ハーマイオニーとネビルにカエルのトレバーを見送った後、ロンがクィディッチというスポーツについて熱弁したりしていると、突然コンパートメントの扉が開いた。またハーマイオニーかと思ったが、そこに居たのはふわふわ頭の少女ではなく、青白く金髪を撫で付けオールバックにした少年だった。
「此処にハリー・ポッターが居るって汽車の中で噂なってんだけど、君がそうなのか?」
僕の方を見てそう言う少年ーーーーードラコ・マルフォイだーーーーーはどうやら勘違いをしているようだ。似ているところは黒髪というのと、小柄だというところ位だが、どこに間違う要素があるのか疑問に思うな。
一瞬嫌そうな顔をしたハリーが違うと訂正しようとするのを目で止めて、座席から立ち上がり、マルフォイの前に立つ。
そのまま無言でいると、肯定だと思ったのか続けて言う。
「こっちがクラッブ、こいつがゴイル。そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
脇でロンがクスクス笑ってしまうのを堪えているが、それを見たマルフォイは見下す様に、いや実際に見下しているのだが
「僕の名前が可笑しいとでも言うのかい?君の事は、聞かなくてもわかるよ。パパが言ってたよ、ウィーズリーの家の奴は皆赤毛でそばかすだらけで、子供が多すぎて家計が火の車だってね」
それからハリー(と勘違いした僕)に向かって言った。
「ポッター。魔法族にも家柄の良いのとそうでないのがいるんだ。そのうち君も分かるようになるだろう。間違ったのとは付き合わない事だね」
お前が間違ってんだっつーの。心の中で言ったつもりが、顔に出ていたのかフォイ(もうフォイでいいよね。こんな奴)が咎めてくる。
もう、ダメ……。我慢出来ない。
「ふっ………、フハハハっ!ハハッ!ププッハッハハハ……ヒィヒィィ!ぷぷぷっ。あーあーお腹痛い!ばっかじゃないんですか?プークスクス!」
お腹を押さえてヒィヒィ言いながら笑い転げるどまでは行かないが、目に涙を浮かべて馬鹿にするように笑う僕に、フォイがしかめ面になる。
「な、何をそんなに笑うんだ」
「ひ、ひぃ……。うん、ごめんよフォイ「フォイ!?」余りにも君が馬鹿だから……つい」
「馬鹿だと!?この僕に言ってるのか!?それにフォイってなんだー!!」
真っ赤になって怒るフォイ。それが益々滑稽に見えてきて一旦収まったと思った笑いが再び引き起こされた。
「ふふっ、……っ間違えてるのは君の方だよ、フォイ……マルフォイ。先ず、周りに目を向けられていない時点で、それは実に愚かで馬鹿げているよフォイ…マルフォイ、人に何かを教える前に、先ず自分の事をやらなきゃ。……さぁ、フォ…マルフォイ、このコンパートメントには誰がいる?」
「もうわざとやってるだろ!それ。……このコンパートメントに誰が居るだって!?ポッターとウィーズリーそれに……ポッター!?じゃあ、お前は誰だ!」
ようやく気づいた様子のフォイ。やはり、周りが見えていない辺り、まだまだお子様の様だ。
「改めまして、僕の名はナオ・ハセガワと申します。以後お見知りおきを…フォイお・ぼ・っ・ち・ゃ・ま?」
元々青白かった顔の面影が無くなるほど真っ赤になったフォイはクラッブとゴイルを引き連れて足早に去っていく。いやー、ひっさびさに笑ったわ。フォイ良いねー。いじめがいあるわ。あれはライバルじゃ無くて玩具だね。うん、決定!
