日本人、ホグワーツでフラグを立てる   作:府七尾

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・・・。

 

 

やばい……バレた?

 

あのマクゴナガル先生だ。これで気づかないはずが無い。

いや、もしかするともっと前から……それこそ組み分けの時から知っていたのかもしれない。

 

今から『異性モドキ』を掛けようにも、利き手である右腕がほぼ全く動かないので、指を鳴らすことが出来ない。

 

例え動かすことが出来ても、恐らく魔力の量が十分では無いだろう。

 

では、今優先するべき事はただ一つ。

 

右腕程ではないが、怪我をして動かしづらい左腕を布団の中でそろりそろりと動かす。

 

その間にも、3人の先生方が何か仰られた気がしたが、全くもって何を言っているのか分からない。

 

ゆっくりと手を動かす内に、3人はベッドを囲うカーテンの中へと入り、全員椅子に腰掛けていた。

 

漸く手を口元へと持ってきて、指を唇に這わせる。

 

正直、利き手ではない左手で、かつ魔力の回復が十分とは言えないので不安定なものだが、ないよりは断然マシだと言えよう。

 

……英語全く出来ないし。

 

唇から指を話すと、スッとした感覚の後一瞬の静寂。

 

そして、聴力が戻れば聞こえてくるのは翻訳された言語。

 

 

『同時翻訳』を使い、僕は初めにこの言葉を言った。

 

「……えー、もう1度初めからお願いします」

 

 

 

 

 

----------------------------------------

 

 

「あ……と、では……初めから僕の事は気づいておられた、と?」

 

ダンブルドアの魔法により、カーテンの中での会話は外へと漏れなくなった。

 

内緒話には最適な空間で、僕はマクゴナガル先生から、初めから気づいていたことを知らされた。

 

 

「ええ、ホグワーツで変身術の教鞭に立っている身です。組み分けの際、貴方からは違和感を感じていました」

 

 

こう言っていたマクゴナガル先生だが、その後に

 

「ですが、その年齢でこのような高度な魔法を操る事は素晴らしいです。何かあれば何時でも相談なさい」

 

と付け加えてくださった。

 

どうやら、マクゴナガル先生、ダンブルドア、スネイプ先生が僕を訪ねたのは、変身術の教師であり、女性のマクゴナガル先生にも事情を話した方がいいのでは?という事だったようだ。

 

 

 

そうして、1週間があっという間に過ぎ、今朝朝食をとってから退院し、あの医務室から開放されたわけだが……

 

「ナオ。本当に大丈夫なのか?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

こう聞いてくるフォイ。

僕の隣を離れようとしないフォイ。

 

「本当に本当か?何処か痛くないか?」

 

「全く痛くないよ」

 

今日はオールバックのフォイ。

大方自分ひとりでは僕がしたようにセットできなかったからフォイフォイ閣下とお揃いの髪型のフォイ。

 

 

 

「……それ程心配なら……」

 

 

 

 

朝1番の授業である妖精の魔法の教室に向けて動かしていた足を止める。

 

すると自然にフォイも立ち止まる。

 

今は大広間から教室に移動する人が多く、この廊下も少ないとは言い難い人数が足早に通り過ぎている。

 

その中に2人が止まるというのは、少し目にとまり易い。

 

僕は壁際に立ち止まっているフォイに隙を見せずに近づく。

 

元から高かった距離は更に縮まり、正に目と鼻の先と言えるだろう。

 

 

息もかかりそうなほどの距離にフォイは驚いた様で目を見開いていた。

 

 

 

 

「今夜……僕の部屋に来て確かめてみる?……その、身体でね……」

 

 

 

 

なんてフォイの耳元で言ってみる。

 

 

因みにフォイのシャツとセーターからは柑橘系のようなスッキリとしたいい香りする。

 

 

「な、ななななななな、何を言ってるんだ!」

 

「ふっ、……それとも、テディベアでも持ってくる?」

 

この間の夕食の時の事を思い出したのか、フォイは驚きの表情から、顔を真っ赤にして怒りの表情を見せた。(多分半分くらいは羞恥だと思うけれど)

 

 

「違う!本当に心配はしている!勿論ナオは心配だ!だが、今月はクィディッチの試合があるから、それを危惧して聞いていたんだ!」

 

「クィディ……ッチ?」

 

「ああ。それに、フリント先輩もナオを心配していた」

 

言いながら、段々と落ち着いてきたのか一度息をつき、僕からいわゆる壁ドンされた状態から抜け出すと、さっさかと歩いていった。

「あと数分で鐘が鳴る。急ぐぞ、ナオ」

 

「ああ」

 

何だか最近フォイがからかいに耐性を付けてきた気がする。

 

……次は何をしよう?

