世界は、整然と横並びに配列されている。
これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。
「おはよーございまーす。起きてますかー?」
「....カナ。ドア壊れる。やめい」
「いだだだだ!サイタマさんギブギブ!首捥げます!」
「....少なくとも、静かになるなぁ?」
「なに黒いモノ降臨させてるんですか怖いです」
「朝から喧しいぞ。どうした、カナ」
「おはよーございます、ジェノスくん」
いつものやり取り。毎朝の日課。これだけなら微笑ましいと言えなくもない。
けれどこの世界は、このままで済ませてはくれないほど時に無常だ。
すぐ後ろに響く破壊音。ガラガラと崩れゆく建物。そしてヒトでない声。
....ああ、まただ。何処から沸いてくるの、ホント。
「カナ、入っていろ。先生、アレは俺が片づけてきます」
「おー、任せた。カナ、あぶねーから行っとけ」
2人はヒーロー。弟子のジェノスくんと、師匠のサイタマさんは同居している。
私の名は、カナガワ。長いからってカナと呼ばれている。親にも略されたことないのに。
或る日、怪人に襲われかけた私を2人が助けてくれて以来のご近所付き合いだ。
凄まじい破壊音と、怪人の悲鳴がこだまする。ジェノスくん、相変わらず強いなあ。
ガチャリとドアが開く音がして、戻ってきたジェノスくんはふう、と一息つく。
お疲れ様、ケガは?と声をかければ、あの程度では何とも無いと頼もしい台詞。
手早く朝ごはんとお茶を用意して、テレビをつける。
世間では父の日らしく、様々なイベントの様子を伝えていた。
母の日ほどの盛り上がりには欠けるけど、お父さんだって頑張っているんだよね。
「そういえば、ジェノスくんの話は聞いたけど。サイタマさんの話は聞いた事ないね」
「あ?俺にだって、いちおー親はいるぞ。父親は何してるか知らないけどな」
「何をしているかわからない、ですか?」
「おう。いっつも家に居やしないし、帰ってきてもすぐ出かけちまってるからなぁ」
「でもせめて、名前くらいは知ってるでしょう?」
「当たり前だろ。幾らなんでもそこまでじゃねえよ」
「では先生。名は、先生のご父君の名は、何と仰るのですか?」
「....グンマってんだ。あ、カナ、醤油取ってくれるか」
私は知っている。....サイタマさんが、「あの人」の息子だということを。
そして、「あの人」も知っている。自分の息子が、ヒーローだということを。
....知らないのは、サイタマさんだけ。今は、まだ。
いつかくる「その日」まで、知ることは無い。....言わない罪は、私が被る。
どれだけの嘘を塗り重ねても。その為に、ここにいるのだから。
日常の狭間から、置いてきた過去に向き合う時がもうすぐ来る。
望んだのは「強さ」。けれど。
ヒトならざる強すぎる「力」を得たのは、あなたたちの本意じゃ無い。
それなのに、不条理なほど追ってくる執拗な手は、緩まない。
あの人とあなたの、絶望しかない未来を動かす為に。
....続きました(笑)。