世界は、整然と横並びに配列されている。
これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。
「……どこもかしこも、ガタガタだな」
「協会も警察も、その存在意義が失墜したし」
溢れだす怪人達を止める術だった筈のヒーロー達は、まるで歯が立たずに倒されてゆく。
運良く生き残っても、再起は叶わない程の深手を負っていて、助かったことを呪いさえ
する者もいた。その中に於いて、ただ一人。
然程ダメージすら負わずに、一撃で群がる怪人達を倒すお前は、人々に歓喜を通り越す
感情を植えつけていく。詐欺だ、ぺテンだ、卑怯者だと言われたお前の「真実」を。
誰もかれもが、お前の強さに驚愕し、崇拝し、畏怖となり、恐怖へと変わるだろう。
或いは、理不尽そのものとなるかもしれない。....分かっている事は、もうお前は。
その強さを誰も知らなかった時の自分へは、もう戻れはしない。
その強さ以外は、極めて平凡そのものだった日常は、もう戻ってはこない。
ここから先は....誰が敵で、誰が味方なのかさえ分からない疑心暗鬼の時間だ。
いや....出会うもの全てが、お前の「敵」となるだろう。
....覚悟を決めろ。でなければ、お前は。
「なんだ?。黒い....人形?」
「!?。だめだ、サイタマ!。
ずるり、と地面から出てきた黒い何かの口元が、開く。そして、言葉を発した。
【
「なんだ?。新手の怪人かよ、何だか偉そうだな」
【愚かなイキモノめ。我こそが、その身に余る力を与えたというのに】
「ああ?。違うな、これは俺の努力の証だっ!!」
凄まじき拳圧が、目の前の黒い人形に降りかかる。だが
「....マジか。なんだコイツ....っ!!」
【これ以上、
「離れろ、サイタマっ!!」
まるで効いていないばかりか、白い口元に厭な笑みさえ浮かべている。
【だが折角だ。暫し、遊んでやろう。ただ「壊す」だけでは、つまらぬ故な】
「....面白れえ。後悔するなよ、人形野郎っ!!」
「!?。よせ!!。挑発に乗るな!!」
目の前で繰り広げられる、もはやヒトの領域ではない闘いは 目では捕えられない。
....いかん、このままでは。「予言」が、現実になる。それだけは、ダメだ!!。
「....だめだよ、グンマ。あなたには、まだやることがある」
「!?。カナ、だが このままでは....」
「大丈夫。だから、後の事、お願いします。....ブラスト」
揺れる白い髪が、ふわりと風に乗って消える。そして、次の瞬間。
空気中に広がった色は、「真紅」ただ一色。その先には。
「....カナ?。なんでお前が、ここにいる?。なあ、この赤いの、嘘だろ?」
お前のヒーロースーツが、赤く染まっている。染めたのは、カナのもの。
お前が
カナが何者かを知る私だけが、何が起こったのかを理解していた。だが。
お前は、何も知らない。一般人である筈のカナが、なぜお前達の闘いに割って入れたのか。
それどころか、なぜこんな事になっているのかさえ。今のお前には、分かりはするまい。
【ふん、つまらん。やはりヒトは脆い。興が削がれた、お前も後を追わせてやろう】
....来る。やはり止められないのか、それは。
お前の深い悲しみを覆い隠すかのような怒気が、目の前の
そして、見る間にお前がお前でなくなってゆく。お前の中のモノが、目覚めるときが来たのか。
....ならば、私も選び取ろう。私の定めを、ヒーローとして。
「ねえ....グンマ?。どうしたの?」
「....ああ、いや。何でもないよ、カナ」
呼ばれて目覚めてみれば、いつもの場所。カナと、たぶんお前だけが来れる所。
「....ただの、夢だ」
まだ今は、「夢」だ。私にも、お前にも。
まだ決まってなどいない それなのに
不安になるのは 知っているからか