帽子が各寮の特徴と選出方法の歌を歌い終わると大広間は拍手喝采となった。一年生は空気を読んだ感じになったけれど。
帽子は四つの長テーブルに向かってそれぞれお辞儀をして、静かになった。
原作読んでた時も思ったんだけど、スリザリンの事だけ褒めてないよなぁーこの歌。その通りなんだけれどさ。
マクゴナガル先生が羊皮紙の長い紙を手にして前に出た。
「ABC順に名前を呼びます。呼ばれた者から、椅子に座り帽子を被るように……アボット、ハンナ!」
『組分けの儀式』が始まった。
僕はハセガワだから、H。ハーマイオニー・グレンジャーの後になるだろう。
次々と名前が呼ばれ、寮が決まっていく。時間がかかる者がいれば、帽子を被った瞬間に寮が決まる者もいる。
さて、僕はどちらか…
「グレンジャー、ハーマイオニー!」
ハーマイオニーが待ちきれない様子で走って椅子に座り帽子を被る。
ややあって、
「グリフィンドール!!」
と帽子が叫んだ。ロンが呻いていた。
ハーマイオニーの場合はグリフィンドールとレイブンクローとで迷ったのであろう。
「ハセガワ、ナオ!」
名前を呼ばれる。
他の一年生の様にはしゃぐ事もせずに、心を落ち着かせてゆっくりと歩く。目の前に先生方が居るので魔法の方も怠らない。
ゆっくりと椅子に座り、帽子を頭にのせる。
「ウーム……知性もあるし、親切心もある。だが、欲深く手段を選ばない……、ふむ」「スリザリン!!」
一先ずホッとして、またゆっくりと椅子を降りスリザリンの長テーブルに向かって歩く。魅せつけるように。
この様に堂々としていることで、見た目や態度からマグルだと忌み嫌われることは無いだろう。ま、そんなことがあったとしても、10倍返しで報復するだけだが。
その内、フォイも原作通りスリザリンになり順番的に僕の隣に座った。
列車で散々笑ってやったので、少し嫌そうである。いや滑稽滑稽!
恐る恐る、と言った感じでフォイが話しかけてくる。
「おい、お前僕の下に付く気「あ゛?」…何でも無いです。ゴメンナサイ!」
何か下僕になれ的な事を言ってきたので取り敢えず『オマエ馬鹿なの?死ぬの?』みたいな睨みを……流し目を送った。即座に謝ってくるフォイ。ああ、コイツ虐めるのおもれーわ。
「おい、フォイ。お前僕の下に「はい!喜んで!」……おう」
同じ様にフォイに言ってみたら案の定頷いてきた。
えー、単純。良いのかよそれで。
フォイが何か言おうとすると、突然シーッという囁きの波が流れた。
……来たか。
上座の方へ向き直ると、既にハリーは椅子に座り、組分け帽子を被っていた。やはり時間がかかる様で、その間生徒達は
「今、ポッターって言ったか?」
「あのハリー・ポッター?」
「まさか……本物?」
ハリーの話に夢中だった。四つの長テーブルの内静かだったのはスリザリン位だろう。
まだ帽子が唸っている。スリザリンとグリフィンドールとで悩んでいるのだろう。しかし、原作ではハリーがスリザリンには行きたくない旨を帽子に伝え、それでグリフィンドールとなっている。では、どうしてこうも長引くのだろうか。
きっと、今年の一年生の誰よりも時間がかかったことだろう。何十分かして、帽子が叫んだ。
「グリフィンドール!!!!」
と。あの赤毛の双子は飛び上がり、「ポッターを取った!ポッターを取った!」と歓声をあげていた。
その後の一年生も順調に組分けされて行き、ロンも兄弟達やハリー、ハーマイオニーと同じグリフィンドールになった。
組分けは原作通りにはなったが、ハリーのあの悩みようは少々疑問だ。今度聞くことにしよう。
そして、一年生全ての組分けが終了すると、ダンブルドアが一段上がった壇上に立った。また辺りはシン…と静かになった。
「今年の一年生の組分けも無事に終わり、皆腹ぺこであろう。長ったらしい話は後にして、今は一言、二言だけ言わせてもらう。……そーれ!ワッショイ!コラショイ!ドッコラショイ!以上!」
そういい終わり、ダンブルドアが座りテーブルへ視線を戻すと、先程まではなかった美味しそうな料理が並んでいた。
