予め定められた調子の和まない話   作:真神 唯人

16 / 17
今ある世界だけが、1つじゃ無い。
世界は、整然と横並びに配列されている。

これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。
 


連なる強さへの鎖 天をも縛る

本当にあなたは他人に影響を及ぼすヒーローだった。

 

良くも悪くも、と言ったらビミョーな顔をしていたが、紛れもない

事実ではあるのだからその顔はやめてよ。悪意は無いですってば!。

馬鹿にもしていませんよ、疑り深いなあ、もう。

 

今はただ、懐かしいばかりの記憶の中で。繋ぎ合わせたような日々の

思い出を手繰り寄せて。懐かしい顔ぶれが勢揃いのあの優しい日々を。

 

私は....ワタシハ、微睡(マドロミ)ナガラ、ユメヲミテイル。

イツカノ、ユメヲ。ユラユラト、揺蕩(タユタ)イナガラ。

 

 

「ねぇねぇ、サイタマさん」

 

聞けば、ジェノスくんに続く?新たな弟子志願者が現れたのだそうで。

それだけでも驚いた。しかも、それよりも絶対断る、と面と向かって

告げたらしい、その相手というのが何と武術大会の決勝戦の相手だと。

 

()()スイリューさんだって?」

「……カナ。お前どっから聞いてくんの」

「二番弟子、取るの?」

「アホか。冗談じゃねーよ」

 

心底うんざりした顔で、弟子は一人居りゃもう十分だっつーのと深い

溜息混じりに遠くを見ているサイタマさんは、そう言ったのだけれど。

人が聞いたら意外な事を言ったことに、彼は全く気付いていないのだ。

 

....へえ。進歩したのね、全く関心が無いかと思いきや。

 

ジェノスくんとの生活に慣れて、弟子だと受け入れたけどそれだけで。

彼を見ているようで、実は全く見ていないんじゃないかと思っていた。

サイタマさんの周囲を取り巻く他の誰の事も見ていないのではないか。

 

でもそれは私の杞憂だったみたいで、1つ安心したけれど。

 

「でもさ、暇だったから。って、キリっと決めなくても」

「おっ前なあ!。ホントどっから聞いてくんだよ!」

「えー、勿論そんなの本人に決まってるでしょ?」

 

目を丸く見開いて、マジか....と呟き、ギロリと睨みつける彼に

弟子入り諦めてないってーと伝えると、聞かなかった事にすると言う。

 

強くなりすぎてしまった男は、既にあるべき姿を通りこしていたまま

誰にも知られること無くヒトの中に溶け込んでいて、雑踏に紛れ行く。

強さだけが悪目立ちしてしまう生きにくい日常を、普通に生きながら。

 

何処までも独りで歩いていく背中とは、誰も対等に立てない世界へと

駆り立てられるように煽られるように白いマントを翻して歩いていく。

 

特別じゃない、普通のトレーニングだけで強くなりすぎた男は。

そう遠くない或る日のその時まで、歩き続けるのだろう。

 

己の中に逆巻く、忸怩たる思いを抱えたまま、二度は無い生を。

移りゆくヒトの流れに乗らぬ、不変の時間は誰の手も救いにならない。

全てはその手から零れ落ち消え逝く、思い出にさえ留められない欠片。

残酷なリアルタイムが押し寄せてその拳が、誰かの血に染まる時まで。

 

 

 

「それにしても、本当に禿げ上がってしまったなぁ」

「....ちょっとグンマ。それ今、本人に言わないでよ」

「人は図星を刺されると、冷静さを欠く生き物だからな」

「....ちょっと!。彼にとってハゲはデリケートで深刻だって」

「だからこそ、注意を逸らすには十分だろう?」

「....グンマは、リミッター解除と引き換えに何か無くしたの?」

「勿論。とても大切なものを失くしたさ。髪は残ってくれたがね」

「....だから!。いくら注意を逸らすったって、逆効果じゃ」

「この状況を動かす為だ、手を拱いている時間は無い」

 

 

 

「....てめえ、今なんつった?。あ"あ"?!」

「私も同じだが、お前と違って残っている辺りが力の差を表してるだろう?」

「....くそ親父が....なめてんじゃねーぞ....」

「うん?。些末なことだろう?。強さと引き換えに禿げた事くらい」

「てめええええええっ!!。俺は気にしてんだよっっっ!!」

「まあ、普通に禿げた訳ではないからなぁ。その禿げは幾ら頑張っても無理だぞ」

「....ちくしょうっ、ハゲハゲ連呼すんなああああああっ!!!」

「そうは言っても事実じゃないか。私は禿げてなどいないというのにな」

「....ブッ倒す。てめえマジでブッ倒すからな!!。くそ親父っ!!」

 

 

ほうら、面白いほど頭に血が上って正気になった。

やり方はアレだが、強ち間違ってはいなかっただろう?。

まあ、単純過ぎるのとその理由が不憫だと思わなくもないが。

うん?。煽ったのは私だからいいんだよ。あの程度は躱せる。

 

 

それよりも....カナ。君だけは笑わないでやってくれないか。

見なかったフリをしておくから、顔を元に戻しておくように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、そんなに可笑しい事を言ったか?」

「....うん。ツボにキタよ、あの後もハゲの連呼が続くとか」

「カナ。この隙に"殺虫剤”を。()()が正気でいるうちに」

「....ん。じゃあ、そっちはよろしくね、"ブラスト"。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

....ま、作戦勝ちという事にしてもらおうか。

これから闘うアイツに比べれば、準備運動みたいなものさ。

 

 

 

 




出来うるなら。叶うなら。出来れば。叶えられたら。
たられば は 言うだけ詮無き事。それでも私は。
何かに願わずには。カミサマではない 何かに。

願わずには いられなかった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告