仮面ライダー鎧武・鎧武を目指す者と戦いの歌姫達 作:にゃはっふー
男はそう言い、暗闇の中でスポットライトを浴びながらお辞儀をする。
「当ステージの解説者として、みなさんと共に傍観するは私。私のことは、蛇、ヘルヘイム、DJサガラ。お好きなように、お呼び、ください」
そう呟くと共に、スポットライトがまた誰かを照らす。
赤と黒のコート、彼の出現に、蛇は手をかざす。
「かの者は、弱者を憎み、弱者であることを憎み続けた男。駆紋戒斗」
「遊戯か、ふん。貴様にとって、この物語も娯楽の一種か」
鼻で笑いながら、腕を組み。進行を進めろと言わんばかりに、現れた椅子に座る。それに微笑みながら、観客席に告げるように、大きな声で告げる。
「此度の物語、戦場で血にまみれた歌を紡ぐ少女達、その物語に現れたイントルーダーこと乱入者、白銀剣。彼はいま、我らが世界の力を得て、怪物か英雄か、そのどちらでもあり、どちらでもない存在になろうとしてます」
「ふざけるなッ」
突然の叫びに、光りが照らされる。そこに現れるのは、白い衣装に身を包む男。
「これはこれは、黄金の果実を得た者。葛葉紘汰」
「彼奴はそんな運命背負わせてたまるかッ」
「ならどうする? 奴は力がある限り、守るために戦うだろ?」
「それは」
なにも言えなくなる。それに手を叩く。
「前座はそろそろ終わりにしよう。此度の物語はただでさえ長い、俺達部外者はもう喋る時間はない」
そう言い、暗闇の中で、蛇は告げる。
「歌姫と錬金術師の少女、彼女達が紡ぐ物語に乱入した我らは主人公の持つ未来は、破滅か希望か・・・それでは、物語の、始まり、始まり・・・」
響の病室、その前に立つ剣。少し考え込む。
「・・・よし」
覚悟を決めてノックをして、中に入る。
響は微笑むが、どこか力無く、こちらを見ていた。
「剣さん」
「少しは身体はよさそうだな」
「はい、もう退院していいそうです」
そして訪れる沈黙を、持ってきた花など、土産のリンゴを剥いたりして無駄に時間を過ごす。
二人とも色々気まずい。何かを抱え込む響に、背負う剣。
他のもの達は他のもの達にしかできないことをしている。
奏はローズストライクとリンゴを持って、翼の方に出向いている。翼とマリアと行動して、クリス、切歌と調達は司令達と共に行動している。
二人ともここにいるのは、心境的に戦線に立たせられないと弦十郎が判断したからであり、剣はなにも言えず、リンゴを渡す。
「ありがとうございます」
そう言う響の笑顔を見ながら、剣はああと頷く。
剣は、いまは問題ない。普通の人間だった。
だがわかる。もう一つの力を使えば、もう戻れない。
なにも言わず、リンゴをしゃりしゃり食べる響。剣は座り込み黙る。
「・・・あの」
響は突然、不安な顔で剣を見る。
「つき合ってください」
「・・・」
一瞬、間ができたが、
「うん、なにに?」
響なので、すぐに戻る。響のいいところは、まじめな雰囲気でも日常に戻してくれるところだなと、思う剣であった。
それは告白だった。
ある意味において剣にとって、あのライブ、自分が強くならなければいけないと認識したあの事件に関わる話だった。
紘汰と共にノイズ退治していた頃、鎧武があれば誰でも救える、そう認識していた。
だが、救えなかった。いや、それすらなかった。
ライブ会場、風鳴翼や一部の人達を除けば、生存者一名と言う事件。
だが、一番ショックなのは、駆けつけた時全てが終わったと知った、後だった。
世間は生き残った子を罵倒するような記事ばかりで、剣は絶句するしかない。
紘汰達もそれに黙り込み、悩ませた。
関係ない、彼らには関係ない話なのに、傷付き、自分がもしもを考えてくれる。
自分はどうだ? この世界の人間なのに、なにをしていた?
