そうして、暫く湯に浸かった後、男の時でも女の時でも同じ腰まで届く黒髪を自作したシャンプーとコンディショナーで整える。
再び檜風呂に肩まで浸かり100数えて風呂場を出て『メイク』の魔法を解いた。
さっきまで広々とした檜風呂だった部屋は一瞬ののちに小さなシャワー室に戻った。
簡単に体を乾かしてから、部屋の方に行くと、フォイが既に起きていた。
各部屋に一つずつある大きな鏡台の前で何やら髪を触っておりその様子はとても一生懸命で、必死だった。
ふと時間を見ると、まだ早朝と言って良い時間で、ゴイルとクラッブもまだグースカと寝ていた。
未だ僕に気付かないフォイの背後にまわり、そっと声を掛ける。
「やぁ、いい朝だね。フォイ」
ビックウゥゥゥゥ!
という効果音がピッタリな程、一度肩を大袈裟に震わせてから、フォイはゆっくりとこちらを向いた。
「っぷ!……っはははははっっ!!」
思わず噴き出し、お腹を抱えて笑ってしまった。
「わ、笑うな!」
そのせいで、笑われたフォイは顔を赤く染めて涙目でプルプルと震えていた。その、てんで将来デス・イーターになるであろう様に見え無い様子にまた笑いが込み上がり、さっきよりも大きな声で笑う。
「ご、ごめんよ。だってさぁ……ふはははははははっ!っはは!!」
耐えられなくなったのか、フォイは自分のベッドへと戻って行き、毛布を頭から被った。
僕のそれのせいで、同室のゴイルとクラッブは勿論スリザリン寮の他の生徒まで起こしてしまったらしく、先輩のマーカス・フリントがやって来て怒鳴ると直ぐに去って行った。
スリザリン寮は地下室にあるのでまるで『ソノーラス』の呪文が掛けられているかのように、声が響いてしまったのだ。
ゴイルとクラッブはと言うと、起きたばかりなのに、昨夜持ち帰って来たのであろう、宴会のデザートをむしゃむしゃと食べていた。…どんだけ食うんだよ。
ようやく笑いがおさまった頃、流石に可哀想に思えたので、そろそろ慰めてやろうかとフォイのベッドへと近づくと、ぶつぶつとつぶやく声が聞こえる。
「なんで……母上に頂いたナイト・キャップ被っていたのに……どうして…こんな…」
と昨夜被っていた紫色のナイト・キャップを握り締めてつぶやくフォイ。
……あ、僕のせいか。
え?さっきから何を笑っているかだって?
だってさ、フォイの金髪がさ……っふふ、鶏冠みたいな寝癖が付いて、まるでモヒカンみたいになってて……ぷぷ
「ううぅ……」
「うっ、ごめんごめん。さぁ、フォイこっちを向いて」
思わずまた笑ってしまったので更にダメージを受けた様子。僕が原因なので、手直し位はしてやろうではないか。
「……ふむ。何かリクエストは?」
「……オールバッ「却下」……何でも良いです」
フォイがオールバックを所望してきたが、この寝癖だと直しても戻ってきた時におかしくなりそうだし、前世の頃から映画のフォイで金髪オールバックは飽きたので此方で変えさせていただく。
お馴染みの『拡張呪文』付きの巾着から、マグル製品のヘアワックスを取り出す。
手に適量とり、髪になじませていく。
うわっ、フォイの髪の毛サラッサラ。何だこれ羨ましいな、おい。
あくまで映画のフォイの事だが、おでこを出した髪型が多く、前髪がある方が印象が薄かったので、あえて前髪を作り出す。
後ろの髪も少しあそばせて、その髪の柔らかさを感じさせられるようにした。
そうしたら、あらなんと言うことでしょう。
あのいかにも、悪ですというような固っ苦しくしていたオールバックが、前髪を作り出し後ろ髪を遊ばせた事により、まだ成長途中の少年のあどけなさが残るショタっ子を感じさせられる髪型となりました。
