僕の発言に驚くハーマイオニーとロンに、ハリーはいまいち分からないという風だった。
「ねえ、どうしてスリザリンはそんな反応なの?グリフィンドールや他の寮と何が違うのさ」
「いい?この四つの寮の名は、ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、そしてサラザール・スリザリンの四人の創設者の名前に因んでいるのよ。本に書いてあったわ」
「そのスリザリンが何か問題でもあるの?」
「問題多アリだよ(だわ)!!」
再び二人の声が揃う。また声量が大きくなってきて、フォイ以外の一年生も此方を向いてきたので、そろそろ止めようとしよう。
咳払いをして三人の視線を集める。はっとした様子の三人の注目が集まった所で、
「もう少し、静かにしようか……ね?」
口に人差し指をあてて小首を傾げる。
すると、ハリーとロンはあからさまに目をキョロキョロさせて、ハーマイオニーに至っては、頬を赤らめさせていた。
あー、そんなに破壊力あったかー。
僕は別に鈍感系主人公では無いつもりなので、三人のこの様な状態になった理由はよーく分かっている。
この姿のせいだ。
『異性モドキ』の魔法を創りだすにあたり、どうせなら超絶美形になろうではないか、とはっちゃけてしまったのである。
つまり、この顔に三人はノックアウトされたのだ。
男の姿なのに何故かロンとハリーにも効いちゃったけど。
とりあえず話しにならないので、三人の前でパチンと手を鳴らして正気に戻させる。
「あ……あ、そうそう。どうしてスリザリンが問題あるんだい?」
いち早く気がついたハリーが今度は小声でロンに聞く。それに伴いロンとハーマイオニーも小声で返す。
「だって、あれだぜ?スリザリンって闇の魔法使いを沢山出してるんだ」
「あのドラコ・マルフォイの父親もその一人よ。見てわかるでしょう、スリザリンの寮に入る人はみーんなあんな風に気に触るような人ばっかりなのよ」
フォイの方をちらっと見て、そう言うハーマイオニー。
「え、でもナオは優しいよ。さっきだって僕の眼鏡を直してくれたし、トレバーだって見つけてくれたよ……」
「そこがおかしいのよ。ねぇ、ナオ。貴方ならグリフィンドール……レイブンクローだって、入っても活躍できるはずよ。それなのに、なんでスリザリンなの?」
やっぱり、スリザリンの評判は一年生の間でも悪いんだなぁ。
「ふふっ、酷い言いようだなぁ。それに、グリフィンドールとレイブンクローが候補に出てどうしてハッフルパフが出ない訳?ハッフルパフ寮生は、『劣等生』と、言う烙印を押されがちだけれど、必ずしもそうじゃない。確かに他のどの寮にもあてはまらないけれど、それはある意味他の寮には見出だせない可能性があるんだと僕は思っているよ。スリザリンだって、卒業生の中には闇の魔術に関係ある職につくか死喰い人になったのもいる。だけど、そんな人ばかりではないだろう?きちんとした職について、偉大な名を歴史に残した人物だって少なからずいる。僕はある目標のためにスリザリンに入りたいんだ」
「そう……なの。自分の考えを持っているのなら、いいわ。これ以上止めない。私、貴方がスリザリンに入ってものきっと仲良くなれそうな気がする。改めてよろしくね。ナオ」
そう言って少し赤らめた顔で手を差し出すハーマイオニー。別に、これ以上関わるのは面倒くさいとか、いつ裏切るか分からないぜ、とかは口に出さない。まだ、ね。
ここは素直に手を握り返す。そこにハリーとロンの手も重なってきた。
「僕もナオと仲良くしていきたい」
「僕も」
そうやって、握手(?)をやっている僕達の手は突然離す事になった。
フォイが何かした訳でも、僕が手を払った訳でも(払いたいけれども、面倒くさいから)なく、それは指先に感じる冷たさからだった。
「ぅわぁ!何だ?」
周りで一年生が口々に叫んでいる。
「あ!ゴーストだ!」
この冷気の出処を確かめると、壁から続々と出てくる数人のゴーストの内一人が丁度重なり合っている手の所をすり抜けていったからだ。
「ですからな、修道士さん。ピーブスには十分な程にチャンスをやったじゃないか。しかも、お分かりのように、あいつは本当のゴーストじゃない」
「ええ、ですが……」
何やら言い争いをしている模様。ピーブスといえば、あのお騒がせなポルターガイストの事だろう。
襟の付いた服を着た貴族のような格好のゴーストが言った。さらに此方に気づいた様子で近づいて来た。
「おや、新入生の生徒じゃな…、これから組分けされるところか?」
皆初めて見るゴーストに驚いて言葉を返すものはおらず、数人が頷くのみだ。
そこで、僕は一歩踏み出し言った。
「お初にお目にかかります。ホグワーツ城のゴーストの皆様。僕達は今年からの新入生です。これから騒がしくなりますが、よろしくお願いします」
