佐世保鎮守府へ向かう指揮艦の中、凪は大淀に昨日の夕立の事について尋ねた。
あの後大淀は夕立の下へと向かったのだが、中庭にいたのは夕立だけではなかった。一水戦の駆逐達が集まっていたのだ。どうやら何があったのか夕立が話しているようで、それを三人が聞いているらしい。
大淀は四人の下へと向かわず、そっと木の陰から様子を窺ってみることにした。
「なるほど。これは確かに変わっているね」
響が工廠妖精から印刷してもらった資料を確認して頷いている。綾波と雪風もそれを覗き込み、夕立が悩んでいるのを納得する事となった。
改二の情報もある程度は艦娘達にも共有されている。
最初のВерныйに関しては響は改装出来ないので知る必要はない、と思っていたようだが、後に見せてもらった感想としては「ほう、白いね」と済ませてしまった。この時はクールで通したらしい。
「でも夕立ちゃん、それでいいの? 強くなりたいって前から言っていましたよね」
「……そう、なんだけど。あのあたしを前にしたら、ちょっと萎縮しちゃったっぽい」
「そんなにすごかったんですか? 改二の夕立ちゃん」
「すごいっていうか、強そうっていうか、獣っぽくなったっていうか……とにかく、色々変わってて、すごかったっぽい」
獲物を前にして満面の笑みを浮かべる捕食者、あるいは戦士……とでもいうのか。
無数の敵が存在していたとしても、彼女は笑ってそれに相対するだろう、と思わせる程の気迫を放っていた。そういう部分は自分にも確かにあったかもしれないが、まるで深海棲艦のエリート級のように目から赤い光を放って水上に立っている様は、どこか異様だ。
「でも司令官は別に気にしないかと思う」
「ですね。あの司令官はそんな事では嫌いになるなんてことはないと思いますよ」
「あたしもそこは信じてるよ。……うん、信じてはいるんだよ。でも、それでもあのあたしを見てしまったら、そんな不安が出てしまうっぽい。それに、素直に甘えられるあたしでなくなるかもしれない、っていう怖さもあるっぽい」
「すなおさ、ですか。そんなに変わりそうですかね?」
雪風がもう一度印刷されたそれをまじまじと見つめる。写真で見る限りではその夕立改二は不敵な笑みを浮かべて佇んでいるだけだ。喋ってはいないし、戦意を感じ取れるわけでもない。こればかりは実際に目の前にいてくれないとわからないだろう。
そうしていると、川内と利根が夕立達に気付いて近づいてきた。
「どしたのよ、レッド。珍しくしょぼくれた顔しちゃってさー」
「おや、夜戦仮面にボス。こんなところで珍しい」
「珍しいってなんじゃ。吾輩らは共に二水戦をやっとった仲じゃぞ。今でこそ部隊が違ったとはいえ、一緒に居てもなんらおかしくはなかろうて」
二人の手にはお茶が満たされたペットボトルが握られており、タオルを首に巻いていた。訓練が終わった休憩中らしい。そして夕立の話を聞くと、ふーんと頷きながら彼女を見下ろす。
「あの提督が私達を嫌いになる性格してるかなー? むしろ逆だと私的には思うんだけど」
「そうじゃのう。吾輩らから嫌われないように、なにかしようとするタイプじゃろ。むしろ嫌うというより、苦手になる……そう、夕立的には変わってしまった自分から距離を置かれる事を怖がっとるんじゃないか?」
「ああ、なるほど。そっちの方がしっくりくる」
響も夕立の悩みについてなにか引っかかるものを感じていたらしいが、利根の説明でそれがとけたようだ。
女性が苦手という部分はまだ完全に消えてはいない。
