心が産まれる、魂を創るRPG【テイルズオブクリエイティア】 作:風見 桃李
~王国より、旅立ち編~
時刻は午後、既に昼食を取り終わったユリエルはこの王国の姫の部屋に向かっていた。
「さて、本日は何を喋りますかな…術技?属性?いや、属性や術技について話すなら精霊からだ。そうなると自然を司る四精霊だな…よし」
独り言を言いながら歩いていれば既にそこは姫の部屋の前、ユリエルはノックをし敬礼を取りながら扉の向こうに居るであろう姫に語りかける。
「失礼いたします、姫様。ディワインドです、居られますか?」
「私の好きなものは?」
「…時の勇者」
「お入りなさい」
「失礼いたします」
部屋に入るとユリエルよりも、ゼクナスよりも背の小さい、まだ少女の姫がそこには居た。
彼女こそ次期王位第一継承権を持つ者、現テセアラ・シルヴァラント王の直系の娘、カディス・イディア・テセアラ・シルヴァラント。
「こんにちは姫様、今のは?」
「合言葉、ですわ。それにユリエル、私のことはカディスと呼んでと言っているでしょ?」
「いや、ですが姫様、それはなりません。私は騎士団の長で、貴女様は我が武器を掲げる主です」
「剣ではなく武器と称するのね。ふふ、ユリエルらしいわ」
「当たり前です。私は騎士剣のみならず、守るためならば弓も槍も、この体を武器として、盾として使い姫様を守るのですから」
ユリエルがそう言うとカディスは眉を潜め呟いた。そんなカディスの手を握りユリエルはカディスの目を見て言う。
「…本当に、頼もしいですわ」
「必ず、死なせは致しません。この国は貴女が、彼と同じ理想を持った貴女が必要なのだから」
「ユリエル、私は…!」
カディスが言うのを遮るようにユリエルは話を変える、カディスはユリエルの顔を、眼を見る。カディスは気付いている、彼の目には自分が写ってないことに。
「さっ、姫様、この話は止めにしましょう。何を思い武器を持つのかは知りませんが教えるからにはちゃんと使い方も、それに関する知識等はしっかり教えますよ」
「…わかりましたわ」
ユリエルはカディスの返事を聞くと微笑みで返した、しかし数分後にはその笑みは消えていた。自然を司る四精霊のことについてカディスに教えていたのだがどうやら好きな分野だったらしい、熱く語り始めていた。
「つまり四精霊が存在し、我々人間に力を貸してくれているからこそ、我々人間は魔物との戦闘の際に地水火風の術技を扱え、普段の生活でも困ることなく豊かな生活を出来ているのです。それ故に我々パラケルルスの住民は精霊に敬意を払い、新たに見付かった精霊を歓迎する意味も込めて、暦に精霊に関する名前をつけ新暦とするのです。今までの暦には歴代の大精霊の名前がありますのでまた英雄と歴史をまたお読みください。」
「それはわかりましたけど…ユリエル、暦の話になっていましてよ?」
「も、申し訳ございません!えー、つまり四精霊の火のイフリート、水のウンディーネ、風のシルフ、地のノーム。彼等は人を信じるという意味も込め契約に応じ、何万といる人間に、身近でもある力を司る彼らだからこそ力を貸してくれているのです。」
「その信頼を返すために我々はマナを大切する、精霊とその力を悪用しない。ということですわね。」
「はい、ですが残念なことにここ二十年で魔術の悪用が増加…つまりは犯罪の増加、急激なマナの減少、魔素の出現等があります。何より魔素の正体はまだ不明、少なからず人体に影響があるらしいという風の噂…うぅ、姫様の体調に影響がなければ良いのですが…」
「魔素は王国の人の居ない所に出るのでしょう?確か…ヴォルティス平原、でした?なら今は平気です、早急に解決できるように今は情報を集めましょう?」
「もうそこまで城に情報が…!騎士団とは別の情報網があるだけはあるな…ふむ、ヴォルティス平原か、昔ヴォルティスという町が近くにありましたね。住民はいないと言われています。今度、実力が中程の隊を一つ派遣しましょう」
