「君、どうしたんだい」
街の喧騒から逃れるように路地裏に座り込む、幼き少女を不審に思った。
容姿はまるでボロボロで、孤児のように思える。
しかし、その少女は怯えた様子も無く、きょとんとした表情で、実に純粋な眼差しで此方を見返す。
「家族は?一人かい?」
「家族は……わからないです、気付いたらこの街にいて」
「わからないのか?自分のことは?」
「名前しか……あ、」
「ん、他にも何か?」
「……いえ、他には、何も」
どうやら少女は記憶喪失らしい。
この街で身元がわからないとなると、物騒な事に巻き込まれかねない。
更に幼い子となれば、尚更危険である。
保護者が居ないと言うことは、拐われても捜す人が居ないと言うことだ。
「………………。」
「君、名前は覚えてるんだよね?何て言うんだい」
「ベル、です」
「ファミリーネームは?」
「よくわからないです」
「そうか、僕はスティーブン・A・スターフェイズ。これから君の保護者だ」
「はい?」
「よろしくベル」
「え、待って下さいスターフェイズさん、今何て」
「君の保護者。この街でお嬢さんがホームレスだなんて、危ないだろう?」
「知らないおじさんに保護者と言われて連れて行かれるのも危険ですよ!」
こんな子を一人には出来ない。
困惑して嫌がるベルを引き摺るようにして歩みを進めた。
しかし、何処で預かれば良いのか。
ヴェデッドに子守りを任せても良いが、正直僕の家も、僕個人も安全とは言えないだろう。
……いや、その為にあの部隊を組織したんじゃない、彼処はやめておこう。
「ギルベルトさん」
ふと浮かんだ。K・Kも子供が好きだし、彼処なら面倒見の良いメンバーが揃ってる。
この子を巻き込む訳にもいかないが、他に子供を預けられる場所も無いし、この際頼ろう。
「ベル、僕の仕事場に行きたいんだけど、大丈夫かな?」
「仕事場って……変な所じゃないですよね」
「大丈夫、一応はね。少なくとも、君を殺そうとする輩は居ない所だよ」
「……」
怪訝そうな表情は変えないが、抵抗する力は大分弱まった。
それを了承と受け取って、足を進める。
「身元もわからない子供を急に保護しようって、とんだお人好しですね」
「かもね。君、見た目に反して随分口が達者だ」
ポケットを漁って携帯を出す。
慣れた手付きで番号を押し、耳に当て暫くすると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ああ、クラウス?今子供を一人拐ってきたんだけど」
「本当に大丈夫何ですか、その職場……!」
「大丈夫だってば、で、今から連れて行っても問題ないかな」
悩む声が聞こえる。ああ、ザップもいるのか、少し騒がしい。
「オーケー、後で詳しく説明するよ」
「今から何処に連れて行く気ですか……」
「……知らないおじさんとお姉さんが沢山いるところかな」
「はい?」
今日もまた忙しくなりそうだ。