艦隊これくしょん―影に生きる者達― リターンズ   作:Mk-Ⅳ

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第十話

襲撃者が放った砲弾をクイック・ブーストで回避する闘牙

だが動きを読まれたのか、回避先に回り込んできた襲撃者が腕を振り上げると、鋭利な爪が怪しく光った。

闘牙が振り下ろされた爪をランスを受け止めると、鋭い爪を刀身がぶつかり合い火花を散らす。

 

『ふん!』

 

闘牙が襲撃者を蹴り飛ばすと、竹が左側から大鎌を振り回しながら斬りかかる。

回転の勢いを乗せて大鎌を振り下ろすが、バックステップで回避される。

そこに回避先を読んで待ち受けていた桃が、刃のついた尻尾を心臓部に突き刺した。

かに見えたが、直前に上半身の捻ったのか、刃は心臓部からズレており。襲撃者の全身のクリスタルが怪しく光る。

それを見た桃は悪寒がしたので、急いで尻尾を引き抜こうとするも、その前に尻尾を掴まれてしまう。

 

『ふにゃ!?』

 

襲撃者は自身で尻尾を引き抜くと、損傷部分が瞬く間に塞がってしまった。そして突き刺されたことが何事もなかったかの様に、掴んだ尻尾を振り回し始める。

 

『うにゃあああああああ!?!?!?』

『ええい。こんのぉ!』

 

高速で振り回される桃を助けようと、竹が大鎌の刃を海面に押し付けながら接近する。

間合いに踏み込んだ竹は大鎌を振り上げて、巻き上げた海水で敵の視界を塞ぐと、石突を突き立てる。

襲撃者は何もせずに突きを受けるが、まるで意に介さず。振り回していた桃を竹に叩きつけた。

 

『ガッ!?』

『ふぎゅ!』

 

体勢を崩して無防備となった2人に、襲撃者は背部の主砲を向けた。

 

『させん!』

 

闘牙が襲撃者の脇腹にランスを突き刺し、トリガーを引いて刀身を展開しようとするが。襲撃者は痛みを感じた様子もなく、刀身を掴んで展開を阻害してきた。

 

『チィッ!』

 

ならばとランスを更に突き刺そうと押し込むが。パワーが同じなのか、ほとんど差し込むことができない。

襲撃者の全身のクリスタルが一際輝くと、ランスの掴まれていた部分に亀裂が入っていき。遂にはへし折られてしまった。

 

『シャドウ1退がって!』

 

松の通信を受けて後退すると、梅が襲撃者にガトリングの斉射を浴びせる。

両腕を交差させて防御する襲撃者に、松がスナイパーライフルの銃口を向けた。

トリガーを引くと、火薬が爆ぜる音と共に銃弾が吐き出された。

襲撃者は左腕でガトリングの弾丸を防ぎながら、右腕で銃弾を弾いた。

襲撃者が後方に跳んでガトリングの射線から逃れると、ランスを刺された損傷部がスライムの様に蠢きだした。

蠢きはどんどんと強くなっていき次第に収まると、損傷部は完全に塞がっていた。

 

『こいつ闘牙みたいに!?』

『そんな…』

 

その驚異的なまでの再生力に、松型姉妹は驚愕した。

 

『シャドウ1よりシャドウ・マムへ。こいつに該当するデータはあるか?』

中央戦略コンピュータ(CSC)にも問い合わせたが該当無し。もしかしたら新種かもしれん』

 

襲いかかってきた襲撃者の爪をクイックブーストで避け、背後に回って右肩のバルジで殴りかかるが。襲撃者は驚異的な速度で反応し、爪で軽々と受け止められる。

確かに見た目は深海棲艦にも見えるが、奴らから感じられる生物らしさを襲撃者からは感じられず、どこか違和感を感じるのであった。

 

『さらに悪いことに、後続と見られる集団も迫ってきてやがるぞ』

『ふむ。シャドウ1よりシャドウ2へ。これより指揮権を移譲する。シャドウ3達と共に後続を叩け。こいつは俺が相手をする』

 

破損したランスを再生させながら戦況を分析し、指示を出す闘牙。

 