「そうですわね、何が出るかわからない以上は強すぎても王都も城下も守りが手薄になりますし、まだ鍛練が未熟すぎる者たちでも対処できない場合もありますわ」
「まだ弱い者達は引き続き壁の外側の警備をさせましょう、王国内の街の警備はその他で」
やることが一つ決まるとカディスはふと思い出した。
「あら、お仕事の話になって仕舞いましたわね」
「しまった…すみません、話がどんどん離れてしまいました」
「ワーカーホリック、ですわよ?」
「どこでまたそんなことを…どうせゼクナスでしょう?お止めください姫様、あの者と姫様はもう立場上のものがあります、会うことを」
「止めませんわ、家族ですもの!このお話もお仕事のお話ももう終わりにしましょう」
「ですが!」
「これは命令ですわよ」
「ぐっ…御意…」
「精霊の話は私も本でまた読みますわ、次は術技ですわ」
「そうですね、それは私が言うよりも良いでしょう。姫様はすぐに覚えてそこからまた自分で考えなさいますから。」
「そうです?もしそうだとしても術技は出来ませんから…演習場に行きましょう?」
カディスがそう言うとユリエルはカディスの手を取る、それを少し見てからカディスは立ち上がった。ユリエルとカディスは歩き出そうとすると扉にノックがされる、そのノックは激しくした者は焦っているのがわかる。
「姫様!閣下!どちらか居られますか!」
「静かにノックをしたまえ!姫様の部屋だ、静かに開けろ」
「はっ、申し訳ございません!失礼します!」
「何かあったのか?」
「城下町に魔素が出たと…!」
「なっ!魔素だと!?」
「はい!前触れもなく!それと魔物もいつもより気性が荒くなっていると言うことです!」
「ゼクナスに向かわせろ、他の部隊の指揮は私がやろう」
「そ、それが…ゼクナス隊長は既に向かっているらしくどこにいるかは…」
隊員がゼクナスの件について話すとユリエルは拳を握り震えた、どうやら毎回自己判断で向かっているらしい。
「あぁんのやつは~っ!!よし、わかった、ゼクナスの隊と君のいる隊で鎮圧に向かう、私はここに親衛隊を配置した後そちらに向かおう。」
「はっ!ゼクナス様の隊は先程向かうのが見えましたので私は隊長に報告し向かいます!」
隊員はそう言うと部屋から出た、それに続きユリエルも部屋を出る前に扉の前で立ち止まった。
「姫様、ここと扉の前にディワインド親衛隊を配置します。実技はまた後日。」
「わかりましたわ。…ユリエル、どうか気を付けて、我々にとっては魔素はまだ未知のモノですから」
「承りました」
そう言うと部屋からユリエルは出ていった、カディスは部屋の窓を見て魔素があると思う方向を見る。
「…ゼクナス、あなたもね…」
――――――――
【城下町 商人のイフリート地区イフリート街】
ゼクナス隊、正式名称イフリート隊の隊長であるゼクナス・ハードヴィッグは熱気ある商人のいる地区、イフリート地区の中心部、イフリート街にいた。
イフリート街はイフリート隊の巡回地区の一つである、隊長である彼女もまた仕事で来ていた。
「さぁさぁ!そこの旦那!このグリフォンの肉は良い肉だよー!」
「このウオントはサプライズエンカウントの珍しい魚肉だよぉぉ!」
見渡す限り人、ヒト、ひと。
沢山の商人が自分の持ってきた、買い取った様々な商品を売ろうと声を出し合っている。
誰もが自信を持ち声を張る。
「流石商人街だな、ここからまた王国全土の街に行き、それぞれの店に並ぶのか。…しかし、うまそうな鶏肉だな、んぐっ、これは夕飯は唐揚げも良いな」
「お?その真紅の騎士服…ハードヴィッグ隊のじゃないか。そこの金髪のねぇちゃん、腹が減ったのか?」
「ん?あぁ、鶏肉を見てたら確かに腹が減ってきたな、唐揚げにすると美味そうと思っていた」
「これは砂漠のグリフォンの肉だよ、身が締まってるから唐揚げよりもソテーがおすすめだよ」