心の棘を無理矢理引き抜くように、がむしゃらに鍛えた。
もう嫌だ、もう彼らに負担をかけたくない。
そして何より、全てを守りたいと、心から願った。
「・・・」
響と手を繋ぎながら、とあるファミレスの側まで来ている。いま響、事件の生存者の父親がいる場所まで来ている。
あの後、響からその話を聞き、そして聞いた。
父親は事件のその後に耐えきれず、自分の前から消えたこと。
そして出会った父親は、昔の、大好きだった父親とかけ離れていたと言うことを。
それでも、また会うために、ここに来た。
ここまで手を繋いできた。響がそうして欲しい、近くまで居て欲しいと頼んできたからだ。
「それじゃ、ここで」
「・・・ああ」
響は少しぎこちなく笑い、手を放つ。
もう一度父親と向かい合うために、響は向かおうと歩く。
「響」
「えっ」
その響、周りの目など気にせず、その手を取り、だきしめた。
「ふえっ!?」
少し驚く響、剣は静かに、
「側にいる」
「・・・」
「だから、お前はお前の力、繋ぐ力を信じろ」
「・・・」
静かに剣に体重を預けて、
「はい・・・」
そう返事をして、ファミレスへと入っていく。
何時間か、スマホの写真を眺めたりしながら時間を潰す。
近くの花壇を椅子にして、ただ待つしかできない剣。
中の様子は見ない。見るのは、
「・・・」
いつの間にか、スマホの中、フォルダーは友人達の写真で埋まっていた。
装者達や、司令室の面々だけでなく、クラスメイトまでいる。
友人登録もまた、増えていた。
いつの間にか、友達や親友、仲間と呼ばれる者が増えていたことに、苦笑する。
(・・・俺は)
紘汰と出会い、世界の危機、それよりも挑みたいと心動かされた戦い、そのために立ち向かう日々が始まりだった。
その後、翼、響、クリスと出会い。切歌、調、マリアと続いている。
そして、キャロルの顔を思い出す。
「・・・」
エルフナインから聞いた、父親を火あぶりにされた少女。
父親の命題、世界を知るために、世界を壊す少女。
そして言われた、彼女と同じ記憶を持つエルフナインから、パパみたいと。
(・・・)
出会ったことも、ましてどんな人物か話も聞いてない人。
だけど、
「・・・」
もしも同じならばと思う。空を見ながら、静かに過ごす。
そして空は割れた。
「これは」
空が割れ、大きなビルの上から建物が現れる。
それだけですぐに近くの人達の避難誘導をし始める中、連絡が入る。
「司令官っ」
そこからキャロルの目的を聞く。元々は世界を分解するのがキャロルの目的だったが、その為にことは大きく進んでいたらしい。
もう最終段階に入り、いまは装者達が揃うまでに避難誘導。それが最後の指示と思い動き出す。
誘導しながら話を聞き、全てを終えた後、響と合流するために走り出そうとしたとき、空間が揺らぐ。
「・・・」
その中から、光り輝く世界を背にする男がいる。
その姿はシルエットで見えないが、二号と呼ばれた仮面ライダーに似ている。なにより、いまならわかる。
「一号・・・」
剣の言葉に、男はまるで光り輝く未来を捨てるように、前へと歩く。
「この道は修羅の道、人成らざる者が歩く道」
そう言われながら、身体の中に眠る、怪人達の力がざわめく。
「この先にあるのは戦いの道、お前はそれでも歩くと言うのか」
「当たり前だ」
「それは阻む者へと変わり果てようともかッ!?」
それに黙り込む。自分の中、怪物は人類の敵だ。だが、
「これだけは約束できるッ」
それでもと叫ぶ。
「化け物の俺になろうと、仮面ライダーの俺になろうと、俺は守る為に戦うッ」
化け物でありながら、人を守る道を選んだもの達。そう、
「戒斗さんや、紘汰さん・・・それだけじゃないッ」
自分の中に蠢く力、その力の先で見た化け物達。彼らの戦いを知り、叫ぶ。
「俺は代理品だッ、人を守りたい、そう願う者達のッ」
「自分を捨てると言うのかッ」
「捨てないッ」
即答する。それだけは断じて違う。
「俺は俺として生きるッ、俺を大切に思う人々のために、俺は俺を捨てることは許されないッ」
