世界は、整然と横並びに配列されている。
これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。
轟音と共に瓦礫と化す、数多の建物。消し飛ぶ街並みと、人影。
かつてそこに在った人の生活と、時間さえも、粉塵に消えていく。
恐怖に叫ぶ間も、喚く暇さえも与えられること無く、瞬きの間に。
その、立ち込める土煙の中から飛び出してくる影が、ふたつ。
白いマントが翻り、光の如き速さでぶつかり合う。
煙が晴れた先に現れたのは、よく似た風体の、男が2人。
「....やれやれ。拳骨だけじゃ反省しないか、
「は、今さら父親ヅラすんな。....いつまでも余裕かましてんじゃ、ねえ!!」
ゴウッ!と、突き出した拳が届くより早く、拳圧によって地表が抉れた。だが。
そのまま吹き飛んだかと思われた壮年の男が、無傷でそこから動いてなどいないと知って。
舌打ちとともに、若い坊主頭の男のこめかみにビキビキと、青筋が浮かぶ。
顔の皮膚一枚さえ切れること無く、血の一滴さえ出ていないのだ。
「....
「!?。てめぇ....」
言ったほんの一瞬のうちに、気付けば目の前に、壮年の男が来ていた。
避ける間もなく、ゼロ距離で放たれたパンチをもろに受けて坊主頭の若い男が吹っ飛ぶ。
がはっ、と血反吐を吐きながら、地面に片膝をついて荒い息をつくその姿を憐れむように。
埃の付いた手を払いながら壮年の男は、じっと見ている。ため息をついて。
「....それほどに楽しいか?。自分より強い者と闘えるのは。そんなにも、お前は疎外感に苛まれ生きてきたのか。そのケタ違いの強さを得たが故に、人に在らざるその「力」の
もはや痛覚はほぼ無きに等しく、皮膚の強度も何もかもが人のそれではない自分たちは。
人に畏怖を抱かせ、恐怖心さえ呼び起こす異能者であり、人のなかにいられない異端者。
手を伸ばしても弾かれる、居場所無き者。....この、地球にさえ恐れられる、生命体。
何故、こんな「力」なのか。他に無かったのか。いや、
そして。………そうだ、そうだったな。いつだって、「私たち」は。
ただ、ヒーローになりたかった。ヒーローでありたかった。
何にも縛られない、自由なままでありたかった。それだけなのに。
強くなればなるほど、離れていく理想。思っていたもの。願っていた事。
全てが、自分を置いて遠ざかっていく感覚とそれに伴う焦燥感と....忍び寄る、孤独。
「私は」、「俺は」、どこにもいかないで、ここにいるのに。
いつのまにか、すり替えていた元々の「望んだ事」。そこにもっと早く
「私は」、「俺は」、忘れてしまわずに。失わずにいられたのか。でももう、遅い。
振り上げられたふたつの拳は、真っ直ぐに、お互いの存在へと向けられた。
「....カナ。顔色が悪い。気分がすぐれないなら、帰っておやすみ」
「ううん。平気だよ、グンマ。ちょっと最近、夢見が悪いだけだから」
ぼすんと、頭の上に置かれた大きな手。手袋越しの温もりは、人のものなのに。
2人ともが持つ、確かな人の温もりをこうして感じ取れるのに。
させない。アレを現実になんか、させない。「地球」が壊れる前に、止める。
その「代償」は、既に支払ったのだから。
その為に、私はここに、彼らの傍で、生きているのだから。
....何とか、続いてます(笑)。