予め定められた調子の和まない話   作:真神 唯人

17 / 17
今ある世界だけが、1つじゃ無い。
世界は、整然と横並びに配列されている。

これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。




迷走する正義の定義は 何処にも無い

どうすりゃいい?。もうこれ以上、強くなることが叶わないと気付いたら。

只でさえ空しい日常が殊更に空しく感じてつまらない。退屈過ぎて意味が無い。

俺は、どうしてこうなった?。何を望んでいたっけ?。強くなりたかったんだ。

ああ、そうだ。でも。それから?。それから先は、どうなりたかった?。

 

「....体と腕っぷしだけが強くなっただけ、か」

 

"最強"には、為れたと思う。でも"最高"じゃない。まだ、ゴールに辿り着いてねぇ。

まだ、終わっちゃいない。図らずもキングが言った通り、だな。だのに、俺は。

 

 

 

....俺は....おれは....オレハ....オレは....?。

 

 

 

 

「そうだ、取り戻せ!!。呑まれるな!!。お前は誰だった?!。思い出せ!!」

 

 

 

....アア....ウルセエナ....アア....ああ....うるせぇ、よ....?。

 

 

 

「カナは、ヤツの為に生まれたんじゃない!!。()()()()()()()()()()()!!」

 

 

 

....かな............カナ..........カ、ナ?...........だ、レだ?。

 

 

 

「お前はっ!!。お前が浴びたソレを見てもまだ、戻らないつもりか....っ!!!」

 

 

 

 

 

 

昏くて何もない眼前にびしりと小さな亀裂が走り、細い光が射し込むような感覚がして。

関わった皆の様々な顔。良くも悪くもあった様々な思い出が、眼前を走り抜けていく。

瞼の裏で笑ってる顔。Z市のあの古い部屋で暮らした日々。風に靡く、白くて長い髪。

 

「なあ。最高のヒーローって何だと思う?」

「最高のヒーロー、ですか。そうですね....全ての人を救える力を持つ者、かと」

「ええー、ジェノスくん、物理的にそれ無理だよ」

 

お茶を飲みながら、何となくキングと話してた事を改めて2人に問うてみた。

まさかの速攻で否定されてちょっとムッとしたジェノスが、カナに問い返すと。

 

「自分の体は1つだよ。どうやって全ての人を救えるの?」

「む……。ではお前なら、何と答えるんだ?」

 

すると。いつもならのんびりした声でにへら、と笑いながら言いそうなもんなのに。

目を伏せてきゅ、と唇を引き結び、1つ息をついて初めて見る表情をした事に驚いた。

 

「諸悪の根源、怪人が生まれる元凶を叩き潰し怪人が居ない世界を創ったひと」

 

人々が怪人に脅かされない世界を。怪人に壊され奪われない喪わない、世界を。

そうすれば。それが出来れば、後世まで語り継がれていく最高のヒーローだと。

 

怪人が生まれる理由は様々で、コレという明確な元凶は未だ分かっていないのが嘗て

世間に流布されていた表向きの一般論だが。それを隠しきれなくなったあの日以降は。

 

建前と金と思惑とが交差し、何が正しくて間違いで、誰が正義で悪なのか。

自分を定義するものの根幹に迷いを生み、屋台骨がぐらつき傾いでいった。

 

 

....それと気づかせず、悟らせず、巧妙に、狡猾に、蝕んでいった。

 

 

 

 

 

「世界を変えて、人を救う...か。だが途方もない事だ」

「....そうだね。協会や他の機関も未だに掴みきれていないし」

「出てきた怪人をぶっ飛ばしていくだけじゃなく根っこを枯らす、か」

「もしくは生み出す虫を始末する、でしょうか。ですがどちらにせよ」

「....()()が見つからないことにはね。闇雲に探したところで」

「そう簡単に見つかる筈もねえか。結局、いつも通りかよ」

「あ、それプラス、殺虫剤と除草剤がいるんじゃないのー?」

 

「....腰に下げて歩けってか」

「カナ。お前は先生に何をさせる気だ?」

 

 

 

 

 

時は戻らない。戻せない。前へ前へと進み続ける。泣こうが喚こうが怒ろうが。

留めては置けない。涙はいつか乾く。声は嗄れ、怒りは収まるか或いは逆巻くか。

 

両手を上げるのはまだ早い。訳知り顔ですべてを諦めるのも、まだだ。

突き動かすのは....踏み出す理由は。いつだって、そうだった。だな。

 

 

 




広がってゆく 織られていく 細い糸が
撚られていくように 運命の縦糸と横糸が
かの男のその手で 織りあげられていく
その 1枚の綴織を 破るのは誰か?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告