日本人、ホグワーツでフラグを立てる   作:府七尾

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ハーマイオニーの誕生日も過ぎ、彼女とは両想いになれた(友達的な意味で)。

別の案件も無事に終わり、もう入学して2ヶ月が経っていた。

 

「……甘」

 

 

起きた途端鼻を刺激する甘ったるい香り。

 

「そうか…今日、ハロウィン」

 

きっと数時間後には生徒達はわくわくと心を高鳴らせる事だろう。特にグリフィンドールなんかは仮装していそうだ。

 

壁に掛けてある時計を確認する。

 

 

……よし、予定通り。

 

 

普段からトレーニングの為、朝早くに起きている僕だが、今日はそれよりも1時間早く起きた。

 

ホグワーツの屋敷しもべ妖精もご苦労なことだ。料理を作り始めるには早いのではないか?

と思いつつ、僕はクローゼットに向かい着替え始める。

 

いつもなら動きやすい服装になるが、

今日は

 

今日だけは違う。

 

いや、この日だけは…と訂正しておこう。

 

 

そうして身につけたのは

 

装飾の少ないシックな黒いワンピース。

今はこのワンピースに不釣り合いなバングルも部屋から出たら外す。

 

杖と、必要最低限の物だけを持ち、部屋を後にする。

 

流石にこの時間も教師の見回りは無いようだ。がらんとした廊下に香る匂いに、嫌でも集中せざるを得ない。

 

 

来年からは鼻が効かなくなる薬か魔法でも開発しようか…などと考えつつ、誰の気配も感じることの無いまま校庭へと出る。

 

 

そして、学校の敷地外に出たことを見計らい、ダイアゴン横丁で世話になった『臭い消しの呪文』を施してあるマントを頭から被り、姿くらましをした。

 

 

僕が校則を破り、学校を抜け出してまで行きたい場所。

 

そこは

 

 

 

バチンッ

 

 

「此処が……ゴドリックの谷」

 

 

ハリーが『生き残った男の子』と讃えられる理由となった場所であり

 

彼の両親が亡くなった場所だ。

 

 

これは一か八かだった。

前世で知っていた風景と、記述、それとホグワーツの図書館で読んだ本から得た知識のみで姿現しを使ったが、本当に来る事が出来るとは思っていなかった。

 

だが、バラけていないことから、此処が本当にゴドリックの谷である事を示している。

 

 

10月になってからぐっと下がった気温はホグワーツも此処も同じようで、流石にローブを羽織ってくるべきだったか、とマントをキュッとかき寄せる。

 

お墓……何処だろう

 

 

まだまだ日が昇る前の暗いシンとした街を歩く。ポツポツと灯る明かりを辿り、彼らが眠っているであろう場所を探す。

 

その道すがら、マントの下で小さく指を鳴らす。

 

淡く光の粒子が溢れ、女の容姿に戻る。

 

彼女に、リリーに会うんだから、本物の私で会わなければ…そう思った。

 

 

「あ……」

 

見つけた

 

文字が刻まれた石が多数並んでいる一角を

 

そして

 

彼も

 

 

「スネイプ先生…」

 

私が思わず呟いた言葉は幸いにも彼の耳には届かなかったようだ。

もしくは耳に入らなかったのか。

 

ある墓の前に膝をついている彼は

 

闇に紛れるような漆黒のローブを纏っていながらも、決して消えることの無い強い志がその背中から感じられる。

 

物陰からそっと見る事しか出来なかったが、彼の足元に白い花が供えてあるのが見えた。

 

 

 

 

 

Lily

 

 

 

 

 

彼、セブルス・スネイプは誰に聞かせるでもなく掠れた声で言った。

 

だが私の耳はその言葉をひろった。

 

たった僅かな言葉でも、そこからは揺らぎない愛が感じられて、私はこの場にいては行けないのではと思った。

 

けれど体は動こうとせず、静かに彼を見続けることしか出来なかった。

 

 

