艦隊これくしょん―影に生きる者達― リターンズ   作:Mk-Ⅳ

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第九話

極東方面隊の一部将校が起死回生を狙った反攻作戦。“オペレーション・ネオMI”が発動され、大規模艦隊がミッドウェー攻略に動き出している頃――主戦場から離れた場所で影達は戦っていた。

 

『必殺キーック!』

 

艤装を纏った桃が跳び上がり、駆逐イ級へと蹴りを叩き込み頭部を粉砕する。

蹴りを反動を活かし、身体を丸めて回転し着地すると真横へと跳ぶと同時に、飛来した砲弾が桃が居た場所へと降り注ぐ。

砲弾を放った軽巡ホ級がすぐさま照準を修正し、桃へと追撃しようとするも、砲塔が突如爆発し内蔵していた砲弾に引火し爆散してしまう。

 

『シャドウ5。左翼群衆に切り込んで』

『りょーかい!』

 

敵陣に突撃していく桃を援護している松の艤装は、今までのとは形状が違っていた。巨大なライフルは無くなっており、代わりに右肩にセミオートライフルに両脚部に1挺ずつのサブマシンガン、腰部の左右に拳銃と、それぞれの銃のマガジンが詰まったコンテナを背負い。各部に増加装甲が施されていた。

B型装備と呼ばれる近・中距離での戦闘を想定したもので、今回乱戦となることが想定されたため、こちらに換装しているのである。

松は両手に持ったサブマシンガンで弾幕を張って敵を牽制し、その隙に桃が切り込む。

 

『てぇいりゃ!』

 

目の前の駆逐ロ級を腕の鉤爪で引き裂き、側にいたイ級に先端に刃のついた尻尾を突き刺し持ち上げる。

持ち上げたイ級を軽巡ト級に叩きつけて纏めて撃破する。

桃の背中を守る様に両手のサブマシンガンで軽巡ホ級を蜂の巣にし、マガジンを排出してコンテナから伸びたアームによって新たなマガジンが装着される。

そしてサブマシンガンの斉射で駆逐ハ級を撃破すると、サブマシンガンを膝に戻し腰部のガンホルダーから拳銃を引き抜く。

 

『目標を狙い撃つ』

 

松が放った弾丸が次々に敵の砲口に入っていき、内部の砲弾を撃ち抜き爆発させ誘爆によって爆散していく深海棲艦。

次々と敵を薙ぎ払う松と桃へと、空から敵の戦闘機が爆撃と機銃掃射を加え様と降下していくが。2人の後方にいる梅が射撃体勢に入る。

 

『滅』

 

左腕のバルジと一体のガトリングと、全身に装備された機銃がから放たれた弾丸が、敵戦闘機の進路を阻む。

続いて背部のロサ弾のハッチを開き、打ち出された砲弾が編隊を乱した戦闘機を叩き落としていく。

そんな中闘牙は、松達の後方で敵本隊に突撃を開始するタイミングを図っていた。

その闘牙へと右翼側から3隻の潜水カ級が、海中からゆっくりと接近していく。

彼女達には、単独で動いている闘牙が格好の獲物に見えるのだろう。故にさしたる警戒もせずに必中距離まで近づこうとする。

すると直上から無数の物体が、彼女達のいる震度まで沈んできた。それが爆雷だと気づいた時には彼女達の意識は爆発の衝撃に飲まれていった――

 

『こちらシャドウ3。海中の掃除完了』

 

自身が投下した爆雷によって巻き起こった水しぶきを見ながら、ソナーで敵潜水艦を撃破したことを確認すると、指揮官である闘牙に報告する竹。

彼女は戦闘開始前から光学迷彩で姿を消しながら闘牙の周囲に控えていたのである。

 

『シャドウ1了解。シャドウ3は次のフェーズへ移行せよ』

『シャドウ3了解』

 

竹は通信を終えると、再び光学迷彩を起動させ戦場の影に潜むのであった。

 

『シャドウ2よりシャドウ1へ。進路クリア』

『シャドウ1了解』

 

松からの通信を受けた闘牙が、機関出力を上昇させながら前傾姿勢になる。

 

『シャドウ1。これより突貫する!』

 

全速力で突撃していく闘牙が、松達が切り開いた道を突き進んでいく。

さしたる抵抗も受けず前衛を突破し、後方にいた敵本隊へ接近していく。

敵本隊の直衛艦隊から砲撃されるが、クイックブーストを用いて回避行動を取るも、流石に弾幕が濃いため何発かは回避できず両肩のバルジで防ぐが、戦艦の砲撃には耐え切れず破損する。

しかし、損傷部分が緑色の結晶に包まれ、結晶が砕け散ると完全に修復される。

 

『邪魔だ!』

 

闘牙の突き出したランスが、戦艦ル級の装甲を軽々と貫通し、パイルバンカーによって粉々に粉砕される。

撃破と同時に後方へクイックブーストすると、先程までいた場所を砲弾が横切った。

砲弾が飛んできた方に視線を向けると、別の戦艦ル級が仲間を奪った闘牙に、憎しみの目で睨みつけながら砲塔をこちらへと向けていた。

ル級や他の直衛艦の砲撃を無視して、空母型であるヲ級へと向かっていく闘牙。

後退しながら頭部の単装砲で迎撃しようとするヲ級を、一瞬で追い抜きすれ違いざまに、ランスを横薙ぎに振るい胴体を真っ二つ叩き割った。

 

『逃がしはせん』

 