「あえっ、え?ちょっフォイ、ヤバっ……うん。いいよ!メッチャいい!」
手放しで褒めると少し照れた様子で鏡を見るフォイ。自分でも驚いたようで、目を丸くしていた。
「こ、これが僕なのか?へ、へぇ~」
どうやらまんざらでもない様子。よし、これを貫いてもらいましょう。
等とやっていると、どうやら朝食の時間が迫っているようです。ゴイルとクラッブがすでに着替えて、早く大広間へ行こうと催促してくる。
いやいや、さっき沢山食べてたろ。
僕とフォイもホグワーツの制服に、緑を基調としたスリザリンのネクタイ、ローブを着て今日ある授業の教科書を手に持ち、大広間へと向う。
と言っても、大広間は一階なので、階段を上がれば左手に見える。この辺、スリザリンは得だな。グリフィンドールだと八階から動く階段を駆使して降りてこないといけない。…ほら、もう着いた。
部屋に入り、スリザリンの長テーブルのところにフォイ達と並んで座ると、此方まである生徒の噂が聞こえてきた。
ある生徒……『生き残った男の子』のハリー・ポッターについてだ。
そりゃ、そうだ。魔法界でその名を知らない者はいない。マグル出身の一年生も、きっと同室の子に教えてもらい皆知っている。
ヴォルデモート卿を唯一倒した男の子として
実際には、逃げただけだが、ヴォルデモートと対峙したのに生き残っている事が噂される原因だ。ま、僕はそんな事には興味ないが。
それよりも気になるのは、スネイプ先生だ。ハリーが噂に上がり、その目は必然的にそちらへと向いている。いくら憎き男の子供でも、それと同時に愛する人の子供、護らなければならない対象なので、やはり、気にかけているのだろう。
目が鋭すぎて睨んでいるようにも見えるけれど。…そこがいぃ!!
ハリーの話は授業を受けるため各教室へ移動する時もそれは絶えなかった。
「どこ?」
「ほら、あののっぽの隣よ」
「眼鏡の子?」
「額の傷見た?」
ハリーをひと目見ようと、立ち止まる者や引き返す者が居るので僕達関係無い人も迷惑になっていた。
グリフィンドールや他の寮とは一部の授業以外は一緒ではない。一日目、初めての授業はマクゴナガル先生の『変身術』だった。
比較的厳しい先生は、生徒が席に着くなり、説教を始めた。これ、全クラスに言ってるのか。
そして、先生は机を豚に変え、また元の姿に戻した。変身術そのものを初めて見る生徒が大半で、皆感激している。また、僕も感激していた。
(…美しい。杖を振り術をかける時に一切の無駄がない。素晴らしい)
その後、さんざんノートを採らされ、一人一人にマッチ棒が配られた。これを針に変えるのだ。
島で必要な物で手元に無い時は周りの物を変化させて使っていたので、針に変えるなんて至極簡単なことだ。
ただ針に変えるだけでは、つまらないので一旦針にしたあとに、その細い金属に鶴を彫っておく。仕方がない時間が余ったのだ。
その装飾した針を指で摘んでいると、急にそれを誰かに掠め取られた。
その誰かとは、マクゴナガル先生だった。
僕の元マッチ棒現装飾針を目の前で見ている先生。その様子に、教室にいる全員が注目している。
沈黙が続いたあと、暫くして先生が
「素晴らしい!!」
と叫ぶようにして言った。
そうして、皆に僕の針がどんなに美しく、鋭いのかを説明して変身術の授業は終わった。
変身術のプロに褒めてもらえて、胸の辺りがムズムズする。
そんなあったりしつつ、迎えた金曜日。
……そう、『魔法薬学』の授業がある陽だ!
(スネイプ先生を間近で拝見できる!!先生!私頑張るから、褒めて下さい!!頭撫でて!!!)
後にフォイが、この日の朝僕が異常に朝食にソースをかけていたといっていた。