ここはきちんと挨拶をしておく。
ゴーストを味方に付けておいて損はない……何せ…
「ほう、騒がしいのはいつものことだから良いがのぉ。…新入生諸君、どうかハッフルパフをよろしく頼むぞ」
「…む?君、おかしな魔力を身に着けてるね。まるで君自身に魔法がかけられているような…」
「ええ、護身用に少し…」
「護身用に…とな、確かに防御系の魔力を感じるがそれだけでは…」
そう、ゴーストには僕の『異性モドキ』の魔法を感じ取れる事が出来るのだ。先日『ノクターン横丁』へ買い物に行った時、改良した『異性モドキ』で歩いていたところ、すれ違う魔法使いには一切見向きもされず、バレることは無かったのに、浮遊霊らしきゴーストにはじっと見つめられたのだ。恐らく、僕の纏う魔力に気がついたのだろう。浮遊霊だから、魔力に気がつくだけで、ホグワーツ等に取り憑いているゴーストは強力で、魔法自体にも気づくだろうと踏んでいたのだ。
その考えが現実になった訳だが……、ゴーストが再び口を開く前に部屋の扉からマクゴナガル先生が一年生を向かえに来た。
実は、ゴースト以外にも僕が危険視している人物がいる。
変身術を極めているマクゴナガル先生。
最強の魔法使いと言われるダンブルドア校長。
そして、スネイプ先生だ。
上2つは、単純にプロかアマチュアかの差で、危険視しており、僕は完全にバレるまでは行かなくとも、勘付かれると思っている。
最後のスネイプ先生は、僕の心情が魔法の完成度に出たら、危ないからだ。スネイプ先生をの前にして、表面上は冷静でも、きっと興奮して少なからず『異性モドキ』に影響する。その点から、この三人には注意したい。
等と考えていたら、ぞろぞろと一年生の列が動き出したのでついて行く。一瞬振り返ったマクゴナガル先生と目があった気がしないでも無いが、今は『組分けの儀式』について考える。
『組分けの儀式』それは生徒の今後の人生を左右する大切なものだ。単なる寮を決めるだけではない。
もちろん、僕はスリザリンへ入る。スネイプ先生とラブラブしたいからだ。それ以外に理由なんてない。闇の魔法使いとかに興味がなくも無いが、正直スネイプ先生のお気に入りに慣れればそれで良い。
その為には、フォイ家を潰し、罪を犯してでも目標を成し遂げる。
まぁ、この辺りがスリザリンの気質出てるから、帽子によって他の寮に入れられることは無いだろう。
いや、もしあったらズタズタのボロボロにしてやる。絶対に。
大広間の扉から開かれる。それと同時に薄暗い廊下に入ってくる。明るい数百ものロウソクの光。
一年生の大半は緊張で固くなっている(ネビルなんかは、手と足が同じ方が出ている)が、僕は緊張なんて無いので堂々と、しかし優美に歩く。顔は笑顔でもなく、無表情を貫く。
先程も述べたとおり、大広間には数百ものロウソクが浮いており、さらに天井は綺羅びやかな星が点々と輝いている少し前の方でハーマイオニーの声で「これは魔法で星空に見えるようになってるの。『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ」と言っているのが聞こえた。だが僕はロウソクにも星空にも興味がなく、全く見ていなかった。僕が一心に見ていたもの、それは上座の長テーブル。黒髪の鷲鼻の男性だ。
同じ黒髪でも僕のそれとは髪質の違うねっとりとしたのが、堪らなく愛おしい。
(ああっ!スネイプ先生!!私にその頭を撫でる権利をください!あわよくば撫で回すことによってクシャッとなった御髪を指でつまみ上げる仕草を拝見したいで御座いまする!)
ハッ!?いかんいかん、冷静に、落ち着け私…僕。
大広間前方の教師が座る上座に背を向かされて一列に並ばされる。必然的に上級生と顔を合わせることになったが、殆どが知らない顔だし、興味ないしで、何だかネズミかジャガイモの集団に見えてくる。その内の赤毛の二人のジャガ……人物がこちらに向かって(正確にはロンとその隣のハリーに)手を降っている。
列車の中でフォイの話について盛り上がったウィーズリー家の双子、フレッドとジョージだ。見ていたのがバレたのか僕の方にも手を降ってくる二人。
ウザったいので適当に会釈しておく。
するとマクゴナガル先生が無言で四つ足のスツールを置き、その上に古ぼけた継ぎ接ぎのある帽子が置かれた。
一瞬、生徒達の会話が止み部屋に静寂が訪れるとその帽子ーーーーー組分け帽子はーーーーー徐ろに歌い出した。
はーーー気になるーーースネイプ先生めっさ気になるーーー!!
何で先生に背を向かせるのさ!失礼でしょうが!僕にスネイプ先生のお顔を見させて下さい!そのハリーに向けているであろう憎々しげな瞳を少しでも私に…僕に見せて下さい!
はうぅ……
ナオ、ご乱心か!?