「戦えばお前はお前でなくなるんだぞッ、そのような奇跡、起きるはずがないッ」
「それでも、あんたなら戦うだろ」
その問いかけに、仮面ライダー一号は黙り込む。
それを背に、剣は響のもとへと走り出す。
「俺は・・・俺はッ」
叫ぶように拳を握りしめ、前へと走り出す。
「響ッ」
「剣さんだめっ、戦わないでッ」
紫の竪琴を持ち、空中に浮くキャロル。
シンフォギアを纏い戦う響はノイズを倒しているが、側に一般人がいる。
「剣さんっ、お父さんと一緒に逃げてくださいッ」
「響のお父さんかッ」
「させるかッ」
そう言って手を振ると、糸のようなものが大地を切りながら迫るが、道路へと拳を放ち、地面をえぐり、糸を阻む。
「チッ、もうそこまで人をやめたか」
「これくらい誰でもできるッ」
そう言いながら、固まりをキャロルへと投げつけるが、簡単に壊すキャロル。
「貴様ももうすぐ奇跡に殺されるッ、いい加減に奇跡にしがみつくのはやめろッ」
「もうすぐだと・・・どうして」
「俺とエルフナインは繋がっていたんだ、彼奴が見たもの聞いたもの、全て俺にも聞こえていたということだ」
それを聞き、そうかと思う剣。それ以上の感想はない。
「何も思わないのか貴様は」
「別に構わないさ、俺のやるべきことは、エルフナインのためにも、お前を救うことだッ」
「ふざけるな奇跡ッ」
魔法陣のようなものから風や火が放たれるが、それを拳で吹き飛ばしたり、よけたりする。
その様子に苛立ちを募らせながら叫ぶ。
「俺を救うだとッ、なにを寝言をほざくッ。どうやって俺を救うと言うんだッ、お前に俺は救えないッ、救われてなるものかッ」
「それでも、俺は諦めない」
「奇跡に殺されろッ、仮面ライダーツルギッ」
「キャロルッ」
四つの元素の攻撃を、蹴りで吹き飛ばす。キャロルはその様子を見ながら、叫ぶ。
「貴様は奇跡だというのなら、俺は貴様を否定するッ。なにが仮面ライダーだッ、お前に何が救えたッ」
「なにも、救えちゃいないさッ」
そう宣言しながら、糸と錬金術をよけながら、キャロルとの距離を取る。
「何も救えない奇跡が、俺を救うなどと」
「救えなくても、救うと叫ぶさ・・・お前のお父さんのためにも」
「パパのことをお前が口を出すなッ」
糸により吹き飛ぶ身体、そのまま地面へと落下するが受け身を取り、立ち上がりながら響を見る。父親を守るように戦っていた。
「お前に何が救えるッ、あと一回。あと一回奇跡を使えばお前は怪物と化すッ、そんな貴様が俺を救えるはずがないッ」
「えっ・・・」
響は驚き剣を見る。剣は気にせず、ベルトを取り出す。
「貴様」
不愉快な顔でそれを見る。剣は何も恐れない。
「・・・キャロル」
そして、それを剣は、ぶん投げた。
「!?」
キャロルは巻くと思っていたため対応が後れたが、響の周り、ノイズがそれにより吹き飛ぶ。まさかベルトをブーメランのように使い、ノイズを倒した。
「貴様ッ」
「俺は救うよ、君を・・・響を、誰かの大切なものをなッ」
「ほざけッ」
そのとき、ノイズが剣へと迫ってくるが、それを斬る者が現れ、キャロルはそれを睨む。
「二人とも」
それはシンフォギアを纏う、翼とクリス。二人は剣を見ながら、車も来て、響の父親を回収する。
「お父さんっ」
「響」
「お願いお父さんっ、このベルトを遠くに持っていってッ」
ギアドライバーを父親に渡す響。車は奏に守られながら、父親共々遠くに離れさせ、二人も剣を避難させようとするが、キャロルは許さなかった。
「させるものかッ」
無数の攻撃が剣へと迫る。そのおかげか、響の父親は難なく逃げさせたが、剣は、
「響・・・」
「ごめんなさい・・・だけど」
「安心しろッ、お前がいるだけで、私たちは負けはせぬッ」
「そういうこったぁ、歌でも聴いてろ剣っ」
そう言う二人に対して、ふっと笑みを浮かべる。
「そんなに歌が聴きたいのなら、俺の歌を聴かせてやるッ」
キャロルの身体が女性のように成長し、そしてシンフォギア装者達と同じ歌を歌う。
その力に驚愕しながら、装者達を阻むが、
「セイッハァァァァァァァァァァァ」
その歌うキャロルに、中身で挑む剣。それに顔を歪める。