皆待ちきれない様子でナイフとフォークを手に取り食べ物を口に入れていく。僕も目の前のチキンをナイフで切ろうとしたが、フォイと僕の間にゴーストが現れたのでその冷気に一瞬身震いした。だが、食べれない訳でも無いのでそのまま切り取ったチキンを口に運ぶ。隣ではフォイがナイフを持ったまま固まっていた。ふん、弱い奴め……
フォイを見ているとまた虐めたくなったので、ゴーストはまだ居るがその中に頭を突っ込む感じでフォイの方に近付いた。そして、気付いてない様子のフォイの首筋に
「………ふっ」
「うぴゃあ!?」
息を吹きかけた。
首に手をあてて此方を睨んでくるフォイ。しかしその目の前にはゴーストが。再び固まるフォイ。その顔色は元々青白かったのに、更に青くなっていた。
僕は二口目のチキンのスパイシーな味付けを堪能していた。横のスープを飲み干すと、スープと一緒に口の中に異物感があった。おいおい、ホグワーツで異物混入か?と思い口から出すと、それは防水系の魔法が施された紙切れだった。皆に気付かれないように、それをローブのポケットに入れて食事を再開する。
料理を食べ終わり、デザートにフルーツを食べていたら、またダンブルドアが壇上に上がった。
「エヘン、皆に寝る前にホグワーツの諸注意を言っておきたい」
と敷地内の森に立ち入ってはならない事、廊下などで魔法を使わない事、最後に4階の右廊下に行かない事等を言い、就寝前に校歌を歌うことになった。
グリフィンドールの双子は葬送曲で歌い一番最後になっていた。僕?僕は無難に日本の国家に乗せて歌ったさ。双子までは行かないが、そこそこ最後の方になった。聞き慣れない、間延びしたようなリズムにフォイが振り返ったりしたが、振り返った瞬間かるーく目潰ししておいたから、懲りただろう。……暫く「目が…!目がぁ!」と目押さえて蹲っていたが。
校歌を歌い終わり、そのまま四つの寮に分かれて大広間を後にした。
地下のジメジメとした所に連れられて、純血の貴族気質が多いスリザリン寮一年生は、一瞬眉を寄せたが、監督生が合言葉を言いそれに続いて中へ入ると、緑を基調としたクラシカルな装いになっていた。その後、各部屋に分かれて寝る事になった。
僕の部屋は4人部屋で、フォイ、クラッブ、ゴイルと一緒になった。部屋に入るやいなやクラッブとゴイルは眠気が最高潮だった様で、さっさと自分のベッドを決めて倒れこむように眠った。
この部屋で起きているのはフォイと僕だけだ。フォイは既にパジャマに着替え始めている。因みに柄は紫の水玉模様だ。
「おい、お前東洋人だよな?」
「僕の名前は『おい』でも『お前』でも無いぞ、フォイ。ナオとでもハセガワとでも好きに呼べ。それから僕は日本人だ。それがどうした?」
フォイがいい加減名前を呼ばないのにイライラして自分から言った。
「ではナオと呼ばせてもらおう。聞きたいことがある。日本には純血は沢山いるのか?生憎、僕は日本人に出会う機会に恵まれなくって」
「さあ?僕の両親は僕が物心つく前にどこかに行って、一人の魔女に今まで育てられた。だから、日本人に純血が多いのかは知らんが、少なからず魔法使いがいることはいる」
「ふぅん、そうなのか。ま、同じスリザリン同士仲良くしようぜ」
原作には無いほどに、フレンドリーなフォイ。多分、僕の事をスリザリンになった事から日本人の純血だと思っているからだろう。実際はただ少し前世の記憶があるマグル出身者何だけれどな。教える必要も無いし、このまま放っておいても面白いので別段自分の身分を明かすことはない。
そして、フォイもベッドへ潜り寝息を立てたところで僕は寝間着(小豆色の甚平を着ている)の上にローブを羽織り、その上から婆様の部屋から拝借した透明マントを自分に被せる。
この透明マントは後にハリーに送られるものとは違い、少々値が張るだけの既成品だ。魔法が当たるだけで、透明化が解けてしまうやわな物だ。
フォイ達を起こさないように注意しながら、部屋を出て談話室を通り廊下に出る。
ローブのポケットに手を入れて、紙切れを取り出す。そこに書いてあるのは
『此処に書いてある部屋に来なさい。合言葉は〜〜〜…………アルバス・ダンブルドア』
ダンブルドア直筆の校長室への呼出状だった。
(あ゛ーー、ダリー)
一日目から退学させられそうです。ま、させないけどさ。
溜息を静かに吐き、ゆっくりと校長室まで足を運んだ。