『……』

『誰か1人くらい援護に残した方がいいんじゃない?』

『敵の戦力が未知数だ、下手に戦力を分けたくない。それに奴は俺に構って欲しいらしい』

 

流石に、闘牙1人に襲撃者の相手をさせるのは不安な様子の松や竹だが。闘牙考えを変える気は無いようである。

何より襲撃者は一貫して闘牙を攻撃しており、松達には攻撃された場合のみ反撃を行っているのである。なので、闘牙が襲撃者を引きつけるのが最善と判断したのだ。

 

『俺が負けるとでも思ったのか?ありえんな、誰が相手であろうとも俺は勝つのみだ』

 

自身の勝利を微塵の疑いもしない闘牙の発言に、思わず笑みを浮かべる松型姉妹。

決して自分を奮い立たせる虚勢や見栄などではなく、本当にそう思っているのだこの男は。

どこまでも堂々としたその姿に、心配したのが逆に馬鹿らしく思えてしまう程である。

 

『了解。シャドウ2指揮権を移譲。敵後続を迎撃します』

 

微笑みながら松が了承すると、竹達を連れて後続に向かっていく。

襲撃者はそんな松達を見向きもせず、闘牙のみを見据えていた。

 

『さあ、来い。相手をしてやる』

 

挑発する様にランスを構えると襲撃者は全身のクリスタルを怪しく輝やかせて、背部の砲を放つのであった。

 

 

 

 

『あれって深海棲艦?』

 

後続と接敵した松型姉妹の中で、竹が疑問を述べる。

襲撃者を追ってきたと見られる集団は全て人型であり、迷彩服を思わせる黒を強調した服装に。バイザーで顔全体を覆っており、水上用自律型兵装の駆逐艦クラスと同様の装備をしているのだ。

 

私達(水上用自律型兵装)と同じ?』

『でも、違う感じ』

 

分析している松と梅がそれぞれ違和感を感じていた。

 

『倒していいの?』

『まあ、撃ってきているしね』

 

問い掛けてくる桃に冷静に答える竹。

竹の言う通り、既にアンノウンから砲撃が飛んできているのだ。

 

『シャドウ2より各艦、迎撃開始』

 

松の指示にそれぞれ答えると、竹と桃が機関の出力を上げて前進し、梅がその後をついていく。

松が手にしていたスナイパーライフルを構えると発砲する。

放たれた銃弾は集団の先頭の頭部を吹き飛ばした。

味方が倒されても気にした様子もない敵艦隊は、接近していく竹と桃に砲撃を集中させる。

 

『チィッ』

 

正確な砲撃に足を止められ、回避に専念をせざるを得なくなる竹と桃。

 

『うにゃにゃ近づけんのだぁ~』

『牽制する』

 

梅が砲弾を装甲で弾きながらガトリングで牽制すると、何体か被弾するもアンノウンの攻撃の手が緩むことがない。

松もスナイパーライフルで次々とアンノウンを倒していくも、一向に敵の陣形が乱れることが様子がない。

 

「(統率が取れ過ぎている…)」

 

今での経験で、ここまで損害を出せば敵の陣形に何らかの隙ができる筈なのだが。現在対峙しているアンノウンは不気味過ぎる程に陣形を維持している。

深海棲艦であれ味方が倒れれば動揺し隙が生まれたのに、アンノウンからはまるで感情を読み取ることができないでいた。

 

『だったら、シャドウ5!』

 

竹が叫ぶと桃に向かって跳んだ。

 

『がってんだぁ!』

 

それに合わせて桃が手を組んで掬い上げる様な体勢になった。

竹が手の平の上に両足を乗せると、桃が力の限り腕を振り上げ、竹の身体が宙へと舞う。

ある程度上昇すると、重力に逆らいアンノウン目掛けて落下していく竹。

 

『うおらァ!』

 

竹は大鎌を振るい、着地地点にいるアンノウン数体を薙ぎ払う。

 

『てりゃー!』

 

