予め定められた調子の和まない話   作:真神 唯人

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今ある世界だけが、1つじゃ無い。
世界は、整然と横並びに配列されている。

これは、今ある世界の「隣の世界」での話。
もしかしたら、の、「並行世界」での話。


油断も隙もないのは 時に脅威に変わる

A~Zまでの一文字を都市名に定め、様々な人々が住み、暮らすそこは。

毎日のように人間が突然「変容」し、「怪人化」し、人を襲う。或いは。

「動物」や、「生物」が「変容」し、人を襲い、街を、都市を壊す。

 

街のいたる所で、警報が鳴り響く頃には既に手遅れ、なんて事は特に珍しくも無い。

それどころか。寧ろ、遅れても警報が出るだけマシという事だってある。

一番危険に晒されるのは、いつだって何の力も無い「一般人」なのだから。

 

常に死と隣り合わせなのは、現場で闘うヒーローだけじゃ無い。

()()は、一番弱い者達に、いつだって容赦が無いのだ。

 

 

 

大勢の人々が行き交う中心街。待ち合わせのシンボルの前で、歩いてくる待ち人を見つける。

地味でも派手でも無い、何処にでもいるであろうその知人は、ここにいる私に気付く。

....少なくとも、傍目からは「一般人」と変わらないようにしか見えない。

 

「やっほー、カナちゃんお待たせーん♪」

「メールで「乞うご期待♪」って言うから、期待して来たよ」

「んふふー。じゃ、ちょっと場所変えよっか」

 

そう言って来たのは、小さな公園....だった場所。辛うじて残った看板が、それを教える。

怪人による破壊の爪痕が酷くて公園として機能できなくなり、そのまま放置されたようだった。

....もっとも、そんな所は最早、ここだけじゃ無い。街のいたるところで、嫌でも見る光景だ。

壊された遊具の残骸、何のものか分からない血飛沫のあと、砂の無い砂場だったもの。

もう、当たり前に視界に入ってくる現実に、うんざりするのは間違ってるんだろうか?。

 

「ほい、お待ちかねのモノ。やっとできたよん♪」

「相変わらずいい仕事するね。さすがだけど....でもさ、コレ」

 

知人のジマは、調合師という仕事をしている。....()()両方と、()()()()の。

そんなジマに、ずいぶん前から頼んでいたモノ。それは、()()()()()()退治に、必要なモノ。

どんな劇薬よりも強力かつ人体に無害なモノをと、ちょっと難しい注文をしてたんだけれども。

持たされた小瓶に入っている液体の色は、凄まじいほど毒々しい。....大丈夫なの??!。

 

「....すごい色してるね。これ、大丈夫?」

「質は、注文どおりだよん♪。こんくらいの方が、()()警戒するでしょ?」

「....まぁ、ね。誰も触んないよ、こんな色の何かを」

「もし飲んでも大丈夫♪。人には無害だから。あと、予備10個あるからね」

「....ありがと。()()、気をつけるよ」

 

そそっかしい私を熟知しているが故の気配りに、苦笑いするしかない。

そんな私をじっと見ていたジマは、ぽつりと言った。

 

「ごめんね、こんな事しかしてやれなくて」

「なに、ジマ??」

「カナちゃんに、全部背負わせて。アタシに出来ることは、()()まででさ」

「ジーマ、それ言わない。ジマがいなきゃ、頓挫するとこだったんだから。ねっ」

「....ん。ありがと。気をつけてね、()()()、今はまだ気付いてないけど」

 

世界の全ては()()()のモノで。だからこそどこで気付かれても、可笑しくは無い。

今、こうしている事さえ手のひらで踊らされてるかもと疑う自分がいる。けれど。

だったら寧ろ、()()()がそれを見逃す筈は無い。それは、あり得ない。

やる事は悪趣味極まりないが、保身にかけてはそれこそどんな手をも使うヤツなのだから。

 

「ジマも、気をつけてね」

「アタシは大丈夫よん♪。どこにでもいるから♪。じゃあね」

 

しゅるり、と空気に溶け込むように消えたジマが、居た場所を見つめる。

 

旧い知人の彼女もまた、私と「同様」だからか。

奇跡のような平凡な日常を、愛していると言った。

その為に、出来る事をしたいと言ってくれた。

流されて生かされるよりも、「抗う」と決めたのだと。

 

()()()に見つかるかもしれない危険を覚悟の上で、コレを造ってくれた。

 

「....大丈夫。私は、負けない」

 

そして、「彼ら」を見つけたのだ。「彼ら」こそが、()なのだと知ったのだ。

けれど、「話」が通るのはどちらだろうかと迷った。「若い柔軟性」か「年の功の熟考」か。

....この事は、グンマには言っていない。まぁ、お見通しだろうけど。

 

その日から、見事に存在を消していた「彼」を隅から隅まで、捜して捜して捜して。

 

ただ、予言の全貌を知ってなお、揺るがないのは「2人とも」だと分かっても。

「話」をしたいと思えたのは、明らかに「彼」だと思えたのは、何故だったか。

 

 

 

「!!。ちょっと、サイタマさんそれ殺虫剤の類い!!。さわっちゃダメ!!」

「そうなのか?。すげぇ色してっけど、流行りの新作かと」

「どう見ても飲み物の小瓶に入っているからだ。管理が甘いぞ」

「さあ仕舞おうとしてたとこを、横から引っ手繰ったんじゃない!!。もう!!。返して!!」

「殺虫剤ねぇ。ちょうど切らしてたから、分けてくんね?」

「ダメ!!。劇薬だから取り扱いが難しいの!!」

「そういうカナは、扱えるのか?」

「もちろん。免許持ってるもん。ハイ、返して」

「((!!。意外な一面を見た....))」

「何かな?」

「いや、何でもねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必要なものは、全部手にしてきた。ただ、必要になる時が今までじゃなかっただけ。

 

 

 




....アノ「虫」は、苦手というより逃げます。たまに殺虫剤片手に対抗しますが。
怖いものは怖いです(本気でアレは絶滅して欲しい)。
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