夕立に対しては妹分のように思う事で、普通に接する事が出来ていたが、果たして改二になったあの姿でもそれが続くのかどうか。
夕立の不安はそこにあったのだろうが、それが「嫌い」になるか、「苦手」になるか、という違いだった。その微妙な違いが夕立にはわからなかったらしい。
「夕立よ。主の悩みもわからなくもない。主の素直さは良い長所じゃと吾輩は思うておる。だからこそ、そういう悩みを抱えてしまう事もな。じゃが、吾輩からすればそれはあまり心配するような悩みではないと思うておる」
「どうして?」
「先程も言うたように、あの提督は吾輩らに対して距離を置く理由としては『女性が苦手』という部分じゃ。じゃが、あの性格をした霞相手に何とか距離を縮めた経験があるからの。それを乗り越えている今となっては、初対面の美人くらいしか苦手な艦娘はおらんじゃろ」
「そうそう。しかもあの大和さん相手にも何とか対応できているんだしさ。いやー、着任当初の提督だったら、絶対また倒れてるって。あんな大和さんがいたら」
「確かに。ストレス溜めて寝込むだろうね」
「い、今も若干ストレスで胃を痛めているかと思われますけども……」
綾波が突っ込むが、利根は気にした風もなく屈みこんで夕立と視線を合わせた。
「この問題の解決の道筋は、お主の心の持ちようじゃ。お主が本当に提督を好いておるならば、何も問題などありはせん。例え改二になって性格が変わろうとも、お主の心の持ち方一つで良い結果が手繰り寄せられるはずじゃ。もしもそうでなかろうとも、お主の周りを見るがよい。こうして心配してくれる仲間がおるじゃろう」
優しい声だった。利根の言葉と、自分を見守ってくれる一水戦の駆逐達。その存在が夕立に暖かな光を灯してくれる。何度も小さく頷き、静かに涙が零れ落ちる。
「あーあー、泣いちゃって。レッド、あんたにそういうのは似合わないって。いつもみたいに、人懐っこいわんこのように笑顔を浮かべなよ。あるいは不敵な笑みだっていいんだよ。でないと、こっちも調子狂っちゃうからさー。夜戦仮面としてもね」
「まったく、発破をかけるにしても言葉を選んだらどうじゃ。こやつは子供じゃぞ?」
「でも、その気になったら成長しちゃうじゃん。私達に近しい見た目くらいにさ。そんな成長期には少しくらいこういう言葉を投げかけたっていいじゃない。それでまた折れちゃったら、提督のために力が欲しい、なんて願いは持てないでしょ。ねえ、レッド?」
「……うん、すぐに調子取り戻すから……。だから、今はこのままで」
「ん、なら良し。ちゃんと復活しとくんだよ。でないと張り合いがないってね。演習でも、さ? 全力でかかってきてもらいたいじゃん? 部下の調子が悪いせいで神通率いる隊が負けるって、姉としてもライバルとしても癪だからさ」
「だーから、言葉を選べと言うに。しかも神通にまで飛び火させるとは、っておい! 待たんか! まったく、それじゃ吾輩も行くからの。静かに泣いてもいいが、あまり周りを心配させるでないぞ。あの大淀にもな!」
隠れていた大淀へと指さして言い残し、利根もまた川内を追って去っていった。しかし川内が夕立を「レッド」呼ばわりしているのはやはり、戦隊ものが関わっているのだろう。それに釣られて、夜戦仮面と呼んでしまったが、それに対するツッコミもないままだった。
そして発見された大淀はというと、残った駆逐達の視線を受けて、あたふたとしてしまうのだった。慰めなどは全て利根と川内がやってしまった。