竹に気を取られたアンノウンの1体の胸部に、桃が右手の鉤爪を突き刺す。

突き刺したアンノウンを蹴り飛ばした反動で腕を引き抜き。跳びながら後転し、他のアンノウンの肩に乗ると、足を首に絡ませる。

首を絞めながら体重を傾かせて首をへし折る。

脱力して桃が体重を傾かせた方へ崩れ落ちると、海面に両手をついて足を絡ませたアンノウンごと逆立ちし。倒れる勢いを利用して前転しながら、絡ませたアンノウンを他のアンノウンに投げつけ吹き飛ばす。

 

『ターゲット・マルチロック』

 

竹と桃の対応にアンノウンがに集中してい間に、距離を詰めた梅がロックオンを終え全兵装を展開すると、竹と桃が集団から離脱する。

 

『ファイア』

 

竹と桃によって密集させられていたアンノウンは、無数の弾丸に貫かれ、ロサ弾に焼かれていくのであった。

 

 

 

 

『ハァッ!』

 

闘牙が加速しながら突き出したランスを、襲撃が右腕で防ぐも、衝撃に耐えられずちぎれ飛ぶ。

それに構わず襲撃者は、左手の鉤爪で闘牙の胸部を切り裂くも、後方へクイックブーストしたことで深手にはならかった。

互いに損傷部を修復させ、損傷の少ない闘牙が先に修復を終えると、再度ランスを構えて突撃する。

襲撃者が接近を阻む様に背部の主砲を放つ。両肩のバルジで砲弾を防ぐとランスを突き出す。

襲撃者が両手でランス掴むと、互いに押し合い拮抗する。

 

『ッ!』

 

両肩のバルジを展開し、襲撃者を鋏み両断しようとする闘牙。

負けじと背部の主砲を放つ襲撃者。

至近距離で直撃したことで動きが止まる闘牙。その間に襲撃者はバルジを支えるアームを掴んで粉砕した。

そして再生すると、再びぶつかり合う。そんな攻防が幾度となく繰り広げられる。

 

『……』

 

延々と続く戦いの中でも闘牙の集中力は途切れることなく、寧ろ高まってさえいた。

今まで積み重ねてきた経験から敵の動きを先読みしていく。

その動きに、次第に対応しきれなくなった襲撃者の損傷だけが増えていった。

 

『!?』

 

再生を行おうとした襲撃者に異変が起きた。

再生させた箇所がパラパラとメッキが剥げるようにして崩れていき、身体全体に罅が入っていったのである。

 

『限界を迎えたか』

 

そんな襲撃者を見た闘牙が呟いた。

高い再生力を持つ闘牙だが、無論それには限界があった。ならば襲撃者にもあって然るべきふだろうと考えたのである。

ならば、自分と相手。どちらが先に限界を迎えるかという賭けに出たのである。そして、その賭けに闘牙は勝ったのだ。

 

『貴様は危険だ。ここでしとめる』

 

ランスを構えて突撃態勢を取る闘牙。

襲撃者は迎え撃とうとするも、身体を動かそうとすると罅が広がり崩れ落ちていってしまう。

 

『撃ち抜く!』

 

推進器を最大まで吹かし、突撃する闘牙。

襲撃者が主砲を放つもクイックブーストで回避され、ランスで右胸部を差し貫かれた。

本来はコアがあると見られる心臓部を狙ったのだが、僅かに身体を逸らしたらしい。

ならばと闘牙がランスを展開しようとするも、襲撃者は力を振り絞様に刀身を掴み闘牙を殴り飛ばした。

 

『グッ』

 

素早く体勢を立て直して追撃に備えるが、襲撃者はその場で佇んでいた。

身体の埋め込まれているクリスタルの輝きが徐々に弱まっていた。

そして輝きが失われると、仰向けに倒れ海へと沈んでいく。

 

『……』

 

闘牙は襲撃者の姿が海中に消えても、警戒を解かないでいた。

暫くすると、安全と判断したのか警戒を解くも。襲撃者が沈んだ場所を、訝しむように見つめていた。

 

『こちらシャドウ2。敵を殲滅。各艦損害は軽微』

『シャドウ1了解。こちらも損害は軽微。状況終了、帰還するぞ』

『シャドウ2了解』

 

通信を終えると、闘牙は松達と合流すべく離脱していく。

しかし、その顔はどこか釈然としていない様であった。

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