春だ!
新しい春が来た!希望の春だ!
なんてったって高校一年生の春だ!
咲きほこる桜に満開の桜!
あとは…えっと…散り始めた桜!
関係ないけど川に浮いてる桜の花びらってちょっと汚いよね!
なんか茶色に変色してるし!
そんな下らないことを考えながら、
大股で通学路を歩く俺、
だって高校一年生の春ですよ、奥さん?
謎の美少女に出会うかもしれない
ある日突然異能に目覚めるかもしれない
部活動からスカウトされて全国大会、果ては世界と戦えるかもしれない
こんな感じに無限の可能性を秘めた時期、それが高校一年生の春なのだ。
一体どんな冒険が待ってんだ?オラワクワクすっぞ!
「おーい、健ー」
突然女の子に名前を呼ばれて亜音速で振り向く俺。
むむっ!これはなぜか俺の名前を知ってる美少女キャラの登場かっ!?
……ただの幼馴染でした本当にありがとうございます。
「おはようさん、健」
「おう、おはよう、美代」
ぽやぁっとした雰囲気と眠そうな瞳、こけしのような髪型が特徴的…でもないか。
どこにでもいそう、そんな感じの女の子だ。
幼稚園生の時からの幼馴染であり親友だ。
一緒にお風呂に入ったこともあるが割とどうでもいいや。
「振り向き様にすごいにやけてたけどなんか妄想でもしてたの?」
「まぁな、高校一年生の春だし」
「わたしはなんとも思わないけど、そういうとこそろそろ直したほうがいいと思うよ、健が思い描く主人公なんてそうそうなれるもんじゃないし」
「やめて…今絶頂なのにそういうこと言うのやめて…」
「夢だけじゃ食べていけないよ。」
突然真顔で告げる美代に思わずたじろぐ俺。
まさか挨拶してから数秒の間に夢を否定されるなんて思ってもみなかったぜ☆
「わたしは先輩に会いに行きたいから先に行くね?遅れちゃダメだよ」
そう言って駆けて行ってしまった。
残された俺はぼんやりしていた。
夢か…。
『主人公になること』
これこそが俺の夢であり、生きる目的だ。
理由は一つかっこいいからである。
…まぁでも最近考えない訳じゃないよ?挫折した人を紹介するテレビ番組とか見てるとうわ…辛そう…って思うし…。
そろそろ転換期なのかな?
いや、でも簡単に諦めたら後悔するかも…。
そんなことを悶々と考えながら歩いていたら高校の校舎が見えてきた。
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「みなさんおはようございます」
「「おはようございます」」
クラスの面々が思い思いにくつろいでいる中、担任の先生が挨拶をしつつ教室に入ってきた。
担任の先生は剥げてる、以上。
「えー、入学式やオリエンテーションが終わり今日から授業が始まるわけだが、今まで欠席していた染谷が無事登校したのでみんなに紹介しよう、初対面でこのカオスにぶち込むのは地獄だからな」
「そりゃねーよセンセー!」
クラスの誰かが声を上げると教室が笑い声で満たされる。
誰かとは俺だ。入学一週間でここまでできる俺のコミュ力は530000くらいだろうと推察される。
「ハイハイ静かに、よし染谷、入ってきていいぞ」
教室のドアが開く、ちなみに引き戸です。
そして入ってきた少女は……綺麗だった。
まず目を惹くのは、大きな瞳。目いっぱい見開かれたそれはまるで宝石のようだ。
そして細い、というより小さな体。ギリシャ神話の精霊『ニンフ』でもここまで美しくはなかったであろう。
髪はショートカットとボーイッシュな印象を受けるはずなのに、彼女はどこまでも女性らしかった。
「欠席してしまって申し訳ありません、
「染谷の中学は俺の母校でな?担任の吉岡が怖くて……」
染谷さんを前に立たせたまま自分語りを始める担任。
その話を聞き流しながら俺はずっと染谷さんを見つめていた。
「健くん、顔赤いよー」
隣から声をかけてきたのは
小柄で華奢な喜一は女の子のように見える…かもしれない。
席が隣ということもあって、比較的早く打ち解けた男友達だ。
「まじで?熱でもあっかな?」
「いやいや、健くん全然元気じゃないか」
「じゃああれかな、おたふく風邪」
「もっと悪化してるよ!僕が思うに、健くんのそれは多分……」
「よーし、じゃあ染谷の席はたまたま空いてた健の隣な、窓側のほうの」
喜一の言葉は、担任の声がさえぎってしまって聞き取れなかったが、
俺は聞き返すことはしなかった。
なぜなら…
「へぁっ!?」
担任の言葉に驚いてウルトラマンのような奇声をあげていたからだ。
美少女が隣の席って…え?ラノベかな?
移動するよう促された染谷さんがこちらへ歩いてくる。
そして席につき微笑みながら言った。
「これからよろしくね」
この時の俺の気持ちをある映画の言葉から引用して表してみよう。
『物語が始まると思った』