スパルタでやったために、そうざいは2時間後には不自由なく泳げるレベルまで上達した。
途中で現れた野生のポケモンは、2人が交互に戦う。
ハードスケジュールで特訓していた為に、結構体力を消耗してしまった。ポケギアを見てみると、時刻は12:11。お昼時だ。
お腹が空き過ぎていたために、残りの怒り饅頭を全員で平らげてしまう。
現所持金は79700円。まだ空腹の為、プラスで何か食べ物を買ってきた方がいいだろう。
「ぽにぎり買うか。やきさかな、戻れ」
やきさかなをモンスターボールに戻し、そうざいを抱えてコガネシティ、その中心のコガネデパートへ向かう。
デパ地下でぽにぎりとポフィン、そして木の実コーナーで格安で売られていたポロックキットとポロックケースをカゴに入れる。おいしい水も合わせて会計を済ませ、デパートを出てコガネシティにある、海に突き出たエリアへ向かう。
噴水の中にポケモンを入れてもいいようで、早速やきさかなをドボンしてみる。
「コイィ!」
「オッケー、洗ってやるよ」
そうざいも水浴びを始めたので、やきさかなのウロコについている泥をこすって落としてやる。
「さぁ出来たぞ。……ん? これはなんだ?」
やきさかなを持ち上げてチェックしていたら、噴水の底に何かキラキラ光るものがあった。明らかにお金とは違うそれを不審に思い、手に取ってみる。
「金色のウロコ? そんなのあったっけか」
なぁ、とやきさかなを見る。……見た。
…………。
「お前のウロコか」
「コイ!」
「脱皮? いや、脱鱗したのか?」
「コーイ!」
「そういうもんなのか?」
「コイィ!」
「……これ、金になるな」
「コォイ、コイィイ?」
「売ろうか。……質屋で」
*
「流石に質屋は無かったかぁ……。まあ、マニアにでも渡せば一儲け出来るだろ」
残念ながら、大都会コガネシティにも質屋は無いようで、俺は落胆しつつも金色のウロコをリュックサックにしまった。
そのまま向かうのは、コガネジム。さっさとコガネジムを制覇し、エンジュ、アサギと行くのが目的である。
「すいませーん、ジム戦お願いできますか」
「あー、そこの用紙に記入しておいて貰えますかー! 準備しまぁす!」
女の人の声に従い、テキパキと記入を終わらせる。
そのまま案内されたのは、ジムフィールド。ジムトレーナーとは戦わずに、最初からジムリーダーと戦う仕組みのようだ。
審判のルール説明を聞きながら、トレーナーゾーンへ足を踏み入れる。
なんだかドキドキする。緊張感が高まり、その反面リラックス。審判の声がぼんやりとしているように見える。
「———それでは、試合開始!」
視界が晴れたような気がした。
一瞬で頭の中がクリアになり、秒速でモンスターボールを手に取り、宙へ投げ、展開する。
「———行っけぇぇぇええやきさかなぁ!! 生のまま気張るぞぉ!!!」
「行け、ミルタンク!」
最初から
「ミルタンク、ころがる!」
ミルタンクが、フィールドの向こう側から転がり、どんどんと接近してくる。やきさかなと考えていた作戦は使える。必要なのは、俺の判断力と反射神経だけ。
柄になく興奮し、集中力がみなぎる。
来る、来る、来る、来た、
「———はねる!」
ミルタンクがぶつかる直前、肺に溜めていた息を吐き出すように素早く、鋭く、的確に指示を出す。とは言っても、「はねる」の一言なのだが、
「う、嘘やろ……!」
素早く指を立てて指示を出し、やきさかなは跳ね上がって攻撃を避け、アクアジェットこと体当たりで空中で体勢を整えながらミルタンクの肩に一撃を加えた。
「違う、そこじゃない、そこだ!」
「コォイ、コイ———!」
俺が指差したところ、ミルタンクの急所であるお腹に狙いを定めるため、やきさかなは一旦体当たりで距離を取る。
ミルタンクは、アカネの指示で再び転がり始めた。
「もう一度飛べぇっ!」