となったら大淀の出番はもうない。そっと振り返る夕立の様子から見ても、これ以上の言葉は不要のようだ。彼女はきっと立ち直ってくれることだろう。
それが、昨日大淀が見て感じた事だった。
その報告を受け、凪は静かに安堵する。まだ改二にはなっていないが、静かに元気を取り戻すならば心配しなくてもいいだろう。
そんな話をしていると佐世保に到着する。
埠頭に降りれば淵上と秘書艦と思われる羽黒が出迎えてくれた。敬礼した淵上が「お久しぶりです」と挨拶してくる。
「久しぶり。今日はよろしくね、淵上さん」
「はい。ではこちらへ」
挨拶もそこそこにすぐさま演習を行う場所へと案内される。ぞろぞろと呉鎮守府の艦娘を全員引き連れ、そこに辿り着くと佐世保鎮守府にいる艦娘が既に整列していた。
あの戦いを生き残った者、そして淵上の手によって建造させられた者。それぞれが混ざった艦隊だ。
ざっと見る限りでは数は少し戻っているように見える。全滅した戦艦や正規空母も見かけられ、重巡も増えているようだ。
「早速始めます?」
「そちらがいいなら、構わないよ。まずは水雷から?」
「ええ。では、一水戦同士で。那珂、よろしく」
「はーい。でも、提督。いい加減『那珂ちゃん』って呼んでくれなきゃ困っちゃうな~」
「そちらの一水戦は、神通でしたっけ?」
「そうだよ。ふむ、奇しくも姉妹対決か」
那珂のコメントは綺麗にスルーし、凪の神通へと目を向ける淵上。
かつては主力艦隊を護衛する一水戦、前線で先陣切って突撃する二水戦、という役割を担っている。突撃隊ともいえる部隊であったが故に、どちらかといえば強者揃いと呼べるのは二水戦であった。
だが今の鎮守府的に一水戦というのは、一番鍛えられている水雷戦隊、というものの認識になっている。
一水戦から順に番号が増えるに従って練度が下がっていき、後になるにつれて主に遠征としての役割を担う水雷戦隊、というのが共通していた。
そのため演習においてお互い主力をぶつけ合おうという話になれば、それは水雷戦隊だけでなく、どの艦隊でも一番隊を出すのが通例である。
呉鎮守府の一水戦、神通、北上改二、夕立、響、綾波、雪風。
佐世保鎮守府の一水戦、那珂、木曽、陽炎、暁、朝潮、大潮。
生き残り組としては朝潮しか一水戦には組み込まれていないらしい。吹雪をはじめとしたメンバーは二水戦以下にいるようだった。だが元の佐世保鎮守府の状況を考えれば、生き残りであろうとそうでなかろうと、戦闘における練度的にはあまり変わらないだろう。それに戦場に出なかった駆逐艦もいたはずなので、その中から選抜されたのかもしれない。
そして位置につく夕立の様子を凪はそっと見守った。表情、雰囲気に乱れはないだろうか、と。しばらく彼女を観察してみたが、特に問題はないように見える。戦いとなれば真摯に向き合わなければ自分がやられることをわかっている。
昨日は励まされて泣いたようだが、こうして見る限りそれを引きずっているようには見えなかった。とはいえこれは凪から見ての感想だ。人付き合いの経験値があまりない彼の評価なので正確ではないだろうが、それでも大丈夫と感じる程には持ち直しているのが見て取れる。
お互い数メートルの距離を取り合って向かい合う。だが先頭はどうやら陽炎が務めるようだが、はて、これは何の意図があるのか。凪は埠頭から見守りながら大淀から通信機を受け取る。
(旗艦は那珂らしいが、先頭は陽炎。駆逐を先頭にする意味は何だ?)
