「有り難く頂く」
そう言って目の前に置かれた熱い一口啜ってから
「で、私に頼みとはなんだ?」
そう聞かれたからボクは
「初心者用のキットを買って服を作ってみようと思うのと今度日曜日に古着屋さんに行ってもう少し服を買いたいなって思ってます…」
そう話すと咳払いして
「その件については了承したから詳しいヤツに案内を頼んでおくが…どうしても無理なのか?ティンカーベルの役をやるのは?」
そう言われ溜め息を吐いて
「はっきり言って台詞覚え切れませんし演技だって無理です
台詞や出番の少ない端役なら未だなんとかなるけど僕には無理ですからそんな大役は…」
更に言葉を続ける僕は
「僕が目立ちたくない理由聞いてないんですか?里ママから…(目立った結果どうなったか…)」
そう言われて俯いて
「里山さんからいただいた手紙に彼女の知る範囲の全てが記されていたからおおよそは、な…」
そう静かな声で言うから
「ならわかるでしょ?僕はもう居場所を失うのはヤなんだ…ボクだって幼稚園行って初めて自分の趣味嗜好が普通じゃないんだってことくらい気付いたよ?
でも既にボクの中じゃそれが普通になってるし好きな事をいきなり全否定されて納得出来る?
おまけにボス的な子がボクを毛嫌いしたから後は…転園しかなかった…」
その話を聞いて
(今回は自分の子じゃ無かったけどもしも自分の子がそうなってもいざと言う時この園は子供を守ってくれない…
そう言って転園先を探して次々に退園したせいで一時は廃園の危機に陥ったらしい…そう書かれてたな…)
そんな事を考えてるなんて僕が知るわけもなく
「あ、それじゃあコミケのコスプレをしてたのは何故?」
そう言われて
「別に可愛い格好するのが嫌いになった訳じゃないし…
それにあそこはボクが何者かなんてそんな事は関係なく僕のパフォーマンスを喜んでくれたし誉めてもくれた…」
(でも舞台を見に来る大勢の観客は僕がここの生徒なのはわかるし理解してくれるとは限らないでしょ?そんな危険は犯せない…)
僕の沈黙を理解したおばさんは黙っていたけどいつから聞いてたんだろうか…
泣きながら僕に抱きつく部長さんに驚きながら
「何故貴女が泣くの?」
そう聞いたら彼女曰く
「私にもよくわからない…だから貴女の事をもっと知りたい」
だそうで
「それは無理、僕自身謎だらけの存在に見える僕を理解するのはかなり無理があると思うから…」
そう答えると
「それは…確かに簡単にはわからないと思う…だからまずは貴方の本当の笑顔を見せて、「笑ってるじゃないですか」演技じゃない心からの笑顔を…」
部長さんにそう言われ
(そっか迂闊だった…ここ演劇部の寮なんだよね…なら僕の笑ってる振りを見破る人が居ても不思議さじゃないんだな…)
そう思いながら
「無理です…人より小さく生まれた僕は三歳になるまでずっと入院してたらしく医者もあまり期待しない方が良いみたいなことを言ったらしい
それでもなんとか成長出来て一年近く母さんと二人きりで暮らし二年間幼稚園に通うハズだったけど馴染めなかったし受け入れてもらえなかった」
そう話しながらお湯を沸かしハーブティーを淹れ二人に渡しそのレモンの香りを吸い込んでから
「そんな時母さんを助けてくれたのがマンションの隣の部屋に住んでた里山さんで二人のお嬢さんのママさん
因に家と同じで旦那さんは海外単身赴任中であまり顔を会わせたことはないけどその人がお嬢さんを通わせてる保育園なら遅くまで預かってくれるし安心して任せられますよ?」
そんな事言われてたんだって
「そんな事言われて翌日入園の相談に行ったらそのまま見学になりその間に入園の手続きになって翌日から通園になったんだ…と、まぁこんな感じ
だからボクは母さんと里ママ心配させないよう笑顔をつくって生きてきた
もちろん心から笑ってなかったけどあの日以来久し振りに笑ってたのは本当だよ…
作り笑い以外の笑顔を忘れて作り笑いしか出来ないだけでね
じゃあそろそろ寝るから部屋に戻りますね、お休みなさい」
飲み終えたティーカップを洗い片付け終え会釈だけして部屋に戻ったんだ