ミルタンクに触れる直前、やきさかなは飛び上がるが、ミルタンクが手を伸ばして尾を掴み、引きずり下ろし、ダメージを与える。
何度もやきさかなの上を往復するミルタンクを見て、即座に作戦を切り替える。
「やきさかな、耐えろ! いいな!? 出来るな!?」
「コ……イ……!」
「頑張ってくれ! あともうひと仕事だ!」
「何を企んでいるんや……。ハッ! ミルタンク離れろ!」
「遅いぞ、じたばた!」
気合いだけで耐え抜いていたやきさかなが、ミルタンクが乗っかっている状態でじたばたを発動させた。今のHPは0以下、威力は最大の200となる。
「———ミルタンク戦闘不能! コイキングの勝ち!」
「負けてしもうた……。ピッピ!」
「やきさかな、お疲れ、休んでいてくれ。切り札はミルタンクだと思ってたんだがまあいい、———行っけぇぇぇええそうざいぃ!! お前は野に生える草だ!! 頑張ってくれ!」
「ナァゾ、ナゾナゾォ!」
余裕の笑みでピッピを繰り出すアカネに疑問を覚えつつ、指を鳴らすことでそうざいに指示を与える。
あらかじめサインとして決めておいた動作、それを読み取ってそうざいは、身軽さを利用してピッピに接近する。
そのまま花粉3連発を繰り出そうとしたところで、アカネが指示を出す。
「ピッピ、れいとうビーム!」
弱点技を持っているために余裕だったのだろう、しかしこちらにそれは筒抜けだ。俺もゲームで れいとうビーム / 10まんボルト / だいもんじ / くさむすび という技構成の特性:マジックガードの特殊アタッカーピクシーを持っていた。
だから、そうざいはあらかじめ仕込んでおいた方法を取った。
何度も反復練習していた日本晴れを1発で成功させ、特性:ようりょくそのお陰でスピードアップの恩恵を預かり、冷凍ビームの軌道から外れる。
「よくやったそうざい、此処からが本番だ!」
「ナァゾゾ、ナァゾ!」
一旦、距離を取り、相手を錯乱させるために適当なところにソーラービームを撃ち込みながら、そうざいが此方を見る。
わかってるさ、と呟き、本来そうざいが覚えるはずのない技の指示を出す。
「なみのり———っ!」
「嘘やろなんで覚えてるんや!」
技マシンなしで日本晴れもソーラービームも覚えられるなら、何でも覚えられるはずじゃないか。
なみのりピカチュウだって存在する世の中だぞ! ……次元が違うけど。
自分にツッコミを入れながら、乗ってきているそうざいの様子を見る。
波乗りを現在進行形で発動させているそうざい。それを見て閃き、叫ぶ。
「そうざい、そのまま毒粉ばら撒けぇっ!」
「ナァゾ、ナゾ!!」
ユウキ、謎!! とでも叫んでいるのだろうが、そうざいは痺毒の粉を辺りにばら撒く。粉は波乗りの波と混ざり———
「ピッピ、頑張るんや!」
ピッピまで届いた。
普通は接近しないと使うことの出来ない粉3種類だが、波乗りに乗せれば容易に届かせられる。
———ピッピの冷凍ビームが、技を繰り出すためにその場にとどまるそうざいに当たり、HPを削っていく———
デメリットは、此方もダメージを喰らうことだろう。
「そうざい交代、やきさかな頼むぞ———!」
既に体力が0だが、まだ戦う力は残っているやきさかな。さっきから、最後まで力を出し切りたいとモンスターボールが揺れ続けていたのだ。だから、存分に活用させて貰う。
毒水の浸水によって、やきさかなは最後の一撃を喰らい、今度こそ瀕死に陥る。
「コイキング戦闘不能!」
だが、その時間稼ぎが重要なのだ。
再びそうざいを出すが、その頃には水捌けの良いフィールドのお陰で毒水は綺麗さっぱり無くなっていた。相手は波乗りと毒の粉のダメージを受けているが、此方はまだピンピンだ。
「ピッピ耐えるんや!」
「そういう訳にはいかんよねぇ。そうざい! ソーラービーム!」
「ナァ〜ゾォ〜ノォ〜っ!」
溜めなしソーラービームをぶっ放し、それがピッピに直撃する。
「———ピッピ戦闘不能! ジムリーダー・アカネのポケモンが全て戦闘不能のため、勝者、挑戦者ユウキ!」
