予め定められた調子の和まない話   作:真神 唯人

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今ある世界だけが、1つじゃ無い。
世界は、整然と横並びに配列されている。

これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。


趣味で 英雄をしている者

時と共に、腐敗していく機関。職業になり、作業化する正義。

一人歩きする、「ヒーロー」という言語。意義無き救済にさえ救われぬ者。

かつて在りし理想と意志は廃れ、堕ちていく人心と依存する人々。

 

もはや、民衆の為では無い、力ある正義。

 

今一度、問う。其れを「是」とするや、「否」とするや。

今なお志ありし強き者よ、かつて在り、時と共に志を、失いかけし者よ。

そして。未だ迷いて自らの在り様を見いだせぬ、埋もれる力持つ者よ。

 

『我らと共に来たれ』

 

....新たなる組織の台頭。惹かれゆく民衆と、燻り渦巻く、意思。

湧き上がる不満と不穏と、用意されたる居場所から、離れ始める力持ちし者たち。

混迷と、暗躍。個の意志は潰されて、駒に成り下がりてなお問われし、「誠実」。

既に失われたに等しい「善」を以って、人の為と書いて「偽り」の思考で動く。

それが現状。堕ちた威光と慈悲による救済は、有って無いに同じ。

 

「ヒーローとは、なんだろうな....」

 

グンマは思い巡らす。自分の生きてきた道を。ブラストという名の、ヒーローとしての自分を。

そして、名目上、力持たぬ弱い存在とされる「ヒト」の事を。

 

そも、ヒトの在りようたるや。単純にして儚い。

争い、壊し、創り、育て、また壊し、創る。そして。

 

揺るぎ無き意志も、確固たる理想も、そう為らんという努力も、何もかもを。

時間の螺旋の果てに、失ってゆく。ゆっくりと、流砂に飲み込まれるが如く。

人は、忘れてゆく。都合のいい事だけを、除いて。

 

「自由で在りたいと望んだ事を、罪だというのなら」

 

私も、この地球に害為す罪咎人となるのだろう。今も消せぬ、胸の内と共に。

この手のひらは、あまりに小さく。零れていった誰かの命の火を消されていくばかり。

1人のヒーローの、この手で救えるのは僅かだと、ただ握りしめる。故に。

 

【いざという時に誰かが助けてくれると、思ってはいけない】

 

それは紛れも無き現実であり、否定できぬ事象であり、間違う事無き事実だ。

 

そして埋火のように密やかに、或いは、捩じ伏せてでも問うがままに。

また1人、また1人と増えゆく、「禁忌」を抉じ開けては己を知る者。

望み願っても、手にする「力」も同等とは限らないと知らぬまま。

 

もし()()が、敵無き「力」とは限らないと知ってなお、愚かにも挑むか?。

そう問われれば、答えは「是」と言える。何故なら、ヒトの飽くなき探求は時として。

いとも容易く、過去のヒトが定めた禁を破り、強固な扉へと至れるから、だ。

 

ヒーローとは、怪人とは何か。それは、正しさについて、を問うに等しい。

正しさ、とは何ぞや?。ヒトにとって。或いは、地球にとって。

その答えは....誰一人として出せぬまま、時だけが過ぎ行きてきた。そして。

世界は、狂ってゆく。「破滅」を呼び寄せる、未だ矮小なる二つの()を巡って。

 

 

 

男は、逆巻く風に表情を変えぬまま。

人が来れない場所から一つの方向を、見ていた。

 

「....サイタマ。お前が求め止まぬモノは、私が持っている」

 

お前が持ち続ける、強い相手と闘いたいという餓え渇きが如き「願い」を叶えてしまうのは。

満たし、充たし、完膚無きまでに叩きのめし、汚泥を舐めさせんとする「強さ」を持つのは。

 

「....この世界に、私だけだ。皮肉にも、な」

 

私と対峙する時、お前は思い出すか?。それとも否定するか?。

唯一無二と信ずる、己の「力」を持つ者が他にいることを、では無い。

お前にとって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を、だ。

 

「....今からでも、激怒するところが目に浮かぶんだがなぁ」

 

寧ろ激怒するぐらいで済むとは思えないが、そのくらいは想定済みだ。

そしてきっと、お前はその意味に気付ける。何故、「私たち」なのかを。

 

()()()()()()()()、お前なら。....たぶん、な。

 

それにしても、面倒な事この上ないものだよ。カナの言っていた()()

欺かねばならないというだけでも骨が折れるというのに。お前の事までとは。

 

「趣味の範囲外、と言いたい所だが」

 

まぁ、いいか。そう思うと同時に上がる口角。最後に会った日から、止まっていた時が動く。

幼かった顔立ちは、大人の顔へと変わった。感情が表に出ないのは、「力」の反動か。

....いいや、違うな。全く、そんなところまで、誰に似たんだか。

 

 

『父さん』と、そう呼ばれたのは、()()()()だ。明かす時は、決まっているが。

 

 

もしも今なら、何と呼ばれるだろうか?。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローたちが住まう場所を、遥か遠くから見ていた影が1つ。

闇夜の風に弄られて、はためくのは、白い白いマント。

やがてバサリ、と、白いマントが翻り、人影は夜の闇へ溶け込んで消える。

気配も、体温さえも、もうそこには、初めから誰もいなかったと言うかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....せいぜい、『くそ親父』だろうな。そうだろう?」








お久しうございます。続いてます(笑)。
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