東方魔法人形   作:食パン角タックル

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地球は青かった。
静かな海に映る星は青かった。
穢れのない、静寂だけがそこに点在していた。
月の民との戦いは休戦し、暫しの退屈を過ごしていた。

しかし、アリスと魔理沙にはまだ一つの因縁が残っている。

幻想郷は紅かくなった。
静かな海に映る世界は紅くなった。

二人は月を後にする。


魔法人形~the scarlet world

「戦意消失よ。もう」

 

静かな海に木霊した純粋な声は静かに休戦を告げた。

 

「そろそろ勝てないって自覚してもいいのに...」

 

「私は貴女に対する怒り...憎しみが純化した存在なの。貴女が死ぬまで戦うわよ」

 

「?もう私は蓬莱の薬を飲んでるのよ?殺せるの?」

 

「穢れまみれの癖に。にしてもよく解放してくれたわね、あんだけ代理贖罪させておいて」

 

嫦娥もまた月の民にとって重要な力だったんだろう。

もし解放していなかったら...その時はその時だ。

 

「なぁ、あいつらは何処へ行ったのぜ?適当にお前らの相手してたら見失ったが」

 

「それは残念ね。また追わなきゃいけないわよ?」

 

「月には居ないみたいよ?」

 

「んじゃ還るか。帰還だ。地上の民も祝福してくれるだろ」

 

「そんな甘いことはないと思うわ」

 

「妄想の類でも甘さは重要だぜ」

 

二人は幻想郷への帰路として通ってきたらしい夢の世界を通った。

 

「いつの間にかここを移動してたんだな」

 

「ねぇ、魔理沙。1つ異変に気付かない?」

 

「気付いてるさ。あれだろ?夢の世界がなかなかに紅くて目が痛いんだろ?」

 

「半分正解。地上の方を見て御覧」

 

「紅くて見えないぜ」

 

「わざわざ夢の世界通る必要はあるのかしら。紫なら楽なのに...」

 

 

そろそろ地上へ降り立つ。夢消失も近い。

地上と夢の世界の境界に迫った時、二人は現状を理解した。

 

紅く染まる世界。

 

あの時のように。

 

「魔理沙?なにを呆けてるの?こんなにも紅いのに...」

 

「殺す...絶対に...」

 

「魔理沙?貴女少し疲れてるの?狂気の満月光線でも浴びた?」

 

「いや、至って私は真面目だ。狂気なんてない。多少はあるかもだが」

 

「?普通ならいいかしら...さて突入するわよ」

 

「地面は何も変わってないわね...」

 

「とりあえず家へ戻って支度するか」

 

穹は紅い。地面は何ら変わりがないが湖は真紅に染まっていた。

霧さえ、紅く染まっている。

 

今は夜なのか。それさえもわからない薄暗い紅の空間だけがあった。

 

「結局あいつらは何処へ行ったのぜ?待ちぼうけてくるものなのか?」

 

「あいつらの狙いは私たちなのよ。時機に殺しに来る」

 

「なぁ...アリス。お前さ、あの時“究極の魔法”使ってただろ」

 

「魔界での戦いの時?」

 

「ああ。その後ばったり春雪異変で出会ったが。何故に人形遣いへ?あんだけ修業したのに」

 

「それは解放しろって事?禁忌に触れる魔法を」

 

「私だって止むを得ず解放した。まだ序の口だが。お前はほんの少しじゃないか」

 

「究極の魔法を使ったとしてあいつらに打点があるかしら」

 

「さぁな」

 

「まぁ、無責任な。ただあの本、読めるかしらね」

 

「ん、外がまた騒がしいな」

 

コンコン、と2回ノックが聞こえた。戦いの合図だろう。

アリスと魔理沙は魔法以外にも月で見た剣を参考に“魔法を用いた”剣を考えていた。

彼女らに遠距離攻撃を撃とうと搔き消されては何の意味もない。

2人が使う剣に禁断の魔術...“究極の魔法”は果たして応えるか。

 

「あら?居るんでしょう?出てきなさい。早くしないと苦しんじゃうわよ?」

 

「分かってる、もう少し待て。準備がな」

 

「お姉さまを待たせるなんていい度胸ね...破壊してもいいのよ?」

 

「ここは私の家よ。勝手に破壊とかしないでくれる?狂信的な妹さん」

 

煽る。いつものように煽る。

弾幕ごっこではこの次に遊びが入る。

だが今回は違う。殺し合いだ。殺すのだ。

 

「それが貴女の遺言かしら?七色の人形遣いさん」

 

「それは悲しいね...私が発言する度遺言は更新してくれるのかしら?」

 

「うーん、考えるわ」

 

「そっちは楽しそうだな。殺し合いの前の遺言ゲームか?」

 

「月に行って純化したせいで不老不死なんてもうないから殺されそうだわ」

 

「姉は弱腰だな」

 

「いつ始めるのよ」

 

「あらら、もう始まってるのよ?」

 

紅い世界に上乗せするように紅い結界が貼られていた。

濃く、血で描かれたような結界であった。

 

「まずは小手調べね。呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」」

 

青い光は2人を避けるように網目状に広がった。

 

「これで縛るのか?残念だったな。縛って道を消そうとするならこうだ。道を作る。

 魔符「ミルキーウェイ」」

 

七色に輝く星の光は道を作った。四方八方に弾幕が連なる。

その星々は青い光を忽ち消していった。

 

「あら小手調べにやるには物足りなかったかしら?」

 

「じゃあそろそろ始めようか」

 

「うふふ、こんなにも世界が紅いから?」

 

「楽しい世明けになりそうね」 「暑い世開けになりそうだな」 「単色の世開けになりそうね」 「血の気の多い世開けになりそうだわ」

 

 

 

 

 

紅い月は2人を下瞰していた。

七色の翼は紅き世界に破壊をはためかせていた。

 

2人の魔法が一閃、紅い世界に光の領域を作る。

 

 

死ぬか、生きるか。

それ以外の選択肢もあるかもしれない..........

 

 

             三章 魔法人形~the scarlet world 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回最終回です。
夏休み中に完結予定。

授業中にまた練らなければ...
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