Dogdays   作:菊燐

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第7話

「おりゃー!よいしょっと‼︎」

「くっ!」

「よっと!」

 

 

ジョーヌの振り下ろした碇の様な巨大な武器を、俺とエクレは左右に飛んで避ける。

 

 

「ノワ‼︎」

「了解…!」

 

 

回避した先に大量の短剣が飛んでくる。

それを今度は紋章剣で弾き返す。

 

 

「ベール…!」

「はーい!」

 

 

更に隙を突いて紋章術の乗った矢が飛んでくる。

 

 

「くっ…このっ‼︎」

 

 

左手に持った鞘で弾いて受け流す。

エクレも矢を上手く捌いた様だ。

 

 

「こいつらがバカって、本当なのか?普通に強いぞ…。」

「ガウル殿下の腹心ジェノワーズ…基本的に3人共“バカ‼︎”で間違いないが、戦いとなればやはり強い…‼︎」

 

 

エラい“バカ”を強調したな。

だがこのチームワークは凄い、見事にお互いの弱点を補い合っている。

 

 

「ここは分断して戦う方が良さそうだな。」

「仕方がないか、どう分ける?」

「俺が黒猫とうさ耳を受ける、エクレはトラ耳を頼む。」

「貴様、2人も相手に出来るのか?」

「どうだろうな。」

「なっ、貴様⁉︎」

「ははは、でも元々俺は回避より受けて流す方が得意だからな。あのトラ耳の武器は受け切れない可能性がある。だったら身軽で元々回避型のエクレが戦った方が良いだろう?」

「そういう事か、まあせいぜいやられない様にする事だな。」

「その前に倒して助けに来てくれ。頼りにしてるぜ、エクレ。」

「ふんっ。」

 

 

ジョーヌに向かって駆けていくエクレ。

 

 

「そうは…。」

「させませんよ‼︎」

 

 

エクレに向かって短剣と矢を放つノワールとベール。

しかしそれを俺の紋章剣で叩き落とす。

 

 

「悪いが2人には俺の相手をしてもらうぜ!」

 

 

おそらくノワールは中〜後衛、ベールは後衛のはず。

なら一気に近付いて間合いを詰めれば抵抗出来ないはず。

 

そう思い一気に駆け出す、しかしそれよりも速く黒い影が懐に飛び込んできた。

 

 

「やぁー‼︎」

「くっ…このっ⁉︎」

 

 

飛び込んで来たのは中〜後衛だと思っていたノワールだった。

素早い動きで短剣を振り抜いてくる。

咄嗟に鞘に収まったままの桜嵐で防ぎ、押し返す。

だが間髪入れずにベールの矢が飛んで来る、それを身体を反らし倒れる様に回避し、転がりながら後ろへ飛び退く。

 

 

「最初に短剣を投擲にしか使わなかったから、私が後衛型だと思い込んだでしょう?」

「ノワールは近接戦だって出来ちゃうんですよ!」

 

 

やられた、完全にノワールは遠距離型だと思い込んでいた。

いや、思い込まされていたのかもしれない。

最初からこの状況を見越して、敢えて近接戦をジョーヌに任せ、ノワールは後衛に徹していたのかもしれない。

 

 

「ふふん♪」

「ぶいっ!」

 

 

2人を見るとすげードヤ顔でピースしてた、やはり計算と言うのは考え過ぎかもしれない。

しかしノワールの切り替えの早さは間違いなく、周りを見る観察眼と頭の回転の速さによるものだろう。

だが近接戦も有り得ると言う事さえ分かれば対応のしようはある。

 

そして俺はもう一度ノワールに向かって駆け出した。

ノワールはさっきと同様に凄いスピードで俺の懐に飛び込み、短剣を逆手に持った右腕を突き出す。

 

 

「えーい!…うわっ⁉︎」

「そらっ‼︎」

 

 

今度は俺の対応が違った。

突き出した右腕に合わせて左半身を切り、躱すと同時に右腕で掴み、片手の一本背負の様に投げ飛ばす。

当然ノワールは空中で体勢を立て直すが、御構い無しだ。

そのまま右手で桜嵐の柄を持ち、後ろに向かって一気に振り抜く。

 

 

「烈空一文字‼︎」

「えっ⁉︎きゃっ⁉︎」

 

 

隙を突こうと構えていたベールに紋章剣が飛ぶ。

しかしギリギリで回避したベールの肩部分の衣服を切り裂くに終わる。

咄嗟に矢を放たれたが突然の事で狙いがズレたのか、肩を掠めるだけだった。

更に振り抜いた勢いで身体を回し、地面を擦らせる様に後方に桜嵐を振り抜く。

 

 

「飛べ!魔神剣‼︎」

 

 

空中で体勢を立て直し、短剣を既にこちらへ投げていたノワールに紋章剣が地を這う様に飛ぶ。

紋章剣は飛んで来る短剣を打ち落としながら突き進む。

ノワールは直撃の寸前に。短剣を交差させて紋章剣を受け止める。

 

 

「う、くっ…うわぁ⁉︎」

 

 

受け止め切れなかった紋章剣は、短剣を弾き飛ばしノワールの服の袖を引き裂いた。

 

 

「す、凄い…。」

「うん。流石レオ閣下と1人で戦っただけの事はある…。」

「お前らも十分凄いよ。正直、後衛組相手にここまで苦戦するとは思ってなかったしな。こんな場所でもなけりゃ、もっとゆっくり話せたかもな。」

「それなら問題ありません!」

「うん、これが終わったら一杯お話ししよう。今は戦争状態だけどガレットにも来て欲しい、君も、勇者も。」

「黒猫…うさ耳…。ユーリだ!」

「「え?」」

「名前だよ、まだ俺は名乗ってなかっただろ?」

「なら、私はノワール、黒猫じゃなくてノワール。」

「ベールです、ちゃんと覚えて下さいね!」

「おう!ノワール!ベール!戦はまだ終わっちゃいない、行くぞ‼︎」

 