「那珂、準備は?」
『オッケーだよー。で、那珂ちゃんっていい加減よ――』
「海藤先輩、そっちは?」
「……ん、いいよ。それにしても、そっちの那珂とはいつもあんなやり取りを?」
「ええ、そうだけど、なにか?」
「……いや、うん。君がそれでいいんなら俺から何も言う必要はないか。では、大淀。テンカウント」
「はい。では両者構えて。10――」
どちらにも聞こえるように調整した通信機を通して大淀がカウントダウンを始める。そんな中でも凪は静かに口元に指を当てながら思考していた。あの隊列の意味は何なのか、と。
駆逐の役割として考えられる事。あるいは水雷戦隊としての動き方。
それらを考える中、「3、2、1――開始!」と大淀の声が響き渡る。瞬間、両者が一斉に単縦陣で動き出す。向かい合っていたため、当然ながら反航戦だ。
ふと、駆逐の役割について思考を回していた凪は一つの事を思い出した。夕立がその作業をしていたが、陽炎もまたそれらしき素振りを見せる。
淵上が双眼鏡を手に様子を窺っていた中で、夕立の行動に気付いたようで通信機へと声を発しようとしたと同時に、凪もまた通信機へと叫ぶ。
「煙幕注意!」
「煙幕に注意して」
奇しくもお互い同じことを発していた。それに自然と横目でお互いを見つめ合う。
戦場でもそれぞれの駆逐が白煙を発してその中へと入りこんでいく。だが陽炎が先頭で煙幕を展開したことで、進行しながら後ろに続く仲間達も全員煙の中に消えていく。だがそれでは、煙幕を発している先頭位置がまだわかりやすくなってしまう。
だが後続の木曽、朝潮、大潮が分散して煙の中から飛び出し、先頭を行く神通へと接近を試みた。至近からの砲撃を敢行するも、神通、夕立、雪風はそれを読み切って回避する。
煙の中に残ったのは北上、響、綾波だ。こちらも夕立が残した煙の中を移動しながら、木曽達の背後へと回り込んでいくが、陽炎が発する煙が近くに停滞している事に気付き、牽制の魚雷を発射。
だがそれは向こうも同じだった。電探の反応から魚雷が接近している事に気付いて回避行動をとる。
「……まさか煙幕の使い方を仕込んでいたなんてね」
「海藤先輩が作ったそうですね? ありがたいですよ。あたしも水雷戦隊を運用するにあたって、煙幕は使いたいと思っていたもので」
「それはまたどうして?」
「ちょっとした資料があったものですからね。取り入れたかったので。……海藤先輩は、何故これの艦娘装備の実用化を?」
「んー、いや、なに。とあるネトゲからね。駆逐の装備として煙幕があったものだからね。実際に駆逐艦使っていたし、ゲームでもあるのに艦娘にはないのもどうかと思ったから、作ってみた」
「……ゲーム、ですか」
少し驚いたような声色で彼女はそう呟いた。しまった、淵上はゲームあまりしなさそうだ、と凪は冷や汗をかく。あの美空大将の姪っ子だ。仕事や学業に専念してそうで、そういう俗物的な事は手を出さなそうである。
彼女の性格からして、冷ややかな眼差しで自分を見ている事だろう。そう思いながら、横目で様子を窺ってみる。
「……引いた?」
「いえ、別に。……まさか、帝国海軍が使えるやつだったりします?」
「……え? うん、まあ、そうだね。10対10で戦うやつ」
「…………そうですか」
「あれ? ……まさか、君もプレイヤー?」
その問いかけには無言だったが、それはある意味肯定とも取れる反応であった。
まさかあの淵上湊が? 女性主席の淵上湊が?
と驚きが頭をぐるぐると回ったが、よくよく考えたら自分を誘った東地も主席じゃないか、と少しだけ落ち着きを取り戻す。その間に戦況は動いていた。
煙幕が晴れると一気にその実力と経験の差を見せつけていく。
先代佐世保提督である越智は、水雷戦隊はただの遠征要員として育成していた。それを上手く戦えるように育成し直したのが淵上である。だがそれでも一か月と少しだけ。半年近く凪と神通の手によって育成された呉鎮守府の一水戦には及ばなかった。
挟み込むように動いたのはお互い様。だが回避と攻撃を上手く立ち回り、神通達の方が被弾を抑えていた。
「……こちらの勝ちだね。だけど、見事なものだよ。一か月であそこまで鍛えるなんて」