「なるほど、砂漠からなら脂身が少ないな、肉の弾力が良さそうだ…すまないが金は払うから置いて置いてくれないか?私の巡回が終われば取りに来たいのだが」
「ハードヴィッグ隊には世話になってるからね!良いよ良いよ、ねぇちゃん名前は?」
「そのハードヴィッグ隊の隊長だ、肉は七切れで頼む」
そう言いゼクナスはお金を起き去っていった、それを聞いた店主は不自然に固まっていたのを店主の妻が叩いてもとに戻す。
「なにやってんだよ!あんた!ほら!仕事しな!」
「あぁ、あ、あれが!あれが!絶世の美女!?綺麗だが…ガハハ!とんだ食いしん坊じゃねぇか!」
その日よりゼクナスは麗しの大食らいと呼ばれるようになったとか。
そして数時間後、ゼクナスはイフリート街の少し外れにいた、ここを回ればゼクナスの巡回は終わる。
「晴天だった筈、何故、此方に行くに連れて黒い霧が…ゲホッ…まさか…魔素か」
黒い霧、普通ではあり得ない色をした霧。
魔素は普段から見掛けないがここ数ヵ月、日に日に騎士隊では見掛けることが増えていた。
ゼクナスは急いで外れから離れ、イフリート街の中心よりも近くの下町の騎士小隊に向かった。
扉を叩くことなく走ったそのまま扉に向かって蹴りを入れる、外も中も音とその行為で驚いている。
「イフリート隊、隊長のハードヴィックだ、至急城に2名で連絡をいれろ。」
「ハードヴィック!?城の騎士がな「驚くな、騒がしい。イフリート街の少し外れ、それも住居地域に魔素が出現、至急兵を動かせ。残りで民を逃がせ、最初は中心部で良い、騎士は通るなら中心部から少し離れて動け、以上だ、行け!」んだって!ロナルドは城のハードヴィック隊!エゼルフは閣下へ連絡しろ!全力疾走だ!」
「「了解した!/はい!」」
「私は先に向かう!火か何かの魔術を着き次第空に放つ!それで大体を把握しろ!」
そう言うとゼクナスは先程居た黒い霧に覆われた住居地域に戻るため走っていった。
「む、無茶苦茶な最後だな!総員住民を逃がせー!」
――――――――――――
【黒い霧に覆われた住居地域 イフリート街の外れ】
城の方から城下の外れは一般の騎士からすれば走っても一時間未満は掛かる、しかし現在のユリエルは戦闘スタイルを機敏で素早い拳闘士と弓取りを交互に使い分け約三十分で住居地域に着いた。
ユリエルが着いたときには既にここは無人となっていた、その代わりなのか魔物の死体がたくさん倒れていた。ユリエルは魔物の死体をマナ化、完全に消滅させながら進んでいく。
「…いないな、奥か?」
無人となった扉の開いている家や入れそうな小道を入ったり、真っ直ぐ通りを歩いたりした、そしてもっとも奥の、イフリート街の外れであり国を守る壁に近い所まで来ていた。
そこには大きな見たこともない魔物と剣を構え戦闘寸前のゼクナスが居た。
「ゼクナス!?」
「遅い」
「すまないな!今弓取りで援護する!」
そして魔物との戦闘が始まった。
「ゼクナス、戦い方は覚えているな?」
「当たり前だ」
「最初は通常攻撃だ、その後に特技、秘技、奥義と技を繋ぐ。お前は騎士だ、騎士団で習った通り戦え、良いな?」
「私は騎士団で習ってないが」
「…なら道具をまず使えよ!アイテムはインスペクタクルズ!お前のポーチにある筈だから!」
「忘れていたのか、まぁいい、了解」
ゼクナスは敵の正体をわかるようにするため道具を使う、それを邪魔させないようにユリエルは連続して弓を放つと地面に爆発する罠を仕掛ける。
「邪魔はさせないぜ!ついでに土竜なり!」
「インスペクタクルズ!正体を見せろ!敵は…人間、だとっ!?」
「なんだと!?」
「魔防御、物理防御共に脆い!体力も低いが侮るな!」
「それは俺が言う言葉!こいつの動きは遅い!改めて戦闘の仕方を思い出せ!」
「何故だ、適当にやってれば勝てるだろう」
「それは相手が自分より弱ければな!戦闘の基本だ、通常攻撃をしたあと相手の攻撃が素早ければ瞬時にガードするか攻撃前にガードをして構えとけ。」