「あ、えと……ナオ?ありがとう…?」
「僕も、マルフォイに家の事馬鹿にされたから……ありがとう」
さっきのやり取りに困惑しつつも、感謝してくるハリーとロン。
「いや、此方が勝手に楽しんだだけだから、気にするな」
この後、何やら騒がしがった(主に僕の笑い声のせいで)此方に何かあったのかと顔を出しにハーマイオニーが来たりしたが、別にまたフォイが来ることもなく、ロンの双子の兄がやってきた時には先程の事を話してまた大笑いしたりして(僕、ハリー、ロン、双子の間でマルフォイの事をフォイと呼ぶようになった)、時間は過ぎていった。
ローブに着替え、駄弁っているうちに到着したようで、列車が止まった。因みに、ハリーとロンの前で普通に着替えたが全然バレなかった。一回しくじった事があるから、また念入りに『異性モドキ』を改良してパワーアップさせたから、もしもあの杖爺に会ったとしても「……あるぇ!?」で終わるだろう。
列車から降りた僕達の案内をしていたのは、モジャモジャの大男だった。
「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!」
「ハグリッド!」
いち早く気づいたハリーが大男ーーーーールビウス・ハグリッドーーーーーに駆け寄る。その後ろを僕とロンも付いて行く。
「おう!ハリーじゃねぇか、さっきぶりだな、元気しちょったか」
大きな身体に相応しく大きな声で叫ぶように返す。そのままハグリッドの案内で一年生は湖に出た。
ボートに4人ずつ乗り、ホグワーツ城を目指す。
少し進むと、崖の上にそびえ建つ城が見えてきた。
ボートに乗っている生徒から、感嘆の声が上がる。同じボートのハリーとロンも例外ではない。
そして、ボートを降りた僕達が向かったのは、階段を上がった先のある扉の前。ハグリッドが扉を三回叩いて暫く待っていると、一人のエメラルド色のローブを纏った女性が出てきた。
「先生、一年生を連れて来ましただ」
「ありがとうハグリッド。さあ、一年生はこちらに」
ハグリッドから一年生の引率を引き継いだ女性はミネルバ・マクゴナガルだ。ホグワーツの副校長で変身術の教師、グリフィンドールの寮官。前世で僕がスネイプ先生の次に好きだった教師だ。
マクゴナガル先生にぞろぞろとついて行き、城の中を歩く。
石畳の、小島にある小屋が丸々3個位入りそうなホールを横切って行くと、右側からザワザワと話し声がする、おそらく大広間であろう扉がある。しかし、マクゴナガル先生はその部屋には入らず、脇にある小さめな部屋に一年生を入れた。
窮屈ではあるが、なんとか全員が部屋に入った所で、マクゴナガル先生が口を開いた。
「皆さん、ホグワーツ魔法魔術学校へ入学おめでとうございます。新入生の歓迎会が間もなく始まります。ですが席につく前に皆さんの入る寮を決める組み分けの儀式があります。寮は、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンの4つあります。それぞれの寮が偉大な魔女や魔法使いを輩出してきました。どの寮に入るにしても、各自一人一人が誇りとなることを望みます。組み分けの儀式の準備が整うまで待っておくように」
そう言うと、再び何処かへ行ってしまった。
彼女が去った後、残された一年生の話題は勿論組み分けの儀式についてだった。
「ねえ、組み分けの儀式って何をすると思う?」
「試験かなんかだとおもう。フレッドが凄く痛いって言ってたけど、多分何時もの冗談だよ」
それを聞き、少し不安そうにするハリー。その隣ではハーマイオニーが一点を見つめてブツブツと呪文を言っていた。ネビルは焦って辺りを(人の足元)キョロキョロと見ているところから、またトレバーを探しているのだろう。
その他の一年生も皆落ち着きがなく、固い表情で仲間と固まって話している。
全く、試験なんてついこの間自分が魔法使いだって分かったばかりのマグルだって居るのに、なんの試験をするんだよ。この直ぐに人に流される所もまだまだ11歳の子供だな。
「ハーマイオニー。不安になることはないよ。僕等はこの学校に来たばかりだ。魔法の試験なんてやるわけ無いだろう?」
言葉はハーマイオニーに向けているが、周りの同じ様に不安そうにしているハリーやその他生徒に聞こえるように、少し大きな声で言った。すると、此方を振り返る一年生が多数。
どんだけ皆不安がってんだよ。
「じゃあ、何をするってんのよ?」
「うーん、マグルもそうじゃないのも公平に組み分けできるように、例えば魔法の掛かっている道具か何かに触れる……とか?……とにかく、流石に一年生にいきなり魔法使えとかそんなに鬼畜な事はしないと思うから、落ち着いて時が来るのを静かに待っていればいい」
何人かは少し緊張がほぐれたような顔に、何人かはまだ不安が拭いきれていない顔になった。まあ、直ぐに分かることだからいっか。
「ナオは前向きだね……」
「冷静に物事を見ているのね。ナオは。きっと貴方はグリフィンドールね。だって、優しくって気配り上手だもの」
そんな事をハリーとハーマイオニーが言うので、そこは反論しておく。
「僕は別に前向きでも優しくも無くて、自分の欲に忠実に生きようとしているだけなんだ。だから、欲を叶えたい為なら、面倒な事もするし、逆に関係無いようなことだったら、それこそ死にかけの人が目の前にいても放って行く様な人間だよ、僕は。それに、僕が入りたい寮はスリザリンだよ」
少し口の端を上げてそう言えば、ハーマイオニーとロンが
「スリザリンだって(ですって)!?」
と同時に驚いた大きな声をあげた。
その声に、少し離れた場所にいるフォイがチラッと此方を睨んでいたが、お返しに笑顔で手を降っておいた。