「貴様、本当に人間かっ!?」
「・・・」
歌の余波で、距離を取る装者達よりも前に出る剣。
「始まりは、二人の戦士を越えたかった」
キャロルを目の前にし、戦えるはずの装者達の前に立つ。
「だけど次は、何も救えない自分を呪い、もうあのときのような未来を作らないために鍛え上げた」
ただひたすら、友も何も求めずに、ただ求めたのは力だった。
「そしていまは、俺は救うために力を求める」
「貴様にッ、貴様に救えるものかッ。お前なんか認めないッ、お前のような奇跡なんか認めてなるものかッ。世界を壊す歌の前に、お前を、奇跡を殺す歌を聴けッ」
歌うキャロル、それに装者達は動こうとするが、剣は静かに微笑む。
「剣さん・・・」
キャロルの歌の攻撃、それを防ぐ術はよけるか、強引に拳で防ぐしかない。
「キャロル・・・」
優しく囁く、届かないと思いながら、まるで泣き叫ぶ歌姫に、静かに、
「俺は過去を救えない・・・」
そんな奇跡なんて存在しない。だからこそ、
「だからいま、俺は、キャロルッ。いまいるお前を救うッ」
「フッザッケルナァァァァァァァァァァァァァァァ」
吹き荒れる力の中、自分の身を守るしかない装者の中、その嵐を進む者がいた。
(なぜだッ)
その嵐の中、最も力を出せないはずの奇跡に、憎しみを込めて睨む。
(邪魔を、するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)
それに全ての攻撃を放つ。だが装者が邪魔をして防がれる。
そうしているとき、世界を分解するシステムに変化が起きる。
エルフナイン、中にいるもの達がシステムに介入しているのだ。
「やめろっ、私とパパの邪魔をしないでッ」
「!?」
その拠点とも言える建物の様子に、剣は気づく。
中にいるもの達も、まるで最後の言葉のように、通信が入る。
「おいふざけるなよ、マリア、切歌、調ッ」
『ごめんなさい剣、マムやセレナをお願い』
『最後に剣とお話しできて、わたし、うれしいデス』
『貴方にも、偽善って言ってごめんなさい・・・』
「ふざけるな」
そう短く呟き、構える。
「それでキャロルを救えるかッ」
そして構えた瞬間、光り輝き、その手と腰にベルトとギアロックシードが握られている。
「!?」
響達装者は絶句する。
「だめ・・・」
青ざめた響は急いで手を伸ばす。クリス、翼も構わずに手を伸ばすが、糸に阻まれた。
「・・・・・・・奇跡に殺されろ」
キャロルはそうつぶやき、剣は叫ぶ。
「変身ッ」
『ファイズ・ブラスター・夢を守る夢、孤高の狼』
建物が壊れるよりも早く、紅い閃光が破壊した。
「・・・!?」
マリアは飛び起きて、辺りを見渡す。
建物は天井すらなく消え去り、近くにメモリーチップを持つ博士が落ちてきた瓦礫で気絶しているが、生きてはいる。
「切歌、調っ」
「平気、デス・・・」
「けど、いまの閃光・・・」
そして彼女たちは見るのは、銃を構える、仮面ライダーだった。
「・・・全て終わった・・・」
瓦礫と変わり果てたシステムに、キャロルは涙を流す。だが狂い笑いしそうなほど、おかしかった。
「もう世界を解体することはできない・・・パパの命題に答えることはできない」
そして眼下にいる、奇跡を見下ろす。
「だが、お前は壊したぞ・・・」
その瞬間、彼から草木が生えた。
「あっはははははははははっ」
狂ったように笑うキャロル。その側で、ヘルヘイムの草木を生やし、ステンドガラスのような模様と、灰色の模様が浮かび上がる。
紫の炎とセルメダルが吹き出し、拳の血が、緑色に変色する。
砂もこぼれる中、剣は静かに、前を見た。
「キャロル・・・」
「どうだ奇跡ッ、お前は奇跡に殺されたんだッ」
そううれしそうに壊れた笑みを浮かべる。まるで一つ、真実を証明したと言わんばかりに叫ぶ。
「俺を救う? できるものか貴様なんかにッ、お前なんかに俺は救えないッ」
「・・・わかっていたさんなこと」
「・・・なに」
静かに、優しく微笑む剣。世界が白黒に、聞こえる音は雑音に変わり、感覚が消えていく。