 

 

 

じゃ、なくて。

 

クィディッチの試合だ。

 

そういえば11月だったな。

 

 

殆ど練習に行っていない気がするが、僕選手から外されてないよな?

 

 

 

そんな事を考えつつ、放課後に練習コートへと行けば、フリント先輩に絞め殺されるのではないのかと思うほどに抱きしめられ、早速チーム練習へと移った。

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今まで参加していなかったが、僕はハリーと同じポジションのシーカーであり、スニッチを追いかける位しかやる事がなかった。

 

こんな事を言ってしまえばハリーに失礼だが、3日間みっちり練習はやったものの、そのほとんどの時間、僕はフリント先輩達に箒の扱い方について一から教えていた。

 

扱い方……と言うよりは、各々が持っている高そ〜な箒ちゃん達の性格を伝えたまでだ。

 

やはり、お坊ちゃん嬢ちゃんが使う箒なだけあり、少し頑固な子が多かったが、一度分かり合えれば凄まじいまでにその本来の力を僕達スリザリンチームに魅せてくれた。

 

ヤナギ君に至っては、ホグワーツに連れてきたのにも関わらず、暫く部屋に閉じ込められていた事に激おこだった。

 

まぁ、有名メーカーの新作箒ワックス使ってあげたら直ぐに機嫌直ったけれどね。

 

ふっ、チョロいぜ。

 

 

……とにかく、この3日間は完全にクィディッチ漬けだった訳で。

 

 

「(スネイプ先生が)足りない!!」

 

「?どうした、ナオ。夕食が足りなかったのか?」

 

夕食を終え、大広間で紅茶を飲んでフォイとノットが今度の土曜日に迫ったクィディッチの試合について話し合っている横で僕はゴブレットに入ったクラッブのかぼちゃジュースが零れんばかりの勢いで立ち上がった。

 

クラッブの周りには夕食の食べかすが既に無数に落ちていたので、視線を声を掛けてきたフォイにやり、何事を無かったように静かに座り直す。

 

 

「いや、少々考えていることがあってね」

 

「そうなのか?」

 

 

あー、首を傾げてるわよこのフォイと言う名前の天使ちゃんは。

 

僕が目覚めてからまた髪をおろす様になったフォイは、ふわふわの髪と小さな顔に子供らしい柔らかい頬で、まさに天使だ。

 

ハーマイオニーも天使だけど、フォイは……なんか、こう。

 

堕天しそうな悩ましさがあるみたいでイイんだよなぁ。

 

「フォイ、ノット。今日はもう部屋に戻るよ。試合に向けて睡眠時間を長く取るようにしているんだ」

ウソです。何もしてましぇん。

 

でも2人は僕の言葉を間に受けて、優しく送り出してくれた。

 

クラッブとゴイル?

 

ああ、1人1個ずつフルーツタルト抱えてたよ。

 

 

ガヤガヤと人の声が反響していた大広間から歩き、少し離れるとあるのは静けさのみ。

 

 

「…………」

 

 

魔法でぼんやりと灯る照明が等間隔にあるだけの廊下は、11月に入り冬同然となった気候もあり、何処か孤独感を感じさせられた。

 

誰か遠くで窓でも開けたのか、やや早い動きの冷たい空気が頬を気味悪く撫でて消える。

 

片腕で自らの身体を抱きしめた。

 

僅かな震えを抑えるように。

 

 

右手は風を感じた頬に当てた。

 

その冷たさを体温で打ち消すように。

 

 

 

 

「さ、スネイプ先生の所いこ」

 

 

 

 

 

 

 

 

この震えが、寒さの物なのか、それとも別の何かによる物なのかそれはまだ分からない。

 

 

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