り出した物だ。掛かっている魔法もダンブルドアのものに違いない。

 

また、唇に指を這わせる。

 

「…有難く、頂戴致します」

 

「ふぉっほっほ、そんなにかしこまらんくても良い。ワシとナオの仲じゃ」

 

何じゃそれ。気色悪い。僕あんたと仲良くなった覚え無いんだけど。

 

「ナオ、それはkeyじゃよ」

 

「key…」

 

鍵。自室の、か?

にしてもわざわざバングルにする必要があるのか?

 

そんな事が頭に浮かんだが、自分が不利になるような魔法は掛かっていないとはっきりしている分、まだ余裕がある。

 

 

 

key、か。

 

僕は掌にバングルを乗せながら誰も居ない廊下を歩く。

 

校長室を出た直後は大広間から各寮へと戻る生徒で多少の人通りはあったが、自室―南に位置する塔へ近づくにつれ、それは減っていき、今は近くに人がいない状況だ。

 

「此処だな…多分」

 

 

僕はある場所で足を止める。

 

多分、と曖昧なことを口にしたのには理由がある。

 

立ち止まった目の前は壁だからだ。

 

 

……この壁の向こう側が塔の内部の筈だ。

しかし、ナンダコレ。漏れ鍋からダイアゴン横丁に行く時の壁みたいに何処かをなぞるとか?

 

それとも…

 

 

「key…」

 

掌のバングルをぎゅっと握る。

 

腹を括るか…

 

 

僕は校長室からここまで頑なに着けることは無かったバングルをそっと右腕にはめた。すると少し大きかったそれは1度液体のようになったかと思えば瞬時に元の形へと形成され、僕の腕にピッタリになった。

 

はて、これをどうする…?

 

 

目に入るのはバングルに嵌め込まれた三つの宝石。

 

その他は至ってシンプル。

 

「まさか、ね」

 

自分の推測に自分で薄く悪いながら左の手で三つ並んだ色の違う宝石の真ん中、琥珀色の結晶に触れた。

 

臍の裏あたりをグイ、と引っ張られるような感覚の後、少しの風の唸り。

 

気がつけば

 

何処かの部屋の中にいた。

 

 

 

「はは…、keyはkeyでも移動キーかよ」

 

 

 

見渡してみれば

 

「げぇ…」

 

白とピンクのレースたっぷりのふりふりな装飾が付いたインテリアばかりだった。

ベッドの天蓋は勿論、ソファやカーテンまでもが白のレースがふんだんに使われており、何だろう、こう…目がチカチカするぐらいに可愛すぎる。と言うか

 

「趣味が悪ぃ」

 

即座に杖を取り出しひと振り。

 

お姫様かよと思う程にふりふりだった装飾は全て取り払い、ダークブラウンとベージュ系のシックな創りの物へと変えた。

絨毯は毛足の長い深いグリーンだ。

 

よし、これでいい。

 

間取りは要望通りだと思うから確認は今度でも良いだろう。

 

今はただ、ダンブルドアをぶん殴る夢を見たい。

 

 

 

 

…あ、スネイプ先生の所に荷物置きっぱだった。

 

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