それでも、思いは消えない。
「君を救えるのは、君のお父さん。その言葉に気づくことだ」
「パパの言葉、世界を知ることか・・・」
「君のパパの命題、世界を知れ・・・錬金術師として、いや、父親としての君達二人に告げた命題の答え」
剣はキャロルとエルフナイン、二人を思い描きながら告げる。
「笑っていて欲しい、どんなことがあっても・・・人と、世界と共に、笑いあって欲しい・・・エルフナインが俺が父親みたいと言うのなら、俺の答えは、それ以外にあり得ない」
それを聞き、愕然となるキャロル。
そしてエルフナインを通し、言われる。
錬金術師として、二人の父親としての答え。
それは、許しだった。
「・・・ふざけるな」
焦点が定まらない中、キャロルはそう告げる。
「だったらお前もパパのように消えろ・・・消えろッ奇跡ッ、お前なんか認めないッ。そのまま消えて死んでしまえッ、奇跡に、世界に殺されろッ」
その叫びと共に、身体の変化が起き始める。
それに苦笑する。もうダメかと思う。
(・・・本当に、バカだな俺・・・)
そう思いながら、それでも、
(それでも、俺は)
怪物になっても、怪人になっても、
(人を救うッ)
その覚悟を決め、力を受け入れようとした。
その手を握られるまでは・・・
「・・・」
響が泣きそうな顔で繋ぐ。
「やめて・・・」
その顔を見ながら、剣は見つめる。
「信じてます・・・」
そう言われた。
「私は、信じてます」
はっきりそう言われた。
・・・・・・・・・・・・・俺は・・・・・・
「ははっ」
そして彼に破滅が訪れる。
響に手を握られた剣。静寂が世界を包む。
「・・・・・・・・・ふざけるな・・・・・・」
短く、ただその光景を見る。
「ふざけるなッ」
彼にまた奇跡が起きた。今度は怪物になると言う奇跡を払いのけた。
「お前だけなんで救われるッ、お前だけなんで奇跡が起きるッ」
そう叫び、睨むキャロル。
剣は静かに、
「・・・・・・・信じてくれたからだ」
そう言い、響の手を握り返す。
そして立ち上がる。剣は静かに、前を向く。
「そして背負う、この奇跡の代価、いや」
いつの間にかライダーの記憶を持つロックシードを握りしめ、そして空に掲げる。
「やらなきゃいけないことばかりでなッ、止める暇はないッ」
ギアロックシードが変化した。少し大降りのロックシード。そしてグリップのようなものも剣の手元にある。
「ふざけるな奇跡・・・なら俺はいまを蹂躙してやるッ」
そう言い、力を高める。エルフナインの話から記憶を燃費にして力を増すらしいが、
「!!?」
それに驚くキャロル。それに装者達は集まり、様子を見る。
「どうなってるっ!? 記憶の忘却ができないッ」
その叫びと共に、全員が驚くが、
「それはそこにいる異物の所為だ」
黒と赤のコートを羽織った、一人の男が現れた。
「戒斗さん」
それと共に、黄金の輝きと共に、一人の男も現れた。
「剣の記憶が、君の記憶の忘却を止めているんだ。もうけして、君は記憶を消せない」
「・・・だからなんだと言うんだ?」
現れたそれらに対してもなにも言わず、むしろ口元をつり上げた。
「それでも力を増すことはできるんだッ、むしろ永久的に俺を強めるだけだッ」
「君の父親の、大事な記憶は消させない」
そう言う剣は、ロックシードを構える。それに響が顔色を変えるが、
「大丈夫だ響」
「剣さん・・・」
「俺は・・・俺はもう道を決めたッ」
『ギア・ライダーズ』『セットアップ』
「俺の道、俺は・・・」
二人の男の間にいる剣、静かに、そして高らかに、
「俺は仮面ライダーの力を捨てるッ」
そう言ったとき、グリップをライダーギア、極ロックシードのようにセットする。
『スタンバイ』
鳴り響く音を聞きながら、空からクラックが開き、鎧が現れた。
「その力」
「俺の世界の力だ」
そう宣言して、剣は静かに告げる。
「俺に力はない、他人の力、仮面ライダーの力、装者の力しか使えない」
そう宣言しながら、だからこそとはっきりわかった。
「だから俺は他人の代わりに戦うッ」
