Fate/Storia Immortale 作:H-R-ホライズン
やっと第二話。まだフィーロは動きません。
ホテルを出たフィーロは、やたら周囲を警戒してキョロキョロと首を動かす女性を見付けた。メガネに金髪という出で立ちだが、金髪は根元に行くにつれ黒へと変わっている。染めているのだろう。
––––誰かに追われてんのか…?にしても可愛いなぁあの子。
フィーロは彼女を付け狙う輩がいるのかと、一回周囲を見渡した。一見すれば、カタギでない人間は居ないようである。しかし、
––––なーんかあいつ、ヘンな目をしてんなぁ。
他の人に気付かれない程であるが、フィーロは下卑た目をした男を見つける。その視線は一人彷徨う女性に行っており、女性に何かしようとしているのは明白だ。
「やぁ、姉ちゃ––––「よっ!久しぶり!奇遇だな!」–––!?」
フィーロは男が唖然としているのを余所に、女性の手首を強引に掴んで引っ張って行く。
「な、何ですか!」
「なぁに、気にすんな。ただの通りすがりの警察さ」
適当に自分の立場をでっち上げ、フィーロは女性を男から離してカフェへと入って行く。
「まぁ、落ち着いて。ここ座りな」
パクパクと何か言いたげに女性は口を開けていたが、座るように促されて椅子に座る。
「あ、あの、この国は警察も強引なんですね…」
女性は言いたい事があるのだが言葉が見付からず、辛うじて感想を述べるようにそう言った。
フィーロは少し気まずげに首の裏を掻く。そもそも警察でもない上、むしろ追われるような事をやっているフィーロはどう言ったものかと迷っていた。
「警察ってのはでっち上げだ。騙して悪かった」
とりあえず、フィーロ謝っておく事にした。
「い、いえ、でも、なんで?」
「アンタに近づいている男がアンタをヘンな目で見ていたから、ちょっと連れ出した。安堵させるのには警察が一番だろ?」
クスリ、と笑ってフィーロは言う。それに対し女性は困惑した顔を浮かべていた。
当然である。そのヘンな目をしている事に気が付いていたのはその場でフィーロだけだ。
「あぁ、気にしなくて構わないぜ?あん時俺しか気付いて無かったからな。後で思い返せばアイツ一度警察捕まってなかったか…まぁ、どうでもいい」
実際に資料を見た、と言わんばかりにフィーロは呟いた。
女性はそれが頭に引っ掛かったが、今はそんな事を気にしている場合ではない。フィーロもそれを忘れて欲しいかのように、話題を変えた。
「あとさ、何かに怯えてるように見えたから…俺、雇う?」
フィーロは最後の方だけ声を潜めた。
こんな人の行き交う街のなかだと言うのに、公に出来るような話はするつもりなどフィーロは微塵もない。
だが、女性は言葉の意味が分からなかったらしく頭上に疑問符が浮かんでいそうな顔でフィーロを見た。
「あの、どういう?」
「俺を護衛として雇うかって事だよ」
「…ダメですよそんな…普通の人が関わっていい事じゃない」
「…俺はそんなに普通に見えるか?」
「ええ」
すぐさまそう答えられ、フィーロは暫し黙る。
ここで普通じゃないと証明すれば良いのだが、それでは他の一般人にも知られてしまう。そうなると教会や協会に見付かる恐れがある。
戦争まで、しばらく自由でありたいフィーロは自分の存在をバラしたくなかった。
「そうか、うん、なら大丈夫だな。で、どうすんだ?俺を雇うかい?」
「いえ…それ程大事では無いので」
女性は首を振った。それ程までに頑として一般人には知ってもらいたくない事なのだろう。
フィーロはそれ以上固執する事を止めた。
「そんなに言うなら止めとくよ。まぁ、何かあった時くらいには相談に乗ってやる」
そこでフィーロは今更ながら、女性に目立つ入れ墨の様なものが入れられている事に気付く。フィーロは女性がある程度派手好きなんだなと思いつつ、久しぶりに会った友人と言う体で話を進めていく。
「あ、ありがとうございます…その、私、行かなきゃならないんで。失礼しました」
「おう。代金は良いぞ。こっちで払うから」
それっぽく見せる為の幾つかの小物––––注文した食事は綺麗に皿が空いており、女性は代金も払おうと思っていたようで財布を取り出そうとしていた。
「悪く思うな。俺が勝手にそうすると決めたんだから」
軽くウインクするフィーロ。女性は少し笑ったものの、内では全く逆の感情が渦巻いていた。
––––何だろう、この人。優しいけれど…怖い…
フィーロの言動には有無を言わさない威圧感が見え隠れしていた。 女性はそれが見えて、背筋に冷たい汗が走る。
「あの、本当にありがとうございました」
ただ一礼し、女性まるで逃げる様にその場を去った。
実質外はフィーロ、中身クレア。
クレアの如く結婚!の流れの予定でしたが、考えたらギャップ酷すぎて止めました。