 

そして戦いを再開しようとしたその時、ドン‼︎と言う音と共に扉が蹴破られ、皆の視線がそっちへ向く。

 

 

「「「「「え?」」」」」

「貴様等、何をやっとるか⁉︎」

「レ、レオ閣下⁉︎」

 

 

怒号を上げたレオ閣下はそのままジェノワーズの3人に拳骨を振り下ろすと、引きずりながら砦の壁を吹き飛ばした。

その先にはガウルとシンクが鍔迫り合いの様な形でぶつかっていた。

 

 

「ガウル…!それにビスコッティのへっぽこ勇者…!」

「あ、姉上⁉︎」

「へ、へっぽこ⁉︎」

「ガキ共!戦場で何を遊んでおるか⁉︎」

「「は、はい!ごめんなさい‼︎」」

 

 

まさに一喝、一声で場を収めるとシンクとガウルに拳骨を振り下ろし、レオ閣下は全員を連れて姫様のいる部屋へ向かう。

 

 

「邪魔するぞ。」

「レオ様⁉︎あの、ご無沙汰「すまなんだな、ミルヒオーレ姫殿下。」

 

 

レオ閣下は姫様の言葉を遮る様に話だした。

 

 

「戦勝国の宴の邪魔など無粋の極み、おぬしの都合を無視して連れ出した不肖の弟の非礼を詫びよう。」

「いえ、あの、ガウル殿下はご存知なく「今回の事は何か別の形で詫びを考える。今は早く戻るが良かろう。」

「レオ様…。」

「ルージュ、後は頼んだ。」

「あ、はい!」

 

 

そう言い残して出て行くレオ閣下。

姫様と目を合わせる事もなく、話す様子もない事に違和感を覚えたが今はコンサートに間に合わせる方法を考えよう。

 

 

「う、あ、やっぱり間に合わねぇか?」

「姫様の出番までは後20分、ここからホールまではどう急いでも1時間は…。」

「ぬぉぉおお!なんてこったー⁉︎なんてこったー⁉︎」

「あの本当にお気になさらず。」

「いや、つってもよぅ…。」

 

 

姫様、エクレ、ガウルが騒いでいる端でジェノワーズは気絶したふりをしていた。

 

 

「ええか、目覚ましたらまた殴られるから気絶したふりしとくんや。」

「気絶したふりー、気絶したふりー。」

「ふりー。」

「聞こえてんぞ。」

「ユーリは黙ってて!」

 

 

セルクルで急いでも1時間、輝力を使って走れば可能性はあるが…流石に一国の姫を担いで走るってのもなぁ。

 

 

「あの…。」

「「「「ん?」」」」

「姫様…僕が送って行きます!」

「送ってくってお前…。」

「どうやって?」

「そりゃあ勿論!この、勇者超特急で‼︎」

 

 

そう言ってシンクは姫をおぶった。

 

 

「いや、俺も考えたけどさ。お前一国の姫に対して遠慮がなさ過ぎるだろ。」

「まあまあ、硬い事言わないで。えっと、王子?あ、ごめん。名前なんだっけ?」

「覚えろよ⁉︎ガウルだよ‼︎」

「ユーリとガウルの輝力の使い方見て覚えたから、多分行ける!」

 

 

シンクは足に輝力を展開する。

それを見て察したのか、ルージュさんは窓を開ける。

 

 

「じゃあ行きますよ⁉︎姫様‼︎」

「はい!勇者様‼︎」

「せーのっ!行ってきまーす‼︎」

 

 

そしてそのまま窓から文字通り飛び出して行った。

 

 

「おー、勢い良く行ったな。」

「大丈夫なんだろうか…?」

「まあウチの自慢の勇者なんだ、信じてやろうぜ。」

 

 

エクレは何だか微妙な表情だ。

そんなエクレを尻目に部屋を後にする。

 

 

「どこへ行くんだ?」

「ダルキアン卿のところ。」

 

 

砦の門の近くにダルキアン卿は沢山のけもの玉と一緒にいた。

 

 

「ダルキアン卿ー!」

「ん?おお、先程の。」

「風巻悠莉と言います。少しいいですか?、」

「うむ、拙者もユーリ殿、で構わんかな?」

「はい!」

「その刀、“桜嵐”について話したいと思っていたところにござる。」

「桜嵐を知ってるんですか⁉︎」

「ああ、何せ拙者の兄が鍛えた剣でござるからな。」

「ダルキアン卿の兄が?」

「うむ、ユーリ殿はそれをどこで?」

「祖父の形見なんです。」

「ほう、なるほど。その刀は少々特殊な刀でござる、その辺の話をすると長くなるでござるが…。」

「構いません、聞かせて下さい。」

「まあ、その前に…。」

「おーい、姫様の歌が始まるよー!」

 

 

上を向くとノワール達が手を振っている。

どうやらシンクは間に合ったみたいだ。

 

 

「姫様の歌を聴いてくるといいでござるよ。」

「でも…。」

「拙者も暫くこの国にいるでござる。ユキカゼを迎いに行かせる故、また明日ゆっくり話すでござるよ。」

「…分かりました。明日、絶対ですよ。」

「うむ。」

 

 

部屋に戻り、姫様の歌の中継に耳を傾ける。

姫様の歌は凄かった、人々が聴きたいと思い、外交にすら楽団を連れて歌う理由も分かる。

今まで出会ったどんな音楽より人を笑顔に、幸せに出来る歌だった。

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