ここに立てない者、ここにいない者、この話を聞き、立ち向かいたいと思う者達。
その代わりの戦士へと変わる。
それが、
「それが仮面ライダーツルギと言う存在、俺は、奇跡を越えるッ」
『シンフォギアッ』『サイダサイダサイダサイキョウダーッ』
ハンドルを押した瞬間、そう鳴り響き、鎧が舞う。
「変身ッ」
『シンフォギアアームズ、奇跡を滅ぼす奇跡ッ、クラッシュ・ザ・アンチ・ホープッ』
その姿に、装者達は驚くしかない。
「シンフォギア・・・だと」
「これって・・・」
「綺麗デス・・・」
白い鎧、コートのようなものを羽織っており、肩の鎧はスピーカーのようになっている。
頭部は鎧武、カチドキアームズのような顔立ちであり、右腰にはガングニールピース、左腰にはシンセイバーが下げられている。
左腕の籠手は分厚く覆われてあり、光り輝く翼を持つ剣。
「俺は仮面ライダーツルギとして、そして、響のアームドギア。そしていまこの場で戦いたい、救いたい、守りたい、助けたいと思う者達、全てのもの達の力を借りる者としてッ」
装者達もそれを見て、力を解放。エクスドライブ。その姿と共に、紘汰と戒斗も変わる。最強の姿へと。
「シンフォギアと錬金術師キャロルッ、この戦い、乱入させてもらうぜッ」
大量のノイズが最後の戦いのために放たれるが、装者達がいま討ち滅ぼす。
先ほどの会話から、キャロルはまるで無限のエネルギーでも得たように、絶唱を歌い続けていた。
だが、それを阻む力を持つもの達がいる。
無数のノイズがクリスに迫るが、大剣モードの火縄大橙DJ銃を振るう鎧武が現れ、一瞬で吹き飛ばす。
「助かったぜ無職神っ」
「君もか」
「お前にはお似合いだな紘汰」
そう言い、ノイズを切り伏せ現れる戒斗に、るっせぇと答える。
「見せてもらおうか、貴様の力」
「ここから先は、彼奴らのステージだッ」
そう言い、二人はお互い背を預け、ノイズを討つ。
白い車が駆け抜ける。ノイズを吹き飛ばしながら、切歌と調を助ける。
「いまさら俺を抜け者にするな」
そう言って車から飛び降りると共に、別の場所から、二号と一号が現れる。
「ライダーパンチッ」
「「ダブルライダーキックッ」」
「少しくすぐったいぞ」
クウガの姿を変え、そして戦うディケイド。クウガも元に戻り、ライジングアルティメットとしてノイズを吹き飛ばす。
先ほどの変形に、マリアと翼と目を丸くする。
「いまの」
「まあ、身体が変化するって凄いよね」
「それですませるのか・・・」
「いちいち気にするな、次が来るぞ」
そう言って、剣をなぞり、敵を切るディケイド。それに続く装者達。
「おっらッ」
ピースを振るい、ノイズを吹き飛ばしながら、ローズストライクで蒼い薔薇の花びらを舞い上がらせながら突撃する剣。
「いいね、そろそろ歌うぞ剣ッ」
「応ッ」
いつの間にか腰に戻っているギア達、その中に奏もいて、歌が流れる。
同時にピースに光が集まり、切れ味が増す。
「私たちと同じ、シンフォギアか」
「もう一つッ」
シンセイバーを取り出すと共に、ガングニールピースと柄を合わせる。一つの剣、槍のようなものへとかわり、ダイヤルのようにライダーズギアを操作し、ハンドルを押す剣。
『カブトギア・ハイパークロックアップ』
その瞬間、高速移動する剣。さらにダイヤルを龍騎にかえて使う。
『リュウキギア・アドベント』
烈火龍ドラグライザーと暗黒龍ドラグブラッカーが現れ、炎が吹き飛ばしながら、左腕を突き出し、それを展開する。
剣が現れ、それは音叉のように刀身が割れた。それを見てキャロルは叫ぶ。
「ダインスレイフッ!? お前がなぜそれを使えるッ!?」
そう言われたそれは、まるで剣の思い、守り通す者がある限り、あり続ける武器のように歌に反応して、衝撃波を放つ。
「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなっ」
泣き叫ぶキャロル。怪物のようなものを作り出すが、まるでその怪物に囚われている。そう思う剣。
「パパの記憶が、やめて・・・消えて、消えてしまえッ。私の邪魔するのなら消えてッ、止めないでッ」
だが、仮面ライダーが言ったように、ある男の記憶が炎のように燃え上がり、それを防ぐ。その奇跡にわめき散らす。
「なんでそんな奇跡がいま起きるッ、どうしてお前のような奇跡がパパの時に出てこなかったッ」
そう言われ、剣はそれでも、
「ああ分かっている、それでもいま止めることはできない。それが罪なら、それを背負ってでもお前を救うッ」
「まだ言うか奇跡ッ、壊れろ・・・壊れろォォォォォォォォォッ」
二つの腕が迫るが、その二つの手に二人が向かってくる。
「セイッハァァァァァァァァァァ」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
紅と白の果実がぶつかり、壊してもなお、キャロルの叫びは止まらない。
「やらせるかよッ、イチイバルッ」
「天羽々斬ッ」
「イガリマッ」
「シュルシャガナッ」
「アガートラームッ」
アームドギアがキャロルを止めるために放たれるが、一手足りずに止まる。
「アームドギアが一つ足りなかったな・・・」
あざ笑うが、すぐに笑みは消える。
目の前に拳を構える響を見たから、
「当たると痛いこの拳。だけど未来は誰かを傷付けるだけじゃないって教えてくれたッ」
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
咆哮が放たれようとするが、その前に、
「私にはもう一つ、アームズギアが、大切な人がいるッ」
その叫びに、剣は飛ぶ。
ハンドルのダイヤルを操作して、ハンドルのように回す。
『ガングニール・ハーツッ』
光の槍が咆哮を貫き、うち払う。
それに驚きながら、響の拳がキャロルを撃ち抜く。
落下するキャロル。長い三つ編みがちぎれ、そのまま落ちていく。
「キャロルっ」
「キャロルちゃん」
「俺はお前達に救われない・・・救われてなるものかッ」
手を伸ばすが、そんな叫びを上げるキャロル。
だが、
「悪いが知るかんなことッ」
変身を解き、その時外れた外装を足場に飛び、だきとめる剣。
「貴様」
「守るよ」
「!?」
「俺が側で、お前を守り救い続ける」
力強くだきしめながら、そう告げる。
響がイグナイトモジュールを抜剣し、二人を包むガードを張った。
だが剣はすぐに、キャロルを響に渡す。ガードの外、変身しながらすぐにそれを睨んだ。
キャロルが世界を壊すためのエネルギーを見ながらも、その前に、
「!?」
装者達は驚いた。
そのエネルギーの固まりへと向かう、仮面ライダー達に、
『ライダーキックッ!!』
爆発するエネルギーは全て上空へと放たれ、被害を最小限に防いだ。
「・・・精神世界や」
「慣れたもんだなお前」
奏が呆れながら、剣は真っ白な世界で寝っ転がる。
「全く、お前、自分がなにしたかわかってるのか?」
「・・・」
それに黙り込む中、かわりに答える者がいた。
「仮面ライダーツルギが全てのライダーになるんではなく、仮面ライダーツルギになったんだ」
戒斗はそう言いながら、剣を見る。
「それといまとどう違うんだ?」
「さあな、少なくとも、お前は人のまま、仮面ライダーになっただけだ。それ以外はかわらないな」
そう言いながら、剣はそうかと思いながら、
「なら仮面ライダーとして、装者のギアとしてがんばるか」
「代理品でいいのか?」
「それがツルギです」
それを聞き、戒斗はそうかと告げる。
「俺を越えたければ、その道を進むんだな」
そう言い、世界が白く染まる。
「はい、俺は・・・」
その白い世界で、一人の男がお辞儀をする。それに返事をするように、
「俺はキャロルを守るよ」
深夜の病室、ガラスの破片を握りしめ、馬乗りで振り下ろそうとするキャロルを止めている剣。
それよりも早く、ぎゅとだきしめた。
「は、はなせっ」
突き飛ばされたとき、なんかもの凄く身体が痛い。以外と重傷らしい。
「キャロル・・・」
「・・・なんでだ」
泣きそうなキャロルを見ながら、剣は静かに、
「俺のわがままだよ、いましかないから、いまを救う」
「・・・」
「俺は側にいるよ、キャロル」
それを聞きながら、エルフナインが咳き込む。
「エルフナイン? お前も病室に」
「へいき、です・・・僕は、もう・・・」
そう微笑むが、弱々しく、血を吐いていた。
「ったく、強がるな。キャロル、エルフナインを助けたいが協力してくれ」
それを言われ、キャロルは驚く。
「俺はお前達の敵なんだぞっ、なんでそんな」
「エルフナインはお前にとって、イザークさんにとっても娘だろ?」
その言葉に、二人は驚く。
「お前が・・・どうしてパパの名前」
「・・・頼まれたからだ」
そう優しく告げる。
「頼まれたから俺は奇跡を越えた、世界を壊す歌があるのなら、俺は奇跡を越え続けるよキャロル。願う人、信じる人、託してくれる人がいるなら、俺は奇跡を越える」
そう言われ、キャロルは黙り込む。
「・・・そうか」
そしてふいに顔を近づける。
「それでも俺は、お前に救われたくない」
そう言って、唇と唇を、キスをする。
「!?」
その瞬間、頭に何かが流れ込み、身体が思うように動かない。
「きゃ、キャロルっ」
「・・・俺はもう、疲れたよ」
そしてエルフナインに近づき、そして、
「パパの命題は、お前に任せたよ・・・私はもう、資格はない」
そしてエルフナインに全てを託し、キャロルは静かに意識を消す。
こうして、魔法少女事変は、幕を下ろすのであった・・・
暗闇の中、スポットライトの中で、お辞儀をする。
「どうでしたか、仮面ライダーツルギの演目は?」
「どうでもいいことだ」
そう言う戒斗は気にせず、同じように光りを浴びる。
「そう言えば、彼がなぜ怪物と成らず、こうして人としていられるか、わかるか、葛葉紘汰?」
それを言われ、黙り込む男。
蛇はにこやかに答える。
「それは仮面ライダーなんてもの、誰でも慣れるものだからだ」
「どういうことだ?」
「そんなものは決まっている」
指を鳴らす、一人の少年に光が当たる。
ただの少年、だが夢はある。
「仮面ライダーなんてもの意味なんて無い。あるのはただ守りたいと思うだけだ」
よくあるだろ?と少年の周りを歩く。
「この物語が悲しい、だからそれを壊す主人公を創造する。願い、成りたいと思う。仮面ライダーツルギはその一つ。一人の少年が、そんな物語に乱入しただけだ」
仮面ライダーツルギ、その役目はただ一つ。
「ただ単純に、この悲しい物語をどうにかねじ曲げたいと思う思いから生まれたライダーだっただけだ」
仮面ライダーである意味はない。彼はただ止められればそれでいい。
「仮面ライダーツルギは誰でもあり、誰でもない。いや、仮面ライダーですらない。ただ守りたい、救いたい、助けたい。それがたまたま仮面ライダーと言う戦士として形になっただけ。それだけ、たったそれだけのことだ」
そのリスクもまた、一人の少女の願いだけではねのけた。
「奇跡なんて越えたなにか、なんて話じゃない。そう願われて生まれた、生み出された存在。そして人はなれるかもしれないし、なれないかもしれない」
そう言い回しながら、静かに告げる。
「仮面ライダーツルギなんてものは、そうありたいと思えた瞬間になる。そのために努力すればなれる仮面ライダーだ。怪物にならなかったのは、怪物でもなれるから」
白銀剣は仮面ライダーになろうとするために、怪物となりかけた。
だがそれをやめ、ただ守る存在になると決めた瞬間、別の奇跡を越えたと説明する。それに駆紋戒斗は苦笑する。
「ご都合主義だな」
「たまにはいいだろう? なんであれ、平和ならな」
そう言うと、戒斗は暗闇の中に消える。
「そうだな、俺もまた、求められれば戦おう。駆紋戒斗、俺達の物語も終わらない」
そしてそれに葛葉紘汰もまた答える。
「ああ、俺達もまた、望まれればどんな世界であろうと、そこが俺達のステージだ」
そして消える二人に、蛇は微笑む。
「それでは次回は一度最終です・・・仮面、いや、ただ歌姫の物語をめちゃくちゃにしても助けたいと願い生まれた存在と、歌姫の物語。どうぞ、楽しみにしてください」
そして顔を上げ、盛大な笑みを作る。
「それではかわりに、ここまでお読みいただき、ありがとうございました」