予め定められた調子の和まない話   作:真神 唯人

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今ある世界だけが、1つじゃ無い。
世界は、整然と横並びに配列されている。

これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。


平衡を崩し壊し 救い来る者

 

「アンタ....無所属か?」

 

怪人を塩の柱にして、砕け散るのを見届けていたら。

後ろから誰かに声をかけられて、でも振り向かずにいた。

誰かが居るのには気付いていたけれど、()()()とは。

 

詮索されるのが面倒で大抵は、そのまま立ち去るのだけれど。

 

「待ってくれ。アンタみたいに強いヤツがどこにも」

「所属しなければ、ヒーローでは無いとでも?」

 

声の調子から、このまま見逃してはくれなさそうだったから答えた。

勿論、背中は向けたままで。攻撃されても躱せる程度だと分かるから。

 

「....いや、大抵はどこかに所属してるから。つい、ね」

「無所属でも”強くて人を助けてるひと”は、幾らもいるわ」

 

所属してるというだけで自分は特別だと思っているのなら、それは。

思い上がりも甚だしいただの愚者でしかない。そう言ってやった。

 

ちょくちょくいるのだ、そういう”勘違い”が。

そういうヤツに限って....見下す価値もないほどに弱い。

 

彼、でいいのだろうその人は、厳しいなぁと力無く笑って返してきた。

 

「今斃した怪人、レベル高いんだろ。技?1つで倒すなんて」

 

バランス・ブレイカーだな、アンタ。とあまり聞き慣れない単語を私に言ってきた。

 

「協会のレベル基準に従うと、闘う相手を間違うのはアンタみたいな」

 

強い怪人をあっさり斃してしまう人間がいて、報告に上がらないから。

まるで責めるかのような口ぶりで言われ、さすがに頭を抱えそうになる。

....そんな事を言っているから、富裕層の子飼いみたいな扱いなのに。

確かに戦略としてはアリなのだろうけど、それにしたってあまりに低い。

 

「レベルで判断して、勝てなさそうだったら人を見捨てるの?」

「....っ!!」

 

「勝てない相手でも、向かっていく”ヒーロー”を知っていてよ」

「....そ、れは....っ」

 

ドオオオオオンッ!!。突然、咆哮と共に少し先の壁が崩れて何かが姿を現した。

見てくれは、如何にも弱そうな。けれど、その邪悪な気と力を巧妙に隠している。

 

「アンタは下がってろ。こんなヤツ、俺一人で十分だ」

「?!。やめなさいっ、ソイツは....っ」

 

まさかと思った。信じられなかった。本当に、気付いていないのか。

 

案の定、彼はあっさりと怪人の一撃に吹っ飛ばされた。そして怪人は、私を見る。

玩具を見つけて喜ぶような笑みは醜く歪み、厭らしい欲を隠しもしないで涎を垂らす。

 

「....っ、こ、のっ!!」

「ヒヒッ、かぁわいいねええ~。イイことして遊ぼおぜ~?」

 

瞬きの間に首を掴み上げられて、ぶら下げられた状態で怪人が顔を寄せる。

この態勢では、詠唱ができない。彼の行動に気を取られすぎた私の油断だ。

 

少しずつギリギリと首を締めあげられて、意識が保てなくなっていく。

こんな小物の所為(せい)で解放するわけにはいかないのに。そう思ったとき。

 

微かな風圧が、通り過ぎたかと思った時には。残っていたのは首を()()()()()腕だけ。

緑色の体液をブチまけ乍ら、びくびくと痙攣していたその腕もまるで汚いモノを扱うように

私の後ろから伸びてきた指先で、ピンッと弾き飛ばされていった。....何気に酷いなぁ。

 

顔を見なくても、誰なのか分かる。こんな芸当が出来るのは1()()しかいないから。

 

地面に落下することなく、背中を支えられてゆっくりと両足をつく。

呼吸を整えようと、ゲホゲホッと咳き込みながらも振り返った。

 

『すまない、珍しく手こずってるなと思ってつい』

「....あ、りが、とう、ブラスト」

 

『彼は、どうする?。一応、瓦礫の中からは出しておいたが』

「協会に....連絡、する。あと、は、どうとでも、なるでしょ」

 

 

 

 

ほう?。”バランス・ブレイカー”?。なるほどね、そういう見方もあるか。

 

まあ、所属していなくとも。或いは、ヒーローでなくとも強い者たちは確かに存在している。

彼らもまた、目の前で人が怪人に襲われているのを見過ごせずに立ち向かい、助ける存在だ。

 

協会が決めたレベルなんて所詮ヒトが定めたもので、根拠はあって無いに等しい。

彼らは、そんなものに惑う事無く闘う。ヒーローたる意識など持たないのに、だ。

 

....何故だろうな。所属しているヒーローたちが悪いわけではないが。

怪人という存在が現れるようになって、それに対抗する組織ができて。

 

いつから”正義”は、金で動くモノに成り果てたんだろうな。

 

....ああ、そんな顔をするな”ラクリマ”。わかっているさ、心配しなくていい。

私も一応、協会に所属しているからな。今は....そのスタンスを続けているさ。

 

........()()()()()()()()、な。

 

 

 

 

「気が付かれましたか?。もう大丈夫ですよ」

「....病院、か。俺は、助かったのか」

「連絡が入りましてね。暫くは入院ですよ、いいですね」

「こんなケガじゃ、な。仕方ない」

「ご家族には連絡しましたから。こちらに向かっておられます」

「........わかった。ありがとうございます」

 

 

「(彼女、でいいんだよな。助けたヤツ、なんて強さだ。キズ1つ付けず、たった一撃で)」

「(....そいつのこと、なんて呼んでたっけ?。最後の”ト”しか聞こえなかったけど)」

「(白いマントで、名前の最後が”ト”のつくヒーロー....いたっけか?)」

「(........まさか、()()”ハゲマント”か?。いや、まさか、な)」

 

 

 

 

 

 




ヒトが定めた事に惑う事無く 闘う者
ヒトが定めた事に従い 過信して 闘う者
人を助けるという根源のもと 動く者たちに違いは無い
それなのに何故 これほどまでに 差がつくのか
いつから.......その在り様を変えた?
人を助けたいという意識は 変わらぬものを
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