「ガード」
「魔術も使えれば遠くから魔術も良いだろう、しかし当然近接攻撃してくる奴もいる。ガードは覚えていて損はない、ちなみにガードは二つあるがそれ今度な!」
「損はない、了解。しかし今は倒す」
「俺の説明の意味!」
会話をしているとゆっくりとだが敵は向かっていた。
ユリエルの仕掛けた土竜なりに敵が引っ掛かるとそれに続いてゼクナスは流れるような剣技を出す、次に地を這う衝撃波、それを繋ぐようにユリエルは幾度か矢を放ち、天に弓を放つ。
「天の閃き!ゼクナス!魔術の準備!」
「了解!」
「舞うが如く!」
喋りながら指示を出し技の繋ぎを無くさないようにユリエルは回転しながら変形式脇差と変形式騎士剣で体を捻りながら駒のようにとはいかないが二回転して斬り付ける、その間にゼクナスは一番短い術式を組み上げる。
「業火爆裂!」
「今だ落ちろ矢!」
「ファイアーボール!」
「ギィギャァァァァァァッ!」
敵に二つの攻撃が同時に当たると爆風が起きた、周囲に突風が吹くと魔素は消え、倒した敵が居たところからマナが現れる。
敵を跡形もなく倒した証拠だ。
「今ので魔素が吹っ飛んだか?」
「可能性はあるな。魔素がどうなったか騎士団に一度国内全域に確認の伝令を飛ばした方が良いのでないか?」
「あぁ、そうだな、先程の魔物化した人間も吹っ飛んだ魔素も気になる…てかゼクナス、お前は大丈夫か?魔素を吸ったろ?」
「私なら大丈夫だ、それよりも魔素を隣国まで調べに行きたいのだが」
「魔素を隣国まで?どうやって?魔素はまだ隣国に出てないかも知れないだろ?どの国も情報規制されているのにわざわざ情報を流しに行くのか?首跳ねるぞ?」
「帝国の精霊学者、そいつならこれを持っていけば解析をしてくれる。精霊と契約してるらしい、契約者は人類の損になるようなことはしない筈だ」
そう言ってゼクナスの出したのは黒い瓶二つ、否、中身が黒い何かの瓶二つだった。
まるでダークボトルのように禍々しいものだ。
「おいおいそれって…まさか魔素?」
「魔素だ、特別濃度が濃い所があった、透明な瓶に術式を組み込んでマナを逃がさないようにした。一つはコルク止め、もう一つは直接口の部分を溶かし止めた。」
「俺の出来ないことを平然とやるなぁ…まぁ、一つわかったことがあるな」
「魔素はマナ、と言うことだな。生きててよかった」
「ホント無茶する…この件は俺が素早く書き置きと姫に報告をする。それは城に持ち込むな」
「わかった」
「それと帝国…行くんだろ?俺も行く、ついでだ、平和の使者にもなれないか聞いてくる」
「ついでにやるものではないだろう。それにしても二人か、簡素な使節団だな」
「うるせぇな、二人でもこの国の騎士団長と騎士団首席!お前立場わかってんの?てかわかってくれ!それに魔物がすごくてあちらこちら復興に忙しいんだ!金もなくなる!それに金があるのは帝国ぐらいだ、大分差を出して王国が二番だろうけどな。さて、明日の昼までには何とかするから旅の準備をしとけ、怪我も治せよ?」
「これを持って街に行くのは「駄目だ」…鶏肉、買ったんだが…」
「…俺が貰っておく」
「グリフォンの肉、七切れだ、よろしく。私は人気の少ないサランダの兵舎にいる、迎えに来てくれ」
そう言うとゼクナスはゆっくり歩いてサランダへと向かった、ユリエルは後ろが少し見えなくなるまで見ると色んな所を飛び上がり屋根に向かう。そうして屋根伝いで城へと帰っていった。
おまけ
ユリエルに怒られたのがエゼルフ、ハードヴィック隊に行ったのがロナルド。
エゼルフ・ロラン
下町に常駐する騎士隊の一員、魔術と素早い攻撃が得意。騎士剣よりレイピア等の二刀流にいつかなる。
ロナルド・マヤラ
下町に常駐する騎士隊の一員、ユリエルに憧れて入った、騎士と拳闘士の戦闘スタイルを混ぜて戦う(予定の)騎士。全身がバネのような体、成長すれば強くなる。