予め定められた調子の和まない話   作:真神 唯人

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今ある世界だけが、1つじゃ無い。
世界は、整然と横並びに配列されている。

これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。


混迷に揺蕩えば 浮上に労する

どこまでもヒトである事を棄てさせたいか。

 

どれだけの犠牲を払い、キミらは何をしたかった?。

自分達より弱い筈のヒトから、迫害されない世界を創る為にと

自分達を蔑み恐れるヒトを排除してしまおうとした結果がコレか。

 

成程、弱いヒトが負の感情を増幅させ拗れさせ怪人化したモノより

強さに特化したヒトを造り変える方が手っ取り早いな、効率もいい。

 

殺されて造り変えられるか、脅迫に屈した形とは言え自らの意志で

あんなモノを己が体に取り込み、異形に為り果てるかの二択を選ぶ。

あくまで選ばせてやっていると言うは聞こえがいいが、よく考えろ。

 

結果は1つしかない。「ヒトを棄てる」それだけは確実だ。

死ぬのは怖い。殺されるのも嫌だ。だから実質、選択肢なんて無い。

それしか掴まないようにする連中のやり方は、理に適っているのさ。

 

リミッターを外せないヒトが強くなるには、人外のモノになるしか

ヒトを棄てるしかないのだと囁く響きはどこまでも甘い誘惑に近い。

 

胸糞悪いが、心情的に逃げ道を断つのは反撃の牙をも折るものだ。

 

ヒトとして死ぬ事を許されず、怪人化してヒトに仇為すモノになる。

ヒーローに()()を選ばせて屈服する様を見たいとは、全く以って

悪趣味極まりないと言ったところで、どうなるわけでもないのだが。

 

なあ、キミらに1つ聞いても良かったか?。キミらがだよ。

 

ヒトに無い力を持つ者だけの世界を創ったとして、だ。

ヒトに迫害されない世界を創れた、と仮定しての話をしよう。

 

自分より力が弱い者を蔑まないという事はできるか?。

自分より力が強い者が自分を蔑まないという確約はあるのか?。

その結果、そこに生きる異能の者達は平等に生きられるのか?。

それは果たして、進化と言えるのか?。そこに何が、生まれるのかを。

 

わからないか?。本当にわからないか?。愚かというより単にバカだろう。

こんな簡単な事がわからないキミらは、そろそろ踊らされてる事に気付け。

 

ああ、弱いからそこまで考えが及ばないんだな。答えを教えよう、聞こえるか?。

自分より強くても弱くても、そこにまた....迫害される「理由」が生まれるのさ。

 

「常人なら、とっくに死んでる筈のダメージも()()()を」

 

殺す事さえできないし、そもそもケガにさえならない。何故か?。

リミッターを外した者は遺伝子レベルで、全てが"変質する"からだ。

体組織から何もかもが、ヒトに近いながらヒトに為らざりし()()に。

怪人よりも異質なモノに為るという意味でも、最凶と言えるのだろうな。

 

「....尤も。その時点でもう、ヒトとは呼べないのだがな」

 

ヒトの中に居る事を許されない異質中の異質として生きるモノという意味では

私たちは、ヒーローという看板がなければキミらと同じだという事になるがね。

 

 

「お前が人の世界に居られたのは。その力加減によるものだ、サイタマ」

「意味わかんねぇぞ!。何の話だ、てめぇ!。グンマあっ!!」

 

「お前は自分をただ強いだけの人間だと認識の下、無意識に制御していたのさ」

 

神宿る肉体と拳を持つ者が、その溢れてダダ漏れする力を普通に振るって

普通に生活するなど出来んよ、本来はな。....だが、お前はどうだった?。

 

多少グータラしてはいたが、ほぼ普通に暮らせていただろう?。

 

 

「本能による危機回避の時だけ、制御が緩むのは仕方ないが」

「御託を並べ立てなけりゃ闘えねぇのかよ!。くそったれがっ!」

 

「それだけか、全く。そろそろ正しい呼び方で呼んでくれないか?」

「知るかっ!。どのツラ下げてぬかしやがる!!。気色悪りいんだよ!!」

 

 

 

....やれやれ。まぁ、このくらいは想定内だからいいんだ。

カナは呆れていたが。私たちの()()なんて、この程度なんだよ。

 

 

お前をヒトたらしめていたのが何なのかは、知る由も無い。今となっては。

できればそのままで、いてくれたならと。たられば、を言うのは詮無き事だが。

 

 

 

 

 

 

 

「カナ。俺、何だろな」

「自分が何者か、自身無いの?」

「....あるけどよ。一応聞いときたい」

「背中、ど突いてもらいたいの?。マゾなの?」

「ど突いてどーすんの!。ああもう、シリアスになるだけムダかよ!」

「サイタマさんがサイタマさんだと認識してれば、問題ないでしょうに」

「....つまり、悩むだけムダだと言いたいのか?」

「サイタマさんを悩ませるのは、特売必勝の戦術だけかと思ってるよ」

「....そうか。って、あれ?。今日、もしかして!!」

「うん。むなげやの特売日。忘れてるなんて珍しいなと」

 

「早く言えええええっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ああどうか 気付かないで
あなたのそれが すり変わらないで
理不尽を知るあなたが 気付いたら
世界は 足下から崩れていくから

その拳が 向ける矛先をどうか 今は
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