「どうも。我ながら、喰らいついていけたものと思いますけど」
負けはしたが、健闘したといえる戦いだった。煙幕によって姿を隠し、砲撃と魚雷を放つタイミングを窺って仕掛けていく試み。その機動力を以って一気に距離を詰め、必殺の一撃を叩きこむ。それこそ水雷戦隊だ。
それがしっかりと叩きこまれている。それを成し遂げられるだけの知識と指導力が備わっている。さすがは女性にして主席を取ったという数少ない逸材。その肩書は偽りではなかったという事か。
「うん、素直にすごいと思うよ。じゃあ次は水上打撃部隊で? あるいは主力?」
「そうですね。主力をぶつけ合わせますか」
呉鎮守府の主力部隊となると、彼女達ということになる。
第一主力部隊、長門、山城、日向、摩耶、翔鶴、瑞鶴。
主力としては大和も挙げられるだろうが、彼女に関しては今は保留となっている。能力としては確かに素晴らしい。だが、消費資材が痛すぎる。負傷しようものならば一気に鋼材が吹き飛ぶため、どこに入れればいいのか決断がつかないのだった。
もちろん、佐世保鎮守府も第一主力部隊を出してくる。
新たに作り出した艦娘と合わせ、扶桑、霧島、羽黒、那智、千代田改二、龍驤。
これらによる戦いが繰り広げられる。重巡が前に出、戦艦が遠距離から撃ち合う。その更に後ろから艦載機が発艦し、魚雷や爆弾を投下する機会を窺い、それを艦戦らが潰し合う。
しかしこれもまた練度の差が少しずつ目に見えてくる。
特に戦艦のレベル差が大きい。佐世保鎮守府の戦艦は全て沈んだのだ。そこから一か月かけて建造から育成に取り掛かっていたのだから仕方がない。
しかし空母同士の戦いとなれば別だろう。
どうやら五航戦の二人よりも長い時間佐世保鎮守府に在籍していたようで、練度は五航戦よりも高い。艦載機の操り方は千代田と龍驤の方が上のようだ。それを補佐するための対空砲撃員として摩耶がいるのだが、目の前に二人の重巡がいるので対空砲撃に専念できるはずもない。
戦艦では凪側が、空母ならば淵上側が優位に立っている戦いだった。
「――ん? 茂樹からか」
ふと、携帯電話に通話が入った。画面を見ると東地の名前が表示されている。「はい、もしもし」と通話に出ると、「おう、今どこにいるんだい?」と訊いてきた。
「佐世保。淵上さんと演習を」
「へえ、丁度いいなそれ。で、淵上さんは参戦しても良さげなのかい?」
「……せやな。大したものやぞ。よくもまあここまで育てたもんやと。引き継ぎの艦娘もいるやろうけど、それでも水雷戦隊をあそこまで鍛えたってのは認めざるを得ない。戦力として申し分ないと思う」
「そうかい。ならこっちに来てくれ。作戦を開始する」
「マジか。これから?」
「おう。どうもソロモンできな臭いものが発見された。これは早々に潰しに行かないといけねえ。だから、お前さんらが来たら襲撃する。大丈夫かい?」
「ああ、俺は大丈夫ではある。……淵上さん、これからソロモンに向かう事になったけど、大丈夫かい?」
「ええ。あたしは問題ない」
「淵上さんもオッケーだと」
「わかった。では、よろしく頼むぜ」
通話を終え、決着がついた演習を行っていた艦娘達を呼び寄せる。集合している艦娘らへとソロモンに向かう旨を説明すると、艦娘達の間に緊張が走った。だが、中には戦意をたぎらせる者もいる。どんな激戦であろうとも、それを乗り越えてやるのだという気概を見せていた。
かつての大戦でも激戦区として挙げられるソロモン。たくさんの鉄が沈む海域――アイアンボトムサウンドとも呼ばれるあそこには、もしかすると深海棲艦の本拠地があるのではないかという疑いまである場所だ。
慢心しては死ぬ。それを心掛けたいものである。
「ではこれよりソロモンに向かうよ。みんなの健闘を祈る。舞台はあのソロモンだ。たくさんの怨念が渦巻く場所だけあって、かなり危険な戦いになると思われる。頑張って、生き延びよう」
「無理なき戦いを。命を無駄に散らすような戦いに意味はない。敵を滅ぼし、自らは生き延びる。命あってこそ未来がある。それを心掛けて」
『はい!』
凪と淵上の言葉に艦娘達が一斉に返事して敬礼する。
すぐにそれぞれの指揮艦へと乗船していき、ソロモン海域を目指して出港するのだった。