残りの旗艦と見られるヲ級が後退しようとするので、クイックブーストを交えた機動で追撃する闘牙。

そこに直衛艦隊が壁を作るように立ちはだかり砲撃を加えてくる。対して闘牙は、ランスを海面に突き刺しパイルバンカーを起動する。打ち込まれた杭の衝撃によって巻き起こった水しぶきが、闘牙の姿を隠す。

それにより敵目を眩ませた隙に、バンカーの衝撃を利用して高く跳ぶ闘牙。そして直衛艦隊に接近すると、ル級目掛けて蹴りを放つ。

ル級が両腕の艤装を交差させて受け止められると、それを支点として飛び越え、退避しようとしているヲ級へと向かっていく闘牙。

直衛艦隊が振り返った時には、ヲ級は腹部をランスに貫かれ海面に抑えつけられていた。

 

『手間取らせるな』

 

両手でランスを掴んで必死に抵抗しているヲ級へと、力を込めてランスを突き刺していく。

 

『~~~~~~~~!!!』

 

悲鳴を上げるヲ級に対して、容赦なくランスのトリガーを引き刀身を展開させて、パイルバンカーで粉砕する。

せめて、残った3隻の軽空母ヌ級だけでも守ろうと陣形を変更しようとした時には、手遅れであった。

 

『ヒャハァ!!』

 

突然ヌ級達の中心に現れた竹が自身を回転させながら、手にしていた大鎌で3隻同時に両断してしまった。

自分達の抵抗をあざ笑うかの様に、空母群を殲滅されたことで、動揺が走る直衛艦隊。

 

『マルチターゲットロック』

 

直衛艦隊の意識が闘牙と竹に向いている隙に、前衛を壊滅させた梅のロサ弾の一斉射が叩き込まれた。

降り注いだロサ弾が直衛艦隊に降り注ぎ、化学反応による発熱による1000度を超える高熱が敵を蝕び阿鼻叫喚の地獄絵図となる。

そんな直衛艦隊に梅はガトリングと機銃による掃射が浴びせる。

次々と蜂の巣となり沈んでいくか致命傷を免れても、損傷部分が熱によって焼かれていき息絶えていく直衛艦隊。

 

『残敵を掃討せよ』

 

辛うじて耐え抜いた個体は、闘牙達によって次々と止めを刺されていく。

耐久度の高い戦艦ル級は比較的損傷が軽く、反撃しようと無事な砲塔を向けようとするも。松が放った拳銃の弾丸が、砲口の中に吸い込まれる様に侵入し、砲弾の誘爆を起こす。

砲塔の爆発に苦悶するル級の背中に飛び乗った桃が、左腕でル級の顔をホールドすると、右腕の鉤爪で喉元を引き裂き止めを刺した。

 

『こちらシャドウ1。敵を殲滅した』

『こちらシャドウ・マム。周囲に敵影無し。敵の全滅を確認』

『了解。これより警戒態勢に移行する』

 

闘牙がオペレーターである優に周囲の状況を確認し、安全が確認されると索敵陣形に移行する。

 

『さて、これで後は本命次第か。上手くいくと思うか?』

『無理だろうな』

 

優の問いかけに、不可能であると迷いなく応じる闘牙。今回の特戦隊の任務はミッドウェー攻略に先駆けて陽動を行い、敵の戦力を分散させることである。

 

『予想よりも敵を誘き寄せられなかった。恐らくミッドウェーには多数の空母が残っているだろう。いくら一・二航戦がいようとも、どうにもなるまい』

『戦いは数だよ兄貴!てか』

『それが戦いの原則だ。俺達の様な少数精鋭など、大局にはさして影響はせんよ』

『…それ自分で言ってて悲しくなんね?』

『事実だ。歴史を紐解けばよく分かる』

 

いかに強力な『個』であっても、『群』と言う波を止められたことは一度として無かったことは歴史が証明していた。

 

『やはり情報が不足しているのが痛いな。ただでさえ奴ら(深海棲艦)に関する情報は少ないのだからな』

 

そう言って深く息を吐く闘牙。古来より戦争に関わらず、情報とは何よりも重要なファクターである。ネットが普及した現代において、情報の有無は生死に直結ことさえあるのだ。

しかし深海棲艦に関する情報は圧倒的に不足しており、敵戦力の総数や戦略、指揮系統と言った基本的なことはおろか、その目的すら判明していないのである。

 

『後は正規軍次第だ。これ以上俺達の出番が回ってこないことを願って…』

 

闘牙の声を遮る様にアラームが鳴り出し、隊内に緊張が走る。

 

『!何かこっちに接近してくる!速い!?』

 

索敵範囲の1番広い松が警告すると同時に、視界に自分達に向かってくる物体を捉える。

 

『散開しろ!』

 

指示と同時に、飛来してきた砲弾の直撃を受けた闘牙が、爆炎に包まれた。

 

『シャドウ1!』

『問題ない。迎撃するぞ!』

 

心配してくれた松に、損傷を再生させながら指示を出す闘牙。砲弾を撃ち込んできた襲撃者を迎え撃つ闘牙は、その姿に目を細めた。

黒光りする機械的なボディに、二足歩行でありながら手足に鋭い爪を備えており。目や口は無く顔を覆う様にクリスタル状のパーツが埋め込まれており。同じ様な物がボディの所々に埋め込まれ青白く輝いており、深海棲艦とはまた違った不気味さを醸し出していた。

襲撃者は獲物を見つけたといわんばかりに、全身のクリスタルを輝かせると、背部の砲身を闘牙に向けると発砲したのだった。

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