世界は、整然と横並びに配列されている。
これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。
どうすりゃいい?。もうこれ以上、強くなることが叶わないと気付いたら。
只でさえ空しい日常が殊更に空しく感じてつまらない。退屈過ぎて意味が無い。
俺は、どうしてこうなった?。何を望んでいたっけ?。強くなりたかったんだ。
ああ、そうだ。でも。それから?。それから先は、どうなりたかった?。
「....体と腕っぷしだけが強くなっただけ、か」
"最強"には、為れたと思う。でも"最高"じゃない。まだ、ゴールに辿り着いてねぇ。
まだ、終わっちゃいない。図らずもキングが言った通り、だな。だのに、俺は。
....俺は....おれは....オレハ....オレは....?。
「そうだ、取り戻せ!!。呑まれるな!!。お前は誰だった?!。思い出せ!!」
....アア....ウルセエナ....アア....ああ....うるせぇ、よ....?。
「カナは、ヤツの為に生まれたんじゃない!!。
....かな............カナ..........カ、ナ?...........だ、レだ?。
「お前はっ!!。お前が浴びたソレを見てもまだ、戻らないつもりか....っ!!!」
昏くて何もない眼前にびしりと小さな亀裂が走り、細い光が射し込むような感覚がして。
関わった皆の様々な顔。良くも悪くもあった様々な思い出が、眼前を走り抜けていく。
瞼の裏で笑ってる顔。Z市のあの古い部屋で暮らした日々。風に靡く、白くて長い髪。
「なあ。最高のヒーローって何だと思う?」
「最高のヒーロー、ですか。そうですね....全ての人を救える力を持つ者、かと」
「ええー、ジェノスくん、物理的にそれ無理だよ」
お茶を飲みながら、何となくキングと話してた事を改めて2人に問うてみた。
まさかの速攻で否定されてちょっとムッとしたジェノスが、カナに問い返すと。
「自分の体は1つだよ。どうやって全ての人を救えるの?」
「む……。ではお前なら、何と答えるんだ?」
すると。いつもならのんびりした声でにへら、と笑いながら言いそうなもんなのに。
目を伏せてきゅ、と唇を引き結び、1つ息をついて初めて見る表情をした事に驚いた。
「諸悪の根源、怪人が生まれる元凶を叩き潰し怪人が居ない世界を創ったひと」
人々が怪人に脅かされない世界を。怪人に壊され奪われない喪わない、世界を。
そうすれば。それが出来れば、後世まで語り継がれていく最高のヒーローだと。
怪人が生まれる理由は様々で、コレという明確な元凶は未だ分かっていないのが嘗て
世間に流布されていた表向きの一般論だが。それを隠しきれなくなったあの日以降は。
建前と金と思惑とが交差し、何が正しくて間違いで、誰が正義で悪なのか。
自分を定義するものの根幹に迷いを生み、屋台骨がぐらつき傾いでいった。
....それと気づかせず、悟らせず、巧妙に、狡猾に、蝕んでいった。
「世界を変えて、人を救う...か。だが途方もない事だ」
「....そうだね。協会や他の機関も未だに掴みきれていないし」
「出てきた怪人をぶっ飛ばしていくだけじゃなく根っこを枯らす、か」
「もしくは生み出す虫を始末する、でしょうか。ですがどちらにせよ」
「....
「そう簡単に見つかる筈もねえか。結局、いつも通りかよ」
「あ、それプラス、殺虫剤と除草剤がいるんじゃないのー?」
「....腰に下げて歩けってか」
「カナ。お前は先生に何をさせる気だ?」
時は戻らない。戻せない。前へ前へと進み続ける。泣こうが喚こうが怒ろうが。
留めては置けない。涙はいつか乾く。声は嗄れ、怒りは収まるか或いは逆巻くか。
両手を上げるのはまだ早い。訳知り顔ですべてを諦めるのも、まだだ。
突き動かすのは....踏み出す理由は。いつだって、そうだった。だな。
広がってゆく 織られていく 細い糸が
撚られていくように 運命の縦糸と横糸が
かの男のその手で 織りあげられていく
その 1枚の綴織を 破るのは誰か?