「…………だ、……でな。あぁ……だ、リリーの子はポッターに似て傲慢で、どうしようもないほどの自惚れだが、その瞳と行動力は君に似ている。…あの子は、私が守り抜いてみせる。命にかえても……、また、来年来る」

 

 

 

 

いつもの相手を恐縮させてしまう鋭い眼光も、今は身を潜め、柔らかく、そして軽く俯いていた。

 

あれが、愛しい人に向けるセブルス・スネイプの目。

 

いつか、私も……と考える辺り、やはり私は性格が悪い。

 

 

彼がその場で姿くらましをしたのを見届け、ようやく動くようになった身体。

 

 

思ったよりもかなりの時間滞在していたようで、日の昇り方から後少しで朝食の時間だろう。

 

ザリ…

 

ゆっくりと墓の前まで歩き、膝をつく。

 

先生の残していった彼女の花はまるで彼女本人のように、まるで先生の想いのように凛と6枚の花びらが開いている。

 

美しい、その瞬間の時を止めたかのような…

 

 

「……初めまして。私、ハリーと同級生なんです。寮は違いますが…」

 

 

口を開いて出た声は、自分で思うよりも大きくて、まるで啖呵きってるみたいだな…と内心苦笑する。

 

 

「ハリーと…ハリー達とこれからも仲良くしていきたいと、思っています」

 

そうだ。初めは少し苦手、というよりも嫌悪感を抱いた。だって本で彼らはスネイプ先生の何も知らずに『裏切り者』呼ばわりして、って。

 

でも、それは私も同じだった。彼らの事を何にも知らずに決めつけていた。

 

何気ない事を話したり、近くに居るうちに、彼らと仲良くなりたい、友達になりたい、そう思った。

 

だから

 

 

 

 

「……、だから、私はハリーを命にかえてでも守るスネイプ先生を、守ります。絶対に…」

 

 

 

それだけ言い残して私は姿くらましをした。

 

それをさっきまで私がいた場所で見ている人が居ると知らずに。

 

 

 

顔を出した太陽の光がホグワーツの城壁を照らすなか、スグに指を鳴らし『私』から『僕』になる。

 

『匂い消しの呪文』のマントから『透明マント』へと替え、足速に部屋に戻る。

 

と言っても、城内に入ってしまえばバングルに触れたら部屋に移動する。

 

 

 

服を着替え、首にネクタイを回していると

 

その姿が姿見に映った。

 

長細いネクタイが

 

緑と銀のネクタイが

 

一瞬

 

蛇に見えて

 

 

 

それが僕の決意をまた強くさせた。

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

「ナオ、おはよう!」

 

廊下の向こうから小走りで来るのはふわすわの髪のハーマイオニー。

朝食を取るのが遅かった僕は、授業には早めに行くタイプのフォイと別れていて、1人で1時間目の授業に向かう所だった。

 

ハーマイオニーもフォイと同じように早めに教室に入り座ってる人の筈だが、廊下で会うのは少し不思議に思った。

 

「おはよう、ハーマイオニー。君がまだ教室に行ってないなんて珍しいね」

 

僕の前まで来たハーマイオニーは手に『妖精の魔法』の授業で使う教科書があった。

 

あぁ、ハロウィンだから、今日があの日か。

 

「フリットウィック先生が、この間そろそろ物を飛ばしてみようって仰ったから、授業に出る前に寮で予習してたの。そしたらこんな時間に」

 

なるほど、ハーマイオニーらしい。

 

「私、かなり自信があるのよ!他人に教えることも出来るわね!」

 

そうだろうね。

自分が出来て、他の人が出来てなかったら、教えたいもんね。

 

 

 

「そうなんだ。ハーマイオニーならきっと成功するよ。」

 

「ありがとう!あ、引き止めてごめんなさい!また後で」

 

言うだけ言ってまた小走りで妖精の呪文の教室に向かっていった。

 

「……ゴメンね」

 

僕はあえて止めなかった。

 

そうしないと、ハーマイオニーと彼等の間に強い絆が築かれないから。

 




何気に主人公一瞬女装してる…
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