審判の声で現実に戻される。
なんだか絶好調だったような気がする。いつも以上に頭が冴えたな。
感想を抱きながらそうざいをモンスターボールに戻し、フィールドの向こう側のアカネを見る。
バトル前に軽く視線を交わしただけであったが、アカネは悔しそうに「負けてもうた」と呟きながらフィールドを突っ切って歩いてきた。
「あと一撃、ナゾノクサに当てられていたら勝てたのになぁ。そっちは余裕の表情だったけど、結構な接戦やったな」
「もう必死でしたよ、とりあえず勝つためにどうすればいいのかだけを考えていた———というか、多分楽しんでいたんだと思います。楽しんでたから、奇策を思い付いたり余裕の表情を浮かべたり出来たのかなと。やっぱり楽しまなきゃ後が続かないですし」
「そやそや。若いのによく分かってるやないか。最近の若者は、勝つことを目的にしてるから、そこらへんを伝えたいんや。それをわかっててくれて、安心したな」
元はゲームをやってましたので。楽しくなきゃゲームはやらないでしょ。そこらへんは大丈夫ですから。
「とにかく、レギュラーバッジや。絆も実力も充分。問題ないやろ」
「ありがとうございます」
差し出されたバッジを受け取り、バッジケース———3つ目のくぼみ———におさめる。最初のバッジを手に入れた。効率は悪いかもしれないが、このままキキョウ、エンジュ、アサギと行ってバッジを取りつつジェントルマンのカーネルに勝負を挑み、そこからタンバやヒワダ、などと行けば充分だろう。
最優先事項は生き延びることではあるが、出来ればリーグ出場して上位にまで行きたいのだ。賞金もかなりの額だし、もしチャンピオンになればある程度の収入は得られる。公務員っていいね。
「次はエンジュ?」
「いえ、キキョウに寄ってレベル上げ、ジム制覇をしたいなと思っています。エンジュはその後ですね」
「コガネが最初やったんかぁ……。大人気ない戦い方してもうたな」
「え、バッジ何個だと思ってたんですか?」
「えーと、4、5個?」
「……」
「気合いとか闘志とかがそのくらいだったし。まさか初ジム戦とは、な」
「……そんなぁ」
「ま、まあ、キキョウでは修行にいい場所もあるし! 期待しとくわ! またなー!」
思った以上に本気だったのはそういう理由か。涙目になりかけていると、アカネがさっさと逃げ出していった。おい待て逃げるな。
受付で、バトルに勝った分の賞金を受け取る。御守り小判で2倍、さらに本気を出してしまったことにお詫びの印で少し上乗せしてくれるようだ。アカネ、そこだけは感謝しておこう。
ジムを出て、すっかり暗くなった夜空を見上げる。
まだこちらに来て1週間も経っていないが、もうこの生活に馴染んだ気がする。バッジも手に入れられたし、よい滑り出しとなったのではないだろうか。
「……よし、明日から旅を始めよう」
『コォイ、コイ』
『ナァゾ、ゾゾ!』
ユウキ無理すんなよ、ユウキ頑張ろうねと、それぞれの返事を聞きながら、まずは彼らの回復のためにポケモンセンターに向かった。
Q. 何故昨日投稿出来なかったのか。
A. ジム戦描写が難しかったから。
ジム戦の描写を後日修正するかもしれません。
また、ジム戦前が急展開であるために、そこも修正しようかなと考えています。
・解説
「金色のウロコ」
本作オリジナル。
「アクアジェットこと体当たり」
体当たりだと言い張らせて頂きます。
・お願い
アンケートです。
種族値が350未満で未進化(卵から生まれた状態)のポケモンを大募集します。進化をしないポケモンはNGです。
かなり幅が狭いためパッと思いつかず、また調べにくいためにご協力頂きたいと思っています。
回答はメッセージか、後ほど投稿する活動報告にてお願いします。
まだまだ見て下さっている方は少ないと思いますが、いつでも回答